金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

貿易戦争一時停止で株価上昇期待、短期的だろうが

2019年06月30日 | 投資

昨日(6月29日)G20会合を利用して行われたトランプ大統領と習近平主席の会談により、米中貿易戦争は一時的な停戦となった。

米国は約3千億ドル相当の中国からの輸入品に対する新たな関税を見送り、米国企業がファーウェイに部品を売ることを認めた。

中国は米国の農家から大量の農産物の輸入を開始すると述べた。

そして米中両国は貿易交渉を再開すると述べている。

アナリストの中にはやや前向きな評価を下す者と失望感を示す者がいる。

短期的には事態が悪化するのは食い止めることができたが、重荷がおりたというには程遠いというのが大方の見方である。

株式相場については短期的な上昇局面を迎えるという見方が多い。

ただ貿易摩擦に対する懸念が多少緩和したとしても、投資家は米連銀が政策金利を引き下げるという予想を変えないだろうという見方をするストラテジストもいる(シンガポールのNatWest Market)。

米国金利が引き下げ方向にあるよいう予測は円高を想起させる。

今テレビニュースを見ているとトランプ大統領が板門店で軍事境界線を超えて、北朝鮮の金正恩委員長と会談を行った。

会談の内容はともかくリスクオフモードのスイッチが入ることは間違いない。

ということで短期的には米国株式、新興国株式は上昇しそうである。

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ドイツ銀行、最大で2万人規模2割の人員削減を検討

2019年06月29日 | ライフプランニングファイル

欧州や日本の銀行には逆風が吹いている。

WSJによるとドイツ銀行は、1.5万人から2万人の人員削減を検討している。これは9.1万人のドイツ銀行の従業員の16%から22%に相当する数だ。主なリストラの対象となるのは、米国の銀行部門と投資銀行部門全般だ。

ドイツ銀行の米国でのオペレーションは、マネーロンダリング疑惑で当局の査察を受け、トランプ大統領やその側近に対する融資問題で米下院委員会から詳細な説明を求められている。

投資銀行部門はドイツ銀行の収入の半分を稼いでいるが、コスト高や市場シェアの低下に苦しんでいる。株主やアナリストからは、この不採算部門に大鉈を振るえ、という声が高まっている。

ドイツ銀行は過去に数度の増資を行い、投資家は株式の希釈化を味合わされてきた。従って現時点で増資による資本増強という選択肢は取り難く、大規模な人員削減を行わざるを得ないようだ。

具体的なリストラ計画は7月後半の第2四半期決算方向時に明らかになる可能性が高い。

話は変わるが、昨日(6月28日)三菱UFJ銀行と三井住友銀行がATMを共同運営する方針を固めたというニュースが流れていた。

ニュースによると、両行は駅やショッピングセンターにある2,800あまりのATMの共同化を計画しているという。

また今年の9月からは店舗の外にあるATMについては、どちらの銀行のキャッシュカードを使っても平日の日中は無料で現金の預け入れ・引き出しを行えるようにする計画だという。

ここでちょっと気になるのは「みずほはどうしたの?」ということだ。これは私の証拠のない推論だが、システム統合対応に追われてみずほは、今回のATM共同化に乗り遅れたのではないだろうか?

「乗り遅れている」というと、みずほ銀行は普通預金の無通帳化にも少し遅れているようだ。

実は仕事の都合で、ごく最近みずほ銀行に普通預金を新規に作ることになり、インターネット経由で口座新約手続きを行った。

その時、みずほ銀行の中の「インターネット支店」を取引店に指定すると無通帳の口座を開設することになるが、実店舗を指定すると通帳ありの口座しか開くことができない。

一方三菱UFJ銀行の場合は、今年の5月から「店舗で新たに口座を開く人は原則無通帳のデジタル通帳を利用して貰う」方針を固めた。

無通帳化については三菱がリードしているといえる。

マイナス金利下の欧州や日本の銀行には逆風の日々が続く。ATMや通帳のようなコスト要因をどこまで削減できるかが当面の課題だ。それでも追いつかない場合は、ドイツ銀行のように大鉈を振るわざるを得なくなるだろう。

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トランシップ(積み替え)を使って対中関税回避

2019年06月27日 | ニュース

米国は既に中国からの輸入品約2千億ドルに25%の関税を課し、今週のトランプ=習近平会談の結果次第ではさらに玩具など最終消費財3千億ドルについても追加関税を課す考えだ。

だが中国には「上に政策あれば下に対策あり」という有名な諺がある。この格言を関税問題に当てはめると「第三国を経由した輸出」が「下の対策」と言えるだろう。

典型的な例では、これまで米国に製品を輸出していた中国のメーカーは、関税を回避するために、製品をベトナムのある会社に輸出する。ベトナムのある会社は、輸入された商品にほとんど手を加えることなく、「メイドインベトナム」のラベルを貼って米国、欧州、日本などに輸出する。これで中国製品に課せられた関税を回避することができる訳だ。

WSJはAmerican tariffs on China are being blunted by trade cheat「中国からの輸入品に対する米国の課税は貿易詐欺で鈍化させられている」という記事でこの問題を指摘している。

ベトナムの税関当局のデータによると、コンピュータや電子機器の中国からの輸入は今年に入って前年度比81%増え、米国向け輸出は72%増えた。これは全世界向けの輸出の伸び率(19%)や輸入の伸び率(13%)に較べて著しく高い。つまり中国のメーカーがベトナム経由で米国に製品を輸出している数字面の裏付けということができる。

関税引き上げ前は、製品はダイレクトに中国から米国に向かっていたが、引き上げ後は商品はベトナムで実質的には積み替えられている。輸送品の積み替えはトランシップTrasshipmnetと呼ばれている。トランシップ自体は積み荷の効率的配送に使われる手法なので本来問題はないが、関税回避に悪用されている訳だ。

米国が貿易交渉を有利に運ぶため、中国を関税強化で圧迫しようとするならば、迂回貿易に対する監視を強化する必要がある。

「下の対策」を取り締まるのは容易ではない。

 
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てんこ盛りの習性は年をとっても変わらず

2019年06月26日 | うんちく・小ネタ

名古屋の山友達の企画で、7月中旬に尾瀬・至仏山とその隣の武尊山に行く予定だ。

この山友達は深田久弥の日本百名山制覇を目指して、登山を続けている。現在80余座を踏破しているようだ。

送られてきた計画案を見て少しびっくりした。

彼は夜行バスで名古屋から東京に入り、朝早い時間に我が家の近くの駅まで来て、私の車で尾瀬に向かい、至仏山に登る予定だ。

その日は尾瀬ヶ原に泊まり、翌日は尾瀬ヶ原を横断して、尾瀬沼から大清水に降り、武尊山山麓にテントを張り、翌日武尊山を登り、その日の内に名古屋に帰るという。

なんとも強行軍である。名古屋の山友達も既に世間ではシニアと呼ばれる年齢に入っているが、この計画は壮年の健脚者の計画である。

若い頃は時間的な余裕がなかったし、経済面からもできるだけ効率よく沢山のピークを登る計画を立ててきた。

どうもその癖が年をとっても抜けないらしい。かく語る私も自ら計画を立てる場合は、結構目一杯てんこ盛りの計画を立てる傾向があるのだが。

ドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんが「すごいトシヨリBOOK」(毎日新聞出版)の中で次のようなことを書いている。

「(高齢者にとって)旅行は一番、俗にいう活性化にはいい」「旅行は楽しいが、老いてからの旅では、方法に工夫を凝らした方がいいかもしれない」「その一つは一日余分に日を用意することだ」「また老いた旅では時間の余裕が大切だから欲張らない方が良い」

簡単にいうと池内さんは「年をとったてんこ盛りの旅はするな」と言っているのである。

名古屋の山友達も私もてんこ盛りの山旅計画を作るということはどういうことなのか?と考えてみた。

一つ目は「余裕を持って旅を楽しむ」というシニアの特権(お金の余裕はそんなになくても時間の余裕はある)をうまく活用することに思いが至っていない可能性があるということである。

二つ目は名古屋の山友達は片手間(失礼)である士業を行っているので、時間的に意外にタイトな可能性がある。この場合は現役とシニアの汽水域に棲息しているからハードなスケジュールになると理解するべきだ。

三つ目は~これが一番可能性が高いと私は思うのだが~てんこ盛りが習性になっているのではないか?ということだ。

年をとったからといって若い時の習性が簡単に変わるものではない。効率よく一筆書きの旅をしよう、という習性は中々抜けないのである。

その習性を変えるためにストレスを感じるよりは、しばらくはてんこ盛りでも良いか?と苦笑いしながら私は彼の旅行計画に応諾の返事を出した。

池内流の旅に至るには、我々はもう少し苦労を重ねる必要がありそうだと感じた次第。

 

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米連銀、金利引き下げに慎重姿勢で株価急落

2019年06月26日 | 投資

昨日(6月25日)の米国株は5月以降で最大の下落。ダウは0.7%、S&P500は1%、ナスダックは1.5%下落した。

下落の最大の理由は、複数の連銀高官が早期の政策金利引き下げに難色を示したことにある。

まずセントルイス連銀総裁ジェームス・ブラード氏が「0.5%の金利引き下げは早過ぎると信じる」と述べたことだ。ブラード氏は2010年に「このままでは米国は日本のようなデフレに陥る」と警鐘を鳴らし、政策金利引き上げに反対する立場を示したが、一方過度の金融緩和についても警戒を示している。

午後にはパウエル連銀議長が、「我々は金融政策がいかなる個々のデータや短期間のセンチメントのブレに過剰反応しないように注意している」と述べた。また同議長は「連銀は政権からの圧力に屈しない。連銀が政権の直接的な支配から独立していることは機関の重要な特性であり、それにより国家と経済に貢献することができる」と延べ、トランプ大統領の金利引き下げ要請を牽制した。もっとも同議長は景気動向によっては早期の金利引き下げが行われる可能性は否定しなかったが。

5月の暴落の後、連銀の早期政策金利引き下げと米中貿易摩擦の解消期待からラリーを続けてきた米国株にブレーキがかかった形になった。

もっとも私は連銀が早期に金利引き下げに動くという点については懐疑的だったので、このこと自体はサプライズではない。

さて残るもう一つの相場牽引のG20開催時におけるトランプ大統領と習近平主席の頂上会談の行方だが、こちらについてもあまり期待しない方が良いだろうと私は考えている。

習近平側の戦略を推測すると、気まぐれで次の手が読めないトランプ大統領を相手とするよりは、次の大統領に期待して(トランプが再選される可能性もあるが)長期戦に持ち込みたいと考えているのではないだろうか?

もっともそれまで中国経済が政権基盤を揺るがすほど劣化しないかどうか?という問題はあるが。

とにかくリスクオフモードとなり、6月のラリーはピークアウトしたようだ。

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