金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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【書評】二列目の人生

2008年12月21日 | 本と雑誌

異常な程暖かい週末である。日当たりの良い二階では暖房を必要としない。陽だまりの中で「二列目の人生 隠れた異才たち」(池内 紀・集英社文庫)を読んだ。この本は15人の異才を紹介しているが、この本を読む前から知っていた人物が少ない。数少ない人物の一人は「モラエス」だ。ポルトガルはリスボン生まれのモラエスは30年間日本に住み「日本通信」を残した。彼のことは司馬遼太郎の「街道を行く」や藤原正彦の小説に出てくるので、知っている人は多いかも知れない。

著者の池内 紀(おさむ)がどのような基準で15人を選んだかというと、「はじめに」の中に次の文章がある。「たしかに(彼等には)共通して『依怙地なところ」があった。・・・・・一筋縄でいかない反面、そういう人に特有の軽る味とか愛嬌があって、どこかシャレているものだ。依怙地さが窮屈というのではなく、自分なりの自由さを確保したのにあたるからだろう。」

「懐石料理」などの料理本を書いた魚谷 常吉を紹介した文章には次のような言葉が出てくる。「ものみな軍事一色に染まっていく時代にあって、料理の本を書きつづけるには、あるはっきりした「思想」があってのことにちがいない。おいしい食物をたのしく食べるのが文化であって、それを保証するのが国の政治なのだ」

そう「二列目の人生」を歩いた人達は名声・金銭といったものに関心がない。彼等にとって大切なことは、自由と自分に納得の行く生き方、技術や芸術・学問といった永遠の価値に対するあくなき追求芯である。

妙に硬い話になったが、私は寝転がりながら「二列目の人生」を楽しんだ。個性が乏しいと言われる日本人だがここには豊かな個性と実りのある人生がある。「個性が乏しい」などというのは、表街道を歩いた人達の自虐の言葉なのかもしれない。

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