ゴールドマン・ザックスは米国の関税導入により消費者物価上昇が加速するという予測を示した。これに対しトランプ大統領は激しく非難している。
CNBCにAs Trump berates Goldman, other economists agree that higher tariff inflation is comingという記事がでていた。
趣旨は次のとおりだ。
- トランプ大統領はゴールドマンを激しく非難したが、証券業界のエコノミストの多くは18%前後の関税の実効税率が定着すると物価は確実に上昇すると予想している。
- しかし誰もインフレの急激な上昇を予想してはいない。大方のエコノミストは月間0.3~0.5%のインフレを予想する。これが正しいとするとコアインフレ率は3%台半ば位まで押し上げられる可能性がある。
- JPモルガン・チェースのエコノミストは「関税はGDPを1%押し下げ、インフレ率を1~1.5%押し上げる可能性があり、その一部は既に発生している」と述べている。
この問題は関税による輸入品の上昇は誰が負担するのか?という問題に深く関わっている。そもそも関税には「国内産業の保護」と「政府の収入源確保」という大きな目標がある。
法律上関税を支払うのが輸入業者で当初は関税引き上げ前の駆け込み輸入などで関税負担増を吸収することが多いが、やがて限界に達し、商品への価格転嫁が始まり、物価が上昇しはじめる訳だ。
もちろん輸出業者(たとえば日本の自動車メーカー)も競争力維持のため、価格を引き下げるので、利益が減少する。そういう意味では輸出業者も関税のツケの一部を払っているが、ツケの大きな部分を払うのはアメリカの消費者というのが大方のエコノミストの見方だ。
トランプ大統領の第1期目の関税は「外国の輸出業者を懲らしめ、国内産業を保護育成する」というものだったが、結局経済的損失は年間160億ドルに及んだという見方もある(Tax Foundation)。
目下のところ米国株、日本株絶好調だが、アメリカのインフレ懸念再燃と経済成長鈍化は視界にあると考えておく方が良いだろう。