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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

トランプ関税のツケは結局誰が払うのか?

2025年08月14日 | 投資
 ゴールドマン・ザックスは米国の関税導入により消費者物価上昇が加速するという予測を示した。これに対しトランプ大統領は激しく非難している。
 CNBCにAs Trump berates Goldman, other economists agree that higher tariff inflation is comingという記事がでていた。
 趣旨は次のとおりだ。
  •  トランプ大統領はゴールドマンを激しく非難したが、証券業界のエコノミストの多くは18%前後の関税の実効税率が定着すると物価は確実に上昇すると予想している。
  • しかし誰もインフレの急激な上昇を予想してはいない。大方のエコノミストは月間0.3~0.5%のインフレを予想する。これが正しいとするとコアインフレ率は3%台半ば位まで押し上げられる可能性がある。
  • JPモルガン・チェースのエコノミストは「関税はGDPを1%押し下げ、インフレ率を1~1.5%押し上げる可能性があり、その一部は既に発生している」と述べている。
この問題は関税による輸入品の上昇は誰が負担するのか?という問題に深く関わっている。そもそも関税には「国内産業の保護」と「政府の収入源確保」という大きな目標がある。
 法律上関税を支払うのが輸入業者で当初は関税引き上げ前の駆け込み輸入などで関税負担増を吸収することが多いが、やがて限界に達し、商品への価格転嫁が始まり、物価が上昇しはじめる訳だ。
 もちろん輸出業者(たとえば日本の自動車メーカー)も競争力維持のため、価格を引き下げるので、利益が減少する。そういう意味では輸出業者も関税のツケの一部を払っているが、ツケの大きな部分を払うのはアメリカの消費者というのが大方のエコノミストの見方だ。
 トランプ大統領の第1期目の関税は「外国の輸出業者を懲らしめ、国内産業を保護育成する」というものだったが、結局経済的損失は年間160億ドルに及んだという見方もある(Tax Foundation)。
目下のところ米国株、日本株絶好調だが、アメリカのインフレ懸念再燃と経済成長鈍化は視界にあると考えておく方が良いだろう。
 
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好調マイクロソフトを支えるのは、AIのみならず非AI部門

2025年08月06日 | 投資
 マイクロソフトの業績と株価が好調なことは、株式投資を行っている人や投資に関心のある人なら先刻ご承知のはずだ。
 トランプ関税問題、物価高、国内外における政治的不安定さなど投資環境は、不透明だ。
 その不透明な環境の中でマイクロソフトの業績は一つの方向感を示しているといえるだろう。
 それはクラウドサービスを提供するIT大手3社の株価に現れている。過去6カ月のパフォーマンスを見ると、アマゾン、グーグルの親会社アルファベットの株価は低迷しているが、マイクロソフトの株価は好調だ。
 

WSJにMicrosoft is an AI darling, but its core businesses are booming too.という記事が出ていた。
「マイクロソフトはAIの寵児だが、中核事業も急成長している」という内容だ。
 その理由は、多くの会社が自分でAI機器の購入から、マイクロソフトのクラウドコンピューティング経由のレンタルに切り替えていることだ。
 またAIを活用するためのデータ・ストレージなどをより標準化したデバイスのレンタルに切り替えていることも、マイクロソフトの売上に寄与している。

マイクロソフトのクラウド・ビジネスはアジュールと呼ばれているが、今年3月の四半期決算では、アジュールの33%の増収の半分以上は非AI部門からもたらされたものだった。

AIユーザーとしての個人的な感想だが、私の場合、今人工知能を一番活用しているのは、外国人への日本語レッスンの教材作りや指導方法の作成だ。
日本語を学ぶ外国人には様々な理由な目的がある。ある人は企業の採用条件に日本語能力試験でN2レベルが求められるから、試験合格を目指したいといい、ある人は永住権取得のために面接官との面接を上手くこなしたいという。
これらの個々のニーズに基づいて、学習計画を作成し、具体的な教材を準備する上でAIの活用は非常に役に立つ。
 しかしこれらの作業はAI、たとえばChatGPTやGeminiとだけ行っている訳ではない。教材は最終的に紙やPDFで生徒たちと共有することになる。だから出力方法を決めて、AIに指示(プロンプト)を出すわけだ。
 私の場合、エクセルで加工することができるようにCSV方式での出力を依頼することが多い。
 つまりAIを活用するとエクセルの利用も増えることになる。
 これはごく一例だが、多くの企業などでもAIを導入することで、マイクロソフトの製品(ワード、エクセル、パワーポイントなど)の利用が増えていると思う。そしてそれらな企業の膨大な事務作業の効率化に資していると思う。

つまり企業がデジタルトランスフォーメーションを推進しようと考えるとAIの活用が肝になり、AIを活用しようとすると非AIのデバイスの利用が増え、それらを安全に使おうと思うとクラウドコンピューティングの利用が増えるという構図だ。
これが現在のマイクロソフトの業績を支えているのだ。


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マイクロソフト、時価総額4兆ドル企業になる

2025年08月01日 | 投資
昨日(7月31日)第4四半期決算を発表したマイクロソフトは、クラウド部門が好調だったことが好感され、株価は4%近く上昇し、時価総額は4兆ドルを超えた。
 マイクロソフトは、7月初旬に初めて時価総額4兆ドルに到達したNvidiaについで2番目に4兆ドルを達成した。
マイクロソフトは創業から50年。Windowsの成功からクラウドコンピューティングへの移行を通じて技術革新を続けている。
ハードウエアに特化しているNvidiaは急成長し、時価総額でマイクロソフトやアップルを抜き去っている。しかしこの先数十年にわたってトップの座を守れるかどうかは分からない。
もちろんマイクロソフトにしても、現在の地位を守れるかどうかは分からないが、半世紀にわたる自己革新の歴史を見ると、マイクロソフトには新しい環境に適応する能力が高いと私は確信している。
安定成長と安定配当を考えると当社株がmust have銘柄の一つであることは、現在も変わらない。


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アメリカで「リベンジ消費」から「リベンジ貯蓄」の流れ

2025年07月03日 | 投資
少し前のCNBCに'Revenge saving'picks up as consumeres bracefor economic uncertainty「消費者は経済的不確実性に備え”リベンジ貯蓄”が増えている」という記事がでていた。
 リベンジRevengeではまず「復讐」という訳を思い浮かべるが、「復讐貯蓄」では、意味がよく分からない。「リベンジ貯蓄」は「リベンジ消費」の反対語だということから考えてみよう。
 「リベンジ消費」は、コロナ禍で外出、旅行等を抑制されてきた消費者が、その仕返しのために、消費を急増させた現象を指す。パンデミック時代の不自由な状態から自由な消費を取り戻したというニュアンスが強い。
 ところがCNBCの記事によると、バンガードの新しい調査では、アメリカ人の71%は、今年の夏は経済的な不確実性に備えて、消費を抑え、貯蓄を増やそうと考えている。
 実際個人貯蓄率は、米経済分析局によると昨年12月の3.5%から5月の4.5%に上昇した。この傾向をマスコミなどで「リベンジ消費」から「リベンジ貯蓄」と呼んでいるのだが、復讐貯蓄では意味が分かり難いので「リベンジ貯蓄」としておこう。
 記事によると退職貯蓄プランへの貯蓄額も増えている。アメリカのファイナンシャルアドバイザーは、雇用主のマッチング拠出を合わせて、貯蓄率を15%にすることを推奨しているが、フィデリティのレポートによると401(k)プランの積立率は14.3%と推奨値に近づいている。
 日本の貯蓄率については、昨年4~6月期が4.4%、7~9月期が3.9%でコロナ前の2.9%を上回ったという記事が日経新聞にでていた。
 直近の数字はわからないが、日本でも経済情勢の先行き不安、世界的な地政学的な不安定さなどが高まってるから、財布の紐をしめて貯蓄という人が増えていると思うが・・・

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株式投資の観点からステーブルコイン法改正に注目か?

2025年06月28日 | 投資
 今月(6月)17日に米上院でステーブルコインの発行と利用に関する法律GENIUS法案が可決され、下院での審議に移っている。ステーブルコインというのは、大雑把にいうと、ドルなど法定通貨にペグ(連動)するデジタル通貨で、ビットコインのように需給で価格が大きく変動する暗号通貨とは異なるということだ。ステーブルコインは、オンライン決済や国際送金などの決済手段として使われることを目的としている。
 トランプ政権は、ドルに連動したステーブルコインでの国際決済の利用を促し、ドルの通貨覇権維持を狙っていると考えられるので、下院でも可決される可能性が高そうだ。
 GENIUS法案の可決を見込んで、上昇しているのがFiserveファイサーブの株価だ。同社は世界有数の決済および金融サービステクノロジーソリューション企業で、最近独自のステーブルコインFIUSDの立ち上げを発表している。
 ファイサーブの株は既に先週6%上昇しているが、アナリストの中にはさらなる上昇を示唆している人もいる。
 日本でもステーブルコインの動きはある。たとえば三菱UFJ信託銀行が主導するProgmatだ。
 AI関連銘柄のように大化けするかどうかは分からないが、注目しておいてよいと思った。

 
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