「軍事以外の面を含めて国際社会がすべきことは何か。そのために各国がどう連携し、責任を分担するか。関係国間の外交交渉とともに、国連などの場でしっかりと議論することが欠かせない。」
テロ行為は誰がどのように主張しようとも、人間として許すことができない行為です。しかし、そのテロ行為を次々と作りだした、憎しみの連鎖、アメリカのブッシュ政権、イギリスブレア政権、当時のスペイン政権、日本の小泉政権はその責任を問われなければなりません。
そのうえで、テロリスト、IS対策を国際社会が実効あるものとするためには空爆などで実現できるはずがないことは明らかです。この間のアメリカ、フランス、有志連合の空爆で収まりはせずに、拡大していることを見れば明らかです。
IS,テロ集団の資金源を断つこと。また、テロ集団への人的な移動を遮断すること。何よりもテロの根底にある貧困と、宗派対立を改善する対策を講じること。シリア内戦、イラク内での政治混乱を収拾するために、国連を中心とした議論と、合意が絶対的な条件です。空爆で問題が解決することはあり得ず、今回のようなロシア、トルコなど関係国の軍事衝突まで起きる事態を止めなければなりません。
<信濃毎日社説>ロシアとトルコ 軍事対立深めぬ道を
トルコ軍がロシア軍機を撃墜し、緊張が高まっている。領空を侵犯したとの理由だが、両国の主張は食い違う。ロシアは対抗措置を取る構えだ。
軍事的な対立に至れば、シリアの内戦をはじめ中東の混乱は収拾が一層見通せなくなる。互いに自制し、外交交渉を通じて事態の悪化を防がなくてはならない。
撃墜はトルコとシリアの国境付近で起きた。トルコは、領空侵犯した国籍不明機に何度も警告した上でのことだったと説明する。
これに対しロシアは、領空侵犯自体を否定。プーチン大統領は「テロの共犯者による裏切り行為だ」と強く非難した。
背景には、シリアに関与する両国の姿勢の違いがある。トルコは、撃墜現場に近いシリア北部に住むトルコ系少数民族の反体制派勢力を支援している。アサド政権を支持するロシアが空爆で彼らを攻撃していると批判し、これまでも領空侵犯に抗議していた。
過激派「イスラム国」の台頭を招いたシリア内戦は、パリでのテロ事件後、ロシアやトルコ、欧米など関係国がようやく、政治解決に向けた合意に至った。政権と反体制派を交えた交渉を開始し、半年以内に移行政権を樹立することで一致している。
トルコとロシアの対立が収まらなければ、合意の履行は滞り、4年に及ぶ内戦の終結は再び遠のく。政治解決の道が閉ざされてしまう恐れもある。
トルコが加盟する北大西洋条約機構(NATO)がロシアに対して軍事的な対応を取る事態に陥る可能性も、ないとは言い切れない。両国が衝突を引き起こさないよう、国際社会は強く働きかける必要がある。
今回の撃墜は、関係各国がそれぞれの思惑や利害でシリアに軍事介入することの危うさをあらためて示した。不測の事態が深刻な軍事対立を生みかねない。混乱がさらに広がれば、過激派を勢いづかせることにもつながる。
過激派組織によるテロ事件は、フランスだけでなく中東やアフリカなど各地で頻発している。国際社会全体への脅威に立ち向かうには、各国が自国の都合で行動すべきではない。武力によって対処することの限界や負の側面も見据えなければならない。
軍事以外の面を含めて国際社会がすべきことは何か。そのために各国がどう連携し、責任を分担するか。関係国間の外交交渉とともに、国連などの場でしっかりと議論することが欠かせない。