フランス、アメリカ、ロシアによる空爆で、シリア、中東は一層混乱し、難民の増加、死者数の増加でテロリストは増えるばかりです。また、宗派対立を利用した攻撃と政治利用は一層の地域の混乱を増加させます。
イラクとシリアの政治的な混乱を終結する支援を行う。戦争による死者と被害者をなくす。貧困対策に全力を挙げることこそがいま求められている最大課題です。
<信濃毎日社説>シリア空爆 さらなる暴力生む懸念
武力行使が、対抗する暴力を生む。その悪循環から抜け出せなくなるのではないか。
フランスは、パリでのテロ事件の報復として、シリアで過激派組織「イスラム国」への空爆を本格化させた。米国とロシア、英国も攻撃強化に乗り出している。
軍事行動でイスラム国を弱体化できたとしても、テロの阻止につながるかは見えにくい。シリアや中東の状況を悪化させ、かえって各地で過激派に共鳴する行動を呼び起こす恐れがある。
ロシアのプーチン大統領は、10月末にエジプトで起きたロシア旅客機墜落を、爆発物によるテロと断定した。フランスのオランド大統領は米ロに共同歩調を求め、軍事連携が強まりつつある。
フランスは戦争状態にある―。オランド氏は宣言した。バルス首相は「神聖なる団結」というキリスト教的な言葉で結束を呼びかけた。2001年に起きた米中枢同時テロの際のブッシュ政権の姿勢と重なって見える。
米国による「テロとの戦争」はアフガニスタンやイラクで多くの市民の命を奪ってきた。中枢テロを起こした国際テロ組織アルカイダは壊滅させられず、イスラム国という新たな過激派を生んだ。
戦争によってテロの脅威が減ったのかといえば、むしろ逆だ。過激派組織は拡散し、イスラム国には欧米からも多くの若者が加わっている。その現実に冷静に向き合う必要がある。
フランスはイラク戦争の前、米国の軍事行動に強く反対した。今年1月に風刺週刊紙が襲撃された事件の後も、武力行使には抑制的だった。それだけに今回は、テロ事件で受けた衝撃の大きさが見て取れる。けれども、武力重視の対決姿勢を強めても根本的な解決にはならない。
武力行使は、誤爆や巻き添えで民間人を犠牲にし、生活の土台を破壊する。シリアでは内戦で既に25万人が死亡し、400万人以上が難民として国外に逃れた。欧米が自国の安全のためにシリアの人々を顧みない行動を取れば、憎しみを広げ、それが土壌となって暴力は先鋭化する。
軍事的な対処が避けられないとしても、それはテロの脅威を防ぐために必要なことの一部でしかない。何よりも取り組むべきは、シリア内戦の収束と、イスラム系住民を排除する欧米社会のあり方を変えていくことだ。フランスは、国際社会が結束、協力してその取り組みを強めるための先頭に立ってほしい。