この主張が論じるとおりです。アルゼンチンの国債がデフォルトになったと判断されたことの経過は、あるにしても、国が企業と同じレベルで判断、論じられることの異常さは、アメリカの強欲主義と談じられても当然です。多くの債権者が、その借金の減額に応じているのにもかかわらずに米国の投資会社だけが優遇されるなどはありえないことです。
新自由主義の政治経済の典型的な、凶暴さが向きだしになっています。国家を破綻させても自らの利益を確保するとの主張、姿勢は、許される話ではありません。イラク政権を転覆し、アフガニスタンへの軍事介入、米軍による威圧、アフガニスタンデフォルト問題と続き、アメリカが世界から孤立することは確実です。このような行動が、アメリカ以外の国から歓迎されるはずがありません。
<東京新聞社説>アルゼンチン債 秩序揺るがす強欲主義
アルゼンチンの十三年ぶりのデフォルト劇は同国政府の対応の拙さはあるとはいえ、金儲(もう)けにあざとい米国強欲主義が主因だ。自国流を押し通すやり方を改めないと国際金融秩序も揺るぎかねない。
話は込み入っているが、簡単にいえばこうだ。アルゼンチンは二〇〇一年に経済危機からデフォルト(債務不履行)に陥った。借金のために米国などで発行した国債を償還できなくなった。
国債を買った人に借金の減額を募り、九割以上の人が応じた。しかし、借金減額に応じない人も残った。そこに目を付けたのが米投資ファンドである。減額に応じない人から国債を安く買い取り、全額返済を求めてニューヨークで訴訟を起こした。
すると連邦地裁はファンドに全額返済しなければ、借金減額した人への返済も認めないと命じた。驚いたアルゼンチン政府は不当だと米最高裁に上訴したが退けられた。同政府は借金減額した人との契約で「より良い条件を他の債権者と結ぶことは禁止」されているため、ファンドの要求をのむことはできない。結果、利払い期限が来て一部がデフォルトと見なされた-という経過である。
なぜ、こんな「理不尽」なことが起きたのか。まず「米国の裁判所はおかしい判断をした」というのが一般的な見方である。判決は「債権者を公平に扱わなければならない」との契約条項を重視した。だが、債権者の大半が同意した借金減額案を反古(ほご)にする、あまりにファンド寄りの判決に疑問の声が強いのである。
アルゼンチン政府も対応が甘かった。多くの債権者が合意すれば債権者全体を縛れる「集団行動条項」を契約に入れておくべきだった、と国際金融筋は指摘する。
とはいえ窮状につけ込んで金儲けする「火事場泥棒」のようなファンドの強欲主義こそ問われるべきである。高額報酬の弁護士らで強力な訴訟対策をとり、法の盲点を探る。「全額返済(約千三百億円)を勝ち取れば十六倍もの利益が上がる。まさにハゲタカ」との批判は免れまい。ファンドの意に沿う判決を出した米司法制度や、強欲主義を黙認するような米社会への不信感も高まった。
先に新興五カ国(BRICS)は米主導の国際金融秩序に反発して独自の開発銀行設立を決めた。今回の「ごね得」がまかり通るならば、あしき前例となって今後のデフォルト時の処理を難しくするなど代償は高くつきそうである。