ヘイト・スピーチは単なる不快な表現ではなく、国籍、民族、性などの属性を理由に、マイノリティの人間としての尊厳を否定する言葉の暴力であり、差別や暴力を社会に蔓延させる差別煽動であり、歴史的にジェノサイドや戦争を引き起こしてきた。だからこそ、国連、国際社会も右翼勢力、右翼政党による排外主義、差別発言、煽動を批判し、当事国の取締りと対応を求めてきたのだと思います。
従軍慰安婦問題と同じような流れの中で、右翼グループによる集会、デモなどでヘイト・スピーチが東京周辺では問題として取り上げられてきました。言論の自由といって見過ごすことの出来ない差別発言、煽動が社会にもたらす負の影響を見過ごせば、ナチスドイツが引き起こした、暴力、人種差別が極限まで拡大し、政敵の排除、時の政治権力を批判する運動などの弾圧に行き着くことは歴史の教訓です。その延長線上に侵略戦争への動員、思想統制などが待ち受けています。再びそのような悲劇を再現させてはなりません。
安倍、自民党中枢のヘイト・スピーチへの対応は無策であり、規制と批判をせずに、彼らがその行為を容認し続けるのであれば、同種の政治勢力であることを証明しているのだと考えられます。
<時事通信>ヘイト・スピーチ対策を 都知事要請
東京都の舛添要一知事は6日、都内で開かれた自民党衆院議員の勉強会であいさつし、人種や国籍などで差別するヘイトスピーチ(憎悪表現)について、国レベルで対策を検討するよう自民党政務調査会に要請したことを明らかにした。週内にも安倍晋三首相と会談し、同様の要請を行う。
舛添知事は2020年東京五輪・パラリンピックに関連し、「人種や国境、宗教の壁を越えてスポーツで結び付く平和の祭典をやる主催都市で、そんな恥ずかしい言論を許していいのか」とヘイト・スピーチを強く批判。「都が条例で規制しようとしても、川崎市や千葉市、さいたま市でやられたら仕方がない。国レベルでしかるべき対策を取るべきだと自民党政調会に申し上げた」と述べた。
<ヘイト・スピーチは言葉の暴力>
「うじ虫ゴキブリ朝鮮人」「韓国人は皆殺し」―このようなヘイト・スピーチでマイノリティを攻撃し差別を煽動する排外主義デモが各地で行われ、インターネット上に同様の表現があふれています。日本では表現の自由として保障されているからです。
「ヘイト・スピーチ」という言葉は2013年流行語大賞のベスト・テンに入りましたが、未だその意味は正確には理解されていません。それが、法規制をめぐる議論にも混乱を招いています。本書では、アメリカでこの言葉が生まれた経緯、国際人権法が違法とした経緯、ヘイト・スピーチが歴史的・現実的にもたらしてきた害悪などから、ヘイト・スピーチとは何かを検討しています。ヘイト・スピーチは単なる不快な表現ではなく、国籍、民族、性などの属性を理由に、マイノリティの人間としての尊厳を否定する言葉の暴力であり、差別や暴力を社会に蔓延させる差別煽動であり、歴史的にジェノサイドや戦争を引き起こしてきたのです。
日本はこれまでヘイト・スピーチをはじめとする差別の問題に正面から取り組んで来ず、野放しにしてきました。ヘイト・スピーチの放置は、自死に至るほどのマイノリティの苦しみを放置することです。「表現の自由か法規制か」という100かゼロかの議論から、日本社会が差別とどう向き合い、差別をなくすために何をすべきか、どのような法制度を作るべきかという具体的な検討に踏み出すべきです。