新自由主義、市場経済至上主義の行き詰まりを象徴するような分析です。アメリカ、イギリス、フランスなどの政治経済の行き詰まりをどのように考え、打開すべきかを考えているのでしょうが、このようなことで、打開できるかどうか。
外交関係における政治指導者の関係は重要です。しかし、政治指導者は国内政治、世論の制約を受けておりその制約から解放されることはありません。各国の政治経済が自国政治経済を立て直し、自国民の生活を豊かにし、貧富の格差を縮小し、国民の権利拡大を行わない限り、中期的には必ず政権交代に見舞われることは確かです。
先進工業国がなぜ、深刻な政治経済の低迷と閉塞に直面しているかを分析すべきです。しかし、新自由主義を肯定し、その立場から現実の政治経済問題を分析しても何も打開策を見出しえないことも示しているのではないかと思います。「先進国と新興国双方の中間層は上位1%の特権階級を敵視している。」というのであれば、なぜ、このような政治的な意思が発生しているのかを分析し、そこから打開策を見出すべきです。
<[FT]世界の指導者に贈る 来年頼るべき指針>
新年の抱負は破られるために立てられるというが、政治家が1月1日に掲げるお決まりの空約束は、もう勘弁してほしい。それでも、経験から教訓を引き出しても害はない。そこで、政治指導者が2013年の進路を描く際に参考になりそうな指針をいくつか挙げてみよう。
■まずは「友人をつくれ」
イラクとアフガニスタンでの米国の戦争はハードパワーの限界を雄弁に物語った。軍事力は常に重要だが、経済の相互依存により密接に絡み合った世界では、友人を作り、人々に影響を与えることも全く同じくらい重要だ。
中国の力を行使するうえで、習近平氏は退任する胡錦濤氏よりも強硬な路線を取ると見なされている。南シナ海や東シナ海での領有権を巡る中国政府と近隣諸国の緊張は、国家主義の色濃い日本の安倍晋三内閣の誕生で和らぎはしないだろう。
しかし、国際関係について「好機を待て」としたトウ小平のアプローチを放棄して以来、中国に何が起きたかを習氏はよく考えた方がいいだろう。近隣諸国は中国に背を向け、バラク・オバマ大統領は米国の軸足を移して太平洋国家として復権させた。中国は自国で大きな代償を払わずに、日本に経済戦争を仕掛けることはできない。強国でさえ同盟国が必要なのだ。
ほかにも、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、しばしば孤立を喜ぶように見えた。その結果はどうなったか? ロシアの世界的な影響力は、国連の議事進行を妨害する程度に減った。イスラエルは完全に孤立しつつあるようだ。
■次に「何かしてみる」
最も忘れられがちな政治上の教訓は、何もしないことが、断固たる政策で失敗するのと同程度のリスクがありうる選択肢ということだ。無為に過ごす危険性を理解すべき指導者の1人は、フランスのフランソワ・オランド大統領だ。筆者のパリの友人が言うには、フランスがユーロ圏の一部の国と同じ運命を避けるには、経済の競争力の回復が焦眉の急であることを、オランド大統領は十二分に知らされている。ところが、オランド大統領は今のところ大したことをせずに満足している。市場の信認の危機が強いる改革は、大統領にもフランスの有権者にも、自発的な改革よりずっと大きな痛みを伴うだろう。
ここに、ユーロ圏にとって大きな教訓がある。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は誰もが認める欧州の指導者になり得たが、ユーロ危機への異様なほど慎重なアプローチは大きな代償を伴った。もしユーロが現在安全に見えるなら、マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の積極性のおかげだ。危険なのは、ドラギ総裁の大胆さのおかげで、持続的な回復を確実にするために必要な厳しい選択を、債権国や債務国が再び先送りしていることだ。
■そして「歩きながらやってみる」
あまりに多くの指導者が1度に1つのことしかできないと考えている。二者択一の政治に陥っているのだ。二者択一ではなく、両方ともやるべきだ。ワシントンからのメッセージを見る限り、オバマ大統領は2期目の野望として米国の再建を掲げたようだ。解決困難な外交問題の中でも最も難しいイスラエルとパレスチナの対立は、今後も二の次にされる運命にある。だが、米国大統領は2つのことを同時にできる存在であるべきだ。
経済を正すことは、すべての指導者の最大の関心事だろう。だが現実には、オバマ大統領が米国の国内問題に専念できるように世界の動きが止まったりはしない。ネタニヤフ・イスラエル首相は新たな中東戦争に米国を巻き込む決意を固めたかに見える。今回はイランに対する戦いだ。米国は、時にそう望まなかったとしても、やはり世界に不可欠の大国だ。米国一極時代は終わったかもしれないが、世界には米国の関与なしで解決できる深刻な問題はほとんどない。
■さらに「先を読め」
これは英国のデビッド・キャメロン首相への忠告だ。不運なキャメロン首相は、賢明に見えた戦術が往々にして政治家を戦略上の袋小路に追い込むことを見落とす過ちを犯した。1年かけて与党・保守党内の強硬な欧州統合懐疑派をなだめたり満足させたりした揚げ句、気がつけば英国は欧州連合(EU)脱退に向かっていた。
私はこれがキャメロン首相の狙いだったとは思わない。ただ彼は、EUとの関係を英国の意のままにできる「新たな合意」を得られると欧州統合懐疑派に言質を与え、他のEU加盟26カ国にはその気がないという不都合な事実にぶつかった。
メルケル首相は、統合強化への同意の見返りにユーロ圏に譲歩を迫る英国の見苦しい脅しに気分を害した。オランド大統領は既に、不実な英国にうんざりしている。キャメロン首相は住民投票を約束する羽目になり、その結果次第では、英国は欧州大陸の片隅に取り残されかねない。
■最後に「フェア(っぽい)プレー」
西と東、北と南、民主主義と権威主義――どこでも現職の指導者を脅かす最大の問題は、不公平に対する反発の高まりから生じる。先進国では、富裕層がグローバル化の恩恵をすべて手にする一方、残りの国民は緊縮財政の負担を背負わされるというのが共通認識(そして、おおむね現実)だ。中東で民衆蜂起をけしかけた火花が1つあったとすれば、社会のあらゆるレベルで国民が抱く腐敗への怒りだった。習氏は、汚職は中国の共産党支配を転覆させる恐れがあると警告した。彼は正しい。誰も平等主義の理想郷は期待していないが、先進国と新興国双方の中間層は上位1%の特権階級を敵視している。
By Philip Stephens(翻訳協力 JBpress)
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外交関係における政治指導者の関係は重要です。しかし、政治指導者は国内政治、世論の制約を受けておりその制約から解放されることはありません。各国の政治経済が自国政治経済を立て直し、自国民の生活を豊かにし、貧富の格差を縮小し、国民の権利拡大を行わない限り、中期的には必ず政権交代に見舞われることは確かです。
先進工業国がなぜ、深刻な政治経済の低迷と閉塞に直面しているかを分析すべきです。しかし、新自由主義を肯定し、その立場から現実の政治経済問題を分析しても何も打開策を見出しえないことも示しているのではないかと思います。「先進国と新興国双方の中間層は上位1%の特権階級を敵視している。」というのであれば、なぜ、このような政治的な意思が発生しているのかを分析し、そこから打開策を見出すべきです。
<[FT]世界の指導者に贈る 来年頼るべき指針>
新年の抱負は破られるために立てられるというが、政治家が1月1日に掲げるお決まりの空約束は、もう勘弁してほしい。それでも、経験から教訓を引き出しても害はない。そこで、政治指導者が2013年の進路を描く際に参考になりそうな指針をいくつか挙げてみよう。
■まずは「友人をつくれ」
イラクとアフガニスタンでの米国の戦争はハードパワーの限界を雄弁に物語った。軍事力は常に重要だが、経済の相互依存により密接に絡み合った世界では、友人を作り、人々に影響を与えることも全く同じくらい重要だ。
中国の力を行使するうえで、習近平氏は退任する胡錦濤氏よりも強硬な路線を取ると見なされている。南シナ海や東シナ海での領有権を巡る中国政府と近隣諸国の緊張は、国家主義の色濃い日本の安倍晋三内閣の誕生で和らぎはしないだろう。
しかし、国際関係について「好機を待て」としたトウ小平のアプローチを放棄して以来、中国に何が起きたかを習氏はよく考えた方がいいだろう。近隣諸国は中国に背を向け、バラク・オバマ大統領は米国の軸足を移して太平洋国家として復権させた。中国は自国で大きな代償を払わずに、日本に経済戦争を仕掛けることはできない。強国でさえ同盟国が必要なのだ。
ほかにも、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、しばしば孤立を喜ぶように見えた。その結果はどうなったか? ロシアの世界的な影響力は、国連の議事進行を妨害する程度に減った。イスラエルは完全に孤立しつつあるようだ。
■次に「何かしてみる」
最も忘れられがちな政治上の教訓は、何もしないことが、断固たる政策で失敗するのと同程度のリスクがありうる選択肢ということだ。無為に過ごす危険性を理解すべき指導者の1人は、フランスのフランソワ・オランド大統領だ。筆者のパリの友人が言うには、フランスがユーロ圏の一部の国と同じ運命を避けるには、経済の競争力の回復が焦眉の急であることを、オランド大統領は十二分に知らされている。ところが、オランド大統領は今のところ大したことをせずに満足している。市場の信認の危機が強いる改革は、大統領にもフランスの有権者にも、自発的な改革よりずっと大きな痛みを伴うだろう。
ここに、ユーロ圏にとって大きな教訓がある。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は誰もが認める欧州の指導者になり得たが、ユーロ危機への異様なほど慎重なアプローチは大きな代償を伴った。もしユーロが現在安全に見えるなら、マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の積極性のおかげだ。危険なのは、ドラギ総裁の大胆さのおかげで、持続的な回復を確実にするために必要な厳しい選択を、債権国や債務国が再び先送りしていることだ。
■そして「歩きながらやってみる」
あまりに多くの指導者が1度に1つのことしかできないと考えている。二者択一の政治に陥っているのだ。二者択一ではなく、両方ともやるべきだ。ワシントンからのメッセージを見る限り、オバマ大統領は2期目の野望として米国の再建を掲げたようだ。解決困難な外交問題の中でも最も難しいイスラエルとパレスチナの対立は、今後も二の次にされる運命にある。だが、米国大統領は2つのことを同時にできる存在であるべきだ。
経済を正すことは、すべての指導者の最大の関心事だろう。だが現実には、オバマ大統領が米国の国内問題に専念できるように世界の動きが止まったりはしない。ネタニヤフ・イスラエル首相は新たな中東戦争に米国を巻き込む決意を固めたかに見える。今回はイランに対する戦いだ。米国は、時にそう望まなかったとしても、やはり世界に不可欠の大国だ。米国一極時代は終わったかもしれないが、世界には米国の関与なしで解決できる深刻な問題はほとんどない。
■さらに「先を読め」
これは英国のデビッド・キャメロン首相への忠告だ。不運なキャメロン首相は、賢明に見えた戦術が往々にして政治家を戦略上の袋小路に追い込むことを見落とす過ちを犯した。1年かけて与党・保守党内の強硬な欧州統合懐疑派をなだめたり満足させたりした揚げ句、気がつけば英国は欧州連合(EU)脱退に向かっていた。
私はこれがキャメロン首相の狙いだったとは思わない。ただ彼は、EUとの関係を英国の意のままにできる「新たな合意」を得られると欧州統合懐疑派に言質を与え、他のEU加盟26カ国にはその気がないという不都合な事実にぶつかった。
メルケル首相は、統合強化への同意の見返りにユーロ圏に譲歩を迫る英国の見苦しい脅しに気分を害した。オランド大統領は既に、不実な英国にうんざりしている。キャメロン首相は住民投票を約束する羽目になり、その結果次第では、英国は欧州大陸の片隅に取り残されかねない。
■最後に「フェア(っぽい)プレー」
西と東、北と南、民主主義と権威主義――どこでも現職の指導者を脅かす最大の問題は、不公平に対する反発の高まりから生じる。先進国では、富裕層がグローバル化の恩恵をすべて手にする一方、残りの国民は緊縮財政の負担を背負わされるというのが共通認識(そして、おおむね現実)だ。中東で民衆蜂起をけしかけた火花が1つあったとすれば、社会のあらゆるレベルで国民が抱く腐敗への怒りだった。習氏は、汚職は中国の共産党支配を転覆させる恐れがあると警告した。彼は正しい。誰も平等主義の理想郷は期待していないが、先進国と新興国双方の中間層は上位1%の特権階級を敵視している。
By Philip Stephens(翻訳協力 JBpress)
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