昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

日盛り

2018-07-11 16:29:11 | 俳句

小学生の幼い頃、会津若松へ行った。
なにせ、やっと物心のついた矢先の幼童の頃なので、いろいろと歴史的遺産を廻ったが、なんのことやらとんと見当がつかなかった。
飯盛山に行った。
会津の白虎隊の所縁の地である。
ここで白虎隊の解説の絵本を買った。
ここで白虎隊が自刃したこと、会津武士の子弟の教育はならぬものはならぬ、で教えられてきたこと、などが書いてあった。
「ならぬものはならぬ」は良い。
人間、自由主義に染まると、なんでも有りの世界に没入するが、しかしア・プリオリに禁ずべきものは禁じないと社会が持たない。
保守的な考えのようだが、現実問題の社会運営という観点から見た場合、必要なことである。
会津は夏休みに行ったのだが、暑かった。
今、復興の途上にあって、どのような状況であろうか?
是非、会津っぽ精神で、立ち上がってもらいたい。
今日、かーたんのMRIの結果を聞きに東京医療センターまで行ってきた。
結果は卵巣に腫瘍があり、極めて悪性の可能性が高いとのこと。
予定としては、2か月ほどで開腹手術をして卵巣と子宮を摘出する可能性があるとのこと。
かーたんの癌の手術はこれで3回目だが、確かに気が重い。
よき結果を待つのみである。

日盛りの通り過ぎたる自転車や   素閑

日盛りや建築現場昼休み   素閑

日盛りや海松散る砂地漁夫の家   素閑

年寄りの日盛りの会練羊羹   素閑

日の盛りもやえる舟の人の無し   素閑

日盛りや音無くペンキ塗られたり   素閑

大廊下日盛りの石庭眺めたり   素閑

森閑のコンクリの壁日盛りや   素閑

祈りもて浄きにまみゆ日盛りや   素閑



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冷奴

2018-07-10 18:30:06 | 俳句

暑い。
冷房がないと、じっとしていても、汗が滝のように出る。
それでも、皆、季節としては、夏が好きなのではないか?
確かに、夏は夏期休暇がある。
学生などは、これは待ち遠しい楽しみであろう。
しかし、休暇など縁遠くなった、オカブとしては、夏はただ暑いのみである。
ひたすら耐えるしかない。
しかし、夏の暑さの厳しい日本では、この季節をいかに乗り越えるかの生活の知恵が働き、暑さの中にも涼しげなものが多く生み出されている。
ここに掲げる冷奴もその一つだろう。
これはこれで有難い。

冷奴女手ばかりの所帯なり   素閑

冷奴細き路地の家水打てり   素閑

初手既に負けの勝負や冷奴   素閑

暑苦し座敷に三毛猫冷奴   素閑

老いてなほ無惨の暑さや冷奴   素閑

家の主の青大将出て冷奴   素閑

虚空蔵柔和に目鋭き冷奴   素閑

遠離にて音沙汰疎き冷奴   素閑

大年増小若を連れて冷奴   素閑



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ラムネ

2018-07-09 17:59:23 | 俳句

人生百年と世は喧しいが、こちらとしてはそんなに長く生きる気はない。
早々にお暇したいところだが、まだというか、とんとお迎えが来ない。
最近そんな事ばかりぼやいている。
老いぼれた証拠だ。
ただ、ぼんやりと人生の終末を待つのも寂しいものだ。
今日は国税と都税に行き、オカブ商会の確定申告をし、納税してきた。
僅かばかりだが今年は所得があったので税金を払った。
しかし納税額は去年から今年のキャッシュの蓄積増額分を吹き飛ばす額だった。
利潤の追求というと聞こえは悪いが、利益をストック化する税制になっていない。
こういうところが日本の納税意欲を打ち消す負の側面だと思う。
まともなことをやっていては起ち上げの企業は育たない。
そういう訳で、皆、無理な利益追求に走って、不正をしたり、ブラック企業化する。
困ったものだ。

しらじらと浜砂うつすラムネかな   素閑

ラムネ瓶石を蹴りつつ登校路   素閑

夜は更けぬラムネの球や湯のかほり   素閑

緋毛氈ラムネの二つ裏参道   素閑

富める人貧する人も冷やラムネ   素閑

交際のなれそめ聞きつラムネ飲む   素閑

商談に戸を廻り終えラムネかな   素閑

子にラムネ一本奢られ巻きたばこ   素閑



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川床

2018-07-08 22:38:34 | 俳句

数十年前、京都に行った。
受験浪人しているときである。
真夏だった。
嵯峨野、妙心寺などを廻った。
とてつもない暑さだったが、夏の京都は新鮮だった。
帰り際に、荒神町の市電通り沿いの喫茶店『シアン・クレール』に行ってみた。
丁度、高野悦子の『二十歳の原点』が世に出たころである。
オカブも夭逝に憧れた。
『シアン・クレール』ではジンライムを飲み、記念にマッチを十箱ほど貰ってきた。
その後、同じ場所に行ったが『シアン・クレール』はもうなかった。
青春は想い出共に去っていく。
今日は、かーたんとデート。
銀座に行った。
山野楽器、ヤマハ、教文館と冷やかし、かーたんの服を買って、夕食に銀座ライオン・ミュージックホールに行った。
もちろんビールを大ジョッキでグビグビ。
音楽の方は、素晴らしいライブの美声と名演に堪能。
銀座線で、渋谷まわりで帰宅した。

川床に臥して目が覚め夜更けとぞ   素閑

涼み床名うての香魚の居るところ   素閑

月昇る川床のへり嵐山   素閑

川床は川浪星空闇映す   素閑

おほあたま川床に臥せり夕の風   素閑

峪を越え来たれば瀬うつ川床や   素閑

笑い声止まり川床瀬音のみ   素閑

懐かしむものとてなしや涼み床   素閑



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小暑

2018-07-07 20:06:57 | 俳句

今日は知り合いが下北沢タウンホールの音楽祭に出演するので、かーたんと聴きに行った。
おっと、その前に腹拵え。
小田急線沿いの大庄水産で昼飯を食った。
刺身定食である。
美味かった。
暑いのでビールを呑んだ。
調子に乗って大瓶2本空けた。
増々、暑くなった。
音楽祭の演奏は素晴らしかった。
夏の夕べの路をそぞろ歩きで帰ってきた。

縞柄にゐずまいただし小暑かな   素閑

にわか雨小暑の小道竹間垣   素閑

ケットより蹴り出て小暑のだるき朝   素閑

雪残る山のふもとの小暑かな   素閑

やりかけた針縫いおいて小暑かな   素閑

タンブラー肌に露置き小暑かな   素閑

森黒く葉の煩わし小暑かな   素閑

火車走る軒の通りや小暑かな   素閑

賑わえる市に小暑のりゃうありて   素閑


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夾竹桃

2018-07-06 21:05:12 | 俳句

明日は小暑である。
暦の上では晩夏に入る。
現代では、これからが夏本番であるが。
しかし昔、祖母が「土用半ばに秋風の吹く」などと風流なことを言っていた。
今日は台風の影響で、雨空で気温もそれほど上がらなかった。
ただ、西日本では大雨の被害が甚大である。
心配なことこの上ない。
まあ夏の去る虚しさを今から覚え、炎暑対策をしておこう。

夾竹桃雲の昏きに添えし紅   素閑

夏深め夾竹桃にすがし風   素閑

炉にくべる草となりぬる夾竹桃   素閑

軒の端に謡の響き夾竹桃   素閑

乱れ月夾竹桃の昼なれば   素閑

朝咲きて夕に摘まれし夾竹桃   素閑

雲妖し途切れて夏の陽夾竹桃   素閑

魯山人申す箱書き夾竹桃   素閑

夏望む時の有体夾竹桃   素閑



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若竹

2018-07-05 21:45:58 | 俳句

海に行ってみたくなった。
海水浴ではない。
ただ海を眺めるのである。
山国に住んでいるわけではないが、東京の山の手にいると、余程の旅行好きでない限り、意外に海とは遠い日常である。
山国に住んでいれば、尚更である。
甲斐の国の小海、海乃口などの地名は、やるせない海への憧憬を表している。
海は生命の発祥地でもある。
人間の憧れるのも無理はない。
今年の夏は湘南にでもちょっと出かけてこようと思う。

若き竹そろひなびくや時津風   素閑

今年竹藪なす白き薬店舗   素閑

エクレアの甘き風のせ今年竹   素閑

端唄舞茶屋の窓より今年竹   素閑

畑の端に風騒ぎたる今年竹   素閑

皿抱え鼻水たらし今年竹   素閑

こなたへと招く媼や今年竹   素閑

伸びてなほ天上目指す今年竹   素閑

若竹におさなご抱ける母の影   素閑

若竹の堂の弘法うす埃   素閑



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2018-07-04 19:34:20 | 俳句

川口慧海という僧が明治時代にいた。
当時の仏教界は真の仏教信仰は廃れ、その原因は、原典の仏典が日本にないことが原因だと彼は考えた。
そこで、原典のあるチベットへ旅行することを彼は考えた。
しかし当時のチベットは鎖国中で、外国人が潜入したと明らかになると処刑される有様だった。
慧海はインドで一年間パーリ語を学び、チベット旅行を試みた。
しかし、一回目は日本人であることが判明し、命からがらインドへ戻った。
それでも倦まず、この豪胆な僧は二回目の挑戦に挑んだ。
ヒマラヤを超える路は今のように整備されておらず、寒冷激烈、歩行困難を極めた。
ダウラギリを望み慧海は二度目にチベットへの到着を果たし、念願の仏典を持参して帰国した。
このような冒険は、今日の安易なエベレスト登山など足下にも及ばないような大偉業と言える。

黴生ひぬ心は折れて昼の酒   素閑

ものぐさや徳利の底の黒き黴   素閑

旅尽きて黴の畳の我が家かな   素閑

青黴や納戸の奥の古き軸   素閑

生活苦黴に埋もれて思案顔   素閑

雲低く座敷に寝そべり黴の中   素閑

大禅師黴の供する大往生   素閑

小所帯に黴の麺麭とりむしり食ふ   素閑

黴の香の仏間に枯れし老女かな   素閑



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楸邨忌

2018-07-03 18:26:54 | 俳句

十年ほど前、『尾花』で鰻を食った。
もちろん美味かった。
近年、鰻が不漁という。
鰻の稚魚のシラスの漁獲が減って、養殖にも影響が出ているという。
そこで、鰻の資源を守るために極力喰わないようにしようという議論が出ている。
なんとも切ない話だ。

商談の成らずに帰る楸邨忌   素閑

巻き髪の娘あこがる楸邨忌   素閑

上長に盃いただけり楸邨忌   素閑

姑と向かう朝餉や楸邨忌   素閑

ひだるくも枯れずとたつや楸邨忌   素閑

明け染めてすでに雲たつ楸邨忌   素閑

未だ嫁かぬ娘コミケや楸邨忌   素閑

楸邨忌死せる雀を拾う児や   素閑

ガード下ぼやきと酔ひの楸邨忌   素閑

町工場浮いた話に楸邨忌   素閑



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半夏生

2018-07-02 21:15:07 | 俳句

良寛を聖のように言う人がいる。
一方で、あれは唯の乞食坊主だという人もいる。
確かに良寛は書、和歌、漢詩に優れることと並び、奇行の目立つ常人とは思えぬ僧であったようだ。
しかし良寛とて、一人の人間である。
その生には懊悩も嫉妬も不満もあったろう。
それは、一見、そういった煩悩を断ち切ったという宣言を現した良寛作の漢詩によく表れている。
煩悩を離れたということは、まだ煩悩にとらわれているということだ。
良寛はそういう対等の目線に立った、一個の人間として見て、初めて魅力が輝いてくる。
『きゃんどる』でかーたんと食事をした。ビールが美味かった。
ちょっと間が空いたがママさんが白内障で店を休んでいる。
マスターがホールを切り盛りして大変そうだ。
ママさんの快復を祈る。

ころろんと下駄の音たかき半夏生   素閑

庭石を動かし涼し半夏生   素閑

今たしか熱海過ぎ去り半夏生   素閑

言の葉に老ゆ叔母見舞う半夏生   素閑

喫茶店芭蕉の窓辺半夏生   素閑

半夏生つる草からむ竹の垣   素閑

から雨の乾ける都会半夏生   素閑

京橋の琳派の会や半夏生   素閑

熱き湯に虫の飛び交う半夏生   素閑



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