昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

秋気

2018-10-31 22:56:54 | 俳句

老いてくると、色々な欲望が弱くなってくるものだ。
それは自然のまことに合理的な摂理で、衰えに従って、生きる意欲自体が低くなってくるのは、生体にとって幸福なことだろう。
ただ、睡眠欲が衰えることは、オカブにとって苦痛だ。
昔、若いころは十時間でも十二時間でも寝られた。
しかし今は寝られても長くて六時間だ。
これは色気よりも眠気、食い気のオカブにとっては辛い。
なんとかならぬものか?

霜露も折り目正しき秋気かな   素閑

山深く分け入る里の秋気かな   素閑

昂然と刺しくるまなこ秋気あり   素閑

月に満つ秋気きたれる軒端かな   素閑

深き沢清水に触るる秋気満つ   素閑

ビルの間の細き筋吹く秋気かな   素閑

橋脚に流れを分かつ秋気なれ   素閑

疾く暮れて秋気清かり月見窓   素閑

老いはてて清き秋気も骨裂くる   素閑


俳句・短歌ランキング


刈田

2018-10-30 19:35:21 | 俳句

最近、明治維新の再評価が喧しい。
要は、吉田松陰から連なる主だった明治の元勲の業績が、今まで言われていたほどのものではなく、逆に否定的に評価すべきとのことだ。
別に、明治の元勲の評価などどうでもいいが、明治維新の時代が偉大な時代だったことは、覆せぬ事実だ。
政治家になるにも、科学者になるにも、文士になるにも、反政府活動家になるにも、明治にあっては超一流の人物が輩出された。
それに比べて、現代の人士の矮小なることよ。
嘆息すべし。

明け渡る刈田に風の蕭々と   素閑

暮色濃くましら刈田に一二匹   素閑

心折れ故山に帰養す刈田原   素閑

酔漢の草に足取られ刈田落つ   素閑

嵯峨にあり刈田の末は御影堂   素閑

バス降りて新来の客刈田にて   素閑

頬染めて刈田にて逢ふ赤セーター   素閑

ざりがにを取る児刈田の脇の河   素閑

山裾は刈田にて果つ暮六つ   素閑


俳句・短歌ランキング


秋晴れ

2018-10-29 22:29:29 | 俳句

経済学上の一説として、世の中のあらゆる経済活動や経済闘争は希少性の追求だという。
だから、世の中、稀な珍しいもののほうが良いのだ。
その説で行くと、マーチの生産台数が極めて少なかったら、ベントレーよりも高値が付くはずだ。
まあ、そういうわけにはいかないだろうが、誰か世の中で、怠け者で大飯食いで大酒呑みのオカブを珍重してくれる人はいないものか?

秋晴れや世相の波の彼岸なり   素閑

秋晴れてモーニングをも出しにけり   素閑

昂然と見つる眼や秋晴れぬ   素閑

中天の光輪淡し秋晴れや   素閑

秋晴れて十とせ前に嫁げるや   素閑

秋晴れぬ神域の巫女薄笑い   素閑

草むして秋晴れの跡故郷想ふ   素閑

秋晴れの朝の新聞配達や   素閑

秋晴れて寺門は八つに開かれり   素閑

秋晴れて上野の森の人あまた   素閑


俳句・短歌ランキング


小春日

2018-10-28 19:47:48 | 俳句

大学時代の友人陶樵山人とカワウソ少年が上京してきたので渋谷で会った。
久闊を述べ、中華料理に案内した。
もう二人とも還暦をとっくに過ぎているのに若い若い。
老童三人が若やいだ話に花を咲かせる。
名残は惜しいが8時過ぎに切り上げて、明日の用事に備え宿泊ホテルに向かうカワウソ少年と、これから自宅へ列車で帰宅する陶樵山人と道玄坂で別れた。

小春日や行き交う野菜の小商い   素閑

両毛を望むや深し小春の日   素閑

暮るるのもまことに惜しし小春の日   素閑

児を連れて小春の稲荷の祠かな   素閑

小春日に寂とて音のなき夕べ   素閑

小洗濯なしたる小春の昼の前   素閑

うぶげ光り小春の路の初あんよ   素閑

鳶の飛ぶ小春日の暮れ枝の末   素閑

炉の加減冷えし指先小春の日   素閑

小春日やあと五年あと三年あるべきや   素閑

小春日や人の生とは軽きもの   素閑


俳句・短歌ランキング


暮れの秋

2018-10-27 19:27:38 | 俳句

10月も末が迫ってきた。
これで年の瀬ももうすぐだ。
しかし、例年、まだ十月だからと、年末、年越しの準備を何も手を付けない。
それであっというまに師走がやってくる。
やってきてから慌てる。
なんのことはない。
無精者が時に急かされているだけだ。
この性分何とかならないものか?

柚子の茶が飲みたいと妻秋暮るる   素閑

蕉翁も見た景なれや暮れの秋   素閑

朋輩と分ける大福秋暮るる   素閑

からしだねほどの信仰秋暮れる   素閑

秋暮れて果て無く静かなるべきや   素閑

幇間と雀の騒ぐ秋の暮   素閑

稜々と秋暮れ行くも山の尾根   素閑

雨濡れて十字切る尼秋暮るる   素閑

時計塔風に晒され秋暮るる   素閑


俳句・短歌ランキング


2018-10-26 22:01:01 | 俳句

旅に出たい。
といっても、そんな旅といえるほどの遠方にではない。
どこか近場の郊外の風景のいいところで、一日、のんびり過ごしたい。
最近、そんなささやかな享楽もなくなった。
秋の晴れた一日、是非、こうした一日を持ちたいものである。

やまひえて芒の野にあり妄念や   素閑

心なへ首を垂れたる芒かな   素閑

大菩薩高嶺に続く芒原   素閑

風なぶる芒の穂にぞ心病む   素閑

芒なぎ酒瓶転がし空仰ぎ   素閑

赤茶けた書に挟まるる芒の穂   素閑

赤く染む西の空向く芒かな   素閑

風飛ばす芒に軽ろし命かな   素閑

両菩薩芒に埋もれ笑み満つる   素閑


俳句・短歌ランキング


栗飯

2018-10-25 21:09:14 | 俳句

オリンピックとか天皇退位・新天皇即位とかどうでもいい。
とにかく身の回りの出来事で大事が多すぎる。
こう目まぐるしく自分の身の回りのことに振り回されると、心底、身も心もへとへとになる。
平安と安寧の中に過ごしたい。

栗飯や里山の宿老主人   素閑

なにもなし栗の飯にてござそうろう   素閑

絹を裂く瀬音聞きつつ栗の飯   素閑

打ち負けて投げ出す碁笥や栗の飯   素閑

栗飯や二勺の酒に酔ひにけり   素閑

山路を踏みつ庵の栗の飯   素閑

栗の飯観世音へと供ふべし   素閑

薄皮の剥けぬ栗入る温き飯   素閑

栗飯や社の婚礼人群れて   素閑


俳句・短歌ランキング


新蕎麦

2018-10-24 19:24:47 | 俳句

ロートレアモンというフランスの詩人がいる。
日本でもアパレルのブランド名になっているほどだからそこそこ知られた作家であろう。
南米のウルグアイ、モンテヴィデオに生まれ、エコール・ポリ・テクニークを受験するために若くして渡仏した。
残っている作品は散文詩集の『マルドロールの歌』と詩論の『ポエジー』のみである。
『マルドロールの歌』にはよく知られたフレーズが多い。
『老いたるわだつみよ』、『偉大なる数学よ』、『ミシンと蝙蝠傘の解剖台の上の偶然の出会いのように美しい』等々。
ロートレアモンを文学史上で分類するならば、象徴主義から出発した、最も初期のシュルレアリストと言うべきか?
彼の生涯は近年だいぶ解明されてきたとはいえ、いまだに謎の部分が多い。
オカブの気になる作家の一人である。

新蕎麦の雨に濡れたるのぼりかな   素閑

新蕎麦にとっておいたとからすみや   素閑

降り込めて秋の黴の香新蕎麦や   素閑

寺社巡り歩き終え行く新蕎麦店   素閑

新蕎麦を峠の端で喰らいけり   素閑

新蕎麦を啜る来客二人のみ   素閑

油びた扇風機のした走り蕎麦   素閑

まず一献銚子並ぶは走り蕎麦   素閑

江戸小紋杉箸白檀走り蕎麦   素閑


俳句・短歌ランキング


2018-10-23 20:14:39 | 俳句

街に出ると、身体にぴったりのスリムのスーツに、先のとがった靴を履いている青年をよく見かける。
しかしあれはよくない。
スーツも、スリーピース、ダブル、ソフトスーツ、三つボタン四つボタンの寸胴、そしてスリムスーツと流行り廃りがあったが、一番、合理的で機能的なのはブリティッシュ・トラディショナルのツーピースである。
大体、スーツはもう既に伝統が出来上がっているので、奇をてらったデザインで新しい流行を作り出そうとしても滑稽なだけである。
スリムスーツなど余裕がなくて、内ポケットに財布も入らない。
先のとがった靴など論外である。
紳士はスタンダードなストレートチップを履くべきである。
ネクタイは今、色々な幅のものが出回っていて、中には太幅のネクタイとワイドスプレッドのシャツに拳ほどもあるウィンザーノットの結び目をしている輩も見かけるが、オカブはスタンダードスプレッドのシャツにやや細めの普通幅のネクタイにプレーンノットのディンプル付きである。ただ、時々、ナロースプレッドのラウンドカラーのクレリックスのシャツを着ることもある。
結局のところ、着るものは流行を追うよりも自分の好みとセンスで選ぶに如かずである。
流行にとらわれていると真の「カッコよさ」を見失う。
昨今のチンケなファッションを見て思った次第である。

梨の実を親子みたりで分けにけり   素閑

妹こひし梨に語るも麗しし   素閑

梨かじり甘き汁垂れ四方の里   素閑

梨食えば寂しき風の吹くがごと   素閑

老いたれば梨を食うのもしどけなし   素閑

西の方山の国より梨便り   素閑

うるうると水に染めたる梨の実や   素閑

にわか雨かりの宿りに梨三片   素閑

大土間に置かれた鋤や梨一つ   素閑

犬連れた婦人に遭ひぬ梨の礼   素閑

隣家の小僧の使い賃の梨   素閑

朝くれなひ食うもよしとす秋の梨   素閑


俳句・短歌ランキング


秋思

2018-10-22 19:45:26 | 俳句

鮨を食った。
梅が丘の美登利寿司である。
かーたんが金曜日から抗がん剤治療を始める。
この薬は吐き気や嘔吐などの副作用がある。
これから半年、かーたんはまともなものを食べられないかもしれない。
そこでひとまず御馳走を食っておこうという算段である。
気は重く、手放しに楽しめる食事ではなかったが、鮨は美味かった。
梅が丘からバスで帰宅した。

秋思なれ耳鳴りばかり夜のしじま   素閑

秋思かな坊主頭でなに思う   素閑

妄想も秋思に似たり半狂い   素閑

らんらんと白灯光る秋思かな   素閑

病妻の深く眠れる秋思かな   素閑

夜明かして空明け染めぬ秋思果つ   素閑

子窓滴の垂れる秋思い   素閑

日に日にと深まりゆける秋思かな   素閑

教場の桐の枯れ果て秋思かな   素閑


俳句・短歌ランキング