昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

口切り

2018-11-30 16:05:29 | 俳句

ちょっと最近、自分語りが増えてきた。
別に自己顕示欲が強くなったわけではない。
おそらく、レンブラントが執拗に自画像を描いたように、自己というものを明確に解析し、画布ではないが、ブログの上に焼き付けておこうという意思が働いているものと思われる。
しかし、こんなことをされると家族はいささか迷惑だ。
情報公開の累が彼らにも及ぶからだ。
そこで最近は極力彼らには触れないことにしている。
徹頭徹尾、自己のことばかりである。
そうすると孤独なくたびれた老人の姿が浮かび上がってくる。
しかし、それが真の自己の「自画像」なのだ。
ただ、こんな醜悪なものを読まされて不快になる読者には申し訳ないと思っている。

口切に思いもよらず慕ふ人   素閑

口切の露地花なくも麗しき   素閑

口切に訪ね行きたる月の庵   素閑

口切の窓に映すは夜の湖   素閑

口切に鄙の山家もはなやぎて   素閑

口切や風に吹かれて老ゆる松   素閑

口切にただくれなひの暮れの富士   素閑

口切や使いの者と任ぜられ   素閑

口切や峰に去り来る冬霞   素閑

六十の老翁となり口切や   素閑

口切にながし旧友招きたり   素閑

口切の外は水音のみなりや   素閑


俳句・短歌ランキング


冬紅葉

2018-11-29 17:29:17 | 俳句

百科事典というものがいらなくなった。
WEB上で何でも調べられるからである。
しかも記載されている内容は百科事典よりも詳しいし、カバーする事項・語彙の範囲もはるかに広い。
百科事典ではないが岩波が広辞苑を新刊するそうである。
余計な仕事だ。
誰が買うものがあろう?
まぁ、百科事典も要らなくなったので、知識を頭に溜め込むということもあまり意味がなくなった。
情報のストレージが脳みそからWEBサーバに替わった結果である。
単なる記憶力よりも、分析力や論理性、判断力のほうが重要になってくるのは言うまでもない。
大昔のことだが、ある巨大外資IT企業の日本法人のカリスマ的社長が、これからは(30年以上昔の話だが)ハードウェアやソフトウェアなどのシステムよりも、情報としてのデータが貴重なものになると言うのを聞いた。
しかし、その予言は見事に外れた。
情報としてのデータはPCやスマホがあれば見事に「タダ」で入手できる。
もちろん明日の株価の変動や為替の変動など、巨額の対価を払っても手に入れたい情報は今でもあるだろう。
しかし、「一般的な」情報はいまや「タダ」である。
どこかの大臣がパソコンには触ったことも無いと発言して物議を醸した。
馬鹿な人がいるものである。
こういう人物は早々にお引き取り願うのが良い。

新しき箸取り揃へ冬紅葉   素閑

冬紅葉白木の塔に映へにけり   素閑

師の僧に問えば関とて冬紅葉   素閑

膝小僧擦りむき泣ひて冬紅葉   素閑

良弁の寄進の門や冬紅葉   素閑

侯爵の屋敷に惑ふ冬紅葉   素閑

森閑や冬の紅葉の涸れた池   素閑

八つに切り白き豆腐や冬紅葉   素閑

ラッキーとハッピーといふ猫冬紅葉   素閑

一輪の枯れ菊に添へ冬紅葉   素閑

越す山を見上げて遠し冬紅葉   素閑

いにしへのつたへの岸辺冬紅葉   素閑

かそけくも落ちにし一枚冬紅葉   素閑


俳句・短歌ランキング


茶の花

2018-11-28 17:37:51 | 俳句

オカブの幼いころは暖房に炭の掘り炬燵が家にあった。
暖房と言えば、それだけだった。
やがて石油ストーブを入れた。
炬燵も、電気炬燵になった。
今では、暖房はエアコンである。
しかし、この今様仕掛けの暖房は全くぬくもりが感じられない。
ぬくもりというのは、ただ室温の高低を言うのではなく、精神的な温暖さをも含めるのである。
それを思うと、昔の炭火の掘り炬燵のほうが、よほど「温かった」と思う。

茶の花に頭を垂れて一礼す   素閑

寒空に毛帽子かぶりて茶の花や   素閑

老松に茶の花妍を競いけり   素閑

京表茶の花寺のけわいなり  素閑

楼蘭といふなる都茶の花や   素閑

野辺の路そぞろ歩きの茶の花や   素閑

茶の花の蘭奢待よりえもかほり   素閑

茶の花を庭の隅こに見つけたり   素閑

茶の花や今日で仕舞いぬ古すだれ   素閑

茶の花にみずうみ沖へ行ける船   素閑

茶の花の露地のゆかしき加減かな   素閑

なにゆえに茶の花下を向きたるや   素閑


俳句・短歌ランキング


帰り花

2018-11-27 17:35:42 | 俳句

寒いと言ったら暖かい。
なんとも定まらぬ陽気である。
ところで天気のことを挨拶の冒頭に持ってきたのは天候が不順な地に住むイギリス人だったそうな。
好天を喜び合い、悪天を憂い合う気持ちはわかる。
それにつけても日本人はなんと温暖清涼の地に住んでいることよ。
尤も最近では日本でも暑さで人が死ぬこともある。
花鳥風月を愛でている時ではないかもしれぬ。
しかし騒いでも何も収まらない。
まぁ、暑い暑い、寒い寒いと言っていればいいのである。
そこにも詩は生まれるであろう。

日の影も惜しく暮れるな帰り花   素閑

指で丸作りて覗く帰り花   素閑

欄干に触れて散るなり帰り花   素閑

枯れ枝のかざしともせむ帰り花   素閑

ゑだ折るなそれは私の帰り花   素閑

さめざめと川水に散る帰り花   素閑

金襴も色褪せてみゆ帰り花   素閑

一輪が町を満たせり帰り花   素閑

見せんかな川べりに来よ帰り花   素閑

祖父祖母の墳墓の地なり帰り花   素閑

  

俳句・短歌ランキング


初冬

2018-11-26 18:13:01 | 俳句

この季節に茄子を食った。
別に今の時代、いつに何を食おうと自由自在だが、やはり奇異な感じがする。
しかし温室栽培の発達した現代では季節外れの茄子も案外と美味い。
ただもっぱら季節感に欠けると言えばそれまでだ。
もちろん俳句でこの時期に茄子を詠めと言われても無理な話だ。
やはり俳句は花鳥風月四季折々だ。
偉い先生からお叱りを受けるような気もするが、オカブは作句でこれに徹している。
この前の晩御飯は塩鮭にほうれん草のお浸しに鴫焼きナスにブロッコリーのソテーに榎と揚げの味噌汁。
普段はこんな食卓で毎日を過ごしている。
また食い物の話題になってしまった!

初冬に生けたる花の名も知らず   素閑

冬初めちまた増税うわさあり   素閑

初冬や子のなんとせか過ごしけり   素閑

初冬や滝の音のみ聞こえけり   素閑

山越えの鈍行列車冬初め   素閑

初冬の扉は人を待ち開き   素閑

初冬や播磨に残す大慚愧   素閑

初冬や芝の鳩らもゆるゆると   素閑

病ゑた妻と入りなむ冬初め   素閑

みなもとのいづみも涸れて初冬や   素閑


俳句・短歌ランキング


三島忌

2018-11-25 15:46:43 | 俳句

誰でも一回はあると思うが、無限の宇宙の果てには何があるかという疑問を持つことがある。
あるいは、永遠の時間の未来の果てには何があるかという疑問を持つことがある。
どちらも物理学上は答えが出ているそうだが、複雑怪奇な数式や難解晦渋な理論に全く疎い素人には説明されてもどちらも珍紛漢紛である。
しかし、世の中には素人受けする説を唱える学者もいるもので、ある人が人間は、死後その霊が宇宙空間に永遠に浮遊するということを主張した。
全く真偽のほどは分からないが、我々がぼんやり想像している時空の感覚、あるいは宗教的な時空の感覚と一致するものもあろう。
世の中、不思議なことが多くあるが、一番不可思議なものは人間である。
その人間の中で最も不思議なものは自己である。
自分を克服できれば、世の中のすべてのものを克服できる。

由紀夫忌や薔薇十字徒とあるは誰   素閑

三島忌や東都に晴れの光あれ   素閑

憂国忌コップの水の透けるごと   素閑

詩にありて詩神にありて三島の忌   素閑

孤独かな河畔にたたずみ由紀夫の忌   素閑

なまじろきシメールの火や由紀夫の忌   素閑

揺れば揺れ消える炎や三島の忌   素閑

空抜けてオカリナ鳴るや三島の忌   素閑

三島忌や白き館の令夫人   素閑

羽二重の帛織り上げて三島の忌   素閑


俳句・短歌ランキング


寄せ鍋

2018-11-24 16:55:51 | 俳句

この前、鍋をやった。
何鍋というか分からない。
メインは鶏である。
じゃあ水炊きかというと、名古屋や福岡の人から怒られるであろう。
まぁ、『鶏すき』というのが順当か?
ただ、そんな料理があるかどうかわからない。
そこで鶏肉主体の寄せ鍋ということにしておく。
材料を切って、鍋で各々、煮るだけだから、至極、簡単な料理である。
家は冬になるとよくこの献立をやる。
決して、不味くはない。
ところで「不味い」という言葉の語源は「美味からず」ということを知った。
十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の著者注からである。
どんな本でも読んでいるうちに、思わぬ知識が付くものである。

寄せ鍋や隣の新居笑い声   素閑

寄せ鍋や日落つ頃より集まりぬ   素閑

寄せ鍋や闇に一灯ともしけり   素閑

寄せ鍋や無間の底より沸き立ちぬ   素閑

寄せ鍋や星まで届く高圧塔   素閑

立山の影濃き月夜寄せ鍋や   素閑

村里は鴉に聞けと寄せ鍋や   素閑

去る巷寄せ鍋の間の冷えにけり   素閑

友逝くも笑いに済ます寄せ鍋や   素閑

営業と経理の抜けし寄せ鍋や   素閑

寄せ鍋や鳥羽根寄せる星の空   素閑


俳句・短歌ランキング


木の葉髪

2018-11-23 19:30:21 | 俳句

山の手に住んでいると、人情とか情緒とかに疎くなる。
一見、文化的な地域だが、実情は非常に乾いた生活空間だ。
風雅な一軒家が、マンションや間口の狭い建売住宅に替わり、殺風景なことこの上ない。
簡単に気に入った所に引っ越せる人が羨ましい。
こちらは経済的問題と、生活基盤の関係で、この地を離れられない。
まぁ、生活するのに便利と言えば便利である。
それが新しい住民を呼び込み、どんどん環境が変わっている。
下町は谷中の辺りに住んでみたいものである。
下はかーたんとブランチに行った大庄水産。
かーたんは金目鯛の煮つけ。オカブは刺身定食にビール。
食うことと飲むことしか頭にない。
実に情けない事である。

木の葉髪ところでバスは七時半   素閑

木の葉髪朝のきつさが募りたり   素閑

沖仲師彼もうつらう木の葉髪   素閑

木の葉髪鏡の前の愁嘆場   素閑

遠き山吹き下ろす風木の葉髪   素閑

年ともに空き家が目立ち木の葉髪   素閑

常緑といへど枯れたり木の葉髪   素閑

木の葉髪西の方へと暮れいけり   素閑

木の葉髪風さらうかわも水鏡   素閑

両辺に二乗をかけて木の葉髪   素閑

木の葉髪子に飴玉を二つやり   素閑


俳句・短歌ランキング


一葉忌

2018-11-22 16:06:14 | 俳句

十一月も後半である。
もう今年も一年が過ぎようとしている。
時が過ぎても歳をとるだけである。
なんの成長も発展もない。
ただただ無駄に世に棲んでいるばかりである。
若い人たちはこんな年寄りは迷惑であろう。
遠慮深く隅っこにいさせてもらえるだけで有難い。

日暮れより小雨になりて一葉忌   素閑

一葉忌豆腐汁にて済ませけり   素閑

こひかたるしづしづありや一葉忌   素閑

一葉忌鴉の野辺の夕暮れや   素閑

独り寝の晩幾夜かな一葉忌   素閑

茜濃く日の落ちむとす一葉忌   素閑

一葉忌妻の薬を取らむとす   素閑

月もなく航路の闇や一葉忌   素閑

夜を更かし想ひは乱れ一葉忌   素閑

燭の灯の揺れて消えなむ一葉忌   素閑

ひかれ者歌語るべし一葉忌   素閑


俳句・短歌ランキング


冬めく

2018-11-21 18:49:20 | 俳句

ようやく寒くなってきた。
寒いといっても朝晩、多少、冷え込むくらいだが。
ただ、これから冬になるんだなぁ、という感慨に浸っている。
冬も悪くない。
特に、太平洋側の冬は、晴天が続き、あまり陰鬱さを感じさせない。
また鍋や熱燗やスキーやラグビーなどの冬ならではの楽しみもある。
オカブは決して冬は嫌いではない。

冬めくや朴の大葉が転がりぬ   素閑

冬めきぬ月に照らさる人通り   素閑

ポールにもはためく旗なし冬めくや   素閑

裏八百屋台に蕪や冬めきぬ   素閑

うつらうて着いたところが冬めきぬ   素閑

田を焼きて灰神楽舞う冬めくや   素閑

通せんぼせぬもの親なき冬めくや   素閑

木のうつろ枯れ道祖神冬めくや   素閑

野の仏御顔すぐれぬ冬めくや   素閑

荒地とも人呼ぶ原に冬めけり   素閑

やわやわと照らす日も去り冬めくや   素閑

冬めくや電話も便りもなかりけり   素閑


俳句・短歌ランキング