海外ミステリ専門書店。特に、イヌ、ネコ、その他の動物が活躍するのが好き。グルメも紹介。
ミステリ専門書店(翻訳もの限定)
ワニと読むミステリ(黒猫ルーイとロマンス作家の秘密)
![]() | 黒猫ルーイとロマンス作家の秘密 (RHブックス・プラス) |
キャロル・ネルソン・ダグラス | |
武田ランダムハウスジャパン |
![]() | Cat in a Diamond Dazzle: A Midnight Louie Mystery |
Carole Nelson Douglas | |
Forge |
読むと、こっそり隠してもばれることもあります。
(キャロル・ネルソン・ダグラス著)
黒猫ルーイのシリーズもいつのまにか第5弾。
今回はロマンス作家のコンテストでの事件です。
ロマンス小説の表紙を飾る男性モデルのコンテストのリハーサル会場でテンプルたちがそれを見学していると、テンプルも知り合いのモデル、シャイアンが舞台に現れたと思ったら馬から落ちてその背中には矢がつきささっていました。シャイアンがテンプルに何かを話したがっていたことと何か関係があるのだろうか、テンプルはすぐに話を聞いてあげればよかったとくやみます。シャイアンが殺されたのはロマンス作家と何か関係があるのか? テンプルはコンテストに来ているロマンス作家たちに探りを入れることにします。
黒猫ルーイはテンプルを助けながらも自らのディヴァイン・イヴェットとの恋に夢中です。ディヴァイン・イヴェットのキャット・フードのCM撮影現場に乗り込んだルーイは大変な騒動を巻き起こします。
またイベントです。今度はロマンス作家のコンテストです。ラスベガスではいつも何かのコンテストが行われているのでしょうか。ずいぶんにぎやかなところですね。
前作の最後でテンプルの元恋人マックスが突然テンプルの前に姿を現しましたが、この作品でも現れたと思ったらふっと消え、相変わらず魔術師のようです。テンプルが付き合い始めたマットとマックスが会っているようで、その関係もテンプルは気掛かりですが、そういう悩み事を振り払うためにこのコンテストに参加することにします。実はテンプルの大家エレクトラがロマンス作家志望ということがわかり、またテンプルのおばキットが売れっ子ロマンス作家だということでテンプルは3人で事件に乗り込みますが、それぞれが得意分野を生かして探りを入れるのが面白いですね。
ロマンス作家のコンテストということでロマンス小説の業界裏話が満載です。いかに作家が搾取されているか、とか、表紙を飾るのはすっかり男性モデルになってしまってヒロインは無理やりのけぞったような骨が折れそうな体勢のポーズを強いられたり、とか。
今回はルーイはあまり捜査に参加しませんね。ディヴァイン・イヴェットに近づくために多大な苦労がありますから仕方がないのかもしれませんが。キャットフードの撮影に殴り込みをかけるルーイのあたりはなかなか見者です。にやけたネコなどやっつけてしまえ。
副筋としてテンプルの靴探しがあります。この豪華な靴を見つけたら、見つけた人に合わせた靴を作ってプレゼントしてくれるというので、靴フェチのテンプルはあらゆる所を捜し回りますが、そのためにアトラクションを台無しにしたり、テンプルの靴に対する執念はどこまでも。
またマックスは姿を消し、彼にともなう事件の謎は次回作に持ち越しです。
■既刊
場所がラスベガスなので面白いイベントが多い気がします。
黒猫ルーイ、名探偵になる ← ブックフェアでの殺人事件
黒猫ルーイと死神の楽屋 ← ストリッパーコンテストでの殺人
黒猫ルーイと猫屋敷の怪 ← 70匹の猫を飼う猫屋敷での殺人
黒猫ルーイとおてんば探偵 ← 〈フェニックス・ホテル〉の改装での殺人事件
主人公: ミッドナイト・ルーイ(黒猫。私立探偵)
テンプル・バー(フリーランスの広報。ルーイのルームメイト)
場所: USA、ラスベガス
グルメ: なし
動物: ネコ:ルーイ(黒猫)
ルイーズ(黒猫、ルーイの娘)
ディヴァイン・イヴェット(女優サヴァンナ・アシュリーの飼い猫)
ユーモア: 中
黒いデジカメです。少しルーイに似てるかも。そうでもないか。
![]() | ネコのカタチのデジタルカメラ!NECONO DIGITAL CAMERA KURO ネコノデジタルカメラ クロ |
クリエーター情報なし | |
Superheadz |
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ワニと読むミステリ(ディミティおばさまと貴族館の脅迫状)
![]() | ディミティおばさまと貴族館の脅迫状 (優しい幽霊7) |
ナンシー・アサートン | |
武田ランダムハウスジャパン |
![]() | Aunt Dimity Takes a Holiday (Aunt Dimity Mystery) |
Nancy Atherton | |
Penguin (Non-Classics) |
読むと、いつでもさかのぼって考えましょう。
(ナンシー・アサートン著)
もう7冊目、早いものです。
今回はロリとディミティおばさまはイギリスのウィルトシャー州ヘイルシャムにおもむきます。
ロリの友人エマがひどく腹をたててロリを訪ねてきますがその理由は、エマの夫デレクがエマが思っていたような「歴史的建造物の修復を専門にする建築請負人」ではなく、実はヘイルシャム子爵アンソニー・イーヴリク・アームストロング・シートンといい、伯爵家のひとり息子で跡取りだというのです。今になって知ったエマは猛烈に怒っているのです。そして後継者選びが行われるので、デレクは20年ぶりにヘイルシャムの屋敷を訪れ、エマもそれに同行するのですが、エマはロリに一緒に行ってくれと頼むのでした。友人の頼みでもあり、好奇心もあり、ロリはディミティおばさま(幽霊)とともにヘイルシャムのお屋敷へと向かいます。ロリの夫ビルはヘイルシャムの弁護士でもあるので今回の問題で法律的な助言のためロリと同じくお屋敷に滞在します。お屋敷に着いてすぐ、キジバトをかたどった巨大なトピアリーが燃え落ちるという事件があり、さらにデレクの娘ネルが落馬してケガをしてしまいます。ネルは乗馬が得意なのに、どうして落馬することになったのか、だんだんとお屋敷は怪しい雰囲気に包まれます。
ディミティおばさまの幽霊シリーズ、とんとんと翻訳が出て、もう7作目です。本国ではまだまだたくさん出版されているようですのでこれからも楽しめそうですね。
今回はロリの友人エマの夫が実は伯爵の跡取りだったということで広大なお屋敷でのお話です。広いお屋敷がどのように運営されているのかというのも興味深いですね。いつも落ち着いている執事とか、お屋敷にはつきものですよね。
ロリはエマに頼まれてヘイルシャムに行くわけですが、またまたそこで魅力的な男性に出会い、ちょっと危うくなりますが、夫のビルの場合も弁護士仲間の女性が極めて美人でロリは少々心配な気持ちになります。ディミティおばさまはロリのそういう感情も面倒をみないといけないから忙しいですね。
それほど事件が起きるわけでもなく、謎といっても難しく考えることもなく、まぁ、「ウィニーの糖蜜タルト」でも味わいましょう。巻末にレシピがあります。
■既刊
すでに6冊がでています。
ディミティおばさま現る
ディミティおばさま旅に出る
ディミティおばさまと古代遺跡の謎
ディミティおばさまと聖夜の奇跡
ディミティおばさま幽霊屋敷に行く
ディミティおばさまと村の探偵
日本語版が出版されるにいたった経緯をWebsiteで公表しています。
詳しくはこちら → http://www.aunt-dimity.com/
主人公: ロリ・シェパード(主人公)
場所: イギリス、ウィルトシャー州ヘイルシャム
グルメ: お菓子(レシピあり。「ウィニーの糖蜜タルト」)
動物: なし
ユーモア: 中
ミステリとは関係ないですが、かわいい文房具を見つけてしまいました。間違い修正のクリーナーです。これがワニだったらもっと良いのですが。
![]() | SANWA SUPPLY CD-ANM57 アニマルクリーナー(ペンギン) |
クリエーター情報なし | |
サンワサプライ |
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ワニと読むミステリ(結婚は殺人の現場)
![]() | 結婚は殺人の現場 (創元推理文庫) |
エレイン・ヴィエッツ | |
東京創元社 |
![]() | Just Murdered: A Dead-End Job Mystery |
Elaine Viets | |
Signet |
読むと、誰でも動機があって機会もあるがそれを利用できるのは?。
(エレイン・ヴィエッツ著)
ヘレンの転職シリーズ第4弾。今回はブライダルサロンに勤めています。
ドレスを選びに来る母・娘は次から次へと試着してヘレンは装飾過多の重たいドレスを運ぶのに四苦八苦。たまにはドレスの飾りでケガをすることも。中でも最悪なのは母キキと娘デジレの親子です。キキは娘よりも結婚式で目立とうとしています。当日、結婚式が始まっているというのになぜかキキが現れません。ヘレンがあたふたとドレスのお世話をしているとキキの死体を発見してしまいます。第一発見者になってしまったヘレンはその前にキキと言い争いをしていたので容疑者にされ警察の取り調べをうけますが逃亡者のヘレンとしては困りますね。事件は結婚式場で起こったので多くの人が出入りしており、花嫁や花婿もキキと争っていたり、キキの元夫も憎しみを隠そうともしていないところから容疑者にはことかきません。おまけにヘレンは恋人になりかけのフィルとの間にも問題をかかえ、〈ザ・コロナード〉のプールサイドでのお楽しみにも参加する気になりません。ヘレンは殺人と恋愛問題とうまく解決できるのか!
もうヘレンのシリーズも第4弾なのですね。毎回転職先の内部事情がおもしろいですが、今回はブライダルサロンで、結婚前の花嫁やその母の様子が実におもしろいです。なかなかドレスを決めることができない花嫁、豪華だけれど自分に似合わないドレスを選ぶ花嫁、花嫁より目立とうとする母、などなど、ブライダルサロンに来るさまざまな人たちがおかしいです。
〈ザ・コロナード〉の大家マージョリー(76歳)が優雅にダンスを踊るところは拍手をしたくなります。2C号室に越してきたダンス教室を経営する男性はなかなかの男前のようで呪われた2C号室もついに呪いが解けたかと思われましたがやはりそうは簡単な話ではないのがまたいいですね。マージョリーもスクリュードライバーを作るだけが能じゃない。
フィルが妻であるカントリー歌手のケンドラに振り回されるのはちょっと情けないですが、フィルを信じてあげられないヘレンも重たい過去のせいですね。
今回もオキナインコのピートは元気で、ヘレンの飼い猫サムはお腹を空かせています。
http://www.elaineviets.com/new/Misc/bio.asp
■既刊
ヘレンの転職はこのような経過をたどっています。
死ぬまでお買物 ← ブティックの店員
死体にもカバーを ← 本屋の店員
おかけになった犯行は ← 電話のセールス
次はペットショップのようです。
主人公: ヘレン・ホーソーン(ブライダルサロンの店員)
場所: USA、フロリダ州フォートローダーデール市
グルメ: なし
動物: トリ:オキナインコのピート(ペギーのペット)
ネコ:サム
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(主婦に捧げる犯罪)
![]() | 主婦に捧げる犯罪 (RHブックス・プラス) |
クリスティン・マシューズ編 | |
武田ランダムハウスジャパン |
![]() | Deadly Housewives |
Christine Matthews | |
William Morrow Paperbacks |
読むと、手段はいくらでもある。
(クリスティン・マシューズ編著)
14編の短編集です。作者は実に豪華、ジュリー・スミス、ネヴァダ・バー、クリスティン・マシューズ、キャロル・ネルソン・ダグラス、ナンシー・ピカード、エリザベス・マッシー、サラ・パレツキー、バーバラ・コリンズ、デニーズ・ミーナ、ヴィッキー・ヘンドリックス、S・J・ローザン、マーシャ・マラー、スーザン・レッドベター、アイリーン・ドライアー。1人1編です。いずれも主婦が誰かを殺すもの。まぁ、いろんな方法があるものだと感激します。なんとかして夫を殺そうとあれこれ試すのですが少しも効果がなく、そのたびに殺人計画書をミキサーにかけて証拠隠滅を図ります。計画がつきてもうダメ、自分が死ぬしかないと思ったとき、予期せぬ方法で目的を果たすことができます。
なにかと嫌がらせをして早くこの世からいなくなればよいのにという気持ちを隠そうともしない息子の嫁。愛する猫を殺されてもうやっていけないと考えた母のとった手段とは。
すべてを思い通りにしようとする狡猾な姑を阻止するために、考え抜いた末に到達した計画は誰にも見破られることなし。
夫が同僚の魅惑的な女性と浮気している!嫉妬に狂った妻は二人が会っているところに踏み込んで関係を白状させようとしますが、手違いから夫を死なせてしまい、さらに真相は疑ってもみないことでした。
夫が私を殺そうとしている、と気がついた妻。これまで危ない事故だと思っていたのは実は殺人の失敗?じっと観察していた妻はまたも夫のたくらみに気がつきますが、そこで妻がとった行動は夫の計画を逆手にとることでした。
次から次へといろんな方法の殺人で、うーむ、こんなやり方があったのか、と感心やら納得やらで少しも飽きないで読み進められます。行き詰っていると嘆いている人には一つの光明かもしれません。
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ワニと読むミステリ(骨の刻印)
![]() | 骨の刻印 (ヴィレッジブックス F ヘ 5-2) |
サイモン・ベケット | |
ヴィレッジブックス |
![]() | Written in Bone |
Simon Beckett | |
Dell |
613円(価格は変わる場合があります)
読むと、表面に騙されてはいけません。
(サイモン・ベケット著)
法人類学者デイヴィッド・ハンターの二作目です。ロンドンに帰る飛行機に乗ろうとしたところを呼び出されたデイヴィッド・ハンターは変死体の調査を依頼され、急きょルナに向かいます。ルナに住む元刑事に案内されて見たのは、なんとも説明のつかない奇妙な焼死体です。事故、自殺、他殺、どれとも考えられる焼死体を検死のため保存しようとするのですが、おりしも襲ってきた嵐のため一部しか確保することができません。吹き荒れる風と嵐に閉じ込められて、ルナは孤立してしまいます。本土からの助けを得られないままにデイヴィッドは自力で事件を調査するのですが、さらに不審火が続き、現場保存のため見張りをしていた若き警察官が犠牲になってしまいます。ルナの有力者の所有する船も襲撃され、いよいよ通信の手段も奪われたデイヴィッドたちにまで犯人の魔の手が迫ってきます。
嵐に閉ざされた孤島で、周囲から隔絶され外部からの助けが得られないという極限のミステリです。ディクスン・カーなら盛大に雷鳴をとどろかせそうです。このごろはこのような孤立した環境を作り出すのは難しい世の中ですね。
事件の展開は実に込み入っています。最後の最後まで次々に真相が明かされて、読む方としては息つく暇もないといううれしいミステリです。みんなこうあってほしいですね。
最初に発見された焼死体は、完全に燃え尽きたところと、まだ燃え残ったところがるという不思議な死体ですが、これをデイヴィッドがどう読み解くのか、これが楽しみです。
南アから移り住んだというルナの有力者夫婦も、誰も知らない秘密があったりして、どこまでも楽しませてくれます。
最後にデイヴィッドが襲われますが、これでこのシリーズはおしまいになってしまうのかと、慌ててしまいました。作者のWebsiteを確認したら、このシリーズは続きがあるようなのでホッとしました。どうやって窮地を抜け出したのか、次の翻訳が待ち遠しいですね。
■既刊
一作目では、田舎で開業していた医師のデイヴィッドですが、その専門知識を買われ法人類学者として捜査に力を貸すことになります。
法人類学者デイヴィッド・ハンター
■骨つながり
骨というとどうしてもスケルトン探偵ギデオン・オリヴァー(人類学教授)のシリーズを思い出してしまいます。
こちらはずっと昔の骨が事件を語ります。
骨の島
水底の骨
骨の城
密林の骨
原始の骨
騙す骨
主人公: デイヴィッド・ハンター(法人類学のエキスパート)
場所: イギリス、ルナ
グルメ: なし
動物: イヌ:ベス(ボーダーコリー。ブロディの飼い犬)
オスカー(ゴールデンレトリーバー。マイケル・ストラカンの飼い犬)
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(修道院の第二の殺人)
![]() | 修道院の第二の殺人 (創元推理文庫) |
アランナ・ナイト | |
東京創元社 |
![]() | Enter Second Murderer: An Inspector Faro Novel (Thorndike Press Large Print Buckinghams) |
Alanna Knight | |
Thorndike Pr |
読むと、被害者のわけが重要。
(アランナ・ナイト著)
1870年代ヴィクトリア朝エジンバラを舞台としたミステリです。
エジンバラ市警察警部補のファロは病気から復帰したところ、死刑囚パトリック・ハイムズから話を聞いてほしいという申し入れがありました。処刑の前日の最後の訴えです。ハイムズは妻を殺したことは事実だが修道院学校の教師を殺してはいないというのです。ファロはすでに終わった事件ですがハイムズの話に真実の響きを感じ、検死の助手を務めた継息子ヴィンスとともに独自に調査を始めます。第二の犠牲者リリーの周辺を調べるとふしだらで身持ちの悪い生活が明らかになっていき、容疑者の数も増えていきます。修道女、隠棲した貴族、ファロの同僚、学校の生徒、いずれも動機がありそうで、機会もありそうで、なかなか容疑者リストを絞ることが難しいです。さらに美しい女優に心奪われたファロは、シェークスピア劇にも翻弄されます。
エジンバラ警察の警部補ファロのシリーズ第一弾です。
時は1870年代でヴィクトリア朝です。シェークスピア劇が素養になっていて、街の劇場に芝居がかかるとみんな見に行くという土地柄です。何度もシェークスピアが引用されますが、それがまたこの作品の時代色というか雰囲気を添えていますね。
ファロは亡き妻の連れ子ヴィンスと住んでいますが、ヴィンスは医者のタマゴでそろそろ開業しようというところです。この継息子ヴィンスとファロとの微妙な親近感も読みながら気になります。
ファロは部下になる巡査がどうも気に入らずひどくいらだったりしますが、それがまたファロの人柄で親しみがわきますね。このシリーズはファロの人格が大きな魅力です。
この作品では女子修道院の教師が被害者ということで修道院の様子がいろいろと出てくるのですが、日本ではあまりなじみがないので修道院の生活もなかなか興味深いです。とても敬虔な修道女がいるかと思えば、ふしだらな教師がいたりして一様ではないのですね。
このシリーズはすでに17作(2008年現在)でているそうなので、今後の翻訳が楽しみです。
■エジンバラのミステリ
エジンバラが舞台のミステリを探してみると、いくつかありました。
ヘレン&モーナ・マルグレイの麻薬探知猫ゴルゴンゾーラの活躍するミステリです。
ねこ捜査官ゴルゴンゾーラとハギス缶の謎
クリストファー・ブルックマイアのユーモア・ミステリです。
殺し屋の厄日
アレグザンダー・マコール・スミスの〈応用倫理学レビュー〉誌の編集長イザベルのシリーズも見逃せません。
日曜哲学クラブ
友だち、恋人、チョコレート
主人公: ジェレミー・ファロ(エジンバラ市警察警部補)
場所: イギリス、エジンバラ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(マシューズ家の毒)
![]() | マシューズ家の毒 (創元推理文庫) |
ジョージェット・ヘイヤー | |
東京創元社 |
![]() | Behold, Here's Poison |
Georgette Heyer | |
Arrow |
読むと、動機と手段と執念でしょうか。
(ジョージェット・ヘイヤー著)
1930年代。イギリス、ロンドンから少し離れた静かな村。グレゴリー・マシューズは、だだっ広い大きな「ポプラ屋敷」に住む嫌われ者です。同居しているのは、ケンカばかりしている親戚たち。ある朝、グレゴリーが突然死しているのが発見されます。グレゴリーの妹は前の晩の油っこいカモ料理が高血圧のグレゴリーに良くなかったと食事のせいにしますが、姉はその死に不審を抱き検死を主張します。はたしてグレゴリーはニコチン中毒で亡くなったことがわかりますが、その時には故人の部屋や持ち物はすっかり片付けられて殺人の証拠を探すことは困難です。スコットランド・ヤードのハナサイド警視が捜査にあたりますが、グレゴリーを殺す動機を持った人々は山ほどあり、捜査は難航します。
ハナサイド警視のシリーズ2作目です。
「ポプラ屋敷」で事件が起こるのですが、ここに住む人たちがとても奇妙で互いに非難しあい、嫌みを言い合い、そしてグレゴリーからなんとかお金を引き出そうとしてあの手この手です。欺瞞に満ちた人物というのはここまで来ると滑稽ですね。嫌みな人たちがたくさん出てくるのですが、見え透いた会話など、読んでいておかしくなってしまいます。こういう人いるなぁと知り合いを思い浮かべてみたり。
このころのお金持ちの生活も興味深いです。メイドや執事、料理人などが住み、朝はそれぞれの部屋に朝食を運び、出された靴の手入れをし、細々とした用事を片付けます。そして実によく家の人たちを観察しています。このあたりの描写もおもしろいです。
さらなる不審死も起きますが、コミカルな恋もあり、楽しく一気に読んでしまいます。やはり良い作品は少しも飽きさせませんね。
巨匠ドロシー・L・セイヤーズが認めた実力派です。
■既刊
ハナサイド警視のシリーズ1作目です。月夜の晩、ロンドンから35マイル離れた小さな村の広場で、晒し台(ストックス)に両足を突っ込んだ紳士の刺殺体が発見されます。
紳士と月夜の晒し台
主人公: ハナサイド(スコットランド・ヤードの警視)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(ゴールデン・パラシュート)
![]() | ゴールデン・パラシュート (講談社文庫) |
デイヴィッド・ハンドラー | |
講談社 |
![]() | The Sweet Golden Parachute (Berger and Mitry Mysteries) |
David Handler | |
Minotaur Books |
読むと、相続関係は難しい。
(デイヴィッド・ハンドラー著)
コネティカット州の静かな村での事件です。村の富豪プーチーは老いて奇妙なふるまいにおよぶようになります。店で万引きをしたり、無謀な運転で事故を起こしたり。プーチーの娘クローディアはそんな母を案じて家の財産を守ろうとします。しかしその行為は新たな問題を起こすことに。また村に問題児2人が刑務所から出てくることになり、村の火種となりそうです。さらにプーチー一族とこの問題児の家族との若い二人が愛し合うようになり、村には緊張が走ります。そして、ごみ拾いのピートがいつものごみ集めの途中に何者かに襲われて惨殺されます。人との関わりもなくただごみ集めをしていたピートがなぜ殺されなくてはいけないのか。行きずりの犯行か?しかし、ピートの素性を調べてみると思いがけない正体がわかり、事件は複雑化していきます。プーチーの一家はそれぞれ悩みを抱えていますし、さらにその一家には居候の男がいて、また遺言の内容も少々変わっていて、ますます謎は混迷してきます。捜査に加わった女性警官デズは、恋人の映画評論家ミッチとともに謎を解こうとしますが、またまたミッチは犯人を追い詰めようと命の危険にあい、デズは救出に駆けつけます。ミッチは無事にたすけだされるのか。
ミッチは村人から頼まれてある女性の書いた小説を読みますがその内容はショッキングな少女売春を描いたもので、どうも実話ではないかと思われます。
ミッチとデズのシリーズも第5弾です。今回は村一番の富豪が関係してきますが、家族関係が複雑なのでよーく系図を理解してください。それに富豪プーチーの友人で居候をしている男性がまたいったいなんなのかその存在がとても不思議です。複数の殺人が起こるのですが、それが連続殺人なのか、独立した殺人なのか、そのあたりも謎ですが、それを読み解くのがミステリ・ファンの楽しみですね。
それになかなか進展しないミッチとデズの関係も少々の変化があってホッとしたところが、最後はまた強烈な終わり方で思わず浮足立ってしまいました。ここで言えないのがつらい。次の作品でどうなっているのか気になって早く読みたいです。次の翻訳が出るのはいつなんでしょう。
ミッチが評価を頼まれた小説が途中で出てくるのですが、その内容が強烈なのでびっくりしてしまいました。どうも実話に基づいているらしいというのでミッチはそれについても真相を知ろうとするのですが、どうなるのかドキドキしてしまいます。まぁ、こちらはちょっとホッとするような流れですが。
■既刊
ミッチとデジリーのシリーズです。
ブルー・ブラッド
芸術家の奇館
シルバー・スター
ダーク・サンライズ
こちらは作家スチュアート・ホーグと愛犬ルル(バセットハウンド)のシリーズです。
殺人小説家
傷心
主人公: ミッチ・バーガー(NY出身の映画評論家)
デジリー・ミトリー(女性警官。ミッチの恋人。駐在)
場所: USA、コネティカット州ドーセット
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(見えないグリーン )
![]() | 見えないグリーン (ハヤカワ・ミステリ文庫) |
ジョン・スラデック | |
早川書房 |
![]() | Invisible Green |
John ladek | |
Walker & Co |
読むと、何か方法はあるものです。
(ジョン・スラデック著)
〈素人探偵七人会〉は謎解きが好きな7人の集まり。準男爵、化学者、軍人、弁護士、警官などさまざまな職業の人たちが謎解きという共通の趣味で会を作っています。〈素人探偵七人会〉のメンバーは戦前は集まってミステリを研究したりして活動していたのですが、その後は戦争をはさんで会員もばらばらになり今は亡くなった会員や音信不通の人もいてもう長く活動はしていませんでした。ドロシアが35年ぶりに再会を計画すると、それを引き金に次々と殺人が起こります。いずれも不可能犯罪で、動機もわかりません。ドロシアから助けを求められた素人探偵のサッカレイ・フィンは推理を開始しますが、奮闘むなしく次々に会員が殺されていきます。最初の老人は、トイレの中で死んでいるのを発見されるのですが、どうやって殺したのか、その手段がなかなかサッカレイにもわかりません。実に奇妙な方法で行われた殺人です。会員のところにはオレンジを投げ込まれたりとかいたずらのような事件もあり、それぞれに色がメッセージの役割を果たしているようです。さて、グリーンとは何者か? 犯人は〈素人探偵七人会〉の全員を殺そうとしているのか? ドロシアの提案した再会が呼び水となり、連続殺人へとつながります。
密室、本格推理と聞くとそれだけで読む前からわくわくしますね。
これは1977年に刊行されたミステリです。サッカレイ・フィンが素人探偵で、ゲイロード主任警部と推理を展開しています。このころのイギリスの不動産事情や家賃の仕組みなどが詳しくでてきますが、日本にはないやり方で弱者には優しくできているのが、おもしろいと思いました。今でもこの仕組みが行われているのかどうかはわかりませんが。
密室殺人なのですが、その方法が単純なのがほっとします。なによりわかりやすい。ここでその方法について書くことができないのが実に残念です。作者は日々密室殺人について思いを巡らせているのでしょうね。いろいろな方法を考え付くのは知識や想像力や総動員ではないでしょうか。
素人の探偵会があるほど以前からイギリス人はミステリ好きなんでしょうか。シャーロック・ホームズが生まれたくらいだからそうなんでしょうね。
サッカレイ・フィンが探偵役のミステリは、「黒い霊気」(74年刊)があるようですが、ジョン・スラデックは2作しかミステリを書いていないそうで、残念です。もっと不可能犯罪を読みたかった。
主人公: サッカレイ・フィン(素人探偵)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(海賊の秘宝と波に消えた恋人)
![]() | 海賊の秘宝と波に消えた恋人 朝食のおいしいB&B4 (RHブックス・プラス) |
カレン・マキナニー | |
武田ランダムハウスジャパン |
![]() | Berried to the Hilt: A Gray Whale Inn Mysteries |
Karen MacInerney | |
Midnight Ink |
読むと、沈没船にはお宝がいっぱい。
(カレン・マキナニー著)
クランベリー島のB&Bを営むナタリー・バーンズのシリーズ4冊目です。
〈グレイ・ホエール・イン〉の評判は良いのだけれど、予約はガラガラ。経営に頭の痛いナタリーですが、沈没船発見のニュースに、島中が色めき立ちます。このあたりに伝わる伝説の海賊船か!?海賊船には莫大な財宝が積まれ、親に反対されて密かに家を抜け出した海賊の恋人が乗っていたはず。もしそうならば大変な観光資源になること請け合いです。沈没船の調査に来たのは、メイン大学の海洋考古学者チームと、財宝ハンターと呼ばれる海洋調査会社〈イリアッド〉のチームです。かれらはこれまでも沈没船の調査を巡って争いがあったらしく最初から反目しあっています。その2チームがナタリーのインに泊っているので、食事時などは一触即発の危ない雰囲気です。
はたしてそのうちの一人が殺されているのが発見されます。島の船大工エレイザーが容疑者として拘束され、彼の無実を信じるナタリーたちはまたも殺人事件の捜査に乗り出します。さらにナタリーは近づきつつあるクランベリー島料理コンテストの審査員を引き受けてしまい、誰が優勝しても島の人たちの恨みを買いそうで、しかもコンテストの参加者が次々と自分たちの作品を〈グレイ・ホエール・イン〉に持ちこむ始末。無事に事件解決とコンテストをやり切れるか、ナタリーの苦悩は計りしれません。
もうこのシリーズも4作目なんですね。ナタリーの周りの人たちもそれぞれの位置をしっかり築きつつあります。人間関係にも少しずつ変化があり、ナタリーとジョンは婚約状態で結婚式はいつにするか、これまた難しい問題です。〈グレイ・ホエール・イン〉は最初は朝食だけの宿でしたが、ランチもディナーも提供することになり、ナタリーは大忙しとなっています。これから〈グレイ・ホエール・イン〉は繁盛していくのでしょうか。
メイン大学の調査チームと海洋調査会社のチームと、みんなそれぞれを良く知っているらしく、また被害者の死によって得をする人物もあり、動機は多いようです。
なぜか海賊船と聞くとワクワクしますね。おまけに情熱的に海賊に恋をして密かに海賊船に乗って消えた美女という伝説のおまけまでついていたら、なんとしても謎を追究したくなりますね。
次回はナタリーとジョンの仲はどうなっているのでしょうか。無事に結婚?
早く知りたいですね。
■既刊
ナタリーのB&Bのシリーズは、すでに3冊刊行されています。
注文の多い宿泊客 ← 開発会社社長が殺されます
料理人は夜歩く ← 宿の洗濯係が拳銃自殺。ナタリーの元婚約者が登場
危ないダイエット合宿 ← ダイエット合宿でハンサムなトレーナーが殺されます
レシピ付きです。
主人公: ナタリー・バーンズ(グレイ・ホエール・インのオーナー)
場所: USA、メイン州クランベリー島
グルメ: お菓子・B&Bの料理(レシピあり)
動物: ネコ:ビスケット(ナタリーの飼い猫)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(死の扉)
![]() | 死の扉 (創元推理文庫) |
レオ・ブルース | |
東京創元社 |
読むと、巻き添えになるのは不幸。
(レオ・ブルース著)
キャロラス・ディーン初登場。キャロラスは40歳の歴史教師で犯罪研究を趣味としています。今日も歴史の授業中に話は犯罪へと脱線し勉強嫌いの生徒たちを喜ばせています。
ある夜、長閑な町のニューミンスターで2つの死体が発見されます。小間物屋の女主人エミリーとその地区を巡回していたスラッパー巡査です。エミリーは町の嫌われ者で敵が多く容疑者には事欠きません。警察の捜査は難航し、なかなか犯人は捕まりそうもありません。キャロラスの生意気な生徒ルーパートは、キャロラスにこの事件を警察を出し抜いて解いてみないのかと焚きつけます。日ごろから実際の犯罪に挑んでみたいと思っていたキャロラスはルーパートの挑発を受けて立つことにします。そしてキャロラスとルーパートのコンビは、事件の真相を探るべく聞き込みを開始します。
1955年刊行のミステリです。本格ミステリ、フェアプレイの謎解きです。このころの本格ミステリはワクワクしますね。探偵役はニューミンスターのパブリック・スクールの上級歴史教師のキャロラス・ディーンです。その相棒は生意気な生徒のルーパート・プリグリーです。ルーパートはひねたところがありますが、ときどき子供らしいところが垣間見えたりでなかなかかわいいところがあります。このコンビで犯罪の調査に赴くのですが、二人の会話が良いですね。おもわずにんまりしてしまうところもあります。
二人が殺されるのですが、エミリーはあっぱれなほどに嫌われ者で、殺しの動機を持つ者がたくさんいて、キャロラスたちの捜査も多岐にわたってしまいます。いかに嫌われているかという関係者それぞれの話も面白いです。
フェアプレイで書かれているので、ときどき立ち止まって事件を整理するのが良いでしょう。
キャロラスのシリーズはまだ多くが翻訳されていないのでこれからの刊行が大変楽しみです。まだこんな素晴らしいミステリ作家が残っていたのかと、驚きと喜びで楽しくなりました。
作者のレオ・ブルースについてはほとんど知らなかったのですが、巻末の解説によると、同性愛容疑で起訴され、九か月の刑に処せられたことがあるようです。このころは同性愛は犯罪だったのかと、ちょっと驚き。
早く次の翻訳がでないかなぁと待ち遠しいです。
主人公: キャロラス・ディーン(ニューミンスター・クィーンズ・スクールの上級歴史教師)
場所: イギリス、ニューミンスター
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(知りすぎた犬)
![]() | 知りすぎた犬 (創元推理文庫) |
キャロル・リーア・ベンジャミン | |
東京創元社 |
![]() | The Dog Who Knew Too Much |
Carol Lea Benjamin | |
Dell |
読むと、誰かになってしまいそう。
(キャロル・リーア・ベンジャミン著)
リサは太極拳を習い、秋田犬チャンを飼う若く美しい女性。静かで満ち足りた生活をおくっていたように見える彼女がどうして死んでしまったのか。窓から身を投げねばならないような悩みでもあったのか。「ごめんなさい」と記されたメモは遺書だったのか。娘の死に納得のいかない両親はレイチェルに死の理由を調べるように依頼します。レイチェルは相棒のダシール(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)を連れて、リサのアパートに住み、太極拳の教室に通いリサの心を理解しようとします。
リサの愛犬チャンはなぜリサを守ろうとしなかったのか。忠誠心のあつい秋田犬なのに。
やがてもう一つの死体が発見され、レイチェルはリサの心の動きを通じて事件の真相を解明します。
レイチェルとダシールの探偵シリーズの第2巻です。
レイチェルはリサの家に住み、リサの服を着て、アクセサリーを身につけ、リサの元恋人と会うようになりますが、そのままリサになってしまうのではないかと、不安な気持ちになってしまいます。太極拳に打ち込んでいたリサは、これからどうしようとしていたのか。太極拳の教室に通う人々のリサへの感情は嫉妬、執心、恋心、などそれぞれで、それがまたレイチェルにも引き継がれているようです。静かにレイチェルの調査は進みますがそれはまるで心理劇を見ているようです。
■既刊
一作目では、マグリット(バセンジー)がでてきます。ゲイの画家が殺されます。
バセンジーは哀しみの犬
主人公: レイチェル・アレグザンダー(私立探偵。もとドッグトレーナー)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物: イヌ:ダシール(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)
チャン(秋田犬)
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(裏返しの男)
![]() | 裏返しの男 (創元推理文庫) |
フレッド・ヴァルガス | |
東京創元社 |
![]() | L'Homme A L'Envers (Nouveau Policier) |
Fred Vargas | |
J'Ai Lu |
読むと、被害者には共通点があります。
(フレッド・ヴァルガス著)
アダムスベルグ警視のシリーズ、2作目です。
アダムスベルグ警視がテレビを見ているとそこに映っているのは昔の恋人カミーユらしき姿。アルプスの村でヒツジが大量に殺されるという事件の報道でした。いずれも巨大な狼によるものと思われ、村に恐怖が走っています。村の女牧場主は、これは狼男のしわざと言い出しますが、その直後にやはり大きな歯形の残る死体で発見されます。村の変わり者で他者と交わらず山で静かに暮らす男が狼男ではないかとの疑いが広がっていきます。カミーユは殺された女牧場主の養子と老羊飼いに頼まれて、狼男の追跡をすることになります。そしてアダムスベルグも奇妙な偶然からこの事件に巻き込まれ、カミーユたちの追跡劇に関係することとなり事件解明に努めます。
本当に狼男は存在するのか。アダムスベルグ、カミーユたちの行く手にはヒツジたちのたくさんの死体と数人の犠牲者が横たわっています。後手に回るアダムスベルグたちは犯人を捕まえることができるのでしょうか。
アダムスベルグ警視は逮捕した男の情婦から命を狙われています。アダムスベルグは女からの襲撃から逃れながら狼男の追跡をするのですが、女は執拗に追ってきてついにはアダムスベルグを射程内に収めます。アダムスベルグ危うし。
カミーユはアダムスベルグの恋人でしたが、今はカナダ人の狼研究家と同棲しています。このカミーユがちょっと変わった趣味で、なんでも機械のマニュアルを読むのが好き、職業は音楽家で配管工のようなこともやるという一風変わった女性です。彼女が運転するトラックで男2人と狼男の追跡をするのですが、元はヒツジの運搬に使っているトラックなのでヒツジの匂いが染みついています。何度もこの匂いがひどいという描写がありますが、カミーユは夏のすさまじい暑さの中をずっとブーツを履いているのです。ワニはこのブーツのほうが臭わないのかなぁとそれが気になってしまいました。
狼男の伝説がこの事件の下地になっているのですが、狼でなく人間になっているときの狼男は無毛症であるというのは初めて知りました。そして肌を切り裂くとその裏側は毛むくじゃらだそうで、それで狼男であるとわかるのだそうです。題名の「裏返しの男」とはそこから来ているのでしょうか。
フランスの山や田園地帯を追跡していくので、フランスの田舎町ののどかな様子が楽しめます。
■既刊
アダムスベルグ警視のシリーズ1作目は、青いチョークで円が描かれその中に奇妙な物が置かれているのが見つかるという不思議な事件です。
青チョークの男
フレッド・ヴァルガスにはもう一つ三聖人のシリーズがあります。
これはそれの2作目です。
論理は右手に
主人公: ジャン=バチスト・アダムスベルグ(パリ第五区警察署長、警視)
場所: フランス、アルプス、メルカントゥール山系
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(悪夢の優勝カップ )
![]() | 悪夢の優勝カップ プロゴルファー リーの事件スコア 2 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫) |
アーロン&シャーロット・エルキンズ | |
集英社 |
![]() | Rotten Lies |
Aaron & Charlotte Elkins | |
Warner Books |
読むと、動機はなかなか見えにくい。
(アーロン&シャーロット・エルキンズ著)
女子プロゴルファーのリー・オフステッドが探偵役のシリーズ2作目です。
今回はニューメキシコ州ロスアラモスのトーナメントに参加しています。放つショットはどれもこれも素晴らしいあたりで、無謀と思われるようなコースの攻略法に挑んでも奇蹟のようにゴルフボールが飛んでいきます。ついにツアー初勝利か、とリ―のキャディを務めるルーも思わず力が入ります。が、小さな痛みがリーの腕に走り、恐れながら聞いた診断は、「テニス肘」。なんとかツアー最後までもってくれと願ったのですが、突然襲ってきた雷雨の中に倒れている人を発見し、必死に人工呼吸を施した結果、肘の痛みはどうしようもないくらいになってしまいます。初優勝の夢は消えてしまうのか。当初落雷にあって死亡したと思われていた人物は、強引なやり方で成功を収めてきましたがその分敵も多く、その死に疑惑も生じてきました。
ツアー中に設けられるカフェテリアはごった返し、リーたちがあれこれと料理や飲み物を取っていると、いきなりゴルフ放送中継の関係者が倒れて死亡してしまいます。どうやら毒殺らしい。
リーは痛む肘を抱えながら、ゴルフ関係者や放送関係者に接触できるという立場を利用して事件の解明に向かいます。前回リーと一緒にプレーした経営コンサルタントのペグも事件解明に協力します。
今回は、ゴルフコースの関係とトーナメントの中継という放送関係と、両方の事情がいろいろ語られていて、なるほどゴルフ中継とはこのように行われているのかと、とても興味深いです。
賞金ランキング98位のリーは相変わらず緊縮財政のトーナメント参加で、あらゆる経費を切り詰めています。プロゴルファーの厳しさが良くわかりますね。それにゴルファーが痛めてしまう肘なども深刻なんだなぁと華やかなゴルファーの健康維持の陰の努力も垣間見えます。
前回知り合った経営コンサルタントのペグはこのゴルフコースの理事で、地の利を生かしてリーとともに事件を調べますが、なかなか魅力的なキャラクターで、これからも出てほしいですね。
リーが前の作品から付き合い始めたグレアム(カーメル市警警部補)との仲は微妙ですが、ちょっと変化があります。
3作目はトーナメントでも事件ではなく、高級ゴルフリゾートが舞台のようです。
■既刊
1作目ではスター選手ケイトの撲殺死体に遭遇します。
怪しいスライス
主人公: リー・オフステッド(女子プロゴルファー)
場所: USA、ニューメキシコ州ロスアラモス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(贋作に明日はない)
![]() | 贋作に明日はない (創元推理文庫) |
ヘイリー・リンド | |
東京創元社 |
![]() | Shooting Gallery: An Art Lover's Mystery |
Hailey Lind | |
Signet |
読むと、盗みはどういう場合でもいけません。
(ヘイリー・リンド著)
贋作シリーズの2作目です。
アニー・キンケイドは画家兼疑似塗装師。有名な贋作師を祖父に持つがため、本人の意思とは関係なく美術品を巡る事件に巻き込まれてしまいます。今日はサンフランシスコの高級画廊のオープニングパーティですが、アニーは展示されている彫刻家本人の死体がオークの巨木からぶら下がっているのを発見します。それとおなじころ隣の美術館ではシャガールの盗難事件があり、たまたまその場にいたアニーの友人が犯人ではないかと疑われることになります。アニーの母が急に現れ、どうも怪しい人たちとの付き合いがありそう。シャガールをとり戻すべく、旧知の絵画泥棒と手を組んだアニーはお金持ちのパーティに潜入し、たくさんの真作・贋作をみつけ、さらに絵画泥棒の逃走に手を貸すはめになり。若き日の父母と交遊のあった彫刻家は実に怪しげで、その関係で殺された彫刻家の切り落とされた指をアニーは発見してしまいます。アニーの大家はピカソの修復を依頼してきますが、どうもそれにはウラがありそうで。真贋の美術品を取り合って、また多くの人たちが暗躍します。
またアニーの祖父の描いた贋作が多数出てきますが、今回はアニーの母も事件に関係しているようで、アニーとしては心配ですね。前作で大いに活躍した絵画泥棒マイケルも今回もいろいろなところに出没し、お仕事中に屋敷から出られなくなったりと窮地に陥りますが用意周到のマイケルでも予期せぬ出来事は避けられないようで、いつもしてやられているアニーは少し溜飲を下げます。アニーの大家もだんだんと事件への関与が増えてきました。
一番おもしろかったのは、アニーが見張っている彫刻家の部屋の前にアニーの友人たちがどんどん集まってきてどんちゃん騒ぎを起こし、はては窓の外を行ったり来たりし始めるところです。このアニーの友人たちにはもっともっと活躍してほしいです。
■既刊
1作目ではブロック美術館で贋作が見つかります。
贋作と共に去りぬ
3作目ではラファエロの作品が事件に関係しているようです。
主人公: アニー・キンケイド(画家兼疑似塗装師(フォーフィニッシャー))
場所: USA、カリフォルニア州サンフランシスコ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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