春が足踏み

あれ、雨になったかな。まだ雪なのか。音のしない窓越しの光景が気になって玄関を開けて手を伸ばす。セーターの袖に粉砂糖のような細かな雪が下りてくる。鉛色の空から、霧雨のように頼りない雪が降り続く。

問題は、傘がない、ではなくて就活戦線異常あり、なのだった。みごとなまでに連戦連敗。うーむ、1月初めの最後のバイトが終わってからすでにひと月が過ぎた。そもそも面接にこぎつけるまでにこれほど手間取るとは予想しなかったし、手ごたえを感じた面接もいくつかあったけれど、ことごとくが残念ながら今回は…の答え。

求人休職サイトからの新着情報には、希望職種、地域、時給、勤務形態などのオプションがあり、いくつか組み合わせた条件検索できるのだけれど、日ごとに案件が減り、スクロール画面が小さくなる。うむ、と地域を広げ時給を下げ職種を変更してもなかなかヒットしない。

兄きぃ、俺たちのスキルが求められる職種ってもうないね。それにハローワークで聞いたら、これまでは中高年向けだった仕事にも派遣切り被害の若年層の応募が増えていて、ともかく競争倍率がやたらに高くなった、って話だったよ。と同じく求職中の弟が電話でなげく。

お互いに足腰に故障があるから、深夜の肉体労働はムリだしねぇ、と声が落ちる。ま、いざとなれば、と答える。うん、いざとなれば？　何とかなるだろう、うわっはっはっはと二人でバカ笑い。とっておきの缶入り紅茶をいれる。