龍の声

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「超はっ水と超親水」

2020-11-20 08:32:13 | 日本

フッ素樹脂加工したフライパンに水滴を落とすと、水滴は表面張力で丸く盛り上がります。このように水をはじく性質を撥水(はっすい)性といいます。一方、きれいなガラス板に水滴を落とすと、水滴はあまり盛り上がらず平に広がります。このように水にぬれる性質を親水性といいます。
 
この展示では、その性質を高めた超撥水加工した材料と超親水加工した材料に、実際に水滴を落として、その様子を観察することができます。また実験の拡大映像(あらかじめ撮影したもの)もご覧いただけます。
 
なお、この展示で紹介している技術は、どちらも生物のしくみに学び研究開発されたものです。


◎水をはじく表面と水にぬれる表面
 
水をはじく表面と水にぬれる表面、この違いは、水と材料とが仲が良いか悪いかで決まります。フッ素樹脂は水と仲が悪く、水をはじきます。一方、ガラスは水と仲が良く、水にぬれます。
 ところで、水のはじきやすさや水にぬれやすさの度合いは、材料の表面と水滴の接触する角度(接触角)で表されます。明確な定義はありませんが、だいだい接触角が90度より大きい場合を撥水性(水をはじく、水にぬれにくい)、40度より小さい場合を親水性(水にぬれる)(図2)とよんでいます。


◎超撥水
 
一般的に材料の表面と水滴との接触角が150度以上の場合を超撥水とよんでいます。
 
雨上がりに、ハスやサトイモの葉の上でコロコロと転がる水玉を見たことがあると思います。フッ素樹脂加工したものと水滴との接触角は約120度ですが、ハスの葉の接触角は約160度で超撥水です。ハスの葉はなぜそれほど水をはじくのでしょう。
 
じつはハスの葉の表面は平に見えますが、数㎛の細かいデコボコ(凹凸)状になっています。さらにそれぞれの突起の表面に数百分の1㎛の微細な突起があります。この二重のデコボコ構造によって球体の水玉がささえられているのです。
 
有機シリコン化合物を原料とし、非常に細かい微粒子を雪のように降り積もらせて微細なデコボコ構造がつくられています。
 
従来の防水スプレーは、超撥水ではなく、材料に吸着している(くっついている)だけなので耐久性もありません。この超撥水加工は、材料と化学結合しているので耐久性が向上し、また透明なので窓などのガラスにも使用可能です。車のフロントガラスへの応用はまだ研究中ですが、将来ワイパーのない車が走るようになるかもしれません。


◎超親水

材料の表面と水滴との接触角が非常に小さい場合を超親水といいます。
 
ここで展示している材料の表面にはシリカ成分が塗られています。シリカ成分は水と仲が良く超親水です。そして空気中の水分を強く吸着して薄い水のまくをつくります。その上に汚れ(油汚れ)がついたとしても水をかけると一緒に洗い流されてしまいます。光を必要としない方法なので、日の当たらない場所でも性能を発揮することができます。この技術は掃除が困難なビルや住宅の外壁材に使われています。雨が降ると汚れが簡単に落ちて、きれいな外壁を保つことができます。
 
この汚れを防ぐしくみは、カタツムリの殻がいつもきれいである謎を研究して開発されました。カタツムリの殻を電子顕微鏡で観察すると、殻の表面に細かい溝が広がり、常に溝に水がたまるしくみになっていました。つまり殻全体がいつも薄い水のまくにおおわれた状態で、汚れは雨とともに洗い流されて、いつもきれいだったのです。生物ってすごいですね。自然に学ぶことはいっぱいありそうです。


◎超親水とは、

限りなくゼロに近い接触角をもつ表面の性質を超親水・超親水性とよぶ。
親水性は「塗膜表面の水の角度=接触角」であらわすことができ、接触角が小さいほど親水性は高くなります。
また、一般的に、水との接触角が40度以下の親水性、水接触角が10度以下である場合、超親水性と呼ばれ、水滴は平らに張り付いたような形となり傾斜が有る場合は、水膜を作らず、流れ落ちる。

<フラクタル理論>
表面の微細な凹凸によって親水の効果がより強くなる理論をいう。凹凸がきれいに均一に並ぶと超撥水になり、不均一に並ぶと超親水になります。
水と面との界面張力差を極力下げ、超撥水表面と同様に、凹凸を増やすことによって実現できる。二酸化チタン(TiO2)によるものが著名であるが、光触媒効果によって超親水性を発揮するものであり、光を必要とする。
最近になって、数種類のシリカやシングルナノの材料を使って 50 ナノ以下に凹凸を作ることににより光触媒とは関係なく常時超親水膜を形成するものもある。
超親水性の表面は水が均等に付着し、水滴が分散しない。濡れたあとの乾燥後に汚れが水滴状に残らないといった性質をもつ。 二酸化チタンにおける超親水性は、二酸化チタンが半導体であることに由来することが解明されている。紫外線を受けた二酸化チタンは励起され、結晶中の酸素を酸化して酸素分子とチタン分子に分離させる。結果として二酸化チタン中に酸素痕跡の欠陥を形成し、この欠陥に水分子が吸着されることによって超親水性を発現する。またこの過程では表面が不均一化し、水との接触表面積は拡大される。この過程では水が二酸化チタンに吸着されることでラジカルが発生し、光触媒効果を発生させる。そのため、自己洗浄効果、脱臭分解作用などが得られる。この効果は接触表面積を大きくすることで拡大が可能であるものの、その手段の一つである超微粒子化(ナノ粒子化)については、生体に取り込まれた際の危険性があるとも無いともいわれ、カーボンナノチューブの危険性の有無と並んでナノテクノロジーのリスク評価の大きな関心事の一つとなっている。

超親水表面は広範に実用化され、また耐久性もある程度は確保されている。これは自己洗浄効果をもつ物質を表面に採用でき、表面構造が多少損傷を受けても、性質を保つからである。

曇ったり濡れても機能を果たす鏡、住宅の外壁に採用して雨に伴って汚れを落とすことを狙ったもの、窓に採用して汚れを落とすことを狙ったもの(有名な例ではセントレア空港で採用されている)などが存在する。