龍の声

龍の声は、天の声

「ノロ(祝女)とは、②」

2020-11-23 07:55:43 | 日本

◎沖縄や奄美の伝統的な巫女・神人とはどんな人か?

沖縄諸島や奄美諸島には、「神人(かみんちゅ)」と呼ばれる公的な女性の祭祀者がいる。神人とは「神に近しい存在」という意味で、村落の祭祀を司る存在である。

神人たちの中でも上位の者を「ノロ(祝女、ヌル)」といいます。彼女たちは海の彼方にあるニライカナイなど琉球神話の異界に住む神々と交信し、祭司の間は自身の体に神を憑依し、神そのものになった。


◎ノロや神人になるのはどんな人か?

一般的にノロは世襲制で、祝女殿地(のろどぅんち)と呼ばれる家系の出身者である。元々は各地域の有力な按司(あじ=王族)の肉親だったと考えられている。

彼女たちは成巫式(せいふしき)という儀式を経て神女となる。久高島ではこの儀式のことをイザイホーと呼んでいるが、近年は島の過疎化が進んでいることなどが原因でイザイホーは行われておらず、新しいノロは誕生していない。


◎琉球王国で制度化された 神人たちの歴史

神人たちの長・ノロは15世紀、琉球王国の尚真王(しょうしんおう)によって制度化された。尚真王は祭政一致をはかることで、琉球王国の支配を強固なものにしようと考えた。

沖縄諸島・奄美諸島の各地に暮らすノロの中で、最も地位の高い者を「聞得大君(ちふぃじん、きこえおおぎみ)」といいう。1470年以降、琉球王府の王女や王妃、王母がこの聞得大君に就任した。

聞得大君は王の霊的な保護者であり、様々な神託を行ったり、時には国王即位の宣託も行うなど、強力な力を持っていた。


聞得大君は3人の大阿母志良礼(うふあむしられ)を従えている。その下には上級神官というべき上級の神女がおり、三十三君(さんじゅうさんくん)などと呼ばれていた。三十三は多数という意味である。

大阿母志良礼や三十三君、各地のノロたちは全て琉球王府から任命される。神職の女性というと、未婚の女性をイメージする方も多いと思うが、琉球王府では既婚か未婚かは無関係だった。
このように、神女たちは尚真王のもとに制度化され、強大な力を持つこととなったが、後の時代になると政祭分離がすすめられるようになり、その力は徐々に弱体化していく。

1879年に琉球王国が解体されると、ノロは公的な地位ではなくなった。しかし現在でもノロや神人は村落の祭祀を率いる立場として、地元の人々から尊敬を受けている。


◎琉球を支えた神女『ノロ』について紹介!ユタとの違いは?

沖縄の古代信仰である、御嶽信仰と火の神信仰を支えていたのが『ノロ』という神女たち。いわゆる巫女さん的な存在にあたるのだが、ユタとの職種は公務員・条件は血筋や家柄で任命・交信する対象は守護神やニライカナイの神々である。の祭祀を執り行ってきた神女たちが、琉球王府の神女組織に組み込まれ、『ノロ』と呼ばれるようになった。給料は月6~10万円くらいだが、これは当時の行政のトップとかわらない額である。明治前期頃まで、ノロの給料は租税米の一部を差し引くという形で給与された。琉球王府の統治下で、神女らは極めて手厚い待遇を受けていた。仲里間切のノロたちにも1000坪近い土地を与えらていた。
ほかにも『ユタ』という超自然的な力を司る女性がいる。ユタとは個人事業主・条件は能力があれば(一応)誰でも可能・交信する対象は祖先の霊や人間の魂である。


◎ノロの祭祀とは、

沖縄の祭祀を司る女性のことを言いう。農耕社会を生きてきた人たちにとって、農作物は天の恵み。 その豊穣を願うときに、ノロたちが祈祷を行ってきた。
 ◎アブシバレ(虫払い)
4月に行われる稲の虫払いのための行事。稲から害虫が退散するように祈祷を行う。
◎ウマチー(稲大祭)
6月に催される祭事で、夏の収穫が終わったその感謝を示す祭りだと考えられている。ノロや根神(ノロ以下の神女のこと)は前々日からノロの家に集まって精進潔斎し、祭りの当日は朝神・夕神と2回に渡って嶽々拝所を巡拝して豊作を感謝し、また来年の豊穣を祈ったのである。
「ユタとは、」

ユタとは、超自然的な能力を用いて占いや治療、その他のあらゆる人生相談を行う者たちを指します。


◎ユタ

神がかりなどの状態で神霊や死霊など超自然的存在と直接に接触・交流し、この課程で霊的能力を得て託宣、卜占、病気治療などを行う呪術・宗教的職能者。大部分が女性。
ユタは人々の私的な呪術信仰的領域に関与し、神霊との直接交流状態においてその呪術・宗教的機能をはたす。このことからユタは、東北地方のイタコ、カミサン、その他の巫女とならんでシャーマン的職能者に位置づけられる。(沖縄大百科事典より)
『ノロ』は主にニライカナイの神々やその地域の守護神と交信するのに対し、『ユタ』はいわゆる霊、神霊や死霊と交信する。


◎ユタの起源

ユタの起源について、沖縄民俗学の父、伊波普猷(いは ふゆう)氏は以下のように述べています。
古くは神秘的な力を持っていて神託を宣伝するものであると信じられていたのでありますが、中にはそういう力を持っていない名義ばかりの神人もいたのでありますから、代わって神託を宣伝する連中が民間に出て、そうしてこれを以て職業とするようになったのであります。これがすなわちトキまたはユタと称するものであります。(伊波普猷全集第9巻民俗論考より)
要するに、根神やノロといった公職の神官の中には霊力があまり高くないのもいて、そういった神官は人々の信用を失った。その代わりに民間の霊能者が支持を得て、彼女らが『ユタ』となった。琉球王朝はユタが力を得ることを恐れてしばしば弾圧を行ってきたが、彼女らが民衆からの支持を失うことはなかった。

ユタは民衆からクライアントを得て、彼らから相談料をもらいう。公務員であるノロに対して、いわば個人事業主といえる。相談料は特に決まっていない。中には全財産を投入してしまう方もいた。
◎ユタになるには?
超自然的な力があり修行をすれば誰でもなることが出来る。誰にでも当てはまるわけではないが、ユタとなった人の多くは、幼少期に病弱だったり、神霊から直接告知を受けたり、そんな不思議な体験をしてきたそうである。ユタになる人は、生まれながらに運命づけられていると考えられている。

世襲制で決まる『ノロ』とは大きな違いがある。