「四十雀」とは、いったい何でしょう? 「雀」がついているので「スズメ」の仲間? それとも「孔雀」の仲間でしょうか? 漢字の正しい読み方は? 「四十」がつく理由も気になりますね。そんな「四十雀」について、今から一緒に確認していきましょう。
■「四十雀」の読み方
「四十雀」は「シジュウカラ」と読みます。「雀」という漢字が入っていますが、「スズメ」とは読みません。「孔雀」の「ジャク」も違います。間違えて「シジュウスズメ」や「シジュウジャク」と読まないように、気を付けてくださいね。
■「四十雀」の意味
「四十雀」は、スズメ目シジュウカラ科の鳥で、全長15センチ程の大きさです。漢字に「雀」が入っているのは、スズメ目だからです。日本全国の平地や森林に住んでいて、都会の公園などでも見かける身近な鳥です。
黒い頭に灰色の羽で、背中は黄緑色。頬っぺたは白色で、胸にネクタイのような黒い帯模様が入っているのが特徴的です。ネクタイ模様の太いのがオスで細いのがメス。このように、模様の太さでオスとメスを見分けることができます。
「四十雀」とはどんな鳥?
読み方がわかったところで、「四十雀」がどんな鳥なのかを具体的に見ていきましょう。
■「四十雀」の語源
では「シジュウカラ」を、漢字で「四十雀」と表すのはなぜでしょうか? 語源を確認してみましょう。まず一つ目は、雀40羽分の高価な価値がある小鳥であったことから、「四十雀」と呼ばれるようになったという説。「四十雀」1羽を手に入れるためには、40羽もの雀が必要だったのですね。それほど、価値の高い小鳥だったようです。
もう一つは、「四十雀」が沢山の仲間と群れで生活する様子を、「四十」という大きな数字で表したという説。これらの説では、「四十」という数字は数の多さを表しているのですね。
他にも、「チンチンカラカラ」という鳴き声が略されたものという説や、「シジュウ」と鳴く「カラ」という種類の鳥だからという説などがあります。このように多くの語源説が存在するほど、「四十雀」は私たちにとって昔から馴染み深い存在だったのですね。
■「四十雀」の鳴き声
「四十雀」は、鳴き声で仲間とコミュニケーションを取る鳥といわれています。「ツピツピ、ツツピー」は、繁殖期の雄の鳴き声。天敵である蛇のアオダイショウを見つけた時は「ジャー、ジャー」という警戒を表す鳴き声で、仲間に危険を伝えます。「スィー」という鳴き声は、猛禽類が現れた時。首を左右に振って周りを確認しながら「ピーツピ」と鳴いて、身近に天敵が迫っていることを知らせます。「みんな集まれ!」は「ヂヂヂヂヂ」。
また、鳴き方には文法があり、鳴き声の順序の違いで文章を作っているとのこと。「ピーツピ、ヂヂヂヂ」」は、「敵が近くにいるので、みんな集まれ!」という意味だそうです。なんだか人間の言葉みたいで、面白いですね。
■「四十雀」の食べ物
鳴き声でコミュニケーションを取る「四十雀」。では、いったい何を食べて生活しているのでしょうか? 「四十雀」の食べ物は、主に昆虫類やクモ、種子や木の実など。細く尖ったくちばしを上手に使って、食べ物を探します。
春から夏にかけてよく食べるのは、昆虫や幼虫類。樹木の幹や大枝の樹皮をはがして、エサになる食べ物を見つけます。秋から冬にかけて食べるのは、種子や木の実など。地上に降り、落ち葉を取りのけて食べ物を探します。かたい実を食べるときは、両脚の指の間に実を挟んで押さえ、くちばしでつつくか、叩き割ります。
また、「四十雀」は花の蜜も好き。くちばしが短いので、花の下の部分に穴を開けて、そこから蜜を吸います。桜の木の周りに花が沢山落ちていたら、「四十雀」の食事の後かもしれませんね。
「四十雀」はいつの季語?
「四十雀」は、俳句では夏や秋の季語として用いられます。
「老の名の有りとも知らで四十雀」は、松尾芭蕉の俳句です。「柊(ひひらぎ)の花のこぼれや四十雀」は、芭蕉に入門した俳人、浪花の句。他にも正岡子規や小林一茶など、多くの俳人が「四十雀」を季語にした俳句を詠んでいます。
ぜひ皆さんも、「四十雀」を季語にして俳句を詠んでみてはいかがでしょうか。
「雀」がつく鳥の難読漢字
他にも「雀」という漢字の入った鳥はいます。ここでは2つ紹介しましょう。
・小雀
「コガラ」と読み、「四十雀」と同じスズメ目シジュウカラ科の鳥。大きさは「四十雀」より少し小ぶりで、全長13センチメートル程。「四十雀」と似ているのですが、お腹にネクタイ模様が無いので見分けることができます。オスは「チチー、チチー、チチー」や「チーツーチー,チーツーチー」と澄んだ声で繰り返し鳴きます。
・山雀
「ヤマガラ」と読み、こちらも「四十雀」と同じスズメ目シジュウカラ科の鳥です。大きさは14センチメートル程。お腹が赤褐色なので「四十雀」とは見分けやすいですね。人懐っこくて木の実などで飼うことができ、日本では古来より身近な小鳥です。簡単な芸なら覚えるので、神社の前でお神籤を引く芸をしている山雀も。
最後に
「四十雀」がどんな小鳥か、理解できましたか? 実は「四十雀」は、一夫一妻制なのです。夫婦で一緒に子育てをし、ほとんどのカップルが一生を添い遂げるそう。鳴き声でお互いにコミュニケーションを取るなど、何だか人間と同じようなところが沢山あって親しみを感じますね。手作りの巣箱などにも巣を作るので、庭に置くと来てくれるかも。
私たちにとって身近な存在の「四十雀」。もしも出会えたら「ピーツピ!」と鳴かれないように、そっと観察してみましょう。