スイス、ダボス(ダウ・ジョーンズ)著名投資家のジョージ・ソロス氏は25日、構造改革だけでユーロ圏のソブ
リン債務危機を解決するのは不可能だとし、ユーロ圏共同債の発行が不可欠との見方を示した。
ソロス氏は世界経済フォーラム開催に合わせた昼食会の場で、欧州当局者は2007年の金融危機の際の対応におい
て「あらゆる間違いを犯した」と述べ、混乱した政策対応で金融市場の機序に対する無知がはびこっていること
を露呈したと批判した。
「ドイツが求める財政緊縮策は、欧州を負債デフレのスパイラルに陥れる」と警告し、欧州経済が収拾がつかな
いほどのスパイラルに陥った場合、欧州連合(EU)の政治的分裂は不可避だと述べた。
「構造改革だけでは無理だ。財政刺激策が必要で、それはEU加盟国の連帯による保証を伴うものでなければなら
ない。何らかの形のユーロ圏共同債が求められる」とした。
ソロス氏は、イタリア人で欧州中央銀行(ECB)理事などを務めた故トマゾ・パドアスキオッパ氏が提唱した案
を採用するよう欧州当局者に訴えた。この案は、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が重債務国の短期国債を
低金利で買い入れるというもの。
ECBの最近の長期資金供給オペにより、スペインやイタリアなどの目先の資金調達コストは軽減されたものの、
債券市場はいまだ「危険なほど無防備な」状態にあるとした。パドアスキオッパ氏の案を採用すれば、緊急に求
められている財政面の救済をただちに与えることができ、両国を金利リスクから守ることができるという。
こうした案は、テクノクラート(実務家)のモンティ首相が先週公表したような改革の採用にメリットがあるこ
とをイタリア国民に明示できるため、政権を強化するものだと付け加えた。
ECBはインフレリスク同様、デフレリスクにも積極的に対応する必要があるとソロス氏は強調し、ドイツの政治
的意思は特にインフレリスクのみに注意を向けている点で視野が狭いと批判した。一方、ドイツは自ら推奨する
政策を「心から信じている」と述べ、同国が今回の危機を通じて誠実な対応を行った点は評価した。
ただ、「明らかに支払い能力がない」ギリシャの見通しは暗いとし、民間債権者と債務再編で合意に至っていな
いことで、デフォルト(債務不履行)の可能性が強まったと指摘した。
「その方向(デフォルト)の確率が高まっている」とし、ユーロに代わってドラクマが再導入され、切り下げら
れた後に税金滞納分を支払うことを希望するギリシャの一部民間企業の動きによって事態がより困難になってい
ると述べた。
さらに、ギリシャの政権内に2大政党が存在することもまた問題だとし、「(両党とも)選挙に備えており、非
常に好ましくない政治的力学が働いている」と語った。
これはギリシャとイタリアで状況が大きく異なる点の一つだという。
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