【東京】サントリーホールディングスの佐治信忠社長は17日の決算会見で、136億ドル(約1兆3900億円)に上る
米ウイスキー大手ビームの買収は、決して高すぎる買い物ではなくビームのブランド力がサントリーの世界市場
で躍進する足場となるとの自信を示した。
ビームから引き継ぐ債務も含めると160億ドルに達する今回の買収は、サントリーを世界の蒸留酒市場で英国
のディアジオ、フランスのペルノ・リカールに次ぐ第3位メーカーに押し上げた。
ただ、今回の買収が同社の債務比率を上げる高すぎる買い物ではないかとの見方が出ていることについて佐治
社長は、サントリーの今後30年を見据えた世界戦略の中では決して高すぎる投資ではないと反論した。その理由
として、買収はサントリーを蒸留酒市場での世界プレーヤーに押し上げることに加え、サントリーとビームの統
合で世界最大の蒸留酒市場である米国での基盤がさらに固まり、他のさまざまな世界市場への展開が強化される
ことを挙げた。
米イリノイ州に本拠を置くビームは現在世界第4位の蒸留酒メーカー。サントリーの買収は当局とビーム株主
の承認を待って4-6月期に完了する予定となっている。
高齢化によって日本国内市場の縮小が始まりつつあるなか、サントリーも多くの日本企業と同様に海外市場の
開拓を狙っている。アジアをはじめ世界各国で中流層の消費者が増えて行くことが予想されており、サントリー
はこうした層が高級ウイスキーへの需要を押し上げてくれることを期待している。
サントリーのウイスキー製品は米国と欧州で一部に熱狂的なファンや高い賞賛を受けているものの、ビームの
ブランド力にははるかに及ばない状況だ。サントリー製品はこれまで国際コンクールで複数の受賞を受けている
が、同社の2013年の全売り上げに占める海外販売比率はわずか6%にとどまっている。
このため、今回のビーム買収が、世界でのブランド力を高め、世界市場進出の強力な足場となることを期待し
ており、まず米国と欧州でのシェアを上げることに加え、ブラジルやインドなどの新興市場国の開拓につながる
ことを望んでいる。
佐治社長の大阪での会見とは別に東京で記者会見した常務執行役員の千地耕造氏は、サントリーの蒸留酒ビジ
ネスはこれまで大半が国内向けで、買収をしなかったら世界プレーヤーに食い込むことは難しかっただろうと述
べた。
千地氏は、買収のための銀行融資の増加でサントリーの負債資本比率が、前会計年度末の12月31日時点の0.2か
ら1を超える水準に上昇したことを明らかにした。さらに、会社の財務状況にとっては大きな変化で、1を下回る
水準へ減らすには数年が必要となる、と述べた。
日本最大のビール醸造メーカーのアサヒグループホールディングスの昨年の負債資本倍率は0.49、ライバルの
キリンホールディングスは2012年時点で1.02だった。海外進出という意味ではキリンが先頭を走っており、07年
以来の海外メーカー買収総額は1兆円を超えている。
サントリーは、今期(2014年12月期)の業績見通しについて、売上高が前期比8.8%増の2兆2200億円と膨らむ
一方、純利益は74%減の500億円と予想している。純利益が大幅に減少するのは前期のサントリー食品インター
ナショナルの上場によるキャピタルゲインのような特別利益がなくなるため。
佐治社長は昨年約5000億円だった海外売上高を将来的には2倍に拡大することを目指していると述べた。
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