1)決算発表をきっかけに、好業績銘柄が急落した。
2)好決算銘柄は、期待が高いので反動も大きい。
3)個人投資家なら、無理に決算予想で投資しないで、別のやり方をすればよい。
◆ドラギ発言で反発
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「あらゆる手段を尽くす用意がある」と発言したことで、欧米株式市場が急上昇となりました。これを受けて国内市場も大幅続伸となり、日経平均は8500円台を回復する展開になっています。
上昇転換に期待したいところではありますが、チャート上では、短期的な売られ過ぎのリバウンド状況と考えられます。
ポイントは移動平均線の角度で、25日、75日ともに下向きになっていることから、上昇トレンドに転換するためには、時間がかかる可能性があります。加えて決算発表が始まったばかりのため、決算がひとまわりするまでは短期資金中心の相場展開になる可能性もありと思われます。
◆決算発表で急落した「良い銘柄」
昨日、キヤノンが決算発表をきっかけにして急落しましたが、本日は東証マザーズ市場のサイバーエージェントが決算発表でストップ安売り気配になっています。
同社は新興市場の銘柄ではあるものの、マザーズ市場の時価総額でダントツのトップであり、東証一部の古河電工や住友大阪セメントなどの有名な会社よりも時価総額が大きな会社ですので、株式市場全体にも影響を与える銘柄といえます。
そして、両者に共通しているのは「発表されている業績が良かった」という点です。
四季報のコメントを見ますと、「増益」「増額」「増益幅拡大」「増配」「最高益連続更新」といった魅力的なことばが並んでいます。コメントを見て判断するなら、業績面で安心できる銘柄になりますが、両者ともに今回の決算発表で増益幅が小さくなったために急落しています。
個人投資家が業績が良いという判断は、四季報などのすでに発表されている情報をもとに判断していると思います。しかしながら、個人投資家が業績が良いと判断できる銘柄であれば、市場に参加している投資家がみんな知っている材料ですから、すでに株価が反応しているはずです。
業績が良いから株価が上がるのではなく、将来の業績と今の業績と比較して、今の方が安いから株価が上がります。四季報などに出ているコメントは「将来ではなく過去」のため、株価を大きく動かす材料とはいえません。
将来の業績と比較する投資方法を「グロース投資」と呼びます。株価がこれから上昇するかどうかを「将来の企業業績やその銘柄に関するニュースを調査する」ことによって「今の株価が将来の株価に比べて割安か?」を判断する方法です。
オーソドックスな考え方なので、「株式投資=グロース投資」と考えている方が多いと思います。ただし、グロース投資の最大の欠点は「将来のことは誰にもはっきりと分からない」ということです。
◆決算シーズンを迎えた個人投資家の心構え
キヤノンもサイバーエージェントも好業績だったために、「将来を期待して買っている投資家も多かった」と考えられます。そうなると、失望されたときの反動も大きくなるといえますから、誰が見ても業績が良い銘柄ほど、将来の期待も高くなり、期待に届かなかったときには反動が大きくなるリスクがあるといえます。
四季報に好業績と書いてあるのを知っているのは自分だけではありません。すでにみんなが見ていますので、わかっていることには投資家が対応しています。
おそらく、キヤノンもサイバーも優良銘柄だったために、投資信託など運用者が買って大きな損を出して売った分も多かったと思われます。つまり、個別銘柄の業績を予想して投資することは、プロや専門家でも難しいやり方といえます。
個人投資家が資産活用でお金を殖やす目的ならば、個別業績の予想をする必要がいらない日経先物を対象にする、業績に関係なく反発する株式市場の大きな下げを待つ、決算発表中は売買しないなど、個別銘柄のグロース投資をしないでも、自分が出来るやり方を選べばよいと思います。
レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明