政府が日本再生戦略で経済連携の推進や医療・介護分野での需要創出などで高い数値目標を掲げるのは、消費税増税が景気を冷やすだけでなく、財政再建のためには増税と経済成長を両立させることが不可欠だからだ。達成できれば、日本経済の重しであるデフレからの脱却や雇用拡大につながるが、目標実現の具体策への言及は不足しており、かけ声倒れの懸念もある。
政府は消費税率を平成26年4月に8%、27年10月に10%に引き上げる消費税増税法案の今国会での成立を目指している。ただ、増税は個人消費の落ち込みなどで、景気に与える影響が大きい。
成長の減速は税収減にもつながることから、法案は「経済状況の好転」を増税の条件にし、景気が悪化すれば増税を停止する景気弾力条項に、「名目3%、実質2%程度」の成長率を努力目標で盛り込んだ。
政府は増税の可否を実施の半年前に最終判断する方針で、まずは25年秋の経済状況が焦点だ。24年度は東日本大震災からの復興需要などが景気を牽(けん)引(いん)するが、欧州債務危機や円高を受けた輸出の減少など、下ぶれリスクは少なくない。
日本再生戦略は成長の道筋を確かにする狙いがある。そのために、デフレ脱却に向けた関係閣僚会議や、成長ファイナンス推進会議などの場で、具体策を詰めてきた。
だが、再生戦略の柱である経済連携協
定の拡大をみても、締結国との貿易割合を80%まで引き上げるのは、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を実行しないと達成できない」(経済官庁幹部)。しかし、TPPは交渉参加表明で他国に出遅れ、民主党内の反対意見も根強くある。
双日総合研究所の吉崎達彦副所長は、経済連携の推進を評価しながらも、「農業分野などで妥協する必要があり、実現は簡単ではない」と指摘する。
再生戦略は、22年6月に菅直人内閣が策定した「新成長戦略」を焼き直した項目も多い。新成長戦略自体、376項目のうち、成果の出ていない政策が約9割に上っている。