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烏合庵奇譚

Welcome to Raven's roost
渡烏の戯言など… お聞き流し下さい.

“磯つぶ”を煮付ける

2010-05-02 19:58:44 | 烏合庵の食卓
GW.取りあえずの休みはつれあいとスーパーに食材の仕入れ.私のチョイスは小振りな“磯つぶ”と“行者にんにく”.先ずは磯つぶ,仕込みましょう.


白糠産“磯つぶ”.ヒメエゾボラ(=青つぶ)を磯つぶと呼ぶ場合もあるが,これはエゾバイ.青つぶは唾液腺(アブラ)を下拵えで取除く必要があるが(補追参照),エゾバイはそのままでも大丈夫のようだ.殻ごとざらっと煮付けることにする.

殻ごとのつぶの煮付けは,下拵えに尽きる.と言っても,包丁仕事は別段必要ない.要は流通過程で溜まった老廃物とストレスを除き,リラックスさせてやることだ.臭みが和らぎ,身離れも良くなる(と,私なりには思う).
冷たい水で2~3度研ぐように洗ったら,海水より一寸薄目の点塩(2%強)で2~3時間は“砂抜き;とは言え砂などは殆ど出ない”してやる.点塩に移したら2~3分様子を診て,貝が蓋を緩めていればシメたもの.硬く閉じたままなら点塩が濃いか薄いかなので加減してやる.途中で一度,点塩を取り替えるのがベスト.


頃合になったら,昆布を水出ししておいた鍋を中火に掛けて沸き端に酒少々を加え,つぶを点塩から上げて鍋に入れる.この時,つぶの水気を確り切ろうと笊に上げて強く振ったりしてはいけない.貝が意固地になってしまう.優しく指で掬い上げ,素早く鍋に移す.点塩を取り替えたのはその為だ.コツはそれだけ.煮立ったらとろ火に落しあくを引いて5~6分(砂抜きが上手くいけばあくは殆ど出ない;画像はあくを引く前).その間に昆布を一度上げて細目の短冊に切って鍋に戻しておく.


煮汁の味をみたら,味付けはお好みで.拙庵では薄味が好みなので,塩で吸い地ほどのアタリを付け,少量の醤油と味醂で調える.一片の生姜を浮べてそのまま10分程炊いたら火を止めて粗熱が取れるまで休ませる.食べ際に中火でさっと温めれば,“磯つぶの煮付け”,完成です.


うん,コレ美味しい.小振りながらつぶ特有の旨味があり,青つぶよりも身質が柔らかくて食べやすい.殻からの身離れが良く,私の好きな“うろ(ワタあるいはキモ)”までつるんと取出し易いのも美点である.特筆すべきは煮汁に出た出汁.クセの無い旨味に富んでおり,薄味に仕立てればごくごくと飲めるほどに美味い.これを楽しむのならば,生姜はごく控えめにしたほうが良いだろう.余ったら,油揚と青菜の煮浸しなどでゼヒ使い切りたいところだ.ひろうす(がんもどき)を炊いても好いかも.
ちなみに“灯台つぶ(イトマキバイの仲間何種か:オオカラフトバイなど)”も同じ要領で拵え煮付ける.身はさらにしっとり柔らかくつるりとした食感でこちらも大好きなのだが,些か身離れが悪く,うろが貝に残ってしまいがちなのが癪の種だ.それでも,見掛けたらまた,買っちゃうんだろうなぁ (^^;)ゞ

補追;つぶ貝の唾液腺(アブラ):
“つぶ”の仲間で肉食性の強い奴等(真つぶ=エゾボラ・青つぶ等)は,獲物を捕える為,唾液腺に麻酔性のテトラミンと言う物質を持つ.ヒトにも作用し,熱にも強いので,種類によっては余程喰い過ぎれば重篤な症状を来たす事もあるらしい.唾液腺は身に埋もれているため,切り開いて取除く.場所さえ分かっていれば,煮付けなどでは調理後食べる時に除けても大きな問題は無いと思うが,他の人にお勧めするときには取除いておくべきだろう.
“内臓に毒”と言うことで“うろ”を外せば良いと誤解されることもあるようだが,うろはテトラミンとは無縁で新鮮なものはこっくりと美味しい(本人比)ので,間違って捨てるのは勿体無い気がする.なお,うろの大部分(灰色の部分)は中腸腺(または肝膵臓)と言って,肝臓や膵臓などの働きを持つ器官である.脇に張付いた黄色や白っぽいところは生殖腺(黄=卵巣・白=精巣)で,卵巣は成熟すれば半透明の塊状になる.夫々に美味しいので,意識して味い分けるのも面白いかと思う.
コメント
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