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昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやKS 5YC-491

2007-07-14 | 東芝 かなりやシリーズ

 
        
 「フロントパネルとキャビネットは、ネジ止めではなく熱溶着されちるため、取外して磨けないのは不満が残る。(←店長、やり過ぎ!)」
と愚痴を洩らしていたところ、このカフェにお立ち寄りいただく I様から次のようなメールをいただいた。
『ところで フロントパネルですが裏から大きめのマイナスドライバーを当てて 木槌で軽く順番に叩くと以外と簡単に外れます。最初はチョットこわいですが、まだ失敗した事はありません。いちどジャンクでためしてみてはどうでしょうか。。』
実は、この Iさんのご出品されている かなりやをボクが落札し、あまりに素晴らしいレストアを施されていた出来ばえに感動し、感想をお送りしたところ、Iさんも当カフェをお読みいただいていることが分かり、お互いにビックリしたという経緯がある。さっそく教えていただいた方法を試みたところ、見事にフロントパネルを取外すことができた♪ Iさん、本当にありがとうございます。
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 東芝かなりやシリーズの生産ピークである昭和35~36年(1960~61年)には、同一シャーシと回路を流用し、キャビネットだけを変えて機種名を変更するという販売戦術が用いられた。昭和35年発売の かなりやKSと かなりやLS、翌年発売のかなりやOS、かなりやQなどがそれにあたり、今回は貴重な「箱入り」の かなりやKSをご紹介する。
          
 機能的な差のない真空管ラジオの世界でも、生産・開発コストを抑えた大量生産方式が採用され、中身は同じでもキャビネットの形状やカラーリングの種類を増やすことで、消費者の購買意欲を刺激するには十分な時代だったのではないかと思われる。
先に述べた4機種はいずれも複数のカラーキャビネットがラインアップされるとともに、経済性(低価格)を謳い、高度経済成長の中で新たな都市文化の担い手となった若年労働層、学生、主婦などの個人所有をターゲットとしていることがうかがえる。
           
 入手した かなりやKSは、貴重な『箱入り』である。このキレイに保存されていた元箱に、当時 かなりやKSを購入された方の“思い”が偲ばれる。
昭和30年代の高度経済成長期、地方の学校を卒業後上京し、昼間は働きながら夜間高校に通い、コツコツと貯めた給料で購入された大切なラジオだったのかもしれない。
          

 かなりやKSのキャビネットは、正面から見ると逆台形に緩やかなラウンドを加えたフォルムであり、ホワイト塗装された前面を透明プラスチック素材のフロントパネルで覆った、従来の かなりやシリーズには見られないデザインである。周波数表示インジケーター部分のカバー、右下に並ぶ3つのつまみの装飾をゴールドであしらい、キャビネットとのコンビネーションも洒落ている。また左上に取付けられた七宝焼きの「Toshiba」エンブレムが、低価格の大量生産品でありながらも、ラジオ自体はまだまだ安価とは言えない耐久消費財であったことを物語っているように思え、興味深い。
          
 オークションでも「元箱入り 真空管ラジオ」は、整備済みであれば数万円というかなりの高値で取引されているが、出品期間が短く かなりやコレクターの方々の目に触れなかったせいか、何と!いつもの予算内で落札できた。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやKS 5YC-491

 サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約30cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやKSは、元箱もしっかりしており、キャビネットの損傷、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない。ただ何十年も放置されていたのだろう・・・フロントの透明パネルとキャビネットの間にはたくさんの埃が堆積し、写真では分かりにくいが汚れも酷い。
          
 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上の真空管やIFT、バリコンには埃が大量に堆積しており、この46年間放置されていた かなりやKSの姿に、いわゆる“団塊の世代”と呼ばれる人々が過ごした青春と現在の姿が交錯し、また逆に今、毎日山のような仕事を抱え込んで将来が見えない自分の姿も絡み、いろいろと考えてしまう。
          
 ツマミを抜き、イヤホン端子の止めネジ、シャーシ、スピーカーを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。しかしまぁ、いつものことながら、キャビネットの中はすごい埃と汚れだ。
          
 シャーシーと内部の埃はOAクリーナーで吹き飛ばし、真空管を抜いて平筆を使って丹念に清掃しながら、目視点検を行なった。このくらいキレイになれば気持ちいい。また部屋の中での作業も苦にならない。
          
シャーシー内部は埃も少なくキレイだが、信頼性の低いペーパーコンデンサーの表面は溶解しており、危険かつ見苦しい。電源を入れる前に、テスターで各種導通をチェックしたところ、とりあえずOK。電源スイッチをONにすると、パイロットランプと真空管のヒーターがオレンジ色の光を放ち、淡く点灯した。30秒ほど経過し、煙も出ないが音もまったく出ません・・・(T_T) 
          
 まったく音が出ないのは、出力トランスの1次側の巻線の断線、イヤホンプラグの接点の不良、スピーカー・コイルの断線、出力トランス1次側に並列で付いているコンデンサーのショート等が考えられますが、テスターで調べてもいずれも問題なし。どうしちまったんだろ・・・ シャーシ内の電圧を測定していると、電力増幅管30A5のカソードに電圧が出ていない。どうするべきか・・・ とりあえず真空管を正常な30A5、12AV6に交換してみたが、反応なし・・・。とりあえずB電圧を測定してみたところ97Vあるので問題ないのだろう。12AV6と30A5をつなぐカップリングコンデンサを交換してみたが、やはり音は鳴りません。
 各プレート電圧を測ろうとしたところ、テスター棒でショートさせてしまい、PL(パイロットランプ)とヒューズを飛ばす失態ま犯してしまった。朽ちたゴムブッシュとPL、ヒューズを交換し、再度電源を入れると、またパイロットランプが飛んでしまった。どんどん事態は悪化してしまう。(T_T) 整流管35W4は完全に逝ってしまった。
          
 ただでさえ鳴らない かなりやKSに途方に暮れ、読者の方々から暖かいアドバイスを頂戴しながらも、完全に戦意喪失・・・ もう放心状態です。(´Д`)トホホ 
ちょうど かなりやHを手に入れたこともあり、かなりやKSの修復は一旦休止。仕事も繁忙期で出張の多い時期とも重なり、敵前逃亡を図っていたのだが、「壊し屋 店長」の窮状を見かねた“音響の匠氏”から救いの手を差し伸べていただき、無事修復することができた。電源回路のショートと30A5につながる抵抗2個の不良、バンド切替スイッチの接触不良が原因だった。
        
 とりあえず無事、鳴くようになった かなりやKSだが、スピーカーからの音が歪む。スピーカーのコーンのエッジに破れはないし、どうしたんだろう・・・? 回路が悪いのか、普段のボクの行いが悪いのか、取り替えるためにジャンクのかなりやから外した楕円形のスピーカーは、見事にコーンが破れている。やっぱボクの普段の行ないが・・・ と凹んでいると、イヤホンジャックに接続してあるはずの黄色の配線が外れている。
ここをハンダ付けすると。。。見事に正常な音で鳴りました♪出力管30A5のカソードバイアス電圧もちゃんと出ています。
        
 ここでようやく掃除屋店長の出番だ。(笑) 希釈したマジックリンとハンドタオルで丁寧に汚れを落とし、乾燥後、樹脂の保護と艶出しのためにプラスチッククリーナーで研磨する。時間はかかるが、プラスチック製キャビネットを痛めないで表面を活性化する一番の方法である。かなりやKSの特長でもある前面を覆った透明プラスチック製フロントパネルは、眼鏡拭き布を使い、丹念に磨く。ただフロントパネルとキャビネットは、ネジ止めではなく熱溶着されちるため、取外して磨けないのは不満が残る。(←店長、やり過ぎ!)
        
 そんな愚痴を洩らしていたところ、このカフェにお立ち寄りいただく I様から次のようなメールをいただいた。
『ところで フロントパネルですが裏から大きめのマイナスドライバーを当てて 木槌で軽く順番に叩くと以外と簡単に外れます。最初はチョットこわいですが、まだ失敗した事はありません。いちどジャンクでためしてみてどうでしょうか。。』
実は、この Iさんのご出品されている かなりやをボクが落札し、あまりに素晴らしいレストアの出来ばえに感動し、感想をお送りしたところ、Iさんも当カフェをお読みいただいていることが分かり、お互いにビックリしたという経緯がある。さっそく教えていただいた方法を試みたところ、見事にフロントパネルを取外すことができた♪ 再度洗浄し、取外したフロントパネル裏側とキャビネットの間やスピーカーグリルに残っていた汚れをキレイに取り除くことができました。Iさん、本当にありがとうございます。
        

 無事に取外したフロントパネルを磨きながら、週末の深夜前、地元の民放ラジオ局で大阪・ABCラジオ(朝日放送)制作のラジオドラマ『流星倶楽部』を聴く。『流星倶楽部』は、小学館発行の青年向け漫画雑誌『ビッグコミックオリジナル』に連載されている弘兼憲史の劇画『黄昏流星群』(たそがれ・りゅうせいぐん)を原作にしたラジオドラマシリーズである。
        
            【店長愛蔵の弘兼憲史作品集】

 この作品は40代後半以降の中年・熟年・老年を主役に据え、恋愛を主軸に人生観などを描いた短編漫画集であり、老いゆく過程で光り輝くという意味から、英題は『Like Shooting Stars in the Twilight』。年齢を重ねれば、定年を迎えたり、病気になったり、離婚を考えたり・・・これらを経験することにより、生に対する捉え方は変わり、今この瞬間を生きることの大切さを発見することになるのだろうし、「年を重ねるほど、恋愛も深まり楽しめる!」「こんな恋もあるんだ!!」といずれ自分たちも達するその世代への理解と感動を味わえる作品(番組)である。

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやH 5LD-124

2007-07-02 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝かなりやシリーズは、初号機のかなりやA以外、後の同シリーズはすべてトランスレス・タイプになり、機種の変遷を辿ると時代に沿った回路設計が施され、興味深い。今回は、かなりやシリーズで最初にトランスレスタイプの標準である12BE6-12BA6-12AV6-30A5-35W4の回路構成を採用した、昭和32年発売の中波専用機 かなりやHをご紹介する。
        
 かなりやAに続いて発売されたトランスレス・タイプの かなりやB・Cや かなりやDかなりやEでは整流管に25MK15、出力管に35C5が使われた。25MK15は、日本独自の真空管で、整流用の7ピン2極管。出力60mAのプレート特性は35W4と同一、パイロットランプ用のタップがなく、これを使うと35W4よりヒーター電圧の合計が低くなり、35C5を出力管に使う場合、ヒーター電圧がほぼ100Vになる。昭和30年代初頭のトランスレス機に使われているケースはあるものの、現在、25MK15の流通量は少なく、秋葉原やオークションでの入手は難しく、高値である。
        
 昭和32年に発売された かなりやFと かなりやGは、シャーシもボックス・スタイルから鉄板を垂直に立てたスタイルに変更。また整流管を25MK15から35W4に、変更したが、出力管は従来の35C5のままであった。12BE6-12BA6-12AV6-35C5-35W4の構成だとヒーター電圧の合計は108V近くになるから、日本の100V電源規格では都合が悪かったのだろうか、かなりやHからは出力管を電力増幅用5極管30A5に変更し、以後 12BE6-12BA6-12AV6-30A5-35W4の回路構成が標準的なスタイルとして確立した。
        
当時の広告を見ると、30A5を採用することにより、あたかも音質が飛躍的に向上したような表現が見られ、今日のエレクトロニクス分野の目まぐるしい技術革新のスピードと比べ、隔世の感がある。ホント、の~んびりとした、いい時代だったんですね~。今は家電製品やエレクトロニクス製品の性能に人が振り回され、ボクのようなアナログ世代は強迫観念さえ感じるだけに、ホッとさせてくれる。
                 
 昭和32年に発売された かなりやHは、「h」をモチーフにスリット加工されたフロントマスクと逆L型前面クリアパネルのコンビネーションが特徴的であり、初期のかなりやシリーズの中でもお洒落に進化したデザインだ。また絞込みの強い逆台形とその上面にラウンドをきかせたキャビネット、薄緑色の入ったグレーのキャビネットと小豆色のバックパネル、大小2つのツマミのカラーコンビネーションも、落ち着きの中に存在感をほどよくアピールしていて嫌味のないデザインである。初期から中期の かなりやシリーズに付く、赤い「マツダ」の七宝焼エンブレムに当時のメーカーの心意気、プライドを感じる。
        
オークションでは「通電はしないです。裏蓋はありません。部品取りに保管してた物ですが形的には良いので理解ある方入札お願いします。」とのコメントに引いてしまったのか、入札数は僅か。キャバクラ開店3周年記念半額キャンペーンの価格で落札できた。以前、同機種の入札価格が高騰し、¥15,000以上で落札されたことを思い返すと、「ホントにいいの?」という気分である。

 メーカー:東京芝浦電気(マツダ) かなりやH 5LD-124

 サイズ : 高さ(約17cm)×幅(約34cm)×奥行き(約13cm)

 受信周波数 : 中波専用 530KC~1605KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやHは、裏蓋はなく、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られないが、キャビネット天板のプラスチック自体に化学薬品が侵食したようなシミや汚れがある。
        
キャビネット内は清掃された様子はなく、大きな綿埃は少ないが、シャーシやバリコン、真空管には50年間の埃が堆積していて汚い。出品者から「通電はしない」とコメントされたこのラジオ、まずは電源スイッチをONにして、テスターで電源プラグから導通確認を行なったが、完全にアウト!どこかで断線している。
        
 シャーシ、スピーカーを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。埃はOAクリーナーで吹き飛ばし、真空管を抜いて平筆とアルコールを使って丹念に清掃しながら、目視点検を行なった。初期のかなりやシリーズは、かなりやA、Dを除きすべてバリコンに直接選局ダイヤルを取付けたタイプだが、この かなりやHは本格的な糸掛けプーリーを使った減速機構を持つ。
        
 続けて導通確認を行なうと、ヒューズはOK、真空管のヒーター切れか・・・整流管35W4を抜いて3-4番ピンの導通を調べると、やはりここで断線をおこしている。ということは・・・パイロットランプにつながる4-6番ピンも断線していた(T_T) すべての真空管のヒーター、出力トランスの導通を調べたところ他に断線は無く、とりあえず一安心。まずはパイロットランプと朽ち果てていたゴムブッシュを新品に交換し、次にヒューズと0.05μFのコンデンサーを交換、3-4-6番に断線のない正常な35W4を挿し込んで、電源を入れてみた。パイロットランプと5本の真空管のヒーターがやさしい光を放ち、点灯。はたしてこれだけの部品交換だけで復活するのだろうか・・・ 
        
 電源投入後、スピーカーから空電ノイズとともにNHKのニュースが聞こえてきた。選局ダイヤルをゆっくり回すと、複数の放送局が聞こえてくる。単なる35W4の球切れだったようだ。  (=´∇`=) ただバリコンの羽根同士が接触するのか、選局ダイヤルを回すとバリバリという内部雑音が聞こえてくる。エレクトロニクス・クリーナーでバリコンを洗浄し、ゴムブッシュを交換しておいた。
        
今後の安全のため、また球切れ等のリスクを低減するために、ペーパーコンデンサ5個を順次、ラジオの性能を確認しながら一つひとつ新品のフィルムコンデンサに交換した。IFTに接続されている0.05μFを交換すると、固体数値の違いのためかバリコン主軸に指を触れるだけで受信音にハウリングが起こる。調整すれば直るのだろうが、ペーパーコンデンサに戻すと元通り快適に受信できた♪
        
 希釈したマジックリンを使い、キャビネットの洗浄・清掃を行なった。コンパウンドとプラスチッククリーナーを使い丹念に研磨したため、50年間の汚れはキレイに落ち、ピカピカに光っている。修復を終えた50年前のラジオの乾いた音色を聞きながら、無心にキャビネットを磨いている間は、まさに“男の至福の時間”である。
        
 このところ連日の深夜におよぶ残業と出張で少々お疲れ気味の身体では、たまに9時過ぎに帰宅し、シャワーを浴びた後でもテレビを見る気力さえ湧かない。窓を開け、梅雨の湿った空気を肌に感じながら、セブンスターに火をつける。昨日、修復を終えたばかりの かなりやHの電源スイッチを入れた。感度は上々、東京・名古屋・関西・九州の大出力局を快適に受信する。
 雑音混じりの音楽や楽しげなトークを避けて、ゆっくり選局ダイヤルを回すと、落ち着いた雰囲気の女性パーソナリティがその日に起きたニュースをランキング形式で紹介している番組にボクの指は止まった。
          
OBCラジオ大阪1314kHzの『News Tonight いいおとな』(月~金曜日 21:00~22:30)では、産経新聞グループの全面協力を得て、コラムニストらがアンカーマンとして解説を加え、またMusic Cafeのコーナーでは、懐かしの名曲や最新の音楽など、「大人」世代が満足するエンタメ情報を交え番組は進行する。一日の終わりに「ニュース」と「音楽」でクールダウンしていく・・・バーアンテナを内蔵した かなりやHは、この大人のための番組に似合うラジオである。

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやE 5LA-77

2007-05-07 | 東芝 かなりやシリーズ
 真空管ラジオは、四角い箱の正面に2~3個のつまみ、周波数表示スケールまたは円盤状のチューニングダイヤル、スピーカーが並ぶ。多少の差はあっても、それが当たり前のように真空管ラジオの“顔”として、人々に認識されている。その常識を覆すラジオを東芝が世に問い、発売した機種の一つが、今回ご紹介するかなりやEである。

 当初発売された かなりやシリーズ、かなりやA~Fの中でも、かなりやEは、正面にV字型にスリット加工されたキャビネットと、ラジオを手軽に持ち運ぶためのクロムメッキの金属製可倒式キャリングハンドルを組み合わせることにより、造形美と機能美を融合した秀逸なデザインだ。

           
          独創的なデザインと機能美が融合した かなりやE

 とりわけ先行発売されていた5LA-28を踏襲した かなりやEと かなりやCは、ボクシーなキャビネットの上面に電源スイッチ兼音声ボリュームと選局つまみをレイアウトしたユニークなデザインであり、従来の日本製真空管ラジオには見られない極めて独創的なスタイルだ。
 
          

 ’60年前後を境に、家族で楽しむ娯楽の中心はラジオからTVへと移行し始め、ラジオもパーソナルな娯楽ツールへとシフトする過渡期にあった。東芝は、マーケットの活性化を狙い、既成概念を覆すピアノラジオ、タイマーラジオ、5LA-28、地球儀ラジオといったユニークなコンセプト&デザインのmt管ラジオを次々と送り出していた。

          
          【左上:ピアノラジオ 右:タイマーラジオ 左下:5LA-28 右:地球儀ラジオ】

 実は かなりやEのデザインは、マツダ・タイマーラジオと共通した手法であり、V字型にスリット加工された正面の造形、透明プラスチックにシルク印刷したチューニングダイアルの採用など共通点が多く、同じデザイナーが担当した作品と思われる。アメリカン・テイストをベースに、日本人の感性を満たすオリジナリティーを加味しつつ、製品としての完成度を高めた担当デザイナーのセンスと力量をうかがい知ることができる。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)マツダ かなりやE 5LA-77

 サイズ : 高さ(約14cm)×幅(約25cm)×奥行き(約13.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25M-K15(整流)

 かなりやコレクターにとっては人気の機種であり、今回は不動品のジャンクにもかかわらず、競合相手が降りてくれなければ諦めるギリギリのライン(居酒屋2軒分 or キャバクラ1セット+指名料)の金額で何とか落札できた。
最近は余程のことが無い限り、夜の街に出動することもなくなった・・・・ 俺ももう年か?高齢化! (ー。ー)フゥ

          

 宅急便で届いた かなりやEは、何十年も放置されていたのだろう・・・キャビネットの汚れは酷く、金属製キャリーハンドルも僅かに歪んでいる。キャビネット底に1cm程度の損傷がある以外は、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない・・・と思ったら、ガ~ン!底の欠けた部分からキャビネットサイドと底部へ2本、約10cmの亀裂が入っている。

          

 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット内部の天板は歪曲し、取り付け金具の一部から錆びも浮いている。シャーシ上の真空管やIFT、バリコンには埃が大量に堆積しており、かなりやEの今の姿は、「ひび割れた二人の愛」のようで、切なさが込み上げる。若い日、ほんの僅かな行き違いから、別々の道を歩んだ男と女の時間を取り戻すように、このラジオを修復することを決意した。

          

 透明プラスチック製チューニングダイアルとボリュームを破損しないよう丁寧に抜き取り、シャーシーをキャビネットに止めているネジを2本外すと、シャーシは簡単に取外せたが、キャビネット内側の亀裂とともにシャーシの止めネジ穴用プラスチック成型加工部分がケースから割れ落ちている。ジャンク品のノークレーム・ノーリターンとはいえ、キャビネットに亀裂などがある場合は、出品時にその旨を開示しておくべきではないだろうか。キャビネットのプラスチック自体が硬化しているのであろう、底の割れた部分からクラックが増えてくるため、接着剤で補修と補強を行なった。

          

 キャビネット内部の天板は何と厚紙でできており、その上にフェライトバー・アンテナが乗っている。真空管からの遮熱効果と、フェライトバー・アンテナに金属類からの干渉を防ぐ目的なのだろうが、ビックリした。
シャーシには50年間の埃が堆積し、付着した汚れも酷い! ここは掃除屋店長の腕の見せ所と言いたいところだが、アルミシャーシやブラケットは腐食が進み、手におえそうにない。。。

          

 シャーシー裏側は、錆びもなく意外とキレイだが、信頼性の低いオイルコンデンサーが使われており、全品交換した方がよさそうだ。キャビネットを小型化するためにブロックコンデンサーもシャーシ内部に取り付けられているため、部品点数の割には込みあっている。
 電源を入れる前に、スイッチをONの状態で導通と抵抗値を計るためにテスターを当ててみたが、ヒューズ切れではないのに反応が無い。何と硬化したAC電源コード自体が断線している。すべてマツダ・ブランドである真空管のヒータ断線も調べてみたが、こちらは幸い5本すべて導通もあった。ただいずれにしても危険なラジオに変わりはない!
鳴かぬなら、鳴くまで待とう。。。では、剥製状態になるだけなので、今回は気合を入れてレストアにのぞむ必要がある。とは言え、果たしてボクの腕で修復できるのだろうか・・・不安とストレスが膨らむ夜だ。
 
「鳴かぬなら、鳴かせてみよう かなりやE!(C)ドクターK」の気持ちで、思い切って修復にトライしてみた。

          

 パイロットランプ(ネオン管)への配線は、台座自体が破損・断線しており、サトーパーツのS-4110というプラスチック台座ソケットに交換した。
次にAC電源コードとプラグを新品に交換。ヒューズまでの導通とヒューズ切れ出ないことは確認できたが、ヒューズ以降への導通が無い。ヒューズとソケットの金属部分に腐食による皮膜ができていたので、ヤスリで磨き、導通を確認後、通電したところ、真空管のヒータとネオン管は点灯したが、妙に明るすぎるのは気のせいか?!
案の定、スピーカーからはウンともスンとも音が出ない・・・ O.P.Tトランスの1次側の巻線の断線は問題ない。

 ここで、また一句、「鳴かぬなら、バラしてみよう、かなりやE!」

 O.P.Tトランス2次側とスピーカーのボイスコイルの断線を確認するため、スピーカーを取外した。O.P.Tトランス2次側の導通はOKだが、スピーカーは・・・? テスターの針はピクリとも動かない。ボイスコイル部分が赤茶色に錆びてしまい、完全に断線している。ワニ口クリップを使って正常なスピーカーを接続すると、空電ノイズらしい音が出てきた!ゆっくりバリコンを回すと、ガリガリゴソゴソという異音を伴ないながら、地元の民放中継局(出力1kw)がかすかに受信できる。心の片隅にくすぶっていた暗闇に一筋の光が射しこんだ気分だ。

          

 断線した純正品のパーマネントスピーカー 東芝製SP-5001A(4Ω)の代わりに、以前友人にラジオデパート3Fシオヤで購入してもらった、直径・穴位置ともにまったく同じ大きさのダイナミックスピーカー(8Ω)を取り付けたところ、ジャスト・フィット♪ 現代風の音になってしまったが、しばしネオン管と真空管の幻想的な灯りを眺めながら、ラジオドラマ「黄昏流星群」に聴き入ってしまった。
 バリコンのガリゴリ音の不具合対策とオイルコンデンサー類を全品交換する必要もあり、まだまだ苦難の道は続きそうだ。 

          

 バリコンのガリ解消のため、一旦分解後、朽ちてている絶縁スペーサーの代わりに水道パッキンOリングとワッシャを使い交換を試してみた。また製造から50年を経過している電源周りのオイルコンデンサーは、フィルム・コンデンサーに交換したのだが、バリコンの羽自体に腐食が発生しているのか、低い周波数でのガリは解消しない・・・。

          

 一方、ボリュームの音は絞りきれないが、ガリも酷くないためとりあえずオリジナルのままとした。正常な真空管と抜き差ししながら比較してみると12AV6(検波&低周波増幅)の性能が低下していたので交換後、ケースに組み込んで様子を見ていると、突然スピーカーの音が途絶え、焦げたような臭いがしてきた。コンセントを抜き、裏蓋を開いてみると、うっすら煙がたちこめている。このところ同様のケースを経験しているだけに、思いっきり不安になる。

          

 とり急ぎ受信できない不具合を解決するために、バリコンとボリュームを取付けてあるブラケットをシャーシから取外し、バリコンも一旦ブラケットから取外し、分解した。バリコンの絶縁スペーサー(ゴム)はすべて朽ち果て、完全にショートしている。

          

 前回、水道パッキンOリングとワッシャで修復したつもりの箇所もワッシャの使い方を間違え、機能していない。今回は、ゴムブッシュを使って確実に絶縁処理を行ない、またバリコンの羽根も工業用アルコールで洗浄してみた。
不安な気持ちいっぱいのまま、再度、電源を入れると、空電ノイズとともに地元の民放ラジオ中継局と隣町のNHK中継局が入感してきた。

          

 イヤホン/スピーカー切替スライド・スイッチは経年劣化し接触が悪く、ちょっとした振動でノイズを発生するため新品に交換し、オイル・コンデンサも全品交換した。若干ハムノイズが気になるので、ケミコンも交換した方がよさそうだ。
かなりやEにはフェライトバー・アンテナがついており、バリコンの洗浄を行ないガリを解消する前は、地元の放送局だけではなく、昼間でも瀬戸内海を隔てた四国の民放ラジオ局も入感してのに、再度鳴り始めてからは感度がイマイチ低下した雰囲気・・・調整が必要なのか?

          

 修復が一段落したところで、希釈したマジックリンを使い、キャビネットの洗浄・清掃を行なった。50年間の汚れはキレイに落ち、プラスチッククリーナーで丹念に研磨したため、ピカピカに光っている。

          

 補修と清掃したキャビネットに、修復を終えたシャーシを組み込んだ写真を見比べていただきたい。汚れと黄ばみで酷い状態だった当初の かなりやEは、見違えるように甦った。このラジオのレストアには七転八倒、苦労も多かっただけに、ちゃんと鳴ったときの喜びは口では言い表せないものがあります。また先行き不安で諦めそうになったとき、激励くださった諸先輩に深く感謝いたします。

          

 バルコニーに修復したばかりの かなりやEを持ち出してスイッチを入れてみた。
チューニング・ダイヤルをNHKに合わせると、日本国内にはラジオ第1放送、海外にはNHKワールド・ラジオ日本(短波)を通じて全世界に同時生放送されている「地球ラジオ」が放送されていた。世界中で放送を聴いている聴取者から送られる、EメールやFAX、手紙を放送の中で紹介し、音楽を交えながら、世界各地に暮らす日本人リスナーからの情報や話題をリアルタイムで聴ける地球規模の双方向トーク番組だ。
 
          

 開け放した窓から射しこむ5月の光を浴び、心地よい風に吹かれながら、レストアしたばかりのラジオから流れる音楽やトークをゆったりした気分で聞き流す自分だけの時間は、ある意味、最高に贅沢な空間だ。

東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやD 5MB-56

2007-05-04 | 東芝 かなりやシリーズ
 1954年頃、東芝は、ラジオに鳥名の愛称をつけ、高級大型機種を「めじろ・かっこう」中型は「うぐいす」卓上小型は「かなりや」と命名、シリーズ化して次々に新型機の発売を始めた。最初に発売された かなりやAからFまで6機種は、オークションでも人気は高く、相場も2万円以上に高騰することがある。

          

 当初発売されたかなりやシリーズは、 かなりやAからFまで6機種だが、当時のパンフレットを見ると、AおよびB型の記載は無く、この2機種の発売期間は短かったと推察される。かなりやAはトランス付で同調バリコンに減速機構もあるが、かなりやBはトランスレスであり、減速機構も無く普及型という印象だ。つまりA型の構造設計にB型のトランスレス回路を組み合わせたスタイルが、今回ご紹介する かなりやDである。
また かなりやシリーズが発売される以前に5LA-28という型番で、後のかなりやC、かなりやEのプロトタイプになる特長あるデザインの機種が発売されている。

          
       【左上】かなりやA 【左下】5LA-28 【右上】かなりやD 【右下】かなりやF

かなりやA(トランス付き、減速機構付き)+かなりやBトランスレス、減速機構なし)÷2=かなりやDトランスレス、減速機構付き
5LA-28型⇒ かなりやC(トランスレス、減速機構なし)⇒ かなりやE(キャリー型)
かなりやBトランスレス、減速機構なし)⇒ かなりやF(トランスレス、減速機構なし)

このように黎明期の かなりやシリーズは、設計思想を模索する一方、機種ごとに独自性のある製品を送り出していたと言える。

          

 インターネットオークションを通じて「かなりや」の捕獲にいそしむコレクターの方々は、途方も無い金額でも入札される。このところかなりやコレクターなら絶対手に入れたい機種を何度もとり逃がしていたが、今回はいつも入札で涙することになる競合コレクターの方から高額入札がなく、あっさり落札できた。
 自由主義経済の原則として、可処分所得の多い方の手元に渡ることになるが、いつも高額入札される方がすでにゲットされた後日、適正価格(居酒屋1回、キャバクラ1セット分です♪←しつこい店長!)の出品があるまで待つ作戦がベストと悟った。

 かなりやコレクターの皆様、「もしこのブログを読んでらっしゃったら、お手柔らかにお願いしま~す♪」

          
 
 かなりやDは、かなりやAの流れをくむデザインだが、障子の格子を思わせるスピーカー・グリルとサランネットの組み合わせはいただけない・・・。かなりやAの「無骨な潔さ」をどうはき違えたのか、ボクの本職であるインダストリアル・デザインの視点から見ると、残念ながらNG、不合格。しいてフォローするなら、当時はコンペの概念が浸透していなかったため、契約デザイナーはクライアントの要求に従い、和洋折衷、ジャパネスクのイメージを狙ったのかも知れない。ダークグリーンのボディとゴールドのサランネット・銘板塗装のコントラストもイマイチしっくりこない。

          

 正面向かって右上の白い箱は、後付けされたパッシブ・タイプの短波受信用コンバーターである。昭和29年(’54年)NSB日本短波放送(現在のラジオNIKKEI)の開局にともない、高価なオールウェーブ・ラジオに代わって短波の普及を担ったのが短波コンバータ/NSBチューナーだった。 短波コンバータにはアンテナ端子に出力を接続して使用する真空管タイプと、バリコンに短波用コイルを並列に接続して使用する簡単なパッシブ・タイプがあり、後者が安価なためよく使われたようだ。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやD 5MB-56』

 サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約32cm)×奥行き(約13cm)

 受信周波数 : 中波専用 530KC~1650KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25MK15(整流)

          

 オークションで落札後、届いた段ボールを開梱しまず外観からチェックを開始した。
キャビネット、裏蓋、フロントパネルとサランネットのいずれも経年による汚れはあるものの酷いダメージは無く、50年前のラジオとしては比較的キレイだ。
 裏蓋を開けると、キャビネット内にはクモの巣、シャーシやバリコンには50年間の埃が堆積している。真空管はすべてマツダ製、この時期の機種は現在では手に入りにくく流通価格の高い整流管25MK-15が使われているため、状態が心配です。

          

 以前格安で落札したピアノラジオ 5BA-50では、正規の35C5(電力増幅)、25M-K15(整流)が抜かれ、代わりにヒーターの断線した30A5、35W4が差し込まれ、修復に苦労した苦い経験がある。しかし今回の かなりやDは、コレクターの手を経ていない初出し品であり、すべてマツダブランドの純正品が使われ、ヒーター切れも無く一安心。

          

 キャビネット表のボリュームつまみ、周波数同調つまみ、周波数表示円盤プレートを抜き取り、キャビネット裏側の止めネジ2本を外すと、スピーカーと一体構造になったシャーシーを簡単に取り出すことができる。50年の間に堆積した埃を刷毛とOA用エアクリーナーで吹き飛ばし、軽く清掃。

          
          【写真左】かなりやA      【写真右】かなりやD
 写真の通り、以前にもご紹介した かなりやA(写真左)と同型のシャーシーが使われている。かなりやDでは、かなりやAにて採用されていた黒いオートトランスが無くなり、バリコン上にフェライトバーアンテナが取り付けられている。

          
          左から12BE6 - 25MK-15 - 12BD6 - 12AV6 - 35C5
 清掃したシャーシー上には、マツダ製のmT管とマツダと刻印されたIFT、バリコン等が整然と並ぶ。かなりやAではシャーシー中央に電源回路を配置したため、通常のトランスレス式と異なり写真中央のIFT左隣に整流管が配置されたなごりから、かなりやDの整流管25MK-15も同じ位置の変則レイアウトとなっている。

          

 シャーシー裏側は、埃も少なく意外とキレイだ。目視点検のみで通電テストに移ることとした。毎度の事ながら緊張の走る一瞬だ・・・  意を決してスイッチON!!パイロットランプ(ネオン管)と真空管のヒータが点灯し、スピーカーからブゥ~ンという若干のハム音が聞こえる。周波数同調つまみを回すと、隣町のNHK中継局(1kW)は受信できず、市内にある民放中継局1局のみ受信できた。
 ボリュームのガリ音が酷い。とり急ぎ500kΩボリュームとオイルコンデンサを全品交換してみた。その中に1個、「0.1MF」と書かれたペーパーコンデンサが配線されており、どうしたものか困惑してしまう。(^。^;) ハテハテ? 回路図を見ると0.1μFのコンデンサのはずだが・・・完全な誤植だ。記念写真を写し、0.1μFのフィルムコンデンサに交換して一件落着。
 しかしこの誤植事件、実は大いなる勘違いでして「昔のコンデンサーはμFではなく、MFと記載されていますよ。誤植ではありません。マイクロのMです。回路図も同じです。」という、ご指摘をいただいた。いやはや、思い込みとは怖いもので、知ったかぶりして、無知を晒す赤面&切腹ものの赤っ恥ですが、これも「なんちゃってレストア・ワールド」ならではの珍事として笑ってやってください。

          

 新品の500kΩボリュームは、案の定、シャフトが短く延長が必要だ。後でオリジナルのボリュームを分解・清掃し、再使用できないか検討することにして、とり急ぎ回路の修復に注力する。まず真空管を抜いてシャーシー上をアルコールとティッシュ、綿棒を使い丁寧に拭き掃除した。全部の真空管のピン足をヤスリで磨き、ストレーナーで曲がりの補正を行ない、真空管ソケットもラジオペンチで締めた。硬化した電源コードも交換しておいた。
シャーシの内部もこれくらいスカスカだと、不器用なボクでも部品の交換が楽だ。

          

 オリジナルのボリュームのシャフトと新品ボリュームも金切鋸を使って各々切断し、内径6mmのアルミパイプを介して延長した。アルミパイプをカシメようとしてセンター出しに何度か失敗。結局、金属用強力接着剤を使ったが、いつまでもつことやら・・・。ボール盤で1mm程度の穴を開け、ピンを差し込めば完璧だが、しばらくこのまま様子を見よう。

          

 夕日の落ちた午後7時、配線も完了し、再度、電源を入れると、ボリュームのガリ音も消え、ネオン管がやさしく点灯する。しばらくすると空電ノイズが聞こえ始め、チューニング・ツマミを回すと地元の民放、NHK中継局に加え、福岡のKBCラジオとRKBラジオ、名古屋のCBCラジオのプロ野球中継が聞こえてきた♪ レストア以前より格段に性能は向上している。ただ1000kHz以下の感度がイマイチ芳しくないため、調整すればもっと高感度な性能も期待できそうだ。

          

 仕上げにいつもご指導いただいている修復の達人様から譲り受けた絶縁抵抗計(サンワ PDM-506S)で、電源コードと今回のフローティングアースのトランスレス・ラジオは電源コードとシャーシ間の絶縁抵抗を測定した。使い方は簡単、絶縁測定物をワニ口で絶縁抵抗計に接続して、測定ボタンを押すだけです。測定中はDC500Vが掛かるので、感電に注意です。ちなみにPSE法では、絶縁は1MΩ以上で合格ですが、通常は10MΩ以上の値であることを確認します。

          

 洗浄・研磨しピカピカに輝くキャビネットに収め、あらためて電源スイッチをオン。左上のマツダマークがやさしく光る。同じ 5球スーパーかなりやシリーズでも、回路構成や使用されている部品によって音質も微妙に異なるが、かなりやDは中音域にボリューム感のある柔らかくしっとりした音が流れてくる。
しっくりこないと感じていたダークグリーンのボディとゴールドのサランネット・銘板塗装のコントラストや独自のフォルムも、昭和レトロの雰囲気を醸し出し、これはこれでアリかな?と思えてきた。

東芝(TOSHIBA) かなりやZS  5UL-534

2007-04-27 | 東芝 かなりやシリーズ
 今回ご紹介する かなりやZSは、一見2スピーカータイプを思わせるシンメトリックなキャビネットを使い、実は1スピーカーであったという「なんちゃって2スピーカータイプ」の変ったスタイルのラジオだ。 
 東芝かなりやシリーズは、生産ピークである昭和36年(1961年)には、1スピーカータイプを6機種(NS、OS、PS、TS、US、ZS)、2スピーカータイプは2機種(RS、YS)の合計8機種が発売されたようで、全機種とも中波/短波をカバーする2バンド対応機である。
 
          

 機能的に差異のない5球スーパーラジオに「かなりや」という愛称をつけ、デザインに工夫を凝らしてシリーズ化した東芝だが、このかなりやZSは、どのような経緯で2スピーカータイプの外観でありながら実は1スピーカーという「なんちゃってデザイン」のスタイルで発売するに至ったのか?・・・大変に興味深いところだ。
真空管ラジオのスタイルも幅45cmを超える横長2スピーカータイプが流行し始めたこともあり、その背景を含めて推察すると・・・

① 2スピーカータイプのコンパクト化(幅36cm)を目論んだが、内部設計が間に合わなかった
② ①の目論見を実行しようとしたが、製造コストが合わなかった
③ 外観を高級な2スピーカータイプのデザインにして、中身をケチった
④ 単にデザイン上のウケを狙った

          

 いずれにしても企画・マーケティングの詰めの甘いまま、世に送り出された機種であることは容易に想像できる。
しかし既成概念にとらわれず、「デザインに付加価値を求める」というコンセプトの東芝は、次々と新しい発想のラジオを世に送り出したことが、40年以上経った今日でも多くの かなりやファンを魅了している所以(ゆえん)であろう。
ところがこの かなりやZSは、「なんちゃって2スピーカー」という以外、かなりやシリーズらしからぬ平凡でまったく面白みのないデザインだ。ちなみにキャビネットには、ブラック・バージョンもあります。

 かなりやシリーズでは機種毎にコンビを組んだであろう営業部門担当者とデザイナーの力量の違いにより、製品デザインの優劣が如実に表れる。
そんなことも含め、昭和のインダストリアル・デザインの過渡期における一幕を垣間見るようで、大変興味深い。
 ボリューム感のあるサーモンピンクのキャビネットと半透明の細かい格子状のフロントグリル、その中央に集約配置されている周波数表示窓とツマミ3個(左から 電源スイッチ兼ヴォリューム/バンド切替スイッチ/チューニング)で構成されたシンメトリックなレイアウトは、誰が見ても2スピーカータイプのデザインそのまんま東国原宮崎県知事?だ。

          

 フロントグリルの細かい格子状を基調とした外観と内部のスピーカー取付け配置構造から察すると、“外観を高級な2スピーカータイプのデザインにして、中身をケチった”「なんちゃって2スピーカータイプ」を狙った確信犯的設計だと断言せざるえない。(笑) 
発売から40年以上過ぎたコレクターだから「ご愛嬌」だと笑っているが、当時なけなしの金額を支払って購入した人は、さぞビックリ&落胆されたのではないかと思うと、何だか切なくなってくる。

 店内では年齢20代後半とおぼしきモデル系美女の性格もやさしいキャバクラ嬢と昼間に店外デートしたら、どう贔屓目に見てもメイクで歳を誤魔化した30代後半、オマケに豪華な食事とブランド品を買わされて凹んでいる友人、お坊ちゃま氏の ヘ(´o`)ヘ  トホホな姿が頭をよぎった・・・。

メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやZS 5UL-534

サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約36cm)×奥行き(約11cm)

受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 このところ真空管ラジオの相場も、やや落ち着いている。先週たて続けに程度の悪くない かなりやFSなど、¥5,000以下の値段にて落札されていた。所有している かなりやFSと色違いのものに入札を考えたが、送料+振込み手数料を合計すると結構な金額になるため、ゴールデンウィークに向けたオトナの遊び?の軍資金確保のために、また部屋にこれ以上ガラクタが増えるとマズイので、グッと堪えた。(笑)
今回のかなりやZSはシリーズの中でもその存在が怪しいせいなのか、オークションでは誰も入札せず、居酒屋1回分の金額で落札できた。

          

 宅急便で届いた かなりやZSは、キャビネットに大きな傷、エンブレムや装飾部品等の欠損は見られない。ただ何十年も放置されていたのだろう・・・フロントの透明パネルとキャビネットの間に埃が堆積し、キャビネット自体の色艶が褪せている。
そのサーモンピンクのキャビネットが年甲斐もなく若づくりをした、自称24才、世のオヤジどもを一瞬喜ばせ店外デートで落胆させる、実年齢37才のキャバクラ嬢を見るようで涙を誘う。 ρ(・・、)

          

 ところが裏蓋を取外すと、誰かに清掃・修理された様子はないが、キャビネット底部やシャーシ上の真空管やIFTに埃はうっすら積もっているだけで、以外にキレイだ。実年齢30代後半でも、服を脱ぐと20代を思わすキレイな肌と体形のご婦人に出会い、驚いた御仁もおいでかと・・・ そんな場面に出くわした、宮坂おとうさんの気分だ。(TBSラジオ・小沢昭一的こころのような語り口調♪) (^▽^)

          

 ツマミを抜き、イヤホン端子の止めネジ、シャーシ、スピーカーを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。
出品者の方のコメントには、「通電確認しました」としか書かれていない。ん~、この微妙な言い回し・・・パイロットランプは点灯するが受信はできないってことか? えーぃ、今回はいきなり電源を入れちゃえ! てな訳で電源を入れてみたところ、パイロットランプは点灯するが、ガリガリッ、ゴソゴソッと内部雑音がするだけで受信は出来なかった。12BA6、12AV6などの真空管を揺すると、内部雑音が酷い。
チューニング・ツマミを回すと、糸掛けプーリーがスリップする。

          

 真空管を抜いてシャーシー上と内部の埃を平筆を使って丹念に清掃しながら、目視点検を行なったが、これといった不具合は分からない。とりあえず全部の真空管のピン足をヤスリで磨き、ストレーナーで曲がりの補正を行ない、真空管ソケットもラジオペンチで締めてみた。またカップリングコンデンサーをはじめ、ペーパーコンデンサーを全品交換。スリップする糸掛けはプーリーから一旦取外し、テンション用バネを調整した。(この作業も不器用なボクには苦行でござる)

          

 再度電源を入れると、ガリガリ・ゴソゴソの内部雑音が消え、スピーカーから空電ノイズだけが聞こえてくる。チューニングつまみをゆっくり回すと、地元の民放中継局と隣町のNHK中継局の番組がスピーカーから流れ始めた♪ シャーシを揺すっても、接触不良の異音・雑音は発生しない。

          
 
 ところでこの かなりやZSはバンド切替ツマミが抜けず、慎重かつ強引に抜こうとして、ツマミ先端の金属モールとツマミ自体も破断してしまった。こんなのは初めての経験だ。ツマミを左右上下に小刻みに揺すりながら力をこめて引っぱったら、じわじわと抜けてきた。ただ気付くと、素振りを500本したあとのように、人差し指の皮が剥けてまい、立ち上がろうとすると眩暈がしてきた。頭の血管切れなくてよかったっス。

           

 40年以上の汚れにまみれたキャビネットは、埃を取り除いたあと、希釈したマジックリンとスポンジで素早く洗浄し、フロントパネルの格子状の孔も歯ブラシを使い流水で丁寧に汚れを落とした。

          

 ここ何度か抵抗の焦げ付きか何か原因不明の煙が出ただけに、今回も異常が発生しないかエージングテストをかねて、地元民放中継局にダイヤルを合わせると、広島VS阪神のデーゲーム中継を放送中だ。聞き始めた時点では5回表タイガースの攻撃中、3-4で負けていたが、すぐにカープが5点の猛攻で逆転!時速90Kmの不規則に揺れるナックルボールを武器にするフェルナンデス投手の好投で、カープ今季初の連勝となった♪

          

 春の日差しを浴びながら、日光を反射する銀色に輝くパーツや真空管が剥き出しになっている修復された かなりやZSから流れる野球中継に耳を傾け、約2時間近くかけてキャビネットを隅々まで丹念に磨く。仕事や日常生活のことを忘れ、頭を空っぽにして、まったりと過ごす至福の時間だ。
日没後、アンテナ線を延ばして受信してみたが、東京、名古屋、関西、福岡の50~100kWクラスの民放局、NHKは良好に多数受信できる。短波もラジオNIKKEIをはじめ、近隣のアジア・太平洋地域の大出力局が、時間によって各メーター・バンドで強力に入感する。

          

 たまたまチューニングした福岡のRKBラジオで、このGWにロードショー上映されている「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(原作:リリー・フランキー 監督:松岡錠司) の話題がのぼっていた。
原作は、1963年に福岡県で生まれたフランキーが「ボクの一番大切な人。ボクのために自分の人生を生きてくれた人」という亡き母の思い出を中心につづった自伝的小説。ボクとオカン、そして付かず離れずにひょうひょうと生きるオトンとの間にある普遍的な親子、そして夫婦の愛情などを情感豊かに描く。出演はオダギリジョー、樹木希林、小林薫。

          
          (C) 2007「東京タワー~o.b.t.o.」製作委員会

東京芝浦電気(TOSHIBA)「マツダ タイマーラジオ 」 5EA-72

2007-03-12 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝「かなりやシリーズ」「うぐいすシリーズ」の発売当初、同メーカーからは今回ご紹介する「マツダ タイマーラジオ 5EA-72」のほか、「マツダ 地球儀ラジオ 5LE-92」「マツダ ピアノラジオ 5BA-50」といったつい笑ってしまうお洒落?なネーミングの奇妙なラジオも発売されていた。

          

 マツダ タイマーラジオ5EA-72は、昭和30(1956)年頃に発売されたプッシュ式選局ボタンが特長の「ピアノラジオ」の回路にタイマー機能を加えたmTトランス式5球スーパーである。
かなりやシリーズよりやや大きめで一体形成のキャビネット筐体の天板、底板には緩やかな曲面処理が施され、V字型にスリット加工された正面パネルの造形も凝っている。その正面中央に位置するタイマー用ダイヤルを中心として、向かって左側にスピーカー、右側に5つのプッシュ式選局ボタン、そして右側面にON/OFFスイッチとボリューム、周波数同調ダイヤルが配置されている。

          

 同じプッシュ式ラジオでも、ピアノラジオの奇をてらった野暮ったさに比べ、このタイマーラジオはずっと部屋に飾っておきたくなる造形美と機能美を兼ね揃えたデザインの真空管ラジオだ。正面下の金色の塗装は、ご愛嬌・・・当時の物価水準から考えると、決して安くないラジオを豪華に見せる手法なのか、この時代のラジオには必ずゴールドの配色を取り入れている。5つのプッシュ式選局ボタンは、ボタンの裏にあるシャフトネジを回して長さを調整後、そのシャフトをボタンで押すことで、ギアを伝ってバリコンを回す機構となっている。バリコンは周波数表示を兼ねた周波数同調ダイヤルと連動しており、ダイヤルを回して同調の微調整やプリセットした周波数以外の選局も可能な仕組みとなっている。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『マツダ タイマーラジオ 5EA-72』

 サイズ : 高さ(約18cm)×幅(約35.5cm)×奥行き(約14cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25M-K15(整流) 

 人気の「かなりやシリーズ」は例えジャンク品であっても、オークションでは高値で取引されることが多い。しかしこの「タイマーラジオ」、ベークライト製キャビネット表面は化学薬品により腐食されたようなひどい痕跡があり、以前にご紹介した「ピアノラジオ」と同様、怪しすぎるために誰からも入札されることもなく、すんなり手に入れることができた。

          

 送られてきた品のキャビネットに、割れ・欠け・傷はなく、ツマミ類も全品揃っているが、キャビネット表面は、薬品で浸食された様に劣化して惨憺たる状態だ。内部を点検すると、真空管はオリジナルのマツダ製が使われているが、電源コードが切断され、ヒューズも取外されていることから、何らかの大きなトラブルが発生し、放置されていたものと思われる。

          

暗い過去と心に傷を背負った女性を思わせる『妖艶な、魅惑の真空管ラジオ』は、彼女の「置き忘れた思い出」が詰まった小箱のようで、切なさが込み上げる。別々の道を歩んだ二人の時間を取り戻すように、このラジオの修復を決意したが、とてもボクの手に負える状態ではない。
 そこで後世に真空管ラジオの修理技術を継承していく事を目的に、『真空管ラジオ修復記』というHPを開設・主宰され、100台以上のラジオを修復されておられるドクターKの診察と治療を受けることにした。

          

 診断の結果、ブロック型ケミコンの電流漏洩、電力増幅管35C5のヒーター断線、ヒューズホルダーの接触不良、スピーカーのボイスコイルの断線といった複合要因が絡み合い、電源コードは切断され使える状態ではないことが判明。電源回路の電流漏洩は重大な事故に繋がる可能性があり、これほど複雑な事象と要因を解析されて原因を解明後、適切な処置をほどこして復元いただける技術は神業と言うほかない。

          

 機能を果たしていないケミコンと信頼性の低いオイルコンデンサーを全品交換、スピーカーも新品に交換されたタイマーラジオに、ボクの手持ちの電力増幅管35C5(新品)を挿して電源を入れてみた。

          

 パイロットランプのネオン管と真空管のヒータが薄暗く点灯し、暗い過去を背負った『妖艶な、魅惑の真空管ラジオ』は、心の傷が癒えたかのように、スピーカーから地元の民放ラジオ・NHK中継局や大都市圏の放送を明瞭に響かせる。

          

 しかし朽ちたように輝きを失ったキャビネットは、全面塗装するしか修復の手立てはなさそうだ。ただし塗装の失敗は決して許されない。その意味で塗装のリスクは高く、躊躇していたところへ、比較的程度のよいキャビネットのタイマーラジオを手に入れることができた。

          

 ここでようやく掃除屋店長の出番だ。(笑) マジックリンのようなアルカリ性や溶剤入りの洗剤は避け、中性洗剤とハンドタオルで丁寧に汚れを落とし、乾燥後、樹脂の保護と艶出しのためにプラスチッククリーナーで研磨する。時間はかかるが、樹脂製キャビネットを痛めないで表面を活性化する一番の方法である。

          

 深夜、裸になったシャーシーとスピーカーから聞こえるNHKラジオ深夜便を聴き流しながら、キャビネットや透明プラスチックでできたダイヤルなどのパーツを丹念に磨く。

          

 タイマーラジオの特長であるプッシュ式選局ボタンを取外し、修復済みシャーシのバリコンに取付けた。写真中央に写っているシャフトネジをマイナス・ドライバーで回して長さを調整後、選局ボタンを押すとシャフトからギアを伝ってバリコンを回す構造である。

          

 プッシュ式選局ボタンに、ロットリングペンを使って丁寧な文字で「ラジオ東京」(現在のTBSラジオ)と書かれた紙片が挟まれたところなど、昭和レトロの時代の味わい深さが滲み出ている。

          

 深夜2時過ぎ、チューニングダイヤルを旧ラジオ東京/現TBSラジオ 954kHzにあわせると、混信やフェージングもなく、パーソナリティー小池栄子とゲストによるトークが聞こえてきた。男の感性のアンテナに引っかかるトークと音楽、大人の男の「音楽的好奇心」を刺激する、リニアな音楽番組に聞き入ってしまった。

          

 翌朝、新品と見間違えるばかりの外観を取り戻したタイマーラジオに、窓から差し込む朝の光りが映りこみ、輝いてる。
数時間前までTBSの電波は消え、ザザッと空電ノイズだけが虚しく聞こえてくる。

          

 地元民放ラジオ局にチューニングダイアルを合わせると、沢田研二が唄いヒットした「時の過ぎ行くままに」が流れてきた。

  あなたはすっかり疲れてしまい 生きてることさえ嫌だと泣いた
  壊れたピアノに思い出の歌  片手でひいてはため息ついた
  時の過ぎ行くままにこの身を任せ、男と女が漂いながら
  落ちていくのも幸せだよと 二人冷たい体合わせる

  体の傷なら治せるけれど心の痛手は癒せはしない
  小指に食い込む指輪を見つめあなたは昔を思って泣いた
  時の過ぎ行くままにこの身を任せ、男と女が漂いながら
  もしも二人が愛せるならば窓の景色も変わっていくだろう

 暗い過去と心に傷を背負った女性を思わせる『妖艶な、魅惑の真空管ラジオ』が、『今を生きる女』に生まれ変わった姿を前に、ボクは思った。

男と女の恋愛にまつわる普遍性があるから人生、人間の生き様に価値がある!

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやLS 5YC-501

2007-03-07 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和29年(1954年)から30種類以上製造された「かなりやシリーズ」の機種名は、原則的にAから始まるアルファベット1文字または2文字で命名されたが、既に発売されている機種名に重複した名前を付け販売されたケースがある。今回は、かなりやLS 5YC-501をご紹介し、その謎に迫る。
 昭和32年(1957年)頃発売された かなりやLS 5AD-128と同じ機種名の かなりやLS 5YC-501は、昭和36年(1961年)頃に製造された比較的小ぶりでファニーなデザインの中波/短波2バンド対応真空管ラジオだ。

          

 初代かなりやLS 5AD-128を担当したデザイン設計者が、時流にマッチした新たな かなりやLSを開発したと仮定するならば、初代かなりやLSのモデルチェンジ版として2代目かなりやLS 5YC-501に同じ機種名を使った可能性も高いが、その真実は謎である。
 同じ機種名を重複して名づけられた“謎のかなりや”は、調べた限りでは次の4機種ある。

        かなりやLS(5AD-128) かなりやLS(5YC-501)
        かなりやOS(5LR-287) かなりやOS(5YC-557)
        かなりやUS(5AD-175) かなりやUS(5UL-579)
        かなりやK (5LP-108) かなりやK (5YC-763) 

          
      【初代かなりやLS 5AD-128 黒/白ツートーンカラー(左)パールホワイト(右)】
 初代かなりやLS 5AD-128は、黒/白2色とパールホワイト単色の2種類のキャビネットを選ぶことができた。同様に、2代目かなりやLS 5YC-501もまた、黒またはライトブルーを基調とする2種類のキャビネットが発売されていた。

          

 横長6角形の造形をしたキャビネットのフロントグリルを上下に分割し、上半分に透明パネルと白いバックパネル、下半分は横スリットを入れた形成加工に白いツマミ3つを配置して、視覚的にも小型フォルムを強調したデザインを採用している。
業界こそ違うがメーカーで長年デザイン関連の仕事に携わってきたボクの視点から考察すると、キャビネット全体のフォルムや下半分の横スリットの形状は、初代かなりやLSの流れを汲んでおり、初代と同一の担当者が、新かなりやLSの意匠設計にも関わったものと思われる。つまり前述の仮説どおり、初代かなりやLSのモデルチェンジの意味を込めて同じ機種名『かなりやLS』の名前を冠した可能性が高いと言える。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやLS 5YC-501

 サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約31cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 汚い外観が幸い?したのか、オークションの入札価格はさほど上がらず、居酒屋1回分弱の金額で簡単に落札できた。
宅急便で届いた かなりやLSは、キャビネットの損傷、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない。ただ何十年も放置されていたのだろう・・・フロントの透明パネルとキャビネットの間にはたくさんの埃が堆積し、汚れも酷い。同調ダイヤルの糸掛けも外れているようで、チューニングつまみは、「途切れた愛」のように虚しく空回りする。

          

 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上の真空管やIFT、バリコンには埃が大量に堆積しており、この40年間放置されていた かなりやLSのやつれた姿に「切ない男と女の物語」の情景が浮かび、つい感情移入してしまう。もう取り戻せない、二人の愛の日々を手繰り寄せるように、このラジオを修復することを決意した。

          

 いつものようにツマミを抜き、イヤホン端子の止めネジ、シャーシ、スピーカーを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。シャーシーと内部の埃をOAクリーナーで吹き飛ばし、真空管を抜いて平筆を使って丹念に清掃しながら、目視点検を行なったが、同調ダイヤルの糸掛は見事に外れ、それが男と女の微妙な関係のように絡み合っている。糸掛の修復作業は、手先の不器用なボクにとっては苦行でもあるが、何とか元通りに復元できた。

          

 このところ2回ほど電源回りから煙の出るアクシデントが続き怖い思いをしたため、電源投入前に35W4がらみのコンデンサーをまず交換した。「煙が出ればコンセントを抜けばいいや!」と腹をくくって電源をON!パイロットランプは点灯し、各真空管のヒータも灯っている。煙も出てこない・・・・が、しかし、スピーカーから音も出てこない・・・。

          

 スピーカーとO.P.Tの断線、真空管やバンド切替スイッチの接触不良なども点検してみたが問題なく、原因がイマイチ掴めない。こうした推定原因の把握と確定原因の追求、恒久処置の対応ができなければ、「真空管ラジオの修復、レストアをやっています!」と胸を張ることはできない。多少なりとも「腕を上げました♪」と言いたいところだが、両腕を上げて、「これがホントのお手上げで~す」とふざけるしかない。

          

 そこで気分転換も兼ねて、キャビネットの清掃と洗浄を開始。この かなりやLSもフロントの透明パネルが熱溶着されているため、取り外しができない。溶着部分をペンチで切り、パネル内を清掃する力技もあるようだが、デリケートで優しい“穏健派”店長に、そんな荒業は不可能です。いつものようにマジックリンを泡状にして流し込み、素早くすすぎ洗いを行なった後、コンパウンドで磨くと輝きをとり戻した。

          

 途方にくれながら、とりあえずコンデンサーを全品交換と真空管ソケットの増締めを行ない、O.P.Tに目をやると、スピーカーへのハンダが浮いている状態を発見。しっかり再ハンダ付けすると、空電ノイズとともに地元の民放ラジオとNHK中継局が受信できた。
O.P.Tのハンダ不良が原因とは思えないが、とりあえず「歌を忘れたかなりや」が鳴いてくれ、限界点にまで達していたストレスは一気に氷解した。
中波はやや感度不足を感じるが、短波はそこそこの受信性能だ。本来なら先輩&友人の音響の匠氏に各種測定器を使った感度調整等をお願いするところだが、恋愛に例えるなら、途切れた愛が再び重なった二人に余計な手出しは禁物である。これ以上手を加えることは、あえてしないことにしよう。

          

 電源コード、アンテナ線、バリコン絶縁用スペーサーは新品に交換した。アルコールを使ってバリコン、IFT、コイル等の各種パーツをキレイに洗浄清掃した後、シャーシを丁寧に磨き込んだキャビネットに組み込むと、朝日を浴びて美しく輝く。

          

東芝(TOSHIBA) かなりやV  5UL-607

2007-01-30 | 東芝 かなりやシリーズ
 かなりやシリーズの機種名は、Aから始まるアルファベット1文字(中波専用機)または2文字(中波/短波2バンド対応機)の通し順で命名されていた。ところがトランジスタラジオの普及に伴い、昭和37年以降の かなりやシリーズの新規発売機種は、激減。従来の命名方法も変更され、アルファベット1文字による機種名を付けるようになった。

          

 昭和37年に発売されたかなりやシリーズは、今回ご紹介する1スピーカタイプのかなりやV(5UL-607)、2スピーカータイプの かなりやS(5YC-608)、かなりやX、かなりやJ(6ZL-609)の3機種しかなく、それ以後、昭和39年に1スピーカタイプの かなりやK(5YC-763)と 昭和40年に かなりやL(5YC-794)の発売をもって、東芝製真空管ラジオの歴史は幕を閉じた。
終焉期の混乱のためか、かなりやKのほか数機種名をダブルブッキング、元祖かなりやK(5LP-108)と 新かなりやK(5YC-763)のように同一機種名でありながら、型式のまったく異なる機種が混在する失態まで招いてしまった。

          

 かなりやVのデザインは、昭和30年代初期から中期にかけてエッジやラウンドを効かせた かなりやシリーズの独自性や創造性の高いデザインは影をひそめ、コストと生産性の向上のみを追求したような、まったく面白みのない箱型スタイルである。マーケティングにおける付加価値をプロダクト・デザインにて体現してきた かなりやシリーズだが、トランジスタラジオの機能・利便性・信頼性の向上に伴い、真空管ラジオとトランジスタラジオのシェアは逆転し、メーカー各社は加速度的にシフトする。

          

メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやV 5UL-607

 サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約31cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 かなりやシリーズの中でも かなりやQと比べ、その存在が希薄なせいなのか、オークションでの入札価格は上がらず、居酒屋1回分どころか立飲み屋1回!の金額で落札できた。
 宅急便で届いた かなりやVは、スカイブルーのキャビネットの天板に焼け焦げた傷跡がある以外、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない。ただ何十年も放置されていたのだろう・・・フロントの透明パネルとキャビネットの間にはたくさんの埃が堆積し、汚れも酷い。華やかなカラーをしたキャビネットだけに、流行遅れの煌(きら)びやかなコスチュームが物悲しさを醸し出す指名の入らないホステス嬢、言ってみれば“唄を忘れた かなりや”だ。

          

 かなりやVの裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、珍しいアンテナコイルの配置が目にとまる。しかしキャビネット底部やシャーシ上の真空管やIFTには埃が大量に堆積しており、この40年間放置されていた かなりやVに哀愁さえ感じてしまうのは、感情移入しすぎだろうか・・・。

          

 人間でも10代、20代、30代・・・50代と年齢に応じた「人間的深み」と「美しさ」があるものだ。時代に取り残された かなりやVにかっての美しさをとり戻すべく、レストア作業にとりかかる決意をした。

          

 キャビネットにシャーシを組み込まれた状態のまま、OAクリーナーを使い埃を吹き飛ばす。次に糸かけに止められている周波数指針を外し、イヤホン端子の止めネジ、シャーシ、スピーカーを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。キャビネット内に溜まっている綿埃を取り除き、真空管を抜き取り、シャーシ表面の清掃を行いながら目視点検を行なう。堆積した埃を取り除き磨くと、まだ腐食も少なく、シャーシは輝きをとり戻した。

          

 シャーシ内部も一部に綿埃が溜まっていたが、ペーパーコンデンサー表面の溶解もない。ボリュームの刻印 37.10から昭和37年製造と分かる。ひと通りの目視点検を終え、電源をONにしたところ、一瞬パイロットランプが明るく点灯し、球切れをおこした。ん?と首をかしげているうちに、どこからともなく焦げ臭い臭いが漂い始めた。

          

 コンセントを抜き、よくよく点検するとバリコンの絶縁スペーサーが溶解し、バリコンの羽根が絶縁スペーサーの止めネジの頭に接触、ショートしていた。これが原因ではないはずなのだが・・・。過電流の発生原因が分からないままでは、精神衛生上よくない。

          

 パイロットランプを交換後、応急処置としてとりあえずバリコンが接触しないよう止めネジを増す締めした。
B電圧を計測するために意を決し再度電源を入れてみたところ、B電圧は100V近くあり、パイロットランプと各真空管のヒータは正常に点灯し、空電ノイズが聞こえてきた。チューニングツマミを回すと、夜間のため市内と近郊のラジオ中継局(送信出力1kW)や大都市圏の大出力局の電波を受信するが、やや不安定だ。

          

 45年の間にキャビネットへ付着した汚れ・埃を取り除くために、いったん水洗い洗浄後、泡状のマジックリンで素早く洗浄すると、汚れが流れ出る。マジックリンを使った洗浄は素早く処理しないと周波数ゲージなどのインキも溶け出すため、注意が必要だ。さらによく水ですすぎ洗いし、乾燥後、コンパウンドとプラスチッククリーナーで研磨すると、昭和30年代当時の輝きをとり戻す。

          

 電源周りのコンデンサーと抵抗の交換、配線の手直し等を行ない、1時間ほどテスト後、キャビネット内に収納した。当初の状態に比べ内部もキレイになり、心なしか安定した受信状態でラジオ番組を聞くことができる。

          

 昭和37年といえば高度経済成長の真っ只中、「戦後」の悲壮感は消え、国産旅客飛行機YS-11のテスト飛行、世界一のマンモスタンカー日章丸の進水、堀江謙一氏によるヨット単独太平洋横断、北陸トンネルの開通といった明るい世相と、テレビをはじめとする家電製品は加速度的に普及し、真空管ラジオはトランジスタラジオにとって代わられ、時代の波に取り残されつつある状況だったのではないだろうか。

          

 この かなりやVのデザインは、かなりやQに似ているがキャビネットは一回り大きく、かなりやQにあるスピーカーグリルへのカラーリングや装飾は無い。新品のような輝きを取り戻した かなりやVは、フロント透明パネルの下端にキャビネットと同じスカイブルーの帯状ラインと「2Band Super Heterodyne」の文字がゴールドでシルク印刷され、シンプルでシックな装いだ。デザインから察すると、社宅や新築の文化住宅に住む若妻(!死語)をターゲットに、家事のあい間に聞くためのラジオとして販売されていたのではないかと想像する。

          

 煌びやかな夜の仕事を辞めた元ホステス嬢は、昼間の仕事に就き、実直な会社員と結婚した。
若妻の彼女は夫を会社に送り出した後、洗い物と洗濯を済ませ、一息つく時間にこのラジオのスイッチを入れる。窓辺から差込む暖かい光を浴び、ミシンで子供服を縫ったり、刺繍を楽しみながら、ラジオから流れる橋幸夫・吉永小百合が歌う「いつでも夢を」を一緒に口づさみ、「今夜のおかずは何にしようかな♪」などと考え、彼女がささやかな幸福感に包まれているシーンと『昭和の高度成長期の影と光』にボクは思いを巡らせていた。

そして「ところで何才までが若妻なんだろ?」などと、どうでもいいことを考えていた。

が、その当時の若妻も今は70才前後のおばあちゃんになっていることにハタと気付き、苦笑した次第である。

東芝(TOSHIBA) 「かなりやG」 5LC-109

2007-01-13 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和29年(1954年)から約10年間に約30種類以上製造された「かなりやシリーズ」は、当初まず かなりやA~Fの6機種が発売された。昭和31年(1956年)に発売された7番目の機種が今回ご紹介する かなりやGである。

          

 かなりやGに続き、さらに翌昭和32年(1957年)「かなりやH」も追加され、この年のカタログからは かなりやA~Eが消え、かなりやF、かなりやG、かなりやHの3機種と、ピアノラジオタイマーラジオが掲載されている。
かなりやシリーズの中波専用機の多くは、バリコンに選局ダイヤルを直結した構造となっており、指先を使ったダイレクトでクリティカルな選局感覚を楽しめる。また高周波回路にはフェライト・コア・アンテナを採用しているため、アンテナを接続する必要もなく手軽に高感度な受信を行なえる設計となっている・・・はずなのだが。
中波専用ラジオかなりやGは、四隅と上面に曲面加工を施したキャビネット、こげ茶色とアイボリーに色分けされたツートーンのカラーリングに加え、「g」のイニシャル入り大型選局ダイヤルをアクセントにしたシンプルなフォルムが魅力的だ。

          

 かなりやGは、以前から欲しいと思っていた機種であるにもかかわらず、出品される機会が少なく、いざ出品されても高値がついてしまい落札できなかったが、今回は自主規制予算(居酒屋1回 or キャバクラ1セット)で落札することができた。「いくらお金を出しても構わない入札者」とバッティングしたときは、完全にアウトである一方、今回のように予算内で落札できたときの喜びはひとしおである。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやG 5LC-109』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約30cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、35W4(整流)

          

 宅配便で届いた かなりやGの一体形成型プラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した汚れ、黄ばみに加えフロントパネル上部の白い塗装が一部剥げている。パーツの欠品は無いものの、外観は決して程度の良い部類ではない。

          

 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部や真空管には埃が堆積している。イヤホンジャック、パイロットランプ、スピーカー、板状のシャーシを順次取外して目視点検したところ修理された痕跡はなく、電力増幅管35C5がナショナル製に交換されているのみで、残り4本の真空管はマツダ製のオリジナルだ。またシャーシの錆び、バリコンの汚れもなく、電気部品や配線の状態も至って程度のよい部類である。

          

 電源投入前に、まずシャーシ裏表の埃をOA用エアクリーナーで吹き飛ばし、清掃作業を行なう。その後、いつものようにテスターを使い、ヒューズ、OPトランス、各真空管のヒータ、パイロットランプ等の導通を確認し、恐るおそる電源を入れてみた。PLが点灯し、スピーカーからホワイト・ノイズは聞こえるが、受信音はまったく聞こえない。高周波回路のどこかに不具合があるのだろう。

          

 とりあえずB電圧が100V付近であることを確認し、配線に沿って絶縁棒で突付きながら断線の有無を探る。1箇所断線を発見した! その箇所をハンダ付けしたところ、市内にある民放中継局(1kW)が聞こえた。何とも嬉しい一瞬である。しかし感度はよくないようだ・・・。

          

 今回はアイボリー部分の塗装の痛みが激しいため、意を決して塗装に挑戦することにした。キャビネットは一旦、水洗い後、中性洗剤で洗浄する。初期に発売されたトランスレス真空管ラジオのキャビネットは、ベークライト系プラスチック?であることが多く、マジックリンなどの溶剤系洗剤を使うと表面の侵食変化を起こし、悲惨な状態(タイマーラジオ参照)になるため、注意が必要だ。

          
          マスキング後、サーフェイサーを噴霧し下地処理中

実際の塗装作業は、下記の手順で行なうのだが・・・・
1. まずパイロットランプ、周波数表示(5.4~16の数字)、こげ茶部分にマスキング・テープを貼り、カッターで切り取る。
2. ダンボールで簡易塗装ブースを作る。
3. 塗装の剥離した部分を中心に、サーフェィサー・スプレーを噴霧し、塗装面の凹凸を埋める。サーフェィサーを塗布すると、下地の濃い色が隠れ、アイボリーの塗料がきれいに発色する。

          

4. サーフェィサー乾燥後、表面に凹凸がある場合は、コンパウンドを使って軽く研磨し、凹凸を整える。
5. ラッカー系塗料スプレーを2~3回に分けて、噴霧する。
・・・・のですが、今回、ノズルの設定を間違え、1回の噴霧で思いっきりドバドバっと塗布してしまいゲェゲェ~!! ヤバっ!液ダレ 寸前の状態。 正直、かなり凹み気分です。不幸中の幸いでギリギリのセーフ、ただし正面塗装がこんな危険な状態ですから、上面、側面の回り込み部分への塗装は正面塗装の乾燥状態を見極めて、再度塗布します。そして、いよいよマスキングの剥離作業へ移ります。このタイミングも本当に微妙です。

 ところが、天は我を見放しませんでした♪ じゃ~~ん!

          

 写真の通り、自分としては何とか及第点の出来映えです。マスキングを剥がした後の段差も許容範囲、極細面相筆を使って処理しました。あとは非塗装(こげ茶色)部分を磨き上げ、塗装部分との質感の差を埋めますが、逆にタバコで燻して、塗装したアイボリーに天然の使用感を演出する手もあります。A^-^;

          

 かなりやGは、13cm四方の板状シャーシに配線されており、中波専用ラジオのため部品配置も複雑にいり混んでいない。しかしシンプルなシャーシを使い、コストダウンを図っている・・・。経年劣化してるであろう5個のコンデンサーを交換することとした。

          

 0.005μF、0.01μF、0.02μFを各1個、0.05μFを2個、合計5個の信頼性の低いペーパーコンデンサーを交換するはずだったが、在庫のなかった0.05μF1個を残し全品交換した。確認のために電源を入れる瞬間は、やはり緊張してしまう。
パイロットランプが灯り、市内にある民放中継局(1kW)の番組がクリアに入感することは確認できるが、感度が悪い・・・。¥100ショップのラジオの方がまだもう少し感度はいいぞ~ (>_<) アンテナコイルの1次側の断線や接触不良か・・・?!

東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやBS 5YC-326

2007-01-10 | 東芝 かなりやシリーズ
 先日の記事、「オークション負け犬日記 Vol.2」をアップし、さんざんボヤいていたところに、中波/短波2バンド対応かなりやシリーズ初期の機種である かなりやBSが出品され、ほぼ予算内で落札することができた。しばらく放置していたが、ギックリ腰も癒えて、“なんちゃってレストア作業”の再開だ~!

          

 当初ははAM中波のみ発売された かなりやシリーズであるが、昭和34~35年頃から中波/短波の2バンドに対応した機種のリリースも始まった。かなりやシリーズの機種名は、発売された順番に中波専用機には『かなりやA』 『かなりやB』・・・といった1文字のアルファベット順による通し番号を、また中波/短波2バンド機は『かなりやAS』 『かなりやBS』・・・というように通し番号+S(Shortwave:短波)の2文字のアルファベットの機種名をつけていた。
 この原則からすると、今回ご紹介する かなりやBSは、中波/短波2バンドに対応した2番目の機種ということになるが、必ずしもA~Zの順番でもなく、欠番があったりと、調査が必要である。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)かなりやBS 5YC-326』

 サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約27cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

          

 かなりやBSは、比較的小型であるかなりやシリーズの中でも、極めてコンパクトな印象がある。通常よりも横幅で3~4cm短く、高さも脚の部分を入れれば15cmであるが、本体は僅か12cmしかない。
お洒落な淡いペパーミントグリーンのキャビネット正面のスリット加工を基調に、ケース正面と上面との角をバッサリと面取りを施し、さらに周波数表示透明パネル下部には濃い目のターコイズブルーの平板パネルを配置し、アクセントとしている。
かなりやシリーズの魅力は、こうした思いっきりの良いデザインを採用しつつ、決して破綻のない絶妙なバランス感覚を伴なった造形美にある。

          

 宅配便で届いた かなりやBSは、正面左側の電源スイッチ兼ボリュームのツマミが欠落し、キャビネット上面には、少し目立つ深めの擦り傷がある。またキャビネット底面に10cm程度のひび割れがあり、シャーシをキャビネットに止めるネジ穴用プラスチック成型加工部分がケースから割れ落ちた格好になり、1cmほどの穴が開いた状態になっている。
こうした構造上の不具合がコレクターから敬遠され、予算内で落札できたのかもしれない。シャーシを固定するネジ穴はこの1箇所しかなく、致命的な不具合と思っていたら、キャビネット正面裏側にあと2ヶ所止めネジがあり、一安心・・・。
しかし当時の東芝の設計・開発者は、外観のデザイン・意匠性には秀でた感性があるものの、こうした筐体構造上の弱点は小型真空管ラジオの宿命なのかもしれない。

          
          写真左に見える10cm程度のクラックと右下のポッカリ開いた穴

 最近は仕事が忙しく、落ち着いてラジオを弄る時間が取れないところが、悩みだ。以前は2~3時間残業した後、それから遊びに出てたのに、体力と気力の衰えを痛切に感じる。このかなりやBS同様ポッカリ穴が開いたようでトホホな気分になるこの頃である。

 かなりやシリーズでは珍しいネジ止式で糸かけに止められている周波数指針を外し、シャーシ、パイロットランプ、スピーカー、イヤホン端子の止めネジを順次取り外し、シャーシ内の点検を行なう準備に取りかかった。

 点検・修理を行なう前にプラスチック・キャビネットの補修から行なうことにした。いつもの様に中性洗剤で洗浄後、十分に乾燥させ、今回はキャビネットのシャーシー止めネジ形成部品とキャビネット自体の割れた部分を接着するため、「アロンアルファ プラスチック用」を購入し、試してみた。このタイプのアロンアルファは専用プライマーを事前に塗布することにより、プラスチック・ポリエチレン・ポリプロピレン・合成ゴム・軟質ビニールの接着に効果がある。写真の通り、中央の形成部品も右側の底割れ部分(綿棒を置いている箇所)もしっかり固定することができた。

          

 次にキャビネットから取外したシャーシー上部と内部を目視点検してみると、12BA6がナショナル製に交換されているものの、コレクターが中途半端に修理した形跡はない。
シャーシ内部にも綿ボコリが若干溜まっているが、この年代のラジオとしてはキレイな部類だ。ボリュームの刻印を見ると、昭和34年製造だということがわかる。

          
 
 電源投入前に、まずシャーシ裏表の埃をOA用エアクリーナーで吹き飛ばし、清掃作業を行なった後、いつものようにテスターを使い、ヒューズ、OPトランス、各真空管のヒータ、パイロットランプ等の導通を確認、恐るおそる電源を入れてみた。
 パイロットランプが点灯し、スピーカーからホワイト・ノイズは聞こえるが、受信音はまったく聞こえない・・・ う~ん、今回も高周波周りの配線か、12BA6または12BE6に問題があるのかも・・・?

          

 B電圧は100V近くありOK、カップリングコンデンサの絶縁不良も無いようだが、ペーパーコンデンサ類は安全のためにも全品交換を要する。

          

 高周波周りをさらに詳しく点検していると、高周波コイル端子の一部に断線(ハンダ不良)を発見! また12BE6と12AV6の接触不良もみられたため、怪しげな箇所の再配線とともに、先日買ったピンストレーナーで真空管の足を補正後、ソケットもラジオペンチで締めてみた。

          

 ハンダ付けを終え、再度、電源スイッチを入れてみた。パイロットランプがほのかに灯り、静かな沈黙の時間が過ぎる。
スピーカーからは先ほどのホワイトノイズと異なった空電ノイズが聞こえ、時間の経過とともにその音は大きくなる。緊張した面持ちで周波数同調ツマミ(チューニングダイヤル)を回すと、軽快なJ-POPを流す民放ラジオやNHKの「ラジオ深夜便」が聞こえてきた♪ 時間は午前零時過ぎ、何十年も鳴らなかったラジオが生き返った感動の一瞬だ。

          

 かなりやBSのアンテナ線を窓際いっぱいに引き延ばし、もう一度チューニングダイヤルを回すと、中波(MW)で国内各地や韓国から多くの放送局の番組が聞こえてくる。隣町に送信所のあるNHK中継局より、福岡のRKB九州毎日放送や東京のニッポン放送のほうが強力に入感する。
 バンドスイッチを短波(SW)に切替え、チューニングを行なうと、3.9~11MHzの各周波数で世界各国からの海外放送が良好に受信できた。この時代の真空管ラジオは電波の強弱により音量レベルも比例する。また選択度も悪いため、信号の弱い放送局を聞く場合に発生する混信やビート音も『真空管ラジオならではの趣』として楽しめる。

          

 今回の かなりやBSは、配線不良という簡単な原因で鳴らなくなり、そのまま放置されていたためにパーツ類の経年劣化が少なく、初期性能を保持したまま良好に動作したものと推察する。

 真空管ラジオに魅せられて、約一年半。「店長は掃除しかできないことをカミングアウトしたら?」という辛辣な?意見もいただいている。(笑)
実際、高度な修復技術と豊富なレストア経験をお持ちの諸先輩方に修復や調整をお願いするケースも多々あるのだが、その先輩方からのご指導を仰ぎながら、今回のように簡単な故障は独力で修復できるよう細く長くこの趣味と向き合い、背伸びをしない“なんちゃってレストア・ワールド”を楽しんでいきたいと思います。