昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東芝(マツダラジオ) かなりやZ 5LP-158

2007-11-24 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和30年代、トランジスタの開発・実用化に伴い、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術も実用化され、 真空管ラジオにいち早くプリント基板による実装方式を採用した機種が、昭和32年に発売されたかなりやKと かなりやX~Zの3兄弟である。
        
 今回入手した かなりやZは、昭和32年('57年)に発売された、中波専用真空管ラジオ、かなりやX~Zの3兄弟の末っ子。
キャビネット左にスピーカー、右側に周波数同調用大型ダイヤル、その下に電源スイッチ兼音量調整ボリュームをレイアウトした極めてシンプルな回路と、キャビネット内部の使用部品はすべて共通しており、この3機種は外観のデザインを変えただけの代物だ。
        
         ▲かなりやX(左) かなりやY(右) かなりやZ(左下)
  
 かなりやXは「比較的若いニュー・ファミリーのための中庸な」、Yは「大人のためのシックな」、そしてこのZは「若い世代のためのポップな」ラジオを指向し、デザインされたと思われる。
かなりやZは、昭和32年当時の真空管ラジオの中にあっては珍しく、クリーム色を基調としたキャビネットのフロントに大胆なシークグリーンの塗装を施し、明るく雰囲気を演出している。デザイン的な完成度はさておき、若者や女性を大いに意識した、新しい挑戦を試みた機種であることは間違いない。
        
 このように真空管ラジオのプロダクト・デザインから、当時の時代背景や、消費者のニーズ、3機種の外観をいかに差別化し消費者にアピールしようかと考えた製造メーカーのマーケティング(思惑?)に思いを巡らすことができる点も、東芝かなりやシリーズの大いなる魅力であり、各方面の方々から
「店長は、かなりやを何台捕獲すれば気が済むの?!」
と呆れられても、コレクションを止めることができない理由なのだろう。
そんな訳で東芝かなりやシリーズをご紹介するとき、技術的な内容より、つい意匠学的な考察(講釈?笑)が多くなってしまうのです。(笑)
        
 真空管ラジオのコレクション&レストアに手を染め、初めてかなりやZがオークションに出品されたのを発見! 写真で見る限り、程度も良さそうだ。
居酒屋1軒 or キャバクラ1セット)の価格での落札は無理っぽい予感がする・・・
結果は・・・自分の意思とは無関係に無意識のうちに入札ボタンを押してしまい、居酒屋でほろ酔い気分になりキャバクラに出撃した予算(落札手数料・送料込み)で落札。
        

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやZ 5LP-158』

 サイズ : 高さ(約17.6cm)×幅(約30.6cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやZは、前オーナーが大切に保管していたのだろう、プラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
喜んで裏蓋を外すと、裏蓋が真っ二つに割れていました。
        
 キャビネット内部は清掃された形跡がないにもかかわらず、埃の堆積も少なく、使用環境がよかったのか、大切に保管されていたものと推察される。真空管は、すべてマツダ・ブランドの東芝純正品が使われており、目視点検する限りではブロックコンデンサほかプリント基板、パーツ類の劣化は見受けられない。
        
 キャビネットからプリント基板とスピーカー、イヤホンジャックを取外し点検したところ、クリーム色のボディで分からなかったが、煙草のヤニなどが付着し、かなり汚れている。
掃除が楽しみだ~♪(笑)
        
マツダ純正の真空管が使われ、修理した痕跡もなく、真空管とキャビネット底に長年の埃が付着している程度の状態だ。こんなに簡単な構造だと、清掃とペーパコンデンサ交換だけでレストアは終了しそうな雰囲気だ。
        
 プリント基板のパターン剥離などの不具合も見られない。
 オークションの出品者の方も、「動作確認済み。電源、スイッチを入れしばらくすると動きます」とコメントされていたので、意を決して電源を入れてみた。パイロットランプが点灯しない・・・しばらくするとスピーカーから受信ノイズが聞こえはじめた。パイロットランプは、球が断線していただけのようだ。
        

yuuko & UZ デビュー・ライブ

2007-11-18 | 昭和三丁目の真空管ラジオ
 UZ&Yuukoのデビュー・ライブを拝聴してきました。この秋、オープンしたばかりの芸術文化ホールは1200席の会場です。1時開演の市民参加型のコンサートですが、近年数名のメジャー・デビューを果たしている当地の出場者は総じてハイレベル。

 緊張しているのか、司会進行役のMCさんがカチカチ・・・
「奏者の緊張をほぐし、会場の雰囲気づくりの役目のMCさんがこれじゃあダメじゃん!」と思いつつ、沖縄音楽をベースとした女性バンド、ギター一本のソロフォークソングに続いて、
いよいよ yuuko & UZ の登場です!
        
 幕が上がり、赤いドレスに身をまとったyuukoりんと、白地に赤いハイビスカスがプリントされたアロハ姿のUZ氏。
まずUZ氏自ら、自己紹介を兼ねてMCを勤めようとしたが、肝心のマイクがない!という、ハプニング。
そのアクシデントにもめげず、UZ氏からyuuko & UZの成り立ちと、今日の演奏曲目についての紹介で、スタートしました。

 爽やかな 秋空の如く 軽快な旋律で スタートした1曲目は、
【 妖炎 ~ The Sound of The Fire :UZ 作曲】
 他の出演者とは格段にレベルの違うお二人の演奏に、一緒に行っていた 音響の匠氏も思わず唸っています。
        
 続く2曲目は、春の嵐のごとく吹き抜けるブリティシュロック調に 生まれ変わった
【 春嵐 ~ The Sound of The Wind :yuuko 作曲】
1曲目と同様、特にyuukoりんの演奏姿が、春嵐のように美しい!
箏曲に対する固定概念が根本から覆されるほど、素敵な演奏でした。
        
 そして最後は、ゆうこりんが ピアノに移動、
【 鼓動 ~ The Sound of Your Heart:UZ 作曲】
を演奏し、その多才振りを発揮し、締めくくりました。
 先行リリースされていたCDより、今回のライブのほうが、遥かに圧巻!
yuukoりんの「動」を、UZ氏の「静」がしっかりサポートした、コンビネーションもバッチリです♪
        
 若い頃、自らもギターを抱えてコンテスト荒しをしていた 音響の匠氏も、
「せっかくあれだけハイレベルな演奏をする二人なんだから、打ち込み音源をもう少し絞って、
 自分たちが前に出たほうが、もっとよかったのに・・・ 控えめなのかなぁ」と。
        
 演奏を終えたお二人と、楽屋前で握手を交わし、yuuko & UZ デビュー・ライブ会場を後にした。

 yuukoりんは、第14回賢順記念全国箏曲コンクールの全国大会に向けて、追い込みとか。
 今回のライブは、ハイブリッド・プログレッシブ・フュージョン、箏とギターのコラボで奏でる 壮大な和のメロディ!という、新しい試みのスタートとしては、大成功だと感じました。
 次回のライブ&コンサートの実現を、楽しみにしています。

東芝(マツダ)  かなりやQS 5LQ-269

2007-11-18 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝かなりやシリーズの魅力は、昭和30年代の10年間、時代の消費者ニーズを捉えようと、デザイン的な試行錯誤を重ねた『バラエティーあふれる豊富なデザイン性』にある。今回は、かなりやシリーズの中でもトップクラスに入る奇天烈(キテレツ:奇想天外)なデザインのかなりやQSを紹介します。

        
 昭和32年('57)、R-7ロケットで史上初の人工衛星スプートニック1号の打ち上げに成功したソビエト連邦に対抗したアメリカ合衆国は、昭和33年にジュピターロケットによりエクスプローラ1号の打ち上げに成功。 昭和30年代から40年代は、米・ソの2大国による宇宙開発競争に、世界中の人々が興奮し、固唾を飲んだ時代でもあった。
日本も昭和33年('57年)から始まった国際地球観測年(IGY)への参加を決め、数々の工夫と試行錯誤を重ねた結果、2段式ロケット、カッパ6型の開発に成功。翌年、上層大気の風速風圧と宇宙線観測に成功し、国際気象観測年(IGY)への参加を果たした。
        
         ▲ランチャーに設置されたkappa(カッパ)型ロケットと見学者

 そんな時代の中、キャビネットのデザインに工夫を加え、アバンギャルド(前衛的)な意匠をこらし、消費者にアピールした機種の一つがかなりやQSである。
かなりやQSのキテレツ振りは凄まじく、ロケットを連想させる円錐状の形成処理された白いラインがロイヤル・ブルーのキャビネット正面を横切る。
ロケットの噴射機部分に縦型ダイヤル、尾翼部分の上下に二つのツマミが配置され、人々の「宇宙への憧れ」を盛り上げようとしたデザイナーの意図がうかがえるデザインだ。
        
         ▲青空に飛翔するロケット・・・に見えます?

 かなりやシリーズが発売される以前からリリースされていたマツダ・ピアノラジオ や 地球儀ラジオ といった洒落っ気たっぷりのラジオには及ばないものの、
ロケットをモチーフにデザインされたかなりやQS の当時のメーカー担当者やデザイナーが大真面目に議論している姿を思うと、つい笑ってしまう。
ちなみにロケット噴射機部分の縦型ダイヤルは、選局ダイヤルではなく音量調整用ダイヤルだ。下側のツマミが選局用で、上側は電源ON/OFFを兼ねた中波/短波切替スイッチです。
工業デザインの視点から考えると、あり得ない配置だが、今のようにマーケティング理論やデザイン工学も発達していなかった当時って、大雑把でホントにいい時代じゃなかったのかな・・・と微笑ましくさえある。
        
 かなりやQSはオークションに出品されることも珍しく、過去2~3回遭遇したが、キャビネットに大きな欠けがあったり、落札価格が高騰し、捕獲できなかった機種でもある。
ところが最近、真空管ラジオ人気が下火になったのか、このかなりやQSのキテレツなデザインにアンティークラジオファンは引いてしまったのか、居酒屋1軒(キャバクラ1セット)に立ち寄る価格で落札できた。

 メーカー:東京芝浦電気(マツダ)『かなりやQS 5LQ-269』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約31cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやQSは、何十年も放置されていたのだろう・・・プラスチックキャビネットの表面は脂質が抜けた状態になっており、全体の汚れも酷い。
幸いエンブレムやツマミ等の欠損や酷いダメージは見られない。
裏蓋にトグル・スイッチを取付けるなど、改造が施されている・・・回路図との付き合せが必要となるので、レストアするにも厄介だ。
        
キャビネット内部は、いつもながら汚い! 堆積した大量の埃とかび臭さには毎度、閉口するが、まぁこれも誰の手もついていない初出し品の証拠・・・・ 掃除屋・店長の腕の見せどころだ♪
同時期に発売された かなりやPSと同様、バリコン・コイル・バンド切替スイッチで構成されたユニットと、真空管他主要部品を搭載したプリント基板ユニットに別れた設計になっている。
        

昭和レトロのお店で、レトロ野郎二人がラヂオを熱く語る!

2007-11-13 | 昭和三丁目の真空管ラジオ
 真空管ラジオは鳴るといっても、そのままの状態で使っては大変危険です!!!安全に使用する為には、点検と適切な部品交換を強くお勧めします。・・・のコピーで始まる真空管ラジオ修復記 は、真空管ラジオに興味をもたれた方は、必ず訪れたことがあると言われる、またアクセス数も20万回を突破する、伝説のホームページです。
         
 真空管ラジオ修復記は、管理人様が、「外観はできるだけオリジナルで綺麗に、内部は安全第一で最新に」というポリシーのもとで、4年3ヶ月の時間を掛けて100台のラジオを、

・戦前~戦時中~終戦直後(昭和5年~昭和23年頃)のストレート・ラジオ
・戦後(昭和21年~昭和31年頃)のST管スーパー・ラジオ
・戦後(昭和30年~昭和38年頃)のmT管トランス付きスーパー・ラジオ
・戦後(昭和30年~昭和40年頃)のmT管トランスレス・スーパー・ラジオ

のジャンル分けされ、修復された様子を1台ずつご紹介された内容が圧巻のホームページです。

また真空管にまつわる楽しい「真空管ラジオコラム」や「ラジオ閑話」と題する随筆や、<太平洋戦争開戦の臨時ニュース音声再生(一部)>、 <玉音放送音声再生(全文)>の音声を聞くことができるなど、硬いだけのホームページとは一線を画したコンテンツも満載♪
       
       ▲「真空管ラジオ修復記」の修復記事の一例

 アタクシ店長も真空管ラジオのコレクションを始めた頃より愛読し、また管理人様には何度となくご指南をいただいていました。
その管理人様より、所用で当地におこしになるとのメールをいただき、お会いすることとなった次第です。
        
 約束の時間、その場所に目立つようにと赤いパーカーを着た、ホームページで自己紹介されている通りの“茶髪のお兄さん?(おじさん?)”と遭遇!
 挨拶もそこそこに、昭和レトロをコンセプトにしている鉄板焼居酒屋へGO!! 店内は昭和レトロの雰囲気満点の看板やポスター、玩具などが所狭しとディスプレイされています。
通されたカウンター席の棚に、戦前のシャープ製並四ラジオが飾られているのを、すかさず管理人様が発見♪
「このラジオ、スピーカーがマグネット・スピーカからダイナミック・スピーカに交換されてますね・・・」と、早速の鋭いツッコミです。
        
 瀬戸の新鮮な海の幸や、十銭焼きと呼ばれる「お好み焼き」の原形を肴に、真空管ラジオ談義に花が咲きます。
        
 堅実に技術者畑を歩んでこられ、誠実なお人柄でありながら、実はちょい軟派系の話題もOKの管理人様と、ユルユルの軟派系でありながら、実は硬い総合機械メーカーでIT&デザイン設計関連を生業とする店長のコンビネーションはバッチリ!? 真空管ラジオ以外の共通の趣味である目の前に並んだ「酒」もどんどんすすみます♪
            
 誠文堂新光社から2007年11月16日(金)発売予定の、管理人様ご執筆の「真空管ラジオ製作ガイド」のこと、依頼される真空管ラジオ修復にまつわる苦労話等をお聞かせいただいたり、“敷居の高い”と思われがちな真空管ラジオ・レストア&コレクションの趣味をどう次の世代に伝えていくか・・・など、話題は尽きません。 
ボクがこの居酒屋の女性店員さんを巻き込もうと暴走し始めた頃合を見計らって?、約3時間近くに及ぶ懇親会はお開きとなりました。
        
        ▲ラジオ修復記・管理人様、居酒屋の店員さんと記念撮影(目線入り:爆)

 真空管ラジオ修復記・管理人様、本当に楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。
この素敵な趣味を末永くどう楽しんでいくか、またいかに“敷居を低く” “間口を広げていくか”等など、次回もゆっくり語り合えたら・・・と思います。

ゼニス(Zenith) Model K-515

2007-11-01 | アメリカ製真空管ラジオ
 今回は、先輩&友人である“音響の匠”氏が入手されたZENITH社製mt管クロックラジオ Model K-515 (1953年製)の氏ご自身による修復工程を突撃レポートします。ちなみにこのラジオ、先にご紹介したL-518Wと酷似するデザインは、同機の廉価版と思われる。
        
 久し振りのラジオの修復です。機種は前回と同メーカーのZENITHですが、型番は不明です。
今回も型番も判らず、配線図無しでの修復ですが、まぁ何とかなるでしょう・・・。
        
先に掲載されていたL-518Wの廉価機種と思われます。
ラジオの外観は経年変化の割にはいい方かも知れませんが、裏蓋割れ、電源コード切断等。
本体を逆さまにしたら、いきなり同調用掛け糸の切れたバネが落ちてきました。
        
 時計部分は、ツマミが欠損し、キャビネットと時計のガラスカバーの合わせ部分も剥離しています。
        
 キャビネット裏蓋を外し、内部を見ると明らかに素人が修理した痕跡の内容に、唖然!
コンセントの取り付け部の線材処理は、今にもショートしそうだし、電源コードは嗚呼何とセロテープで絶縁されています。危険きわまりない修理方法です。
        
 真空管はすべてオリジナルではないメーカー製のものに交換されています。
ブロックコンデンサーはケースの上部に当たる位の大きな物と交換済。
これは、ラッキー♪ オーディオ好きな人ならご存知のスプラグ製です。但しこれで、音が良くなるとは思いませんが・・・(笑)
        
 ケースからシャーシを取り出し各部を点検すると、各種コンデンサーも交換されていました。店長所持のModel L-518はゼニス名が印刷されているコンデンサーですが、この機種はオリジナルも他メーカーのパーツが使用されています。
 よく見るとオリジナルから交換されている電解コンデンサーの回路部分は、配線がタッチしています。電源が入らないのでショートは免れているのは、不幸中の幸い?!
ブロックコンデンサー付近の配線の処理を済ませて、まず電源が入るようにしなくてはいけません。
        
 スイッチは時計部分にあるので、時計を外さなければ点検もできません。簡単に外せるだろうと思っていましたが、アメリカ製品なのでインチネジ・・・すんなりと事は進みません。
ネジ山のあるタイプならプラスでもマイナスでも何とか回すことはできるのですが、写真のように狭いため、ラジオペンチは入っても回す事ができません。
インチネジ用のBOXセットを購入し、時計部を外して点検。スイッチの導通を確認しましたが案の定、ON/OFFしても導通がありません。接点は酸化して、真っ黒になっています。これでは電源は入りません・・・紙ヤスリで接点を磨き補修しました。
        
 シャシー内部の回路を確認して、電源ON! この瞬間が一番緊張します。
真空管がほんのりと点灯したので、ホッとしましたが、暫く待っても、煙も出ないし、いやな臭いもしないので一歩前進です。ただし音も出ません(笑)
後は電源、出力回路の修理ですが、出力管グリッドに数ボルトの電圧がカップリングコンデンサーの交換で音出しはOKです。
 ところが肝心なラジオ放送は聞こえません。やはり前回と同様、このラジオとも七転八倒、付き合うことになるのかと嫌な予感です。
        
 キャビネットからシャーシを取外した時点の目視では分かっていたのですが、バリコンの真鍮部に青錆びがあります。
手でバリコンを回してみても、固着して指先では回りません。
        
 バリコンを外して点検すると、ローター部のベアリングが錆びて動かないうえに、羽は曲がっていたため、この修理だけでも、一晩かかりました。
        
 バリコン取り付け用ゴムブッシュは劣化してシャシーと当たっていたのですべて交換し、糸も掛けかえて正常(バリコン部)に復旧しました。
        
バリコンをはじめ、シャーシ上のパーツとクロック部は正常に復旧しました。
ついでにシャーシの外部・内部、真空管等に堆積している50年分の埃をコンプレッサーで吹き飛ばしてクリーニングすると、見違えるほど綺麗になりました。ちなみに発信コイルは蜘蛛の巣で真っ白。
 クロック部のノブは、手持ちのジャンク品を流用し、それらしく仕上がりました。
        
 次はシャーシ内部の修復です。コンデンサー類は、フィルムコンデンサに交換したほうが安全のためにはよいのでしょうが、自分で使用するため、何かあっても対処できます。
また当時の音を再現したいので、部品交換も今回は音声回路のカップリングコンデンサーだけに留めておきます。最近のコンデンサーでは今風の音になるので、いずれ手持ちのスプラグのコンデンサーかオイルコンデンサーに交換しようと思います。(注釈:このあたりが、音響の匠氏のこだわりっすね~)
真空管ソケットの足に半田不良が見受けられたので手直しを行い、修復の目途はつきました。
        
バリコン等を修正したので周波数帯域が変化し、また感度不良の為、トラッキング調整が必要です。これは手持ちの各種測定器を使って完了。
広大なアメリカでラジオを受信するには、受信感度の性能がもとめられるのでしょう・・・アメリカ製ラジオはループアンテナがあるので、調整すると感度は随分よくなりました。
        
あとは根気と体力勝負のケース磨きが残っています。
最近、腕が腱鞘炎ぎみなので、ケース修復のプロ?である店長に外注しました。
店長は、「直ったラジオをエージングテストしながらケースを磨く時間が、至福の時なんじゃないっすか~」と言います(笑)。
        
 そんな訳で、以上、音響の匠氏の修復レポートを掲載させていただきました。
音響の匠氏の当時の『音』へのこだわりと、ラジオに対するある程度の『割り切り方』は、さすがこの道、ウン十年の音響機器エンジニアです。

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 ところで、このゼニスのラジオに民放ラジオの騒々しい番組は似合いません。
アタクシのお薦めは、在日米軍放送 AFN Tokyo / Eagle810 ( 810kHz)で、毎週日曜日の夜に放送されている「Oldies Radio」。
        
 BGM代わりに聴いていると、この番組でよく流れるのは、ニール・ダイヤモンドです。
「Sweet Caroline(Good Times Never Seemed So Good)」のSweet Caroline~というサビの部分の後で、つい「ウォウォウ~」と口ずさんでいる自分に気付き、もう完全に’50年代の東海岸気分に浸かってしまってます。「Sweet Caroline」や「Cherry, Cherry」、「Craklin 'Rose」などもよく耳にします。
        
 音響の匠氏は、例のサウンドシステムと’50年代のU.S ポップやジャズのレコードを山のようにお持ちなのに、あえて当時のラジオ音質を楽しむその余裕に、『男のロマン』を感じますね~♪