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昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

オークション負け犬日記 Vol.2 ~捕り逃がしたカナリヤたち~

2006-10-16 | 東芝 かなりやシリーズ
 ボクが真空管ラジオのコレクション&レストアを密かな趣味としていることを知っている知人から、「かなりや何羽になりました?」と、からかい気味に尋ねられる。いつもこのブログをご覧いただいている方々は、ピン!とこられたはずだ。 

 そう、ワタクシ、何気に東芝製真空管ラジオ かなりやシリーズを集めているのですが、この1~2ヶ月の間、かなりやシリーズの中でも比較的珍しい機種が相次いでオークションに出品された。

          

 左上から、かなりやH、その下がかなりやD、右上がかなりやの前身である5LA-28、下はかなりやF。どの機種も昭和29年~30年前期にかけて発売された、AM中波専用ラジオである。所謂、かなりやシリーズ初期モデルであり、デザインもクラシカルな雰囲気が漂い、コレクターには堪らない一品であろう。 そのため価格も高騰し、いずれも¥10,000以上。¥20,000前後で落札された機種もある。

              

 かなりやシリーズと同時期に発売された、このマツダ(東芝)製の「地球儀ラジオ」などと言う、ふざけた名前の変な形のラジオは、なんと!¥32,500の値をつけた。

 いつもボヤくのだが、こちらは少ないお小遣いをやり繰りする関係上、最高入札額を¥5,000に自主規制しており、送料、振込手数料を加えると、さらに¥1、500程度加算されるため、貧乏っちゃまサラリーマンにはこの金額が限界だ。オークション終了10分前後から繰り広げられるバトルを指をくわえ、眺めているだけである。

 「¥5,000?何をしみったれたこと言ってるの!」と思ったアナタ!!・・・考えてもみてほしい。居酒屋1回分、キャバクラ1セット分の金額である。

壊れた真空管ラジオを1台買うお金があれば・・・
  ・オネーちゃんを引き連れて、それなりのお店でランチを楽しめます。
  ・デート代を割り勘にしようなどと、年下の女性に気を遣ってもらわなくてすみます。
  ・出張帰りの度に、美味しい駅弁と缶ビールを心置きなく、楽しめます。
  ・ファミレスへ仲間数人で行き、ドリンクバーも付けて奢り、株が上がります。
  ・マクドナルドで「ポテトはいががですか?」と勧められても、断わりません。

 冗談とも本気とも取れぬ話はともかく、最近、真空管ラジオの取引価格の高騰が気になるこの頃。自由主義経済の原則からして、可処分所得の多い人ほどオークションは有利なのだが、「自分のポリシーを守りつつ、細く長く付き合っていくことが、King of the Hobbyの道だ!」と今日も自分自身に言い聞かせる、妙にウラ淋しいトホホな秋の夜である。

東京芝浦電気(TOSHIBA) 「かなりやTS」 5YC-311

2006-10-09 | 東芝 かなりやシリーズ
 機能的に差異のない5球スーパーラジオに「かなりや」という愛称をつけ、外観デザインに工夫を凝らしてシリーズ化した東芝は、ピーク時の昭和36年(1961年)には8機種を発売している。その中でもデザイン的に機種が、かなりやTSである。

          

 この年の かなりやシリーズは、コンパクトなOS、標準的なNS、ZS、US、デザイン性に凝ったPS、TS、2スピーカータイプのRS、YSの8機種が発売されたようで、型式の示すとおり全機種とも中波/短波をカバーする2バンドタイプである。
個性的なデザインの多い かなりやシリーズの中で、かなりやTSも破綻の無い範囲の自己主張と造形美を感じさせる1台だ。

          

 キャビネットは、逆台形のフォルムの上面に穏やかな曲面処理と「切り欠き」が施され、キャビネット正面に対し凸型状に取り付けられた周波数表示用の異型フロント透明パネルが特長的だ。また円錐状に形成加工された3つのツマミ、スピーカーグリルの楕円状スリットなど、楔形(くさびがた)をテーマにした、デザイナーの先鋭的な意匠コンセプトをうかがい知ることができる。
その反面、ライトグレーとパールホワイトの落ち着いたカラーコンビネーションを採用することにより、アグレッシブな造形のみを追求することなく、「デザイン」としてのトータルな落とし所をシックな雰囲気へと導く、絶妙なバランス感覚だ。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやTS 5YC-311』

 サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約31cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

          

 半年以上前に宅配便で届いていた かなりやTSのプラスチック製キャビネットの外観は、45年の間に付着した汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、裏蓋止めネジ以外にはパーツの欠品も無く、程度は悪くない。ところが熱溶着されているはずのフロント透明パネルが外れており、危うく落として割るところであった。取外して清掃する手間は省けるが、落としたらシャレになりません。
 裏蓋を取外すと、年代相応の埃とクモの巣が張っている。その昔、修理を行なった名残なのかスピーカーへの配線が途中で切断後再接続してあり、12BA6はナショナル製に替えられている。
少しばかり怪しげな かなりやTSを目の前にして、レストア経験の浅い自分で無事に修復できるのか、一抹の不安を隠せない。

東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやY 5LP-160』

2006-10-05 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和32年(1957年)、東芝はmT管トランスレスラジオ かなりやシリーズに、当時の新技術であったプリント基板を採用した かなりやKを発売。さらに、かなりやX、かなりやY、かなりやZの3機種を相次いで世に送り出した。
          
 
 大正14年、我が国でラジオ放送が始まり、鉱石ラジオからスタートしたラジオ受信機は、周波数変換しないいわゆるストレート方式と呼ばれる極めて性能・効率の低い真空管ラジオを経て、昭和21年頃から現代のラジオの基本形である受信周波数を一度変換するスーパーヘテロダイン方式の真空管ラジオへと発展した。
 一方、1955年頃から低電圧・低消費電力・迅速な立ち上がりを特長とするトランジスタ・ラジオが発売され始めた。しかしながら、開発当初のトランジスタは価格が高い上、雑音は多く、高周波特性も極めて悪く、多くの技術者は使用できるのか懐疑的でさえあり、真空管ラジオからトランジスタ・ラジオへ完全に切り替わるまでさらに約10年間の歳月を要した。

           
             
 登場以来40年、真空管ラジオの回路を構成する実装は、シャーシと呼ばれるアルミ製やスチール製のボックス形状の躯体に、真空管をはじめとする主要パーツを配置し、コンデンサー、抵抗等はラグ板を介して空中配線する方法が基本とされていた。
ところがトランジスタの開発・実用化と同時期、配線作業効率が高く、品質も安定する「プリント基板」の量産技術が実用化され、従来のシャーシを使った実装方式に代えて、プリント基板を採用した真空管ラジオが各社から登場し、東芝の「かなりやY」もその1台である。
 当時のパンフレットには、「完全印刷配線で全製品が高度に均一化されています」
と謳われているが、プリント基板製造技術も未熟だったため、部品交換時にプリントパターンの剥離が生じやすく、後に発売された東芝かなりやシリーズをはじめ各社の真空管ラジオはシャーシタイプの実装方式へと戻っている。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやY 5LP-160』

 サイズ : 高さ(約17.6cm)×幅(約30.6cm)×奥行き(約11.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

          

 宅配便で届いた かなりやYのプラスチック製キャビネットは、50年の間に付着した汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
裏蓋を取外すと、清掃された形跡がないにもかかわらず、埃の堆積は少なく、使用環境がよかったのか、大切に保管されていたものと推察される。真空管は、すべてマツダ・ブランドの東芝純正品が使われており、目視点検する限りではブロックコンデンサほかプリント基板、パーツ類の劣化は見受けられない。

 オークションの出品者の方も、「動作確認済み。電源、スイッチを入れしばらくすると動きます」とコメントされていたので、意を決して電源を入れてみた。パイロットランプが点灯しない・・・嫌な記憶が、一瞬、頭をかすめる。
しばらくするとスピーカーから受信ノイズが聞こえはじめた。パイロットランプは、球が断線していただけのようだ。

          

 簡単な動作確認後、詳しい状態確認と清掃のため、キャビネットからプリント基板とスピーカー、イヤホンジャックを取外したのだが、かなりやYは、キャビネット内上部に裏蓋と同じ素材の断熱板(8cm×30cm)が取り付けられている。断熱効果は高く、真空管の熱からプラスチックキャビネットを守ってくれる設計仕様だ。
後のかなりやシリーズなど、多くのmT管トランスレスラジオに見られる、厚紙に銀紙を貼った断熱片(板?)では効果が低く、キャビネット上面が真空管の熱により変形しているラジオをよく見かける。

          

 キャビネットからプリント基板とスピーカー、イヤホンジャックを取外し点検したところ、修理した痕跡もなく、真空管に長年の埃が付着している程度で、各種電圧も正常であった。

          

 真空管の汚れをウェットティッシュで拭き、OA用エアクリーナーを吹きかけてプリント基板、スピーカーに付着している埃を取り除いた。

          

 50年の間にキャビネットへ付着した汚れ・黄ばみを取り除くために、いったん水洗い洗浄後、泡状のマジックリンでさらに洗浄すると、茶色味おびた黄色い汚れが流れ出る。さらによく水ですすぎ洗いし、乾燥後、いつものようにコンパウンドとプラスチッククリーナーで研磨すると、新品の輝きをとり戻す。

          

 本来なら安全のためにコンデンサー類は交換するところだが、この かなりやYは大変状態がいいため、パイロットランプの交換を済ませ、オリジナルのまま使用することにしたが、市内にある民放中継局(1kW)からのイメージ混信が若干発生している。オーディオ機器チューニング歴数十年の友人に測定・調整をお願いしたところ、30A5(電力増幅)と35W4(整流) のエミ減が発覚。この真空管2本とコンデンサー4個を交換後、測定器を用いた調整を行なってもらい、新品のラジオのように高感度で安定した受信ができる状態へ見事に復活を遂げた。ボクのような素人ではIFTをはじめとする中間周波や高周波回路の調整は恐くて手を出せないのだが、プロの腕と技にかかるとここまで性能を再現できることに驚きを隠せない。
まだまだ修行が足りないボクの未熟さを実感した次第でもある。

          

 一通りのレストアを完了し、見事に甦ったカナリアYを眺めながら、煙草に火を点けた。
かなりやYというだけあって、デザインも Y をモチーフにしてるのか、一見シンプルでありながら、フロント右側にレイアウトされた大型選局ダイヤルと相まって醸し出される非シンメトリックな造形美から、デザイナーの力量が感じとれる。選局ダイヤル後ろに配置されたパイロットランプの灯りが、暗闇の中ではフロントパネルのクロムメッキのモールに反射し、幻想的な世界を演出してくれる。

 時計の針は、深夜の1時半を指している。ラジオから流れるジャズピアノの音色に、ボクの孤独を重ね合わせる。 揺れる煙の向こうに、暖かくも懐かしい昭和の息づかいが聞こえてくるようだ。
(-。-)y-゜゜゜

東京芝浦電気(TOSHIBA)「かなりやYS」 5ZL-541

2006-09-14 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和28年(1952年)NHK第1・第2や民放ラジオ2局の電波を使った立体(ステレオ)放送の番組が開始されと。それにともない受信回路と出力回路を2組内蔵し、各々のラジオ局から送られた番組音源を同時に受信し、左右のスピーカーで再生する立体放送対応Hi-Fiラジオが注目を集めた。 
          

 当時の立体放送をNHKの例でいえば、第1放送が左側の音声、第2放送は右側の音声をそれぞれ放送し、2つのラジオを並べて置き、番組を聞けばステレオ音声が楽しめるという試みである。
しかしこの方法には、モノラル放送との互換性がとれない(受信機を二台用意しないと、片チャネルしか聞くことができない)ため、実際の立体放送番組はNHK「土曜コンサート」や民放ラジオ2局の協力による実験番組などに限られていた。
また複数の放送局から電波を送出するため、位相特性、周波数特性、信号レベル等の特性差が生じると、正しいステレオイメージが得られにくい等の問題もあり、広く一般には普及しなかったが、1つの筐体(キャビネット)に同調回路と低周波増幅回路(アンプ)を2組実装した専用ラジオも発売され、都市圏の富裕層の音楽愛好家から一定の支持は集めていたようである。

 その一方、mt管を使い、トランスを省略したトランスレス式真空管ラジオが普及するにつれ、従来の小型・標準タイプに加え、高級指向のラジオを求める消費者ニーズも生まれ始め、受信回路、出力回路は1組で実際はステレオ受信対応しないものの、スピーカを左右対象位置に2個搭載した『2スピーカーラジオ』が各社から発売された。
卓上小形のプラスティック・キャビネットに同じ口径のスピーカを2組積むと同じ出力でも2倍大きな音を出せるメリットがあり、「ステレオもどき」の2スピーカ・ラジオが瞬く間に流行したのである。

          

 東芝は、まず昭和34年(1959年)、かなりやシリーズに左右対称位置に2スピーカーを配置した かなりやCSと、キャビネット左側にスピーカーを2個配置した かなりやESの高級機2機種を発売した。
翌年、昭和35年には左右対称位置にデザインされた かなりやHS かなりやRSを、続いて昭和36年に発売された2スピーカータイプかなりやシリーズ5番目の機種が、今回ご紹介するかなりやYSである。
さらに昭和37年、かなりやS、かなりやX、マジックアイ付の かなりやJの2スピーカータイプ3機種を発売。4年間で累計8機種の2スピーカタイプのかなりやシリーズを世に送り出したことになる。
この年以降、かなりやシリーズは昭和39年に1スピーカ・モデルのかなりやKと かなりやLの2機種を出すにとどまり、真空管ラジオの生産を終えている。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやYS 5ZL-541 』

 サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約43cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 横幅43cmの かなりやYSは、通常の1スピーカータイプのトランスレス式真空管ラジオより10cm長く、感覚的にはかなり横幅が広がったように感じる。ラウンドを効かせたキャビネット、さらには緩やかな曲面処理を施されたフロントパネルとアルミメッシュ製スピーカーグリルが相まったフラッシュ・サーフェイスのデザインにより、大きさの割には全体的に引き締まった印象だ。清掃・研磨後、新品の輝きをとり戻したときの かなりやYSを想像すると、気分も自ずと高まってくる。

          

 宅配便で届いた かなりやYSのプラスチック製キャビネットは、汚れ・黄ばみ、天板の裏蓋の止め部分に2ヶ所3センチほどのひび割れと、天板正面に若干の傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観は程々である。
 オークションの出品者の方から、「修理済でMW,SWともよく受信ができています」とコメントされていた通り、裏蓋を取外すと、キャビネット内部は修理が行なわれた際に軽く清掃されているようだ。しかし完全に清掃されていないキャビネットとフロントパネルの隙間に堆積している大量の埃が、40年という長い時を経てきたことを物語っている。真空管のうち、30A5(電力増幅)、35W4(整流)の2本は東芝以外のメーカーの球に交換されている。

 いつものように内部抵抗値、ブロックコンデンサーの状態、ヒューズの規定値を確認し、電源を入れてみた。

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 平成4年(1992年)3月、「AMラジオのFM化」と期待され、東京のキー局、北海道・名古屋・大阪・福岡の大都市圏の各AMラジオ放送局およびWBS和歌山放送、RSK山陽放送、RCC中国放送、RKK熊本放送からモトローラ方式によるAMステレオ放送が実施されている。しかしAMステレオ対応ラジオが少ないことに加え、NHKが導入を見送ったことも影響し、幅広い普及には至っていない。

          
          ソニーSRF-A300、SRF-AX51V、パイオニアFD-3

 ただカーオーディオには、AMステレオ対応のCDチューナーが多く存在するので、いつものお気に入りCDやFM番組を聞いてばかりのアナタ! 一度、AMバンドに切替えてみてください。臨場感溢れるプロ野球中継が聞けるかも知れませんよ!!・・・・ん?、音楽好きには、プロ野球中継なんてウルサイだけだって??

結局、AMステレオ放送って意味ないってことじゃん?!

東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやLS 5AD-128 

2006-07-07 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和30年前後のラジオには、中波による通常のAMラジオのみが受信できるタイプと、中波/短波の2バンドを切替えて聞くことのできるタイプの2種類のラジオがある。かなりやシリーズの中で、短波放送の受信に重点を置いて設計され、昭和32年(1957年)発売された機種が、かなりやLSである。

          

 ラジオ放送は、周波数帯と電波形式により分類され、①AM放送(中波/MW)、②短波放送(短波/SW)、③FM放送(超短波/VHF)の3種類の放送が行なわれている。短波放送は、短波(3MHz~30MHz)の周波数特性である電離層反射により、電波が遠方まで到達するため、適切な周波数を選べば、日本全国あるいは全世界へ向けて『情報』を届けることができる。

 昭和29年(1954年)8月末、日本で唯一の民放短波放送局として日本短波放送(通称NSB)は開局した。リアルタイムで全国へ情報を配信するニーズが日本短波放送の原点であり、平日は株式市況、週末は中央競馬の実況中継を中心に番組は編成され、夕刻以降は「医学講座」「百万人の英語」「大学受験講座」「慶応義塾の時間(慶応大学通信制の支援番組)」など全国に散らばるリスナーを対象とした独自の番組を提供していた。

          

 当時のかなりやLSのパンフレットには、「世界の電波をたやすくキャッチする”かなりやLS”」とのキャッチコピーに続き、「短波が快適に受信できる4特長」として

1.短波受信用として特に高感度に設計してあります
2.針が繊細に動く大型バーニヤダイヤルと大型つまみ付で短波がたやすくキャッチできます
3.高能率スピーカーと新型真空管30A5付で、小型HiFi的音響効果
4.美しいグリーンオリーブ色を基調とした優雅な意匠により、ゆったりと落ち着いた気分で放送が聞けます

と大袈裟に謳ったコピーが続き、高度経済成長を迎えた当時の『時代の勢い』を感じさせてくれる。
 しかし基本設計は、通常のmt管5球スーパーと変わらず、バンド切替えロータリースイッチに直付けされたコイルあたりに「短波受信用として特に高感度に設計」された意図はうかがえるのだが・・・・利得損失軽減を目論と実際の効果の程は、甚だ疑問である。

          

 外観は四角いキャビネットの四隅にラウンド処理を施すとともに、中央にふくらみを持たせたヴォリューム感のあるフォルムと、正面を黒(メーカーはダークグリーンと呼んでるが・・・)/ホワイトのツートンカラー、さらに横スリットを入れた形成処理を行ない精悍さを演出している。後にパールホワイトのキャビネットも発売し、こちらはエレガントな印象である。かなりやLS 5AD-128が発売された4年後の昭和36年(1961年)に、同一機種名のかなりやLS 5YC-501が発売されているが、その関連性は別途検証する。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやLS 5AD-128』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約34cm)×奥行き(約14cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 人気の「かなりやシリーズ」はジャンク品であってもオークションでは高値で取引されることが多い。しかしこの かなりやLS、オークションの出品者のコメントには「知り合いに確認したところ、少し調整すれば動くようです」と書かれてあったが、状態は不明。結局、居酒屋1回分の値段で、怪しさ気な かなりやLSをすんなり手に入れることができた。

          

 宅配便で届いた荷物を開梱し、いつものように外観の目視点検から始めた。プラスチック製キャビネットは数十年の間に付着した汚れ、黄ばみ、擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く外観は中程度の部類である。
しかし・・・裏蓋を取外すと、年代相応の埃が溜まっており、外れていた周波数表示用指針がポロリっと出てきた。ヒューズは取外され、真空管もマツダ(東芝製)のものからNEC製に取替えられている。OPTへの結線も外され、怪しさが増幅する。

          

 キャビネットからシャーシーを取外してみると、案の定、バリコン・プーリーの糸掛が外れ、テンション・スプリングも無い。トランスレス・ラジオには珍しく、パイロットランプが2個付いており、バンド切り替えと連動して点灯する仕組みであるが、ゴムブッシュは劣化しており、交換を要する。当時のラジオをレストアする場合、これらの不具合は想定内なのだが・・・・。ただ何箇所か新たにハンダ付けした様子も見受けられ、前オーナーが修復を途中止めして投げ出したようなラジオはとてもボクの手に負えそうにない。
以前ご紹介したタイマーラジオかなりやPSなど、重症のラジオを思い出し、眩暈(めまい)がしてきた・・・。

          

 短波受信用として特に高感度に設計してあるというこのラジオ、当時のパンフレットに書かれていたように、、「世界の電波をたやすくキャッチする」のだろうか・・・? 「高能率スピーカーと新型真空管30A5付で、小型HiFi的音響効果に包まれながら、ゆったりと落ち着いた気分で放送が聞ける」のだろうか・・・??

          

 パンフレットの誇大広告気味のコピーを笑いのネタにしようとした目論見は外れ、凹んだ気分に追い討ちをかける。とりあえずシャーシーをエア吹き清掃後、重症と思われるかなりやLSを眺めながら、試案に暮れストレスが限界値にまで高まる、トホホな夜である。

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 日本短波放送は昭和53年(1978年)11月に局名を「ラジオたんぱ」に変更。
平成15年(2003年)社名を(株)日本短波放送から(株)日経ラジオ社に、続いて翌平成16年(2004年)4月には局名を「ラジオNIKKEI」へと変更した。

              
             
 日本経済新聞社の幅広く、有益な人材・コンテンツをグループ唯一のラジオ局として有効に活用・利用することで、これまでのリスナーからの期待に十二分に応えるとともに、新たなリスナーを獲得する制作体制整備とコンテンツ開発力に弾みをつけ新時代に備えていくそうである。

東京芝浦電気(TOSHIBA)「かなりやQ」 5YC-606 

2006-06-28 | 東芝 かなりやシリーズ

              

 昭和29年(1954年)から40年(1965年)頃までの約10年間に製造されたmT管トランスレスラジオ東芝「かなりやシリーズ」の後期に発売された、かなりやQは販売台数が多かったのか、オークションにしばしば出品されている。
また修復マニアやコレクターに人気の機種であり、真空管ラジオのレストアをテーマにした複数のホームページにも修復記事が掲載されている。落札価格は、本体の程度・状態の良し悪しにより¥5,000から¥15,000前後で取引されることが多く、レストアされた完動・美品になると¥30,000(!)の値をつけることもある。

              

 直線を基調としたオーソドックスなデザインであり、キャビネットは、黒、水色、オレンジ、オフホワイト、グリーンとカラー・バリエーションも豊富である。従来のかなりやシリーズは、フロント透明パネルをキャビネットに溶着しており、取外しが不可能であったが、かなりやQはフロント透明パネルの四隅をネジ止めしてあるため、分解、洗浄、清掃、研磨を容易に行なうことができる。

 今回のかなりやQは、市場にあまり出回っていない珍しいオフホワイトのキャビネットで、出品者の方の
「オークションで手に入れました、ランプ点灯、真空管もそろっています。ジャンクというには、外観は、われ、ひびなく比較的きれいです。短波は入りますが、中波の感度が悪い、中を取り出して調整しようと思いましたが、周波数の指針の出し入れに自信がなく触るのを止めました、直せる人に引取りを希望します。」
とのコメントに若干の不安を覚えつつ、状態も良さそうだったため¥6,000弱の価格で落札した。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやQ 5YC-606』

 サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約30cm)×奥行き(約14cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

              

 手元に届いたかなりやQは、外観・内部ともキレイに掃除されている。
しかし今までの経験上、キレイに清掃されている品は、前オーナーが未消化な知識であちこちを弄りまわし、電気的な不具合を抱えたケースが多い。今回も出品者の方の「短波は入りますが、中波の感度が悪い・・・」とのコメントから推察すると、その可能性が大である。
不安と諦めが交錯する思いの中、電源スイッチを入れたところ、不安的中!・・・中波は市内に送信所のある民放局1局しか入感せず、短波もバンド切替えの接触不良と調整ズレのため、まったく使い物にならない。
 出品者の方に修復の参考にするため、過去どのような調整をされたのか履歴を問い合わせたところ、出品者の方も前オーナーから¥15,000(高っ!!)で落札したが、調子が悪く、再調整しようと思ったもののご自分の手に負えなかったため今回手放されたとのこと。オークションは自己責任とは言え、ホントに気の毒な話である。

              

 量産工業製品である真空管ラジオに魅せられてコレクション&レストアしているボクのポリシーは、

  ①外観は限りなくオリジナルのまま当時の状態に復元する
  ②電気回路もオリジナルのままとして改造はしない
  ③安全性に配慮した部品交換を行なう
  ④そのラジオ本来の性能で、放送が受信できる状態に調整する

 つまり数十年間使われることの無かったラジオを『オリジナル』の状態に甦らせることに、レストアの楽しさを求めているわけです。

 オークションの出品を閲覧していると、「動作品」「完動品」「レストア済み」と書かれたコメントを目にする。ところが届いた品物は、市内にある中継局1局のみが『僅かに聴こえる』だけで、本来の性能とは程遠い代物だったことを何回も経験した。今回のようにあらかじめ、「難あり」との表示を理解・納得して入札するならともかく、出品者の主観による「動作品」「完動品」「よく聞こえます」といったコメントを鵜呑みにせず、注意しなければならない。

 実は・・・ボクも以前、オークションで、

 「外観はよごれていますが、『よく聞こえます』・・・」

とのコメントを信じて落札し、届いたラジオが雑音ばかりだったため出品者に連絡したところ、

 「ちゃんとスピーカーから音が『よく聞こえてる』のだから問題ないはず!」

との返事が届き、呆れてしまったケースもある。
 そりゃぁ、ちゃんと「音が聞こえて」はいるのでしょうが、雑音や異常発信音が聞こえてもなぁ・・・・・。
一休さんのトンチ話なら笑って済ませても、少ない小遣いをやり繰りして落札したのに、この対応はないでしょ!!と、怒りに肩を震わせたが、ノークレーム・ノーリターンだから文句を言っても埒があかない。

 横に座ったついたキャバ嬢が、どうしようもないドブ○だったため、店長にチェンジを要求しても「しばらくお待ちください」とかわされ、黙々とビールを飲んだ虚しい記憶が甦る。
 評価を「大変悪い」にしようかとも考えたが、こういった人はこちらの評価も躊躇無く「大変悪い」と入れてくるから困ったもんだ。
結局、トホホな気分のまま評価も入れず、そのラジオを叩き壊してスッキリした次第です。(←うそ:とりあえず部品取り用に持ってます♪)
 ところで今回の場合、幸いにも友人が別のかなりやQを部品取り用に入手し、シャーシ内部をレストアしていたため、そのストック品と中身を交換し、快適に動作している。
せっかくレストアしたかなりやQの中身をボクに強奪された友人もたまったものではない。
合コンの席で、こちらにブ○のおネーちゃんが座ったからって、友人の隣に座ったキレイなお嬢を隣に移動させたような後ろめたさを感じる。友人にしてみれば、至極迷惑な話である。
そんな彼を横目に、そそくさとその場を立ち去った次第である。

オークション 負け犬日記

2006-06-15 | 東芝 かなりやシリーズ
 真空管ラジオのコレクション&レストアを始めたことを何気に漏らすと、「いったいそんなモノ、どこで手に入れるんですか?」と質問される。

  1.骨董品屋で見つける
  2.アンティーク・ラジオ専門店で購入する
  2・フリーマーケットで探す
  3.オークションに入札し、買う
  4.知人・友人・親戚の物置に眠っている

 地方都市に住むボクは、そのほとんどをオークションに頼っている。オークションの場合、需要と供給の関係で価格が決まらないところが妙味なのだが、ぶっちゃけ言えば、可処分所得の多い人ほどお気に入りの品をゲットできる確率が高い。つまり、相場以上の金額を出せる『お金持ち』ほど有利という極めて単純な仕組みである。

              

 実は、今日も出品時より目をつけていた東芝製mt管トランスレス・ラジオを入札したところ、競合相手が出現してきた。競合相手のこのお方、V氏はボクが落札しようと入札する案件に、なぜか必ず後から入札してくる。たまたま趣味・嗜好が同じなのか、でも正直、ムカついてしまう。

 ボクは少ないお小遣いをやり繰りする関係上、最高入札額を¥5,000に自主規制している。居酒屋1回分、キャバクラ1セット分の金額である。

 ところがこのV氏、完動品であろうが、ジャンク品であろうが、ガンガン入札してこられるから、こちらはたまったものではない! 当方もつい意地になり、自主規制を解除。ガチンコ勝負に出たものの、¥15,000前にギブアップ。
前回はこのV氏を含めた3名による巴戦となったが、当方は早々に離脱。もうひと方との勝負の末、¥16,000で落札されていた。また前々回も当方は早期離脱、V氏は他の方と競われ、落札金額が¥18,750まで高騰した。

 まったく、少ない小遣いをはたいてお目当てのキャバクラ嬢を指名した日、すぐあとから店に入ってきたオヤジに3セット延長料金前払いでそのキャバクラ嬢を指名されてしまい、結局その娘は席にほとんど居なかった状態・・・そんな悲しい情景が重なってしまう、トホホな負け犬気分の夜である。

東京芝浦電気(TOSHIBA) 「かなりやPS」 5LQ-218

2006-06-03 | 東芝 かなりやシリーズ

 茶の間の娯楽がラジオからテレビへととって代わった1950年代中盤から約10年間、『かなりや』シリーズは、ラジオのパーソナル・ユースという消費者ニーズに応え、発売された小型卓上真空管ラジオである。
ラジオに「デザイン」という付加価値をつけながら、昭和29年(1954年)から40年(1965年)頃までの約10年間に約30種類以上製造されている。

              

 現在では家電製品に親しみやすい愛称をつけてシリーズ化する手法は常識だが、その当時のラジオは、東芝以外、どのメーカーからも味も素っ気もない型番形式表示のみで発売されていた。
そこで東芝は、機能的に差異のない5球スーパーラジオに「かなりや」という愛称をつけるとともに、外観デザインに工夫を凝らした機種をシリーズ化し、消費者の購買意欲を促し、また他社との差別化を図るマーケティング戦略をとった。
かなりやシリーズはその戦略の中で、「デザイン」に重点をおき、ピークの昭和35年(1960年)には何と10機種のラジオを発売している。
そんな中で生まれた「かなりやPS」は、既成概念を取り払い、奇抜なデザインをしたMW(中波)/SW(短波)2バンド対応mT管トランスレス式ラジオの一つである。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやPS 5LQ-218』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約31cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 ターコイズブルーのキャビネット正面の意匠に特長があり、矢型に成型されたスピーカー・グリル、アイボリーに塗装された平面のフロントパネルと半円柱形の周波数表示窓、右端にレイアウトされたダイヤル類のコンビネーションが面白い。
ダイヤルは上から、電源OFF/MW/SW切替えスイッチ、音量調整ボリューム、周波数選局ダイヤルとなっている。

              

 宅配便で届いた商品を開梱し、裏蓋を外して中身を見ると、バリコン、高周波コイル、ロータリースイッチが取り付けられた小型シャーシと、真空管をはじめとするパーツが配置されているプリント基板に分かれている。
ところがこのかなりやPS、キャビネット内部がキレイすぎる・・・・バリコンやIFTは異様にキレイだが、プリント基板上のパーツはそれなりに汚れている。洗剤を使って、中途半端に水洗いされた可能性もある。
丸洗いを行なう場合は、水道水は避け、精製水を使って急速乾燥させるなど細心の注意をはらわなければ、水道水に含まれるイオン成分等で電気部品の劣化を招く。
オークションのコメントでは「受信音しますが雑音・異音・受信しない所などあります」とのことだったが、電気的なダメージを受けている可能性が高い。
電源を入れて動作をチェックしてみると、案の定、感度も悪く、受信できるのは市内の中継局1局(出力1KW)のみであり、受信音に歪もある。おまけにバリコンを回すとあちらこちらで異常発振が聞こえる。レストアするには一番嫌なパターンである。

 外観もキャビネット天板に大きなクラックが走っている。プラスチック自体が40年以上の経年変化で硬化しているようだ。プラスチックなどは、高分子材料の強度を発現させる単分子鎖の分子容量とその集合状態がさまざまな要因によって劣化するためである。
 悪いことは重なるもので、段ボール箱に入れた かなりやPSを不注意でコンクリートの床に40cmの高さから落下させてしまい、右脚の破損をはじめキャビネット数ヶ所に割れが生じてしまった。

 まったくもって、重ねがさねトホホな気分にさせてくれる「悲運の真空管ラジオ、かなりやPS」である。

東京芝浦電気(TOSHIBA) 「マツダ ピアノラジオ」 5BA-50

2006-04-24 | 東芝 かなりやシリーズ

              

 昭和29年(1954年)から40年(1965年)頃までの約10年間に製造されたmT管トランスレスラジオ東芝「かなりやシリーズ」「うぐいすシリーズ」の隙間を縫うように、同メーカーからは今回ご紹介する「マツダ ピアノラジオ 5BA-50」のほか、「マツダ 地球儀ラジオ 5LE-92」「クロック・ラジオ 5YA-47」といったつい笑ってしまうオシャレ?なネーミングの奇妙なラジオが発売されている。

              

 ピアノラジオは昭和31(1956)年頃に発売された、プリセット押しボタンで選局ができるラジオである。設計はかなりやシリーズに準じているが、プリセット式選局ボタンがピアノを連想させるので「ピアノラジオ」と命名されたのだろう。
 ピアノと鍵盤をイメージしたキャビネットとプリセット式選局ボタンのカラーは白黒ツートンのピアノを模した色使いである。大東亜戦争終戦から10年を経て、メーカーは『ピアノ』というネーミングに文化・芸術を象徴させたデザイン・コンセプトのラジオを発売するほど、世の中が安定と豊かさを取り戻した証だったのかもしれない。

              

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『マツダ ピアノラジオ 5BA-50』

 サイズ : 高さ(約 cm)、幅(約 cm)、奥行き(約 cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25M-K15(整流) 

 三菱5球スーパーの項目でも述べたが、整流管25M-K15は現在ほとんど流通しない貴重な真空管である。
日本にmTトランスレス式真空管ラジオが登場した1953年頃は米国の出力管35C5、整流管35W4の組み合わせが使われ、1954年から56年頃にかけての一時期はヒータ電圧を節約する目的で25M-K15がデビューし出力管35C5との組み合わせが使われた。
しかし1956年以後、欧州型の出力管30A5や整流管19A3が出ると25M-K15を使用するメリットはなくなり、使われなくなった希少な真空管である。
 ちなみにメンテナンス用ストックに25M-K15を探していたところ、秋葉原で新品を探し出してくれた友人から「1本¥3800を値切って¥2200で手に入れたけど、どうする?」とメールをいただき、即刻購入をお願いした次第である。貴重品のため、今回のレストアにこの新品は使用せず、修復後、所有の三菱5球スーパーにて使われている25M-K15を差替えてテストした。

              

 人気の「かなりやシリーズ」はオークションでジャンク品であっても高値で取引されることが多い。しかしこの「ピアノラジオ」は怪しすぎるのか誰からも入札されることなく、最安値ですんなり手に入れることができた。
ところが送られてきた品は、正規の35C5(電力増幅)、25M-K15(整流)が抜かれ、代わりにヒーターの断線した30A5、35W4が差し込まれ、バーアンテナは取れかかっており、電源周りのパーツも逝ってしまってる様子。
キャビネットからシャーシーを取り出してみると、キレイに磨かれているものの、やはりコレクターが修理を途中で止めて放り出した代物のようだ。シャーシー内部は、かなりやシリーズの初期に見られるフローティングアースで配線されている。

               

 今回は貴重な整流管が使われているため、電源周りの配線手直し、コンデンサー・抵抗の交換、バーアンテナ断線修理等の後、友人でラジオ病仲間?でもある「音響の匠さん」に登場願い、SSGを使ってIFTとトラッキング調整を経て、無事に復活を果たすことができた。感謝感激である。

              

 5つのプリセット式選局ボタンは、ボタンの裏にあるシャフトネジを回して長さを調整後、そのシャフトをボタンで押すことで、ギアを伝ってバリコンを回す機構となっている。バリコンには周波数表示を兼ねたドラムが直結されており、ドラムを回して同調の微調整やプリセットした周波数以外の選局も可能となっている。このプリセット選局機構とバリコンは一体型となり、かなりしっかりした作りである。
プリセット選局の設定は、選局ボタン下の裏にあるネジをいったん押し込んでから緩め、周波数表示ドラムで手動選局後にネジを締めるとプリセットされる仕組みである。なお鍵盤型選局ボタンの色は、白と赤の2色のバージョンが用意されていた。

              

 この「ピアノラジオ 5BA-50」や以前に紹介した「かなりやA 5MB-42」といったmT管ラジオの初期の製品は回路の簡略化を図っている。メーカーはテレビの登場によってラジオが国民生活に無くてはならなかった存在から、パーソナルな『道具』へとニーズが変化していることを感じつつ、「ラジオへのこだわり」、言い換えれば「ラジオメーカーとしてのプライド」を確実に持ち、模索していた時期と思われる。
 その試行錯誤の結果として、工夫を凝らした選局機構や、今では笑いを誘うようなネーミングも真剣に考えた末、このようなラジオを発売するに至ったのではないのかと想像する。

              

 十二分に調整されたこのピアノラジオに装備されている20cm近い長さのバーアンテナの威力はすさまじく、アンテナをつながない状態でも夜間は九州、関西、名古屋、関東の50Kwクラスの放送局がガンガン入感する。
またさすがにピアノラジオと名乗っているだけあり、音質も非常にまろやかで、長時間聞いていても疲れない。

東芝(TOSHIBA) 「かなりやK」 5YC-763

2006-04-03 | 東芝 かなりやシリーズ
              
   東芝(TOSHIBA) 「かなりやK」 5YC-763

 真空管ラジオとトランジスタラジオの混在した時期はしばらく続いたが、トランジスタラジオの低価格化と普及が進み、真空管ラジオは終焉を迎えることとなる。
 茶の間の娯楽がラジオからテレビへととって代わった1950年代中盤から約10年間、『かなりや』シリーズは、ラジオのパーソナル・ユースというニーズに応えた小型卓上真空管ラジオである。つまり「デザイン」という付加価値をつけながら40種類近くに及ぶ機種を発売し、あの昭和30年代、多くの人々に受け入れられた量産工業製品である。

「かなりやK」は、東芝かなりやシリーズの最後から2番目のモデルであり、最後期の真空管ラジオの姿を見たくて入手したのだが、デザイン的にまったく魅力を感じさせない機種だ。

 フロントの透明周波数表示パネルのバックに木目の貼紙を採用し、メーカーは「意匠に新鮮味を加えた」つもりのようだが、当時のトランジスタラジオに用いられていたアルミ多孔板を使ったスピーカ・グリル、薄っぺらなプラスチックキャビネット、シルバーのツマミ、これらのコンビネーションがまったくアンバランスで、悲しいくらいまとまりのない安っぽいデザインとなっている。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやK 5YC-763』

 サイズ : 高さ(約13.5cm)×幅(約28cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)
          30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 電気的出力 : 最大1.5W  電源 : 50~60c/s 100V  消費電力 : 25VA
 
 スピーカ : パーマネント・ダイナミック・スピーカ

 ちなみにこの「かなりやK 5YC-763」は昭和40(1965)年のモデルであるが、その10年前に同じ名称で1956年に(初代)「かなりやK 5LP-108」というデザイン・設計思想のまったく異なるモデルが発売されている。
車の世界では過去に廃車となった人気モデルの名前を新車にネーミングするケースを稀にみるが、この時代の真空管ラジオにこのようなマーケティング戦略があったはずもなく、のんびりした時代だったのか、その背景は謎である。

              
   シャーシの四角い穴が哀愁を誘う「かなりやK」

 裏蓋を開けるとシャーシにポッカリ穴の空いた部分が目に入る。かなりやQのシャーシを流用し、従来は外部入力の端子がついていた場所だが、こんなラジオを増幅器にして利用する家庭もなく外部入力は省略されてしまった。終末期を迎えた真空管ラジオの哀愁が漂う部分である。
また写真左奥に見える、トランジスターラジオの部品を流用した小指ほどの長さのバーアンテナまでが、トホホな気分をさらに増幅させる。

              

 オークションでは「動作品」ということであったので点検を行なわないまま電源を入れてみたところ、途端にパイロットランプ、ヒューズが飛んでしまった。
 シャーシにサビもなく、埃も比較的少ないほうだが、キャビネット底に通気穴が開いているためシャーシ内側は年代相応の埃が溜まっている。ダスト・クリーナーを吹きつけ、埃を飛ばして清掃した。

              

 キャビネットからシャーシー、スピーカーを取り外し、PLとゴムブッシュ、電源周りのコンデンサー類を交換したところ正常に作動したが、なぜ「動作品」がショートしたのか、未だ謎である。
特に埃が多く溜まっていたMW/SWのバンド切り替えスイッチもエレクトロニクスクリーナーで丹念に清掃し、接点復活剤を麺棒で慎重に塗布しておいた。
またチューニングダイヤルがスリップするため、糸掛けを一旦外し、バネでテンションがかかるよう再度巻き直すのだが、スムーズに動き出すと、手先の不器用なボクとしては苦労が報われた気分になってくる。

              
   新品に近い輝きをとり戻した「かなりやK」

 当初、キャビネットとフロントの透明パネルには年代相応の汚れとキズがあり、埃も溜まっていたが、キャビネットを洗浄し、時間をかけてコンパウンドで丁寧にキズや汚れを落とし、新品に近い輝きと透明感をとり戻した。
電源スイッチを入れると暖炉の灯火のようにパイロットランプが暖かく灯る。
バーアンテナを内蔵しているためか、調整しなくても感度は比較的良好である。

 透明度の高いフロントパネルを通して見る木目のバックパネルと淡いピンクのキャビネット、アルミの質感が融合したデザインの「かなりやK」を眺めていると、ニュージーランドへ旅行したときに泊めていただいた家庭のキッチンにあったラジオを思い出す。
 そのラジオは日本製かどこの国の製品か不明だが、安っぽいプラスチックケースに包まれたラジオからは、クイーンズ・イングリッシュのトークとポピュラー・ミュージックがゆったりとした時間の中で流れていた。

              
   ニュージーランドの歌姫 ヘイリー(Hayley Westenra)18才♪

 ニュージーランドといえば、弱冠18才の歌姫、ヘイリー(Hayley Westenra)。
2003年にアルバム『ピュア』でセンセーショナルなデビューを果たし、大ヒットドラマ『白い巨塔』の主題歌「アメイジング・グレイス」、続いて太平洋戦争中に密命を受けて出撃した日本海軍の潜水艦の戦いを軸に、役所広司、妻夫木聡らが展開する大作映画『ローレライ』の主題歌「モーツァルトの子守歌」で日本でもその「ピュア・ヴォイス」が一躍大注目を浴びた。
アルバムでは日本人にも馴染み深い「カッチーニのアヴェ・マリア」「モーツァルトの子守歌」といったクラシックの名曲をアレンジした曲や、ポップなオリジナル曲、大ヒット映画『ロード・オブ・ザ・リング』の主題歌として話題となったエンヤの「メイ・イット・ビー」やジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」といったカヴァー曲で構成されている。

 彼女の笑顔とニュージーランドの大自然を思い出すと、「安っぽいラジオだって、別にイイじゃん!ちゃんと音が鳴るんだから・・・」という寛容な気分になってしまう。

 店員ユー: ついさっきまで「コンビネーションがまったくアンバランスで、悲しいくらいまとまりのない安っぽいデザイン・・・」とかって滅茶苦茶に言ってたくせに!!

 はいっ、ボクで~す!俺はなぜかホワイト・アングロサクソン系やスラブ系の女の子から人気があるの知ってるだろ~ おまけに18才~♪フォ~(店長)

 店員ユー: 何か、勘違いしてるし・・・・この○○オ・ヤ・ジ★