昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東京芝浦電気(TOSHIBA)「かなりやQ」 5YC-606 

2006-06-28 | 東芝 かなりやシリーズ

              

 昭和29年(1954年)から40年(1965年)頃までの約10年間に製造されたmT管トランスレスラジオ東芝「かなりやシリーズ」の後期に発売された、かなりやQは販売台数が多かったのか、オークションにしばしば出品されている。
また修復マニアやコレクターに人気の機種であり、真空管ラジオのレストアをテーマにした複数のホームページにも修復記事が掲載されている。落札価格は、本体の程度・状態の良し悪しにより¥5,000から¥15,000前後で取引されることが多く、レストアされた完動・美品になると¥30,000(!)の値をつけることもある。

              

 直線を基調としたオーソドックスなデザインであり、キャビネットは、黒、水色、オレンジ、オフホワイト、グリーンとカラー・バリエーションも豊富である。従来のかなりやシリーズは、フロント透明パネルをキャビネットに溶着しており、取外しが不可能であったが、かなりやQはフロント透明パネルの四隅をネジ止めしてあるため、分解、洗浄、清掃、研磨を容易に行なうことができる。

 今回のかなりやQは、市場にあまり出回っていない珍しいオフホワイトのキャビネットで、出品者の方の
「オークションで手に入れました、ランプ点灯、真空管もそろっています。ジャンクというには、外観は、われ、ひびなく比較的きれいです。短波は入りますが、中波の感度が悪い、中を取り出して調整しようと思いましたが、周波数の指針の出し入れに自信がなく触るのを止めました、直せる人に引取りを希望します。」
とのコメントに若干の不安を覚えつつ、状態も良さそうだったため¥6,000弱の価格で落札した。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやQ 5YC-606』

 サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約30cm)×奥行き(約14cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

              

 手元に届いたかなりやQは、外観・内部ともキレイに掃除されている。
しかし今までの経験上、キレイに清掃されている品は、前オーナーが未消化な知識であちこちを弄りまわし、電気的な不具合を抱えたケースが多い。今回も出品者の方の「短波は入りますが、中波の感度が悪い・・・」とのコメントから推察すると、その可能性が大である。
不安と諦めが交錯する思いの中、電源スイッチを入れたところ、不安的中!・・・中波は市内に送信所のある民放局1局しか入感せず、短波もバンド切替えの接触不良と調整ズレのため、まったく使い物にならない。
 出品者の方に修復の参考にするため、過去どのような調整をされたのか履歴を問い合わせたところ、出品者の方も前オーナーから¥15,000(高っ!!)で落札したが、調子が悪く、再調整しようと思ったもののご自分の手に負えなかったため今回手放されたとのこと。オークションは自己責任とは言え、ホントに気の毒な話である。

              

 量産工業製品である真空管ラジオに魅せられてコレクション&レストアしているボクのポリシーは、

  ①外観は限りなくオリジナルのまま当時の状態に復元する
  ②電気回路もオリジナルのままとして改造はしない
  ③安全性に配慮した部品交換を行なう
  ④そのラジオ本来の性能で、放送が受信できる状態に調整する

 つまり数十年間使われることの無かったラジオを『オリジナル』の状態に甦らせることに、レストアの楽しさを求めているわけです。

 オークションの出品を閲覧していると、「動作品」「完動品」「レストア済み」と書かれたコメントを目にする。ところが届いた品物は、市内にある中継局1局のみが『僅かに聴こえる』だけで、本来の性能とは程遠い代物だったことを何回も経験した。今回のようにあらかじめ、「難あり」との表示を理解・納得して入札するならともかく、出品者の主観による「動作品」「完動品」「よく聞こえます」といったコメントを鵜呑みにせず、注意しなければならない。

 実は・・・ボクも以前、オークションで、

 「外観はよごれていますが、『よく聞こえます』・・・」

とのコメントを信じて落札し、届いたラジオが雑音ばかりだったため出品者に連絡したところ、

 「ちゃんとスピーカーから音が『よく聞こえてる』のだから問題ないはず!」

との返事が届き、呆れてしまったケースもある。
 そりゃぁ、ちゃんと「音が聞こえて」はいるのでしょうが、雑音や異常発信音が聞こえてもなぁ・・・・・。
一休さんのトンチ話なら笑って済ませても、少ない小遣いをやり繰りして落札したのに、この対応はないでしょ!!と、怒りに肩を震わせたが、ノークレーム・ノーリターンだから文句を言っても埒があかない。

 横に座ったついたキャバ嬢が、どうしようもないドブ○だったため、店長にチェンジを要求しても「しばらくお待ちください」とかわされ、黙々とビールを飲んだ虚しい記憶が甦る。
 評価を「大変悪い」にしようかとも考えたが、こういった人はこちらの評価も躊躇無く「大変悪い」と入れてくるから困ったもんだ。
結局、トホホな気分のまま評価も入れず、そのラジオを叩き壊してスッキリした次第です。(←うそ:とりあえず部品取り用に持ってます♪)
 ところで今回の場合、幸いにも友人が別のかなりやQを部品取り用に入手し、シャーシ内部をレストアしていたため、そのストック品と中身を交換し、快適に動作している。
せっかくレストアしたかなりやQの中身をボクに強奪された友人もたまったものではない。
合コンの席で、こちらにブ○のおネーちゃんが座ったからって、友人の隣に座ったキレイなお嬢を隣に移動させたような後ろめたさを感じる。友人にしてみれば、至極迷惑な話である。
そんな彼を横目に、そそくさとその場を立ち去った次第である。

オークション 負け犬日記

2006-06-15 | 東芝 かなりやシリーズ
 真空管ラジオのコレクション&レストアを始めたことを何気に漏らすと、「いったいそんなモノ、どこで手に入れるんですか?」と質問される。

  1.骨董品屋で見つける
  2.アンティーク・ラジオ専門店で購入する
  2・フリーマーケットで探す
  3.オークションに入札し、買う
  4.知人・友人・親戚の物置に眠っている

 地方都市に住むボクは、そのほとんどをオークションに頼っている。オークションの場合、需要と供給の関係で価格が決まらないところが妙味なのだが、ぶっちゃけ言えば、可処分所得の多い人ほどお気に入りの品をゲットできる確率が高い。つまり、相場以上の金額を出せる『お金持ち』ほど有利という極めて単純な仕組みである。

              

 実は、今日も出品時より目をつけていた東芝製mt管トランスレス・ラジオを入札したところ、競合相手が出現してきた。競合相手のこのお方、V氏はボクが落札しようと入札する案件に、なぜか必ず後から入札してくる。たまたま趣味・嗜好が同じなのか、でも正直、ムカついてしまう。

 ボクは少ないお小遣いをやり繰りする関係上、最高入札額を¥5,000に自主規制している。居酒屋1回分、キャバクラ1セット分の金額である。

 ところがこのV氏、完動品であろうが、ジャンク品であろうが、ガンガン入札してこられるから、こちらはたまったものではない! 当方もつい意地になり、自主規制を解除。ガチンコ勝負に出たものの、¥15,000前にギブアップ。
前回はこのV氏を含めた3名による巴戦となったが、当方は早々に離脱。もうひと方との勝負の末、¥16,000で落札されていた。また前々回も当方は早期離脱、V氏は他の方と競われ、落札金額が¥18,750まで高騰した。

 まったく、少ない小遣いをはたいてお目当てのキャバクラ嬢を指名した日、すぐあとから店に入ってきたオヤジに3セット延長料金前払いでそのキャバクラ嬢を指名されてしまい、結局その娘は席にほとんど居なかった状態・・・そんな悲しい情景が重なってしまう、トホホな負け犬気分の夜である。

東京芝浦電気(TOSHIBA) 「かなりやPS」 5LQ-218

2006-06-03 | 東芝 かなりやシリーズ

 茶の間の娯楽がラジオからテレビへととって代わった1950年代中盤から約10年間、『かなりや』シリーズは、ラジオのパーソナル・ユースという消費者ニーズに応え、発売された小型卓上真空管ラジオである。
ラジオに「デザイン」という付加価値をつけながら、昭和29年(1954年)から40年(1965年)頃までの約10年間に約30種類以上製造されている。

              

 現在では家電製品に親しみやすい愛称をつけてシリーズ化する手法は常識だが、その当時のラジオは、東芝以外、どのメーカーからも味も素っ気もない型番形式表示のみで発売されていた。
そこで東芝は、機能的に差異のない5球スーパーラジオに「かなりや」という愛称をつけるとともに、外観デザインに工夫を凝らした機種をシリーズ化し、消費者の購買意欲を促し、また他社との差別化を図るマーケティング戦略をとった。
かなりやシリーズはその戦略の中で、「デザイン」に重点をおき、ピークの昭和35年(1960年)には何と10機種のラジオを発売している。
そんな中で生まれた「かなりやPS」は、既成概念を取り払い、奇抜なデザインをしたMW(中波)/SW(短波)2バンド対応mT管トランスレス式ラジオの一つである。

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやPS 5LQ-218』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約31cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 ターコイズブルーのキャビネット正面の意匠に特長があり、矢型に成型されたスピーカー・グリル、アイボリーに塗装された平面のフロントパネルと半円柱形の周波数表示窓、右端にレイアウトされたダイヤル類のコンビネーションが面白い。
ダイヤルは上から、電源OFF/MW/SW切替えスイッチ、音量調整ボリューム、周波数選局ダイヤルとなっている。

              

 宅配便で届いた商品を開梱し、裏蓋を外して中身を見ると、バリコン、高周波コイル、ロータリースイッチが取り付けられた小型シャーシと、真空管をはじめとするパーツが配置されているプリント基板に分かれている。
ところがこのかなりやPS、キャビネット内部がキレイすぎる・・・・バリコンやIFTは異様にキレイだが、プリント基板上のパーツはそれなりに汚れている。洗剤を使って、中途半端に水洗いされた可能性もある。
丸洗いを行なう場合は、水道水は避け、精製水を使って急速乾燥させるなど細心の注意をはらわなければ、水道水に含まれるイオン成分等で電気部品の劣化を招く。
オークションのコメントでは「受信音しますが雑音・異音・受信しない所などあります」とのことだったが、電気的なダメージを受けている可能性が高い。
電源を入れて動作をチェックしてみると、案の定、感度も悪く、受信できるのは市内の中継局1局(出力1KW)のみであり、受信音に歪もある。おまけにバリコンを回すとあちらこちらで異常発振が聞こえる。レストアするには一番嫌なパターンである。

 外観もキャビネット天板に大きなクラックが走っている。プラスチック自体が40年以上の経年変化で硬化しているようだ。プラスチックなどは、高分子材料の強度を発現させる単分子鎖の分子容量とその集合状態がさまざまな要因によって劣化するためである。
 悪いことは重なるもので、段ボール箱に入れた かなりやPSを不注意でコンクリートの床に40cmの高さから落下させてしまい、右脚の破損をはじめキャビネット数ヶ所に割れが生じてしまった。

 まったくもって、重ねがさねトホホな気分にさせてくれる「悲運の真空管ラジオ、かなりやPS」である。