昭和29年(1954年)から40年(1965年)頃までの約10年間に製造されたmT管トランスレスラジオ東芝「かなりやシリーズ」の後期に発売された、かなりやQは販売台数が多かったのか、オークションにしばしば出品されている。
また修復マニアやコレクターに人気の機種であり、真空管ラジオのレストアをテーマにした複数のホームページにも修復記事が掲載されている。落札価格は、本体の程度・状態の良し悪しにより¥5,000から¥15,000前後で取引されることが多く、レストアされた完動・美品になると¥30,000(!)の値をつけることもある。
直線を基調としたオーソドックスなデザインであり、キャビネットは、黒、水色、オレンジ、オフホワイト、グリーンとカラー・バリエーションも豊富である。従来のかなりやシリーズは、フロント透明パネルをキャビネットに溶着しており、取外しが不可能であったが、かなりやQはフロント透明パネルの四隅をネジ止めしてあるため、分解、洗浄、清掃、研磨を容易に行なうことができる。
今回のかなりやQは、市場にあまり出回っていない珍しいオフホワイトのキャビネットで、出品者の方の
「オークションで手に入れました、ランプ点灯、真空管もそろっています。ジャンクというには、外観は、われ、ひびなく比較的きれいです。短波は入りますが、中波の感度が悪い、中を取り出して調整しようと思いましたが、周波数の指針の出し入れに自信がなく触るのを止めました、直せる人に引取りを希望します。」
とのコメントに若干の不安を覚えつつ、状態も良さそうだったため¥6,000弱の価格で落札した。
メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやQ 5YC-606』
サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約30cm)×奥行き(約14cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)
手元に届いたかなりやQは、外観・内部ともキレイに掃除されている。
しかし今までの経験上、キレイに清掃されている品は、前オーナーが未消化な知識であちこちを弄りまわし、電気的な不具合を抱えたケースが多い。今回も出品者の方の「短波は入りますが、中波の感度が悪い・・・」とのコメントから推察すると、その可能性が大である。
不安と諦めが交錯する思いの中、電源スイッチを入れたところ、不安的中!・・・中波は市内に送信所のある民放局1局しか入感せず、短波もバンド切替えの接触不良と調整ズレのため、まったく使い物にならない。
出品者の方に修復の参考にするため、過去どのような調整をされたのか履歴を問い合わせたところ、出品者の方も前オーナーから¥15,000(高っ!!)で落札したが、調子が悪く、再調整しようと思ったもののご自分の手に負えなかったため今回手放されたとのこと。オークションは自己責任とは言え、ホントに気の毒な話である。
量産工業製品である真空管ラジオに魅せられてコレクション&レストアしているボクのポリシーは、
①外観は限りなくオリジナルのまま当時の状態に復元する
②電気回路もオリジナルのままとして改造はしない
③安全性に配慮した部品交換を行なう
④そのラジオ本来の性能で、放送が受信できる状態に調整する
つまり数十年間使われることの無かったラジオを『オリジナル』の状態に甦らせることに、レストアの楽しさを求めているわけです。
オークションの出品を閲覧していると、「動作品」「完動品」「レストア済み」と書かれたコメントを目にする。ところが届いた品物は、市内にある中継局1局のみが『僅かに聴こえる』だけで、本来の性能とは程遠い代物だったことを何回も経験した。今回のようにあらかじめ、「難あり」との表示を理解・納得して入札するならともかく、出品者の主観による「動作品」「完動品」「よく聞こえます」といったコメントを鵜呑みにせず、注意しなければならない。
実は・・・ボクも以前、オークションで、
「外観はよごれていますが、『よく聞こえます』・・・」
とのコメントを信じて落札し、届いたラジオが雑音ばかりだったため出品者に連絡したところ、
「ちゃんとスピーカーから音が『よく聞こえてる』のだから問題ないはず!」
との返事が届き、呆れてしまったケースもある。
そりゃぁ、ちゃんと「音が聞こえて」はいるのでしょうが、雑音や異常発信音が聞こえてもなぁ・・・・・。
一休さんのトンチ話なら笑って済ませても、少ない小遣いをやり繰りして落札したのに、この対応はないでしょ!!と、怒りに肩を震わせたが、ノークレーム・ノーリターンだから文句を言っても埒があかない。
横に座ったついたキャバ嬢が、どうしようもないドブ○だったため、店長にチェンジを要求しても「しばらくお待ちください」とかわされ、黙々とビールを飲んだ虚しい記憶が甦る。
評価を「大変悪い」にしようかとも考えたが、こういった人はこちらの評価も躊躇無く「大変悪い」と入れてくるから困ったもんだ。
結局、トホホな気分のまま評価も入れず、そのラジオを叩き壊してスッキリした次第です。(←うそ:とりあえず部品取り用に持ってます♪)
ところで今回の場合、幸いにも友人が別のかなりやQを部品取り用に入手し、シャーシ内部をレストアしていたため、そのストック品と中身を交換し、快適に動作している。
せっかくレストアしたかなりやQの中身をボクに強奪された友人もたまったものではない。
合コンの席で、こちらにブ○のおネーちゃんが座ったからって、友人の隣に座ったキレイなお嬢を隣に移動させたような後ろめたさを感じる。友人にしてみれば、至極迷惑な話である。
そんな彼を横目に、そそくさとその場を立ち去った次第である。