昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

放送記念日に読む「ラジオの戦争責任」坂本慎一著 PHP出版

2008-03-24 | 昭和三丁目の真空管ラジオ
放送記念日である3月22日、ボクは先日入手した昭和12年製造の並四ラジオ受信機から流れるNHKをBGM代わりに聴きながら、『ラジオの戦争責任』(坂本慎一著PHP出版 ¥798)という新書を読んでいた。 
        
 昭和6年の満州事変、昭和12年盧溝橋事件に端を発した支那事変を経て、大東亜戦争に突入した日本の国内世論は、これを支持、挙国一致で邁進した。「新聞」というメディアがその原動力となり、大きな役割を果たしたことは有名だが、「ラジオ」というもう一つのメディアがどう関わったのかを語られることは少ない。
現代を生きる我々が思い起こすのは、せいぜい “真珠湾攻撃成功と開戦を告げる臨時ニュース” と “終戦時の玉音放送” の場面くらいであろう。
        
        ▲『ラジオの戦争責任』(坂本慎一著PHP出版 ¥798)
 ではなぜ当時の国民は、満州事変から大東亜戦争に至る戦いを支持したのか?
この根本的な疑問に答えるために、本書の序章「世界最強のマスメディア・日本のラジオ」では、日本独特のラジオ聴取文化などの諸事情が解説され、続いて戦前戦中のラジオ放送にかかわった五人の人物を紹介している。

  ①労働=修行の思想を説いた高嶋米峰と、それを引き継いだ友松圓諦
  ②受信機の普及に情熱を燃やした松下幸之助
  ③「大東亜共栄圏」を広めた松岡洋右
  ④玉音放送の真の仕掛け人・下村宏

 彼らを通して昭和初期の日本人がどれだけラジオの影響を受けていたのか、理解できる。
また本書では、これまで見過ごされていた「声の文化」の歴史的影響力を真正面から検証するとともに、天皇陛下の「終戦の御聖断」の内幕も新資料から明らかにすることで、「ラジオ」というマスメディアの功罪を問いかける。
        
 昭和の戦争は、軍の独走・暴走という面も確かにあったが、世論がそれを支持したことも事実だ。
ではなぜ国民は、戦争を支持したのか?それは決して現在のモノサシで計れるものではなく、
『あの戦争は、軍国主義者主導による過ちだった』
とする東京裁判史観をもって、今を生きる我々が傍観者的に歴史を断罪べきではないと思うのです。
戦争の終盤、継続か終戦かと内閣でも意見が別れたとき、阿南惟幾陸軍大臣は、「 “一億玉砕” と熱狂している国民に終戦を納得させる方法はない」
と言って戦争継続を主張したことを考えると、軍部でさえも世論を無視することはできなかった、当時のリアリズムを本書から感じる。

 当時の日本は軍主導ではあったが、決して独裁国家ではなかった。

 そこには軍部を後押しした世論も確かにあった。

 この世論形成は、誰かが扇動したというよりも、当時の国際情勢と社会環境が大きく影響していたことを忘れてはならない。
世界大恐慌をきっかけにブロック経済がすすみ、欧米列強により日本の経済は危機的状況に追い込まれていた。国家滅亡への危機感をバックボーンとしつつ、大東亜共栄圏確立を理念とし、(一部の反対はあったにせよ)国民の総意に基づいて突き進んだ「防衛戦争」であったという側面からも、我々は目を逸らしてはならない。人々の内に秘めた “防衛本能” と “闘争本能” を具現化する役割の一端を、当時最強のメディアであったラジオが担ったことは間違いなさそうだ。
          
 そして同書の中で “新しいメディアには未知の混乱がある” と記されている。
インターネットの出現や放送と通信の融合とか、いろいろ騒がれている今だからこそ、メディアの持つ本質的な役割や機能について考えるべき時期が来ているのだと思いつつ、あらためて昭和12年盧溝橋事件勃発の年に誕生した並四ラジオWONDER受信機からの音に耳を傾けてみる放送記念日の夜であった。

並四ラジオ WONDER受信機 (2) 再生式検波ラジオ受信機の調整方法

2008-03-20 | 戦前のラジオ
 今回は、真空管ラジオのコレクション&レストアを趣味とする方々から絶大の人気を集めているホームページ (新)ラジオ修復記 再生調整方法から抜粋、取扱説明書ふうに編集・再構成した、再生検波式受信機の調整の方法をご紹介します。

再生式検波ラジオ受信機の調整方法

        

(1)電源プラグを、家庭用コンセントに差し込みます。

(2)キャビネット右側面にある電源スイッチ①をONにします。
 ・この真空管ラジオは、動作するまで数十秒かかります。

(2)再生調整ツマミ②をゆっくり回すと、スピーカーからポコンと音が鳴る位置がありま。
 この位置が再生のかかった(回路が発振を始めた)ポイントです。
 再生調整ツマミを止めてください。
 ・このポイントは左側の同調ツマミの位置で変わってきます。
 ・再生調整ツマミは360度何回転もしますが、実際に有効なのは180度だけです。
  あとは何回、回しても同じ現象を繰り返します。

(3)同調ツマミ③を回していくと、ピュ~という発振音の鳴る位置があります。
 その音と共に放送が聞こえてきます。
 ・発振音は、電波が強いと大きな音で、電波が弱いと小さな音で鳴ります。
 ・同調ツマミをゆっくり回すと、発振音がだんだん低くなります。
  続けて回すと、再び発振音が鳴ります。

(4)同調ツマミ③は、(3)の発振音の谷間に合わせてください。

(5)再生ツマミ②をゆっくり回すと、発振音は止まって放送が綺麗に聞こえます。
 また放送の音量も変化します。
 ・このWANDER受信機には音量調整ツマミがありません。
  再生ツマミで好みの音量に調整してください。

(6)以上で再生調整は終わりです。
 注意! 
 ・時間が経ち、真空管が暖まり、部品の温度が変わってくると再生調整がずれて、
  音が小さくなったり、ピュ~という音が出て発振を始めたりします。
  その場合は、再度、手順(3)~(5)を繰返し、再生調整を行なってください。

他の放送を聴く

 他の放送局を聴くためには、手順(2)~(5)を繰返し、再生調整をする必要があります。

 以上のように再生検波ラジオは煩雑な操作が必要です。しかしこのピュ~という音が聞こえてくると、心が癒されるのも事実です!
ちなみに再生方式のラジオでは、AVC(オート・ボリューム・コントロール)回路と音量調整ツマミが無く、放送局の電波が強い局程大きな音で放送が聞こえるため、再生ツマミを微調整して好みの音量に設定します。

 大東亜戦争という日本の大転換期前の時代に思いをよせながら、あなたも再生検波のラジオの調整をして、昔の音を聞いてみませんか?

並四ラジオ WONDER受信機 (1)

2008-03-18 | 戦前のラジオ
 ヤフオクで昭和10年代('35年~)に製造されたと思われるレストア済みのST管並四受信機を発見。木箱キャビネットのST管ラジオはスペースをとるため敬遠していたが、アンティークラジオファンを魅了する戦前のラジオを一度体験したいと思い入手した。
 一般的に “真空管ラジオ” といえば、木製キャビネットの古めかしいラジオを連想する人が多いのではなかろうか。
 米国Philcoが1930年(昭和5年)に頭が丸い縦型木製キャビネット“カセドラル(教会堂)” 型を発表し、好評だったため他社も追従して縦型の小型ラジオを売り出した。日本でも’36年(昭和6年)頃から米国の流行を受けて同型のラジオが販売されたようだが、カセドラルやトムストーン(墓石)よりも“ミゼット”の方が呼びやすいことから縦型ラジオをミゼットと総称して言うようになったそうです。1934年(昭和9年)頃になると、金属シャーシの登場と真空管もST管の登場により、キャビネットはさらに小型化され、コンパクトになる。
        
        ▲コンパクトでシンメトリックな並四 WONDER受信機のデザイン
 そして縦型だけでなく、このWONDER受信機のように背の低い正方形に近い小型ラジオやさらに長方形の小型ラジオが登場します。これらのキャビネットは、戦後スーパ時代の横長の箱とは違い、ゴチック様式のデザインが施され、昭和10年(1935年)前後から大東亜戦争前までに、多くのメーカから再生式受信機(ラジオ)が発売されていた。
 この頃の並三・並四・高一(4ペン)などと呼ばれるラジオは、周波数変換をしない、ストレート方式と呼ばれる再生検波回路のラジオであり、現代のラジオと比べると感度も分離も悪いものでした。
 オリジナルでは、マグネチックスピーカーが使用されており、写真のように、向かって左側に同調ツマミ(選局チューニング)と、右側に再生調整ツマミが付いています。再生調整ツマミを回して、ピューと音をさせながら、発振直前に合わせる独特の調整が必要です。使用方法を知らないと、どの様に調整してよいのか戸惑います。
またAVC回路が無いため、電波の強さが、そのまま音量の大きさになります。
        
        ▲この再生調整ツマミで発振を確認し、同調ツマミで選局する
再生検波の仕組み (新)真空管ラジオ修復記より抜粋
 再生検波とは、同調回路で選択した高周波電流を、人間の耳に聞くことができる低周波電流に検波する時に、真空管で増幅した電流を、そのまま再度同調コイルの方に正帰還をかけて戻し、再度増幅する方法です。正帰還ですので、あまり戻し過ぎると回路が発振してしまいます。そこで帰還量を調整して、発振直前のポイントにすると、最も効率よく大きな音が取り出せる訳です。この正帰還量の調整を、再生調整といいます。
この方式は少ない真空管で、最大限の増幅率を得ようとする場合に有効ですが、調整が面倒なのと、回路が発振直前なんで不安定になる欠点があります。また再生調整時に、不要電波を輻射するという弊害もあります。この弊害によって、通信に妨害が出たとして、戦後直後にアメリカ占領軍(GHQ)は、日本での再生検波方式のラジオの製造を禁止し、すべてスーパーヘテロダイン方式(俗に言う5球スーパーなど)に移行させたという話もあります。
        
        ▲前オーナーの手で、キャビネットはキレイに再塗装されている♪
 さて今回入手した並四ラジオ受信機は、前オーナーの手により、シャシーは塗装サビを取り亜鉛蒸着塗装が施され、キャビネットも再塗装されており非常にキレイな状態です。真空管は、すべてマツダ製のST管が装着されています。
        
        ▲シャーシも亜鉛蒸着塗装が施され、見事なレストアです
 前オーナーがこのラジオを入手された時、スピーカは既にマグネット式からパーマネント・ダイナミック タイプに交換されていたそうです。戦前のマグネチックスピーカーは、エナメル線の材質が悪く、電蝕作用によって半数近くは断線しているため、巻き直しが必要です。
(新)真空管ラジオ修復記に “マグネチックスピーカーの巻き直しについて” という詳しい巻き直し方法が掲載されています。
        
        ▲当時のラジオはこのようなマグネット・スピーカが使われていた
 銘板には、「WONDER受信機」「SHIRAE RADIO WORKS(Tokyo,Japan) 」と記されているが、型式や製造年は不明だ。史料を調べても、シャープ(早川電機)、ヘルメス(大阪無線)、ナショナル(松下無線)、アリア(ミタカ電機)など当時多数存在した大手・中堅メーカではなさそうです。
        
        ▲銘板には、WONDER受信機 SHIRAE RADIO WORKSとある

  メーカー:SHIRAE RADIO WORKS(Tokyo,Japan) WONDER受信機

  サイズ : 高さ(約25cm)×幅(約30cm)×奥行き(約17cm)

  受信周波数 : 中波 550KC~1500キロサイクル

  使用真空管 : UY56(再生検波)UX26B(低周波増幅)UX26B(出力)KX12F(整流)

  電 源 : AC 90~100V 50/60サイクル

熊本ラーメンとICF-R350

2008-03-15 | 三流オトコの二流品図鑑
社内や取引先との調整が多い中間管理職…何かと謝ったりする機会の多いビジネス・マ・ン? m(__)m 店長です。今週は3日間、博多経由で天草と唐津へと向かった。朝7時過ぎなのに新幹線のホームはビジネスマンだらけでかなり混み合ってる。
        
        ▲100系こだまから、ひかりレールスターに乗換える
こだまから のぞみに乗換えるプラットホームでまわりを見渡していた同行者が、
 「こうして見てると仕事で移動する人、いろんなタイプいますよね~
  オメガとシチズンだと、同じ価格の時計でも無言の違いがあるように、
  人間にも『品格』の差があると思うんです。いくらお金をかけた服を
  着ていても、妙に違和感があったりする人が多いですよね」
と話しかけてきた。
 A^-^; 唐突なコメントに、ただボクは苦笑いの反応をするしかない。
 ちなみに今日のいで立ちは、NewYorkerのチャコールブラックスーツとピンストライプの入ったボタンダウン・シャツにHERMESのネクタイ、Burberryのコートをラフに羽織ったスタイルなんだけど・・・
        
        ▲NEWYORKERのスーツと愛用のTUMI26141
「それ、俺のこと言ってる?」
「んな訳ないですよ~ 店長からはスマートなビジネスマンのオーラが出てますよ♪」
無邪気に、僕の愛用のTUMI26141を軽く叩いて笑った。

 JR西日本の新幹線にはミュージックサービスがあり、NHK第1や英会話、音楽のプログラムを持参したFMラジオで最高5チャンネル(5種類)の放送を聞くことができる。新幹線内部で放送されているため、トンネル内でも切れません。この放送サービスの供給は、新幹線沿線の漏洩ケーブルで送っていると思われます。
いつもはgigabeat P10Kで聴いていたが、今回はICF-R350を使ってみた。
        
 初日は、北九州市内の取引先を回り、技術診断結果と解析結果を説明し、先方の抱える問題解決手法をレクチャー&ディスカッションしているうちに、あっという間に一日が終わった。

 翌日は天気のいい小春日和のなか、現地営業担当者の運転する車で天草に向かう。九州自動車道を降りたところで、「熊本ラーメンでも食べますか」と案内してくれた「次南坊」という店で熊本ラーメンとご対面♪
        
 本格的な熊本ラーメンなのかどうかは不明だが、明らかに博多ラーメンとは異なる醤油豚骨スープにニンニクの押しの効いた香ばしいかおりが食欲を刺激する。太麺を口に運んだ瞬間、「うまい!」と叫びたい衝動にかられた。
博多ラーメンに比べ、熊本ラーメンは麺が太くコシも強く、スープは麺に合わせて濃厚ではあるが油っぽくはない。このため若干クセがあり、人によって好き嫌いが分かれるそうだ。
具材としては、煮玉子、チャーシュー、メンマ、木耳、刻み小ネギ、モヤシ、海苔等が入るが紅生姜は入らない。替え玉のシステムは基本的にない。香ばしく食欲を誘うマー油(にんにくを揚げた油)と、好みに合わせてチップ状あるいは粉末にした揚げにんにくを入れる。
        
        ▲熊本ラーメンとご対面♪粉末にした揚げにんにく(左上)を入れる
 天気がいいのでウトウト気分で車窓から天草五橋を眺めているうちに、目的地へ到着。
これが仕事でなければ最高なんだけどなぁ・・・なーんて世迷言は止めて、しっかり仕事しなくっちゃね。
        
 移動に片道3時間、往復に6時間費やし、博多に帰ったらもぅグッタリです。おまけに熊本ラーメンのニンニクが効きすぎたのか、痛みは無いのに下痢をしてしまった。
博多名物のモツ鍋を食べると、いつも胃腸に変調をきたすのは、デリケートな証拠か、高齢化?(笑)
営業所の人たちと軽く夕食を済ませ、中州への誘いは丁寧にお断りした。
明日は佐賀県唐津市の取引先への訪問が控えてる。
こんな夜は、ホテルに帰り、一人でのんびりラジオでも聴きながら、読書と洒落込むに限ります。
        

GE (General Electric) Model C4404

2008-03-06 | アメリカ製真空管ラジオ
友人&先輩である音響の匠氏の事務所では、GE製クロックラジオC-505から乾いた耳に心地いいサウンドが流れてる。同型のラジオをヤフオクで発見、“1950年代”と言う文句に踊らされ落札してみたら・・・何とトランジスタラジオだった!! 
という、実に間抜けなお話・・・ A^-^;
        
        ▲音響の匠氏所有のGE製真空管クロックラジオC-505D
 真空管ラジオに魅かれた理由の一つは、その「デザイン」にあることは、何度か述べた。
’40~50年代インダストリアルデザインの技を競ったアメリカ製ベークライトキャビネットの真空管ラジオは、’50年代後半に入り、生産効率を追求したプラスチックキャビネットへと変わるにつれ、デザイン的な魅力は一気に衰退する。そんな中、直方体を基調とした写真のGE製クロックラジオは、シンプルな造形と選局ダイヤルのコンビネーションがアクセントになり、アメリカン・グラフティに出てきそうな雰囲気を醸し出す。
        
 ただなぜかアメリカ製にはこの機種を含め、パイロットランプを装着しないラジオが多く、暗い部屋で薄灯りのぬくもりを堪能する楽しみは得られない。回路全体の負荷に影響する割には、交換を要するパイロットランプがあると、余計なメンテナンスが必要なため、合理性を求める彼の地では割愛しているのでしょうか。
        
 一方、その乾いたサウンドは、民放ラジオのトーク番組をBGM代わりに聞き流すには、ちょうどよい。キャビネットの中身はプリント基板に真空管を載せたスタイルだが、プリント基板の作りもしっかりしており、’60年代中盤に日本で一時採用された熱に弱いプリント基板とは一線を画す品質だ。
        
        ▲C-505は、プリント基板に真空管が並びスピーカはキャビネット底面に
 ヤフオクを徘徊していると同型機を発見! 出品者の方のコメントには、
「General Electric社製真空管ラジオです。アメリカ駐在中に購入し持ち帰りました。」
と書かれており、勇んで入札したところ、思いのほか価格は高騰せず、いつもの予算内で落札できた♪
        
        ▲今回、店長が入手したチープ感漂うGE製クロックラジオC4404
 宅急便で届いたラジオは、小傷はあるもののキャビネットに艶もあり、同世代の日本製真空管ラジオのキャビネットとはプラスチックの素材も違うのか、50年前のラジオとは思えないほど。
ただ音響の匠氏のGEアラームクロックラジオと比べ、キャビネットは同じ金型を使って作られているが、クロック部の文字盤ほか金属パーツがシルバーのため、あっさりしすぎ、チープ感の漂うデザインだ。
        
 裏蓋には、UL規格のCAUTION(注意)と型式が書かれている。このラジオは、C4404 HONEY BEIGEのようだ。仕様は105-120Vの60Hzの対応であることがわかる。
        
 いつものように裏蓋を外し、キャビネットの中身を点検しようとしたところ・・・ 一瞬、我が目を疑った。真空管がない!! 
        
        ▲裏蓋を外した瞬間、我が目を疑った! 真空管は・・・?
 しかし、よくよく見ると・・・ プリント基板の上にトランジスタが載っているじゃないですか。
「おいおい、こんなのアリかよ~」
と独り言で文句を言っても、プリント基板に真空管が生えてくるわけじゃなし。
        
 状況が理解できないまま、再びプラスチックキャビネットに目をやると、選局ダイヤルの下に「SOLIDSTATE」の文字を発見。どおりで程度の割には値段が高騰しなかったわけだ。ヤフオクで真空管ラジオを蒐集するマニアの人は、このあたりも抜け目無くチェックしてるんでしょうね。
        
 テストでは真空管ほどデリケートになる必要もなく、とりあえずACプラグをコンセントに差込み、動作確認を行なってみた。クロック部の時計は、スムーズに動く。ラジオのスイッチをONにすると、トランジスタラジオ特有のチリチリ音の雑音が聞こえてくる。選局ダイヤルを回すと、地元の民放とNHK中継局が入感する。しかし格別に感度がいいとは思えない。
しばらくNHKと民放の番組に耳を傾けたが、真空管ラジオとは何かが違う・・・ ん~ 感覚的に言うと、“耳に突き刺さる音” なのです。

 では真空管とトランジスタの音の違いはどこからくるのか?

        
 いわゆる「真空管の音」というイメージには、歪((高調波)特性が大きく影響しているように思います。もともと倍音と呼ばれる偶数次の高調波は、生音を聴かせる楽器や声に自然に含まれているものなので、偶数次歪は録音・再生の過程で失われたものを擬似的に補完する効果を持っているということがあるようです。また偶数次の歪(高調波)を含んだ音は、人間には “艶やかで自然な音色として感じられる” という説もあります。
このため、歪そのものは半導体よりも真空管の方がかなり大きくても、聴感上はより自然に聴こえるということらしいのです。
 さらに真空管ラジオに使われている出力トランスは、高域がなだらかに減衰する特性を持っていて、柔らかめの音になる傾向があります。
        
 応答特性まで述べると、高級オーディオのファンの方からは、「ラジオごときで何を語っているのか!」 とのお叱りもあるでしょうが、いずれにしても音質や聴感については、“良し悪し”というよりは、好みに合うか合わないかの問題だと思います。

英国 ロバーツ Swinging Radio R-550

2008-03-04 | 三流オトコの二流品図鑑
‘50年代に「Swinging Radio」の愛称で大ヒットし、そのままのデザインで復刻したビンテージスタイルの英国製トランジスタラジオがヤフオクに出品されているのを発見した。英国王室ご用達ラジオとしてロイヤルワラント(英国王室御用達)を下賜されているロバーツ社のR550である。 
        
        ▲英国王室ロイヤルワラント(英国王室御用達)ラジオ ロバーツ社 R550
 1932 年にハリー・ロバーツとレスリー・ビッドミードが創業したロバーツ・ラジオは、機械化が進んだ現在も手作りにこだわり、ヨークシャーにある工場で一つ一つ手作業によりラジオ製作を行っている老舗メーカーだ。
        
        ▲「Swinging Radio」の愛称で大ヒットしたオリジナルモデルR500
エリザベス女王からロイヤルワラントを名乗ることを許されたのは、 1955 年のこと。 10 年ごとに実施される再審査も無事クリアし、今もそのロイヤルワラントを維持しているだけでなく、現在はエジンバラ公を除く、皇太后、チャールズ皇太子のロイヤルワラントも下賜されている。まさに英国を代表する音響メーカーのひとつといって差し支えない。 
        
        ▲'50年代に発売されたオリジナルモデルR500の内部
 ロバーツ社のリバイバルモデルであるR550は、50年代に「揺れるラジオ」(Swinging Radio)の愛称で大ヒットしたポータブルラジオR500を、そのままのデザインで復刻したビンテージスタイルのラジオだ。キッチンで主婦が音楽放送を楽しむために考案されたともいわれる、そのランチボックスを彷彿とさせる可愛らしいスタイリングと、木製キャビネットならではの素朴で温かみのあるサウンドは、変わることのない英国を彷彿とさせる典型的なプロダクトとして定評がある。
 今回ヤフオクで落札したR550は、残念ながら写真のように合成皮革に傷がついている。ちなみにR550(R500)には、キャビネットを包むカバーに、ロールスロイスやベントレー等最高級車のシートや内装、高級鞄メーカであるタナー・クロール社の鞄の素材に採用されているコノリー レザーを使ったモデルもある。
        
        ▲入手したR550のキャビネットを包む合成皮革カバーに大きな傷が・・・
 キャビネットの裏蓋を開くと電池ケースは液漏れで汚れ、乾電池の金具は腐食しており通電しない。 
        
        ▲電池の液漏れで電池ボックスの金具は錆び付いていた
 基板は「よくできた台湾製か?」と一瞬疑いたくなる仕上りだが、由緒正しきイギリス製だ。
AM /FM/長波を受信する性能は装備されているものの、現在のラジオの基準からすれば化石のような製品であり、驚くほどシンプルな構造だ。その割に値段は、世界のラジオ受信マニアも認めるオールウェーブラジオSONY ICF-SW7600GRの実売価格をはるかに上回る。しかしコーンスピーカを採用した木製キャビネットからは、現在のハイテク機能搭載のラジオとも真空管ラジオともひと味違う、なんともいえぬエモーショナルで、実に耳に心地いいサウンドが響いてくる。
        
        ▲R500に比べ復刻モデルのR550の内部はスッキリ
 使う場所にもよるとは思うが、地元の放送を聴くラジオとしては、何の支障もない。やや大きめなサイズだが、ポータブルタイプだから、外に持ち出して、ブリティシュ・ガーデンのチェアに座りラジオ・プログラムに耳を傾けるにも好都合である。
        
 ラジオに限らず、人がプロダクトに求めるのは、 “新しさや進化” だけではない。高性能、多機能だけでもなく、ましてやコストパフォーマンスだけでもない・・・そういう当たり前のことを、このロバーツR550は静かに語りかけてくれる。
        
        ▲ロイヤルワラント(英国王室御用達)を下賜された復刻モデルR550
 ロンドンのデザインミュージアム初代館長であるコンラン卿は、著書「テレンス・コンラン デザインを語る」の中で、このロバーツを例に復刻品についての不思議な魅力について語っている。

「ベルノのびんからリキュールをグラスに注ぐとフランスのカフェの思い出の香りが蘇るように、復刻された製品には特定の時代と場所の香りが閉じこめられており、見ると思い出の香りが立ちのぼってくるように思えるのだ。おそらく私たちには、技術の進歩はもう十分だと感じる一線が存在するという暗黙の了解もあるのだろう」

 英国人は、このロバーツを見て、キッチンで鼻歌を歌っていたママの姿、恋人や家族とピクニックに出かけた光景を思い出したりするのだろうか。彼らの郷愁をかき立て、琴線をかき鳴らすロバーツの「リバイバル」には、英国の普遍のスタンダードとしての特別な一面もあるわけである。
        
 かつての名作R200の復刻モデル リバイバル R250と、このR550は、いずれもヨークシャーにある工場でひとつひとつ手作りで製造されているという。
        
 R550より一回り小さな復刻版R250は、「ロバーツラジオ」と花柄やパステルカラーなど、女性らしいデザインで注目を浴びている英国のインテリアデザイナー・Cath Kidstonのコラボレーションモデルとして英国の有名デパート「ハロッズ」や「ジョンルイス」などで販売されているようだ。
        
 またオーストリアの職人が1点1点手作業でスワロフスキーの装飾を施したのコラボレーションモデルなどもあり、凡人であるボクのセンスを超越している(笑)
        
 居酒屋1軒 or キャバクラ1セット分の飲み代を我慢して、今回入手したR500の復刻モデルR550は、伝統の英国へ思いをはせることのできる、きわめてまっとうなラジオだ。

通勤用 名刺サイズ ポケットラジオ ソニー(sony) ICF-R350

2008-03-02 | 三流オトコの二流品図鑑
名刺型ラジオを愛用している人は多いだろう。通勤時間帯のラジオ番組、とくにNHKラジオ第1の朝の時間帯はビジネスマン向け情報が充実している。通勤や出張、旅先で気軽に楽しむポケットラジオがほしくなり、ソニーのICF-R350を入手したので、ご紹介する。
 夜中、のんびり真空管ラジオの音色を楽しむのもいいが、朝7時には自宅を出て、夜9時以降に帰宅する店長の表の顔はビジネスマン、のんびりテレビを見る時間さえままならない。
(もっともTVでは、つまんない番組しかないしなぁ~) 
必然的に “世の中の動向”に疎くなり、『浮世離れした生活』となってしまい、情報戦の現代社会の中では「不適格者」の烙印を押されかねない。
 その昔、携帯トランジスタラジオにイヤホンと言えば、スポーツ新聞を握り締めて競馬やプロ野球中継に聞き入るオジサン・・・ってイメージだったけど、
   HEMERSのタイを結んだGUESSのビジネスシャツのポケットに
   名刺サイズのラジオをしのばせる
 
なーんてスタイルも、デジタルオーディオに埋没するの若者とは一線を画した “粋な大人” を演出するアイテムと言える。
        
        ▲店長のビジネスシャツとソニー ICF-R350
 まぁ、そんなことを思っているのは店長だけで、今も昔もラジオを持ち歩いてると “オジサン” だよぅ・・・という意見もあるが、ここではスルーしておこう(笑)
 そんな訳で名刺サイズのポケットラジオを物色するために、家電量販店を訪れてみた。
店頭に並べられた乏しい種類の普通のラジオに引きかえ、名刺サイズのポケットラジオは、アナログチューニングの安っぽいものからシンセサイザー・チューニングの高級タイプまで結構沢山の機種が並ぶ。しかし「これいいな・・・」と思える機種は、1万円前後もするため、つい躊躇してしまう。(居酒屋やキャバクラ通いを止めればいじゃん!って、僕はそんなに行ってませんよ:店長)
冗談はさておき、ヤフオクにソニーのシンセサイザーポケットラジオ ICF-R350 新品が、¥9,240のところを¥4,980で出品されているのを発見! 速攻、落札した。
        
        ▲“スタミナ105時間” の印刷が目を引く吊下げパッケージ入りのICF-R350

 手元に届いたCF-R350は写真の通り、“スタミナ最長105時間” の印刷が目を引く吊下げパッケージ入り。高感度AM&バックライト採用した薄さ約12.3mmのモノラル・TV(1ch-3ch)/FM/AM 2バンド PLLシンセサイザーモデルだ。
しかし実際は、イヤホン使用時の但し書き付でのオハナシ。単四電池1本で動作するICF-R350は、スピーカーを使うと20時間程度が関の山らしい。必要に応じて別売の充電キットBCA-TRG2KITを使えば充電式も選択できる点は、購入時の余分な出費を抑えることになり、嬉しい選択肢だ。
        
 外観は写真の通り、すっきりしたデザイン。幅55×高さ91×奥行12.3mmのサイズは、シャツの胸ポケットに余裕で収まる。ビニール製のキャリングカバーも付くが、こんな安っぽいデザインだから “オヤジ” っぽいと誤解を招いてしまう。
        
ここはi-PODなどデジタルオーディオや携帯電話のように塗装コストをかけ、カバー不要としてほしいところ。
巻取式のイヤホンコードの細さに一抹の不安を禁じえない。断線時の対応策なのだろう、イヤホンジャックが装備されている。
             
 操作性は、ジョグレバーと見やすいバックライト付大型液晶ディスプレイを搭載していおり、マニュアルを一読する必要はあるが、比較的簡単に操作できる。全国を14エリアに分割し、地元の放送局と中継局を呼び出し、プリセットできるスーパーエリアコール機能は、使い方を覚えれば、旅先や深夜の遠距離受信に効果を発揮する。
 思いのほか感度は高く、地方でも時間によっては、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡など大都市圏のラジオ局は勿論、思いがけない遠方の地方民放ラジオ局を受信できる。ただし内蔵アンテナの指向性が強く、ICF-R350本体を左右最適な方向にあわせる必要がある。こういった作業自体も、国内遠距離受信の楽しみの一つだ。
ちなみに使用してまだ1週間あまりだが、瀬戸内海沿岸部の当地では、深夜から明け方の時間帯に福井放送、ラジオ沖縄、山形放送などの地方局を確認できた。

 今まで “オヤジっぽさ” を気にして敬遠していた名刺型ポケットラジオ、愛用の通勤カバンTUMI26101の外ポケットやスーツの内ポケットには勿論、ビジネスシャツの胸ポケットにさえスッキリ収まり、移動や休憩のアイドル時間をニュースやビジネス情報、音楽で埋めてくれる。
        
 一流ブランドのスーツに身を固め、高速モバイルPCやワンセグといった先端技術を駆使したツールもいいが、肩の力を抜いて、わずか¥4980の携帯ラジオを情報ツールとして活用するところに “三流男の二流品” のオシャレな美学がある。