昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやE 5LA-77

2007-05-07 | 東芝 かなりやシリーズ
 真空管ラジオは、四角い箱の正面に2~3個のつまみ、周波数表示スケールまたは円盤状のチューニングダイヤル、スピーカーが並ぶ。多少の差はあっても、それが当たり前のように真空管ラジオの“顔”として、人々に認識されている。その常識を覆すラジオを東芝が世に問い、発売した機種の一つが、今回ご紹介するかなりやEである。

 当初発売された かなりやシリーズ、かなりやA~Fの中でも、かなりやEは、正面にV字型にスリット加工されたキャビネットと、ラジオを手軽に持ち運ぶためのクロムメッキの金属製可倒式キャリングハンドルを組み合わせることにより、造形美と機能美を融合した秀逸なデザインだ。

           
          独創的なデザインと機能美が融合した かなりやE

 とりわけ先行発売されていた5LA-28を踏襲した かなりやEと かなりやCは、ボクシーなキャビネットの上面に電源スイッチ兼音声ボリュームと選局つまみをレイアウトしたユニークなデザインであり、従来の日本製真空管ラジオには見られない極めて独創的なスタイルだ。
 
          

 ’60年前後を境に、家族で楽しむ娯楽の中心はラジオからTVへと移行し始め、ラジオもパーソナルな娯楽ツールへとシフトする過渡期にあった。東芝は、マーケットの活性化を狙い、既成概念を覆すピアノラジオ、タイマーラジオ、5LA-28、地球儀ラジオといったユニークなコンセプト&デザインのmt管ラジオを次々と送り出していた。

          
          【左上:ピアノラジオ 右:タイマーラジオ 左下:5LA-28 右:地球儀ラジオ】

 実は かなりやEのデザインは、マツダ・タイマーラジオと共通した手法であり、V字型にスリット加工された正面の造形、透明プラスチックにシルク印刷したチューニングダイアルの採用など共通点が多く、同じデザイナーが担当した作品と思われる。アメリカン・テイストをベースに、日本人の感性を満たすオリジナリティーを加味しつつ、製品としての完成度を高めた担当デザイナーのセンスと力量をうかがい知ることができる。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)マツダ かなりやE 5LA-77

 サイズ : 高さ(約14cm)×幅(約25cm)×奥行き(約13.5cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、35C5(電力増幅)、25M-K15(整流)

 かなりやコレクターにとっては人気の機種であり、今回は不動品のジャンクにもかかわらず、競合相手が降りてくれなければ諦めるギリギリのライン(居酒屋2軒分 or キャバクラ1セット+指名料)の金額で何とか落札できた。
最近は余程のことが無い限り、夜の街に出動することもなくなった・・・・ 俺ももう年か?高齢化! (ー。ー)フゥ

          

 宅急便で届いた かなりやEは、何十年も放置されていたのだろう・・・キャビネットの汚れは酷く、金属製キャリーハンドルも僅かに歪んでいる。キャビネット底に1cm程度の損傷がある以外は、ツマミやエンブレム等の欠損や酷いダメージは見られない・・・と思ったら、ガ~ン!底の欠けた部分からキャビネットサイドと底部へ2本、約10cmの亀裂が入っている。

          

 裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット内部の天板は歪曲し、取り付け金具の一部から錆びも浮いている。シャーシ上の真空管やIFT、バリコンには埃が大量に堆積しており、かなりやEの今の姿は、「ひび割れた二人の愛」のようで、切なさが込み上げる。若い日、ほんの僅かな行き違いから、別々の道を歩んだ男と女の時間を取り戻すように、このラジオを修復することを決意した。

          

 透明プラスチック製チューニングダイアルとボリュームを破損しないよう丁寧に抜き取り、シャーシーをキャビネットに止めているネジを2本外すと、シャーシは簡単に取外せたが、キャビネット内側の亀裂とともにシャーシの止めネジ穴用プラスチック成型加工部分がケースから割れ落ちている。ジャンク品のノークレーム・ノーリターンとはいえ、キャビネットに亀裂などがある場合は、出品時にその旨を開示しておくべきではないだろうか。キャビネットのプラスチック自体が硬化しているのであろう、底の割れた部分からクラックが増えてくるため、接着剤で補修と補強を行なった。

          

 キャビネット内部の天板は何と厚紙でできており、その上にフェライトバー・アンテナが乗っている。真空管からの遮熱効果と、フェライトバー・アンテナに金属類からの干渉を防ぐ目的なのだろうが、ビックリした。
シャーシには50年間の埃が堆積し、付着した汚れも酷い! ここは掃除屋店長の腕の見せ所と言いたいところだが、アルミシャーシやブラケットは腐食が進み、手におえそうにない。。。

          

 シャーシー裏側は、錆びもなく意外とキレイだが、信頼性の低いオイルコンデンサーが使われており、全品交換した方がよさそうだ。キャビネットを小型化するためにブロックコンデンサーもシャーシ内部に取り付けられているため、部品点数の割には込みあっている。
 電源を入れる前に、スイッチをONの状態で導通と抵抗値を計るためにテスターを当ててみたが、ヒューズ切れではないのに反応が無い。何と硬化したAC電源コード自体が断線している。すべてマツダ・ブランドである真空管のヒータ断線も調べてみたが、こちらは幸い5本すべて導通もあった。ただいずれにしても危険なラジオに変わりはない!
鳴かぬなら、鳴くまで待とう。。。では、剥製状態になるだけなので、今回は気合を入れてレストアにのぞむ必要がある。とは言え、果たしてボクの腕で修復できるのだろうか・・・不安とストレスが膨らむ夜だ。
 
「鳴かぬなら、鳴かせてみよう かなりやE!(C)ドクターK」の気持ちで、思い切って修復にトライしてみた。

          

 パイロットランプ(ネオン管)への配線は、台座自体が破損・断線しており、サトーパーツのS-4110というプラスチック台座ソケットに交換した。
次にAC電源コードとプラグを新品に交換。ヒューズまでの導通とヒューズ切れ出ないことは確認できたが、ヒューズ以降への導通が無い。ヒューズとソケットの金属部分に腐食による皮膜ができていたので、ヤスリで磨き、導通を確認後、通電したところ、真空管のヒータとネオン管は点灯したが、妙に明るすぎるのは気のせいか?!
案の定、スピーカーからはウンともスンとも音が出ない・・・ O.P.Tトランスの1次側の巻線の断線は問題ない。

 ここで、また一句、「鳴かぬなら、バラしてみよう、かなりやE!」

 O.P.Tトランス2次側とスピーカーのボイスコイルの断線を確認するため、スピーカーを取外した。O.P.Tトランス2次側の導通はOKだが、スピーカーは・・・? テスターの針はピクリとも動かない。ボイスコイル部分が赤茶色に錆びてしまい、完全に断線している。ワニ口クリップを使って正常なスピーカーを接続すると、空電ノイズらしい音が出てきた!ゆっくりバリコンを回すと、ガリガリゴソゴソという異音を伴ないながら、地元の民放中継局(出力1kw)がかすかに受信できる。心の片隅にくすぶっていた暗闇に一筋の光が射しこんだ気分だ。

          

 断線した純正品のパーマネントスピーカー 東芝製SP-5001A(4Ω)の代わりに、以前友人にラジオデパート3Fシオヤで購入してもらった、直径・穴位置ともにまったく同じ大きさのダイナミックスピーカー(8Ω)を取り付けたところ、ジャスト・フィット♪ 現代風の音になってしまったが、しばしネオン管と真空管の幻想的な灯りを眺めながら、ラジオドラマ「黄昏流星群」に聴き入ってしまった。
 バリコンのガリゴリ音の不具合対策とオイルコンデンサー類を全品交換する必要もあり、まだまだ苦難の道は続きそうだ。 

          

 バリコンのガリ解消のため、一旦分解後、朽ちてている絶縁スペーサーの代わりに水道パッキンOリングとワッシャを使い交換を試してみた。また製造から50年を経過している電源周りのオイルコンデンサーは、フィルム・コンデンサーに交換したのだが、バリコンの羽自体に腐食が発生しているのか、低い周波数でのガリは解消しない・・・。

          

 一方、ボリュームの音は絞りきれないが、ガリも酷くないためとりあえずオリジナルのままとした。正常な真空管と抜き差ししながら比較してみると12AV6(検波&低周波増幅)の性能が低下していたので交換後、ケースに組み込んで様子を見ていると、突然スピーカーの音が途絶え、焦げたような臭いがしてきた。コンセントを抜き、裏蓋を開いてみると、うっすら煙がたちこめている。このところ同様のケースを経験しているだけに、思いっきり不安になる。

          

 とり急ぎ受信できない不具合を解決するために、バリコンとボリュームを取付けてあるブラケットをシャーシから取外し、バリコンも一旦ブラケットから取外し、分解した。バリコンの絶縁スペーサー(ゴム)はすべて朽ち果て、完全にショートしている。

          

 前回、水道パッキンOリングとワッシャで修復したつもりの箇所もワッシャの使い方を間違え、機能していない。今回は、ゴムブッシュを使って確実に絶縁処理を行ない、またバリコンの羽根も工業用アルコールで洗浄してみた。
不安な気持ちいっぱいのまま、再度、電源を入れると、空電ノイズとともに地元の民放ラジオ中継局と隣町のNHK中継局が入感してきた。

          

 イヤホン/スピーカー切替スライド・スイッチは経年劣化し接触が悪く、ちょっとした振動でノイズを発生するため新品に交換し、オイル・コンデンサも全品交換した。若干ハムノイズが気になるので、ケミコンも交換した方がよさそうだ。
かなりやEにはフェライトバー・アンテナがついており、バリコンの洗浄を行ないガリを解消する前は、地元の放送局だけではなく、昼間でも瀬戸内海を隔てた四国の民放ラジオ局も入感してのに、再度鳴り始めてからは感度がイマイチ低下した雰囲気・・・調整が必要なのか?

          

 修復が一段落したところで、希釈したマジックリンを使い、キャビネットの洗浄・清掃を行なった。50年間の汚れはキレイに落ち、プラスチッククリーナーで丹念に研磨したため、ピカピカに光っている。

          

 補修と清掃したキャビネットに、修復を終えたシャーシを組み込んだ写真を見比べていただきたい。汚れと黄ばみで酷い状態だった当初の かなりやEは、見違えるように甦った。このラジオのレストアには七転八倒、苦労も多かっただけに、ちゃんと鳴ったときの喜びは口では言い表せないものがあります。また先行き不安で諦めそうになったとき、激励くださった諸先輩に深く感謝いたします。

          

 バルコニーに修復したばかりの かなりやEを持ち出してスイッチを入れてみた。
チューニング・ダイヤルをNHKに合わせると、日本国内にはラジオ第1放送、海外にはNHKワールド・ラジオ日本(短波)を通じて全世界に同時生放送されている「地球ラジオ」が放送されていた。世界中で放送を聴いている聴取者から送られる、EメールやFAX、手紙を放送の中で紹介し、音楽を交えながら、世界各地に暮らす日本人リスナーからの情報や話題をリアルタイムで聴ける地球規模の双方向トーク番組だ。
 
          

 開け放した窓から射しこむ5月の光を浴び、心地よい風に吹かれながら、レストアしたばかりのラジオから流れる音楽やトークをゆったりした気分で聞き流す自分だけの時間は、ある意味、最高に贅沢な空間だ。

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17 コメント

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ご無沙汰してます。 (UZ@FANCY FREE)
2007-03-16 11:31:23
店長さん、みなさん、大変 ご無沙汰しておりました。

今年に入ってから、他所での アルバイトに加え、
延び延びになっていた セカンドアルバムの制作に 没頭していました。
ネット活動も ほとんど 休止していましたもので、ご心配を お掛けしました。

で、先日 やっと セカンドアルバム 「 INSPIRE (インスパイア) 」 が完成しました。
とりあえず 音源のみの 完成ですが、先に お知らせ致します。
ジャケットやラベルは これから作成し、煎餅焼き職人と化します(笑)。

正式発売は 4月3日を予定しています。
全国の 有名CDショップでは 取り扱って下さいませんので、
[ダウンロード] ページで ファイルを揃えて CD に焼いて頂ければ 光栄です。

尚、オリジナル CD版は、σ(^_^) の お好み焼き店のみで 取り扱います。
500円以上お買い上げの方、お一人様一枚限りで、無料で CD配布 させて頂きます。
もちろん 希望される方のみですが。。。 A^-^;

そんなこんなで、寝不足と 過労のため 風邪で ダウンしてしまいました。
今日は 店を休業して 寝転んで ネットしています。

では。。。 ヽ(´▽`)/

http://www.fancyfree.jp/uz/
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Unknown (rinn)
2007-03-17 12:12:12
初めまして~^^視聴させていただきました^^すごいですね^^なんか幅広くいろんなジャンルといった感じでしょうか・・・ギターにはあまり縁がなく・・しかし音楽は・・まあ・・かじる程度には接してます・・そういう意味でもすごいなあ~ッテ思いました・・はい・・頑張ってくださいね~^^応援してまあ~す・・・
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INSPIREリリース決定! (店長)
2007-03-18 19:53:36
UZさん
風邪の具合はいかがですか?風邪か、鼻炎か、高齢化?(笑)
INSPIREオリジナルCDはぜひ購入させていただきますが、今回は無料チケット付じゃなくて、無料配布なんですか?

rinnさん
UZさんのINSPIREお聞きになられたんですね♪
なかなかgoodでコンテンポラリーなフュージョンをクロスオーバーチックな気分で聴かせてくれる曲だと思います。CDに焼いて、車の中でもぜひおき聞ください!
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ついに (かなりや佐藤)
2007-03-22 22:48:37
かなりやE捕獲されましたね!でも瀕死の重傷のようで・・・頑張って鳴かせて上げて下さい。幸いE型は東芝らしくとってもシンプル(悪く言えばケチ)な回路なので
修理は楽と思います。ただIFT・コイル等に断線があると辛いですが。私もついつい先日、かなりやから浮気して
うぐいすRSを入手してしまいました。家内に怒鳴られるのは覚悟してるのですがなかなかこの病気は治りません(笑)
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念願の! (店長)
2007-03-22 23:29:26
かなりや佐藤さま
ホント瀕死の重傷のかなりやEですが、デザインに魅せられて入手しました。仰るようにIFT・コイル等の断線がないことを願うばかりです。

ご教示いただきたいこともありますので、業務連絡用に下記アドレスに一度、メールいただければ幸いです。

radiota@mail.goo.ne.jp
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リハ無し、遅刻OK (かめ)
2007-03-24 23:19:59
店長様

仕事忙しそうですね!
なのに、ラジオの修理もがんばっておられるようで、その上沢山の種類のカナリアを飼っておられますね。

22日に倉敷音楽祭が終わりました。
最終日に今年にお正月にウインフィル(正確でないかも知れないのですが、正月にNHKの衛星に出ていた)を指揮していたズービンメーター指揮による、イスラエルフィルのコンサートをしました。
仕事だったので、前半はロビーにいたのですが、コンサートが始まっているのに、散歩に出かけて道に迷ったバイオリニストが、「楽屋の入り口はどこだ」と言って2人帰ってきました。自分の担当は後半だったのでしょうが、すごい余裕です。日本人だったら考えられません。「世界の弦」といわれるほどのオーケストラですが、リハーサルもしないで、「すばらしいコンサートでした。」と聞いた人は言ってました。私は、後半を聞きましたが、良く分かりません。うちの職場にもプロの音楽家がいますが、「すごい!!」・・・そうです。
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国際交流会 (店長)
2007-03-25 17:47:29
かめ様
倉敷音楽祭はさまざまな公演があったようで、特に
小椋圭 歌談の会
中西保志 アコースティックコンサート
インターナショナルサクソフォンカルテット

など行きたいライブが目白押しでしたが、公私共に多忙な今月はにっちもさっちもいかない状況でした。
イスラエルフィルは、世界的にもすごいレベルらしいのですが・・・かめ様と同様、何がどう凄いのか分からない・・・のです。(笑)
清水みちこライブ&トークショーなんか、面白そうでしたね♪

かなりやもお世話する時間がなく、まだ剥製状態です。
かめ様もあと1週間ですか?カウントダウンまで・・・
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お久しぶりです(^-^) (yuki)
2007-04-14 18:45:49
毎日なんだか忙しく、PCを開く気力も湧かなくてすっかりご無沙汰していました。かなりやEって、なんだか鳥かごみたいで可愛いですね(^-^)店長さんの手で生き返った姿が見られるのを楽しみにしてます♪頑張ってくださいね、店長さんo(^-^)o
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おひさ~(^-^) (店長)
2007-04-14 23:26:40
yuki先生、お元気でしたか?ボクも忙しくて七転八倒、来月から神戸・滋賀へ週の半分は半常駐することになりました。。。
もう一歩で生き返りますからレポート待っててね。
忙しいだろうけど、気分転換に書き込んでくださいね~
待ってるるよー
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イッセー尾形 (かめ)
2007-04-15 08:19:27
店長様

ご無沙汰しています。
今日は、午後からイッセー尾形のライブがあります。音楽ではないので、880席の両脇を除いて、500席にしましたが、完売しました。
いつも思うのですが、TVに出ている人は良く売れますが、出てない人は難しいですね。
午後から仕事してきます。

ではまた
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