昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

メタポで血圧計をGet!?

2008-06-25 | 三流オトコの二流品図鑑
今年の4月から成人病等予防改善を目的に新しいメタポリックシンドローム診断制度がが健康保険組合に義務化されました。男性の場合はウエスト85cm、女性は90cm以上でかつ高血圧・高血糖・高脂血症のうち2つ以上基準値を超えた状態をメタポという。 
一つ一つは軽症であっても、これらの病気が重複すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなります。 その状態を「メタボリック・シンドローム(症候群)」と呼ばれています。
そんなおり、かめ様より、メタポで血圧計をGetされたという、耳より情報?が届きましたので、ご紹介します。

 団塊世代の「かめ」はメタボです。少し血圧が高いので、近所のクリニックに行きました。

先生:「少し高いなー。血圧は薬で下げても、運動をして痩せて下げても、低いほうが長生きできることは間違いないよ。運動と食事制限にする? それとも薬で下げる?」

かめ:「(もちろん)薬にしてください」

先生:「それが正解じゃろうなー。運動は長続きがせんし、おいしいものを控えるのも、つらいじゃろう」

と言うわけで、通常の半分ぐらいの濃度の薬をもらって帰り、薬が無くなったので再びクリニックへ。

先生:「もう少し下げた方がええなー。運動すれば下がるけと思うけど、運動する?それとも薬を追加する?」

かめ:「(再び)薬にしてください」

先生:「それが正解じゃろうなー」

と言うわけで、今度は新しい薬が追加されました。
        

先生:「ところで、血圧計持ってる?」

かめ:「2,3年前に買ったのを使ってますよ。」

先生:「この薬を飲んだら、血圧計が無償貸与されるけど使って見る? ただし1月に1回うちに持ってきてもらって、データを提供してもらうんだけど、ええかな?」
   「もし私を気に入らんとか、私と喧嘩をしてうちに来なくなっても返さんでもええよ。」
    「製薬会社も只であげるわけにいかんから、貸与ゆうとるだけじゃから」

かめ:「先生、機械が好きですからください」

先生:「うちに、10台割り当てがあるから、1台提供しよう。この書類に必要事項を書いて。」

かめ:「先生、血液検査もしてもらえますか?」

先生:「ええよ!高血圧も立派な病気じゃから」

かめ:・・・立派だけ余計じゃろう・・・と思いながら、と言うわけで、2日後にはオムロンの立派な血圧計が届きました。350回分のデータが入るそうです。
夜間睡眠時の自動測定とパソコンでの測定データの管理・分析が可能なこの電子血圧計は、350回分の測定記録(測定値+メモ)を記録することができるので、日常診療における家庭血圧の管理や研究目的のデータ蓄積に役立つそうです。
        
        ▲メタポでゲットされたオムロンのHEM-7080IC

 毎朝、薬を2錠飲みながら血圧測定をしていたら、目まいと言うほどではないですが、少し頭がふらふらしたり、午後から眠くなるので、昨日再びクリニックへ行きました。

かめ:「先生、めまいと言うほどではないですが(ちょっと控えめに)立ちくらみがしたり、眠気がするんでインターネットで調べたら、副作用にめまいや眠気が乗ってたんですけど?」

先生:「急に血圧を下げたから、体が付いていかんのんじゃろうなー。」
   「1錠止めるとか、半分飲むとかしてみたらええが」

かめ:・・・自分で調整するの??・・・

先生:「先日採決した検査結果が来とるよ。GPTと悪玉コレステロールが高いから、やっぱり運動と食事に注意せにゃいけんなー」

かめ:「先生、どんな物を食べたらいけんのんですか?」

先生:「卵とか動物性の脂肪とかがいけんなー。食べてええのは、野菜とかおいしゅうねえもんばあじゃ」

さて、血圧計はと言うと

先生:「データの送信をして見ようか?私も始めてじゃけど」

と言うわけで、小さな箱を取り出し電源につないで、もう1本のケーブル(USB)を血圧計につないで、送信ボタンを押すと、携帯電話回線を使って製薬会社にデータが送信されました。

とかなんとか、訳のわかったような解らんような、会話をしながら、かめは昨夜から散歩をはじめました・・・・とさ

三日坊主で終わらなければいいのですが・・・・


と、以上メタポリック症候群の結果を受けてもタダでは転ばない、かめ様の前向きで明るいレポートに、心強く思った店長@メタポ予備軍です。

iPodのサウンドを自室で楽しむ

2008-06-15 | 三流オトコの二流品図鑑
iPodは、それまでのテープやCD、MDが、HDDやフラッシュメモリに変わり、クリックホイールに代表される扱いやすいインタフェースを伴うことで、「自宅のミュージックライブラリーをすべて持ち歩く」、言わば優れた「ジュークボックス」としての側面も併せ持つ。 
 大容量のHDD/フラッシュメモリを搭載し、数百、数千、数万という楽曲を手のひらに納めて自在に操れるiPodを自室やリビングのジュークボックスにしてくれるのがスピーカーユニットである。老舗スピーカーメーカー渾身の本格派から、shuffle対応のコンパクトタイプまでその種類も豊富だ。 乾電池駆動も可能な携帯性に優れるコンパクトな製品から、ラジカセのように気軽に使える製品、iPodの音響特性までも考慮して高音質化をはかった製品まで多種多彩な製品が用意されており、iPodのサウンドを自室で、リビングでよりリラックスしながら楽しめる。
        

 ハーマンインターナショナルのiPod用スピーカーシステム JBL on time は、アーチ型の形状が特徴的なiPod対応スピーカーシステム。ネオジムマグネットとアルミ製コーンを組み合わせたフルレンジユニット「Phoenix」を2基、高音域再生ユニット「Ridge」を1基搭載することで、再生レンジの広いサウンドを実現したという。中低音域ユニットを側面、高音域ユニットを上部にレイアウトすることで水平方向でのレベル最適化が行われており、室内のどこにいても均一な音が楽しめる。
また5チャンネルまでプリセット可能なAM/FMラジオを搭載。スヌーズ機能付き目覚まし時計の機能も備えており、アラーム音のほか、ラジオやiPodの音で目覚めることも可能だ。
        
        ▲JBL on time ¥26,800
 ボーズの音響テクノロジーとiPodの出会いから生まれたBOSE SoundDock は、iPodおよびiPod nano専用に開発されたサウンドシステム。その操作性は極めてシンプル。本体中央にiPod、iPod nanoをセットするだけで煩わしい配線は一切必要とせず、本格的ステレオシステムの音楽再生を可能にしている。また付属のリモートコントローラは音量の増減はもちろん、ゼットしたiPodおよびiPod nanoの再生、停止、スキップや早送りなど、一体型オーディオシステムに匹敵するプレイスタイルとサウンドを楽しめる"Dock & Play"を実現しています。独自の低音再生技術が、わずかA4ノートほどのコンパクトなサイズからは想像できない驚異の低音再生を実現する。
        
        ▲BOSE SoundDock ¥34,860
 70年の伝統を持つ老舗米国オーディオメーカーのAltec Lansing Technologies IncのiPod用スピーカーシステムinMotionシリーズは、幅283mm×奥行き43mm×高さ152mmというコンパクトなボディながらも、Altec Lansing独自の音響拡張技術Stereo Field Expanderによってスピーカーの外側にも音場を拡げることを可能にし、クリアで臨場感のあるサウンドを実現する。またFMチューナーを搭載。iPodの音楽を再生するのみならず、FMラジオとしても活用できる。
        
        ▲Altec Lansing Technologies iM600 ¥22,800

 以上の3社は、高級オーディオ・スピーカーあるいはアンプを発売している、いわゆる “ブランド” メーカーであり、値段もチョッとお高め・・・。 
“オシャレ” を自他共に認める?(笑)店長などは、
 「JBLはメリハリの効いたJAZZを聴くのにうってつけの音だ。
  BOSEは中低音域にウェイトを置いた疲れない音がいい。
  クリアで臨場感のあるサウンドを奏でるアルテックはさすが歴史と重みを
  感じずにはいられない。
  いずれにせよ、iPodというオモチャ箱に詰め込んだ、音楽をこの価格帯で
  気軽に楽しむ大人の時間を、バーボン片手に今夜もボクは楽しんでいる・・・」
な~んて、スカしたコメントを入れて終わるところだが、当ブログの「すてきなおじ様軍団」(赤いコルトプラス様命名♪)の一人でらっしゃる かめ様より耳寄り情報をいただいた。

 “ 高価な真空管アンプは買えないので、iPod用のアンプ付スピーカーと言うか、5,000円ほどのiPod拡声器(表現がちょっと古いですか?)を買いました。耳が繊細でないので、良い音?がしている様な気がします。まあ音質は別として、イヤフォンで聴いているよりは、電線が無いだけ良いかも知れません ”
と、やや自嘲気味な脱力気味のコメントが・・・(笑)
        
        ▲iPod専用 スピーカーシステム GH-SPA-440(中国製?)¥4,500!
後日、写真とともに “ 型番はGH-SPA-440です。ACアダプターやリモコンまで付いて、4500円ほどですから、立派な中国製でしょう。重さは2650gですから、結構重いです。単2乾電池8本でも動作するそうですが、電池を入れたらかなり重くなるでしょう。
iPod nanoは小さいので、アダプターを使っていますので、中心から右にずれています。BOSEにも似たようなと言ったら、怒られるかもしれませんが、ありますね。でも3万円以上もするようです。 音は出てますから大丈夫でしょう???? ” と、さらなる自虐的コメントを添えていただきました(笑)
        
 発売元のウェブサイトを見ると、その特長が高らかに謳われています。(ちょっと誇大広告のような気がしないでも・・・)

  ・2つのネオジウム フルレンジスピーカーに加え、高域補正のため、
   さらに2つのネオジウム ツイーターを搭載した2Wayスピーカーシステムです。
  ・総合出力40Wのアンプ内蔵スピーカーシステムは、コンパクトサイズながらも
   優れた音質、豊かな低音を再現します。

 実物は見ていませんが、iPodの音響特性までも考慮して高音質化をはかった老舗オーディオ・メーカーの製品から、ラジカセのように気軽に使える割り切った(中国製?)iPod専用スピーカーシステム GH-SPA-440のような製品まで多種多彩な製品が用意されており、その選択肢の多さに驚くとともに「iPodの人気恐るべし!」と感じた次第です。

東京芝浦電気(TOSHIBA)  かなりやGS 5YC-426

2008-06-13 | 東芝 かなりやシリーズ
かなりやシリーズの中でも俗に言う「レア物」の機種がある。今回ご紹介するかなりやGSは、発売された昭和35年当時の消費者から見ると先進的すぎる?デザインだったのか、ヤフオクに出品されることも稀な、まさにレア物の機種である。 
        
        ▲東芝かなりやシリーズの中でも超レアな、かなりやGS
 写真のように2段重ねキャビネット上段にスピーカー、下段に電源スイッチ付音量調整ツマミ、選局ツマミを左右対称に配置したシンメトリックな意匠は、’5~60年代のアメリカ車のダッシュボードとカーラジオや現代建築を連想する。もしかするとエリミネーター時代の受信機を意識したデザインなのかもしれません。(誰だ~?墓石を連想する・・・って言ってる口の悪い人は!? 笑) 
 真空管ラジオ、とりわけ 東芝かなりやシリーズのコレクションを始めて3年目になるが、この かなりやGSが出品されているのを見たのは3回目。過去2回は自主規制予算の4~5倍以上という高値がつき、やむなく撤退した。
今回もどれだけ高騰するのか心配だったが、何と!予算内で無事に落札できた。オークションでラジオを落札する際は、決して “熱く”ならず、予算を超過したら、次回の出品を待つ余裕が必要だろう。このところ以前に捕り逃がした かなりやを予算内で相次ぎ数台捕獲している。
        

  メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)かなりやGS 5YC-426

  サイズ : 高さ(約15cm)×幅(約27cm)×奥行き(約11.5cm)

  受信周波数 : 中波 530KC~1605KC/短波 3.9MC~12MC

  使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
           12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやGSは、旧家の蔵にでも保管されていたのだろうか、プラスチック製キャビネットは、50年近くの間に付着した埃と汚れ、黄ばみ、軽い擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く、外観はかなり程度の良い部類である。
        
        ▲埃や汚れは付着して汚いが、パーツの欠品はない
 以前ヤフオクで見たかなりやGSはブルーグレー系の塗装だったが、今回出品されているモノは、ライトベージュ系のカラーだ。
下段キャビネット上部の左右には、オレンジと緑色の凸状の部品が配置されているが、何だろう・・・? 今までの かなりやシリーズには無いパーツだ。
        
        ▲バンド切替表示用凸状パーツとバンド切替/選局用同軸二重ツマミ
 周波数表示インジケータをよく見ると、中波/赤、短波/緑で色分けされている。たぶん中波/短波を切替えると、左右のランプが点灯する仕組みになっているようだ。またシンメトリックに配置された左右のツマミのうち、右側のツマミは同軸二重となっており、外側はバンド切替スイッチ、内側が選局ツマミの機能になっている。
        
 この50年近く放置されていた かなりやGSのやつれた姿に「アメリカンドリームを夢見て破れた女」の姿が重なり、高校生から大学1年まで付き合っていた同級生の彼女のことを思い出す。ボクは県外の大学へ、彼女は県庁所在地の短大へ進学し、お互いに連絡も途絶えがちになっていた。(今のように携帯電話もありませんでしたし・・・)
ジーンズとTシャツの似合う彼女が岩国駐留の海兵隊員と恋に落ち、青い目の彼氏とアメリカに渡ったが数年後離婚したことを風の便りに聞いた。
        
浜田省吾のアルバムに、「いつかもうすぐ」というナンバーがある。
原曲「Someday Soon」は、カナダのカントリー・フォークデュオであるイアン&シルビアの1965年に発表され、多くのシンガーがカバーしている。
        

       いつかもうすぐ 作詞 浜田省吾  作曲 Ian Tyson

    ♪あの娘は米軍キャンプのそばにある 小さな店で働いてた
     僕らは約束した この街出ようねと いつか いつかもうすぐ

     あの頃僕はまだ18で 望めば全てが叶うと信じてた
     どうして僕を待ってくれなかったの こうして今 迎えに来たのに

     あの娘は青い目の若い兵隊と 5月に行っちまった California
     今でもこの街で独り呟いてる いつか いつかもうすぐ

 ラジオから流れるこの歌を初めて聴いたとき、当時のボク自身の体験とシンクロし、身震いした。この作品に描かれた、将来を誓ったはずの彼女を米兵に横取りされ、アメリカの圧倒的な強さ・魅力の誘惑に負けてしまう彼女を通して、自分が無力だと分かっていても、それを認めたくない、という少年の心が切ない。また失恋した痛手に凹みながらも、自分たちのちっぽけな世界から飛び出していった彼女の行動力を心のどこかで羨ましく思っている少年の複雑な心情にもググッときてしまう。
        
 あれからずいぶん経ち、時が流れ 彼女の居場所ももう知らない。風の便りも途切れてしまったけれど、あの頃の日々を胸の中に、このラジオを修復することを決意した。(←店長、また自分の思い出回想&妄想モードになってるし・・・)
        
        ▲裏蓋左下にバリコン止用ビス穴が・・・設計の不具合対策だろう(笑)
 裏蓋をよく見ると、左下に丸い穴が開けられ、バリコン止具(ビスとスペーサ)が飛び出している。生産ラインに乗った時点で、裏蓋が閉まらないことが判明し、こんな対策を施したのだろう。
裏蓋を取外すと、清掃された様子はなく、キャビネット底部やシャーシ上の真空管、IFT、バリコンには多くの埃が堆積しているが、こんなラジオの方が、意外と簡単に修理できたりする。
長年放置され、シャーシの一部に錆が浮いた かなりやGSに、つい感情移入してしまう。
        
        ▲真空管は一部NEC製に交換され、ケミコンも暴発寸前の危険な状態

LUXMAN NEO CLASSICOシリーズ SQ-N100/D-N100

2008-06-03 | 三流オトコの二流品図鑑
オーディオの世界でも急速な進歩を遂げるデジタル・テクノロジー。そんな流れに反するように、アナログ・オーディオの象徴・真空管アンプが静かな人気を集めている。ある日、知人から「真空管のミニコンポを買ったよ~♪」と連絡があった。
 真空管のミニコンポ???  元来、レコードプレーヤー、アンプ、スピーカーなどが独立した製品として幅17インチ(約432ミリ)のフルサイズコンポーネントで提供されてきたオーディオシステムが真空管アンプやアナログ・オーディオの主役だった。しかしCD(コンパクトディスク)の出現とともに、その横幅を縮小し、サイズにこだわらず据置型でスピーカーを分離できるオーディオシステム全般が「ミニコンポ」と呼ばれ、フルセットで3~7万円台の手軽なオーディオ機器として今日に至っている。
 ところがPCや携帯電話、デジタルオーディオプレーヤーの圧倒的な普及と“音にあまりこだわらない”そして“リスニングはヘッドフォン中心” といった傾向の若年層と、音楽よりも “音” そのものにこだわりフルサイズオーディオシステムに走る “オーディオが好き” である40代以上の年齢層の二極化で、ミニコンポの存在感そのものが希薄なものとなってしまったと言えよう。
        
        ▲60万のミニコンポ? TANNOY Autograph miniとD-N100/SQ-N100
 そんな中、今回知人が購入したという「真空管ミニコンポ」は、LUXMANのNEO CLASSICOシリーズ CDプレーヤーD-N100 ¥126,000 / 真空管プリメインアンプSQ-N100 ¥189,000(希望小売価格税込)とスピーカーにTANNOY Autograph miniを組合わせたミニシステムであった。
LUXMANのセットの魅力は何と言っても、A4サイズに底面積をまとめたコンパクトなサイズと洒落たデザイン、往年の名作モデルにも冠された、「SQ」という型番が物語る出力管にEL84をプッシュプル構成で使う真空管アンプだ。一般的に真空管アンプはシングル方式とプッシュプル方式に大別される。シングル方式は出力管をchあたり1本用いて増幅を行い、プッシュプルはchあたり2本、若しくは4本のペアリングを組んで増幅しているものだ。
出力を大きく取れるのはプッシュプル方式であり、出力は小さいもののサウンドの質感を重視したいのであればシングル方式と言われている。
        
        ▲出力管にEL84を採用したプッシュプル構成のSQ-N100
 LUXMAN(ラックスマン)というブランドは、30代後半~40代の人なら、10代の頃に全盛を迎えた自作オーディオブームに憧れの存在でもあったラックスキットの親会社だったという方がピンと来るという人もいるだろう。1925年創業のラックスを前身とし、そのオーディオ製品のブランドであったラックスマンを引き継いだ現在のラックスマンは、いまだ日本のオーディオブランドとして、独自の地位を築いている。量販向け製品ではなく、あくまでも音の質感にアイデンティティを求めてきたが故に一般のブランド認知は比較的低いかもしれないが、オーディオに興味を持つ人たちにとっては、今も昔も変わらず、特別な存在として人気がある。
        
        ▲底面積A4サイズのコンパクトサイズと洒落たデザインSQ-N100
 一方のスピーカーTANNOYは、イギリスの高級メーカーである。1954年に発表されたコーナー設置型バックロードホーンスピーカーTANNOY Autographのデザインコンセプトを受け継ぎ、伝統的な造形と最新の生産技術・製造技術が融合し、タンノイのフィロソフィーを具現化したブックシェルフ・スピーカーが「Autograph mini」だ。小型の10センチ(4インチ)同軸2ウエイ・ユニットを搭載し、Autographと同じ厳選されたバーチ(樺)とチークのリアルウッド採用のエンクロージャーは職人の手による一品一品丁寧に仕上げられた手作り品だという。ネットで調べてみると希望小売価格¥300,000(税別)。
        
        ▲伝統のデザインコンセプトを受継いだAutograph mini 税別30万!
LUXMANのNEO CLASSICOシリーズ / CDプレーヤーD-N100と真空管プリメインアンプSQ-N100にTANNNOY Autograph miniを加えた価格は、ざっと¥600,000以上!

「真空管ラジオで音楽を聞いているとゆったりした気分になれることを父に話したら、このミニコンポを薦めてくれて、気に入ったから買っちゃった♪」

 BMW1シリーズを乗り回していると思ったら、FIAT 500をポンっと買ってしまう知人とはいえ、そんな由緒正しいメーカーのシステムを数万円の「ミニコンポ」と同列に扱ってはばからないオーディオ素人の “無邪気さ(無知?)” に、ヤフオクで¥5,000前後の真空管ラジオの入札ごときに一喜一憂するボクは苦笑いするしかなかった。
        
        ▲Fiat 500 1.4 Loungeや60万のシステムをポンっと買う・・・
 「まぁ好事家のコレクターズアイテムなんだろうな」と思っていたが、このシステムでダイアナ・クラール(Diana Krall)の「All for You」を聞いて、前言を撤回!
ナット・キング・コールへのトリビュートCDである同作品は、Krallの美しい歌声とピアノで40年代の名曲が蘇る。全体のトーンとアレンジはまろやかで実にすばらしいアルバムだ。彼女の代表作、「Live in Paris」と並んぶ極上の仕上がりを、TANNOY Autograph miniとD-N100/SQ-N100のシステムは十二分に引き出してくれる。
 さすがにTANNOY Autograph miniのサイズでは最低域は出ないものの、ミッドバス帯域にエネルギー感が押し出されるため、印象的なベースラインに乗って歌われるスタンダードナンバーのヴォーカルも、グッと情感が深く描かれてくる。
ホーンらしく細かい音はきちんと出るわ、低音も膨らまないわ、定位は良いわ、音量にかかわらず音像は崩れないわ、ホント降参しました。
        
 LUXMANは、その道の専門家に言わせれば、音場型の音という印象が強く、ふわっとした独特のソフトな空気感に包まれる心地よさはあったものの、カッチリとした音像や音離れの良さを求める向きには少々音場が濃厚になりすぎる傾向が強いそうだ。しかしこのNEO CLASSICOシリーズで聞いた音は、奥行き感や濃厚な中域の質感を残しつつも、音のまとわりつきが少ない、しかしスッキリとしすぎて雰囲気を損ねない、「程よい音場空間」を描いている。
        
またTANNOY Autograph miniは、レスポンスと切れ味の良さ、鮮度の高さ、歪みの少なさなど、贅沢なネオジウムマグネットを使った良さが「音の質の高さ」となってあらわれているように感じられた。なぜかホーン特有の指向性の強さはあまりなく、音場の拡がりや立体感が失わないまま高域の質感が保たれるため、プライベートルームで使うこのシステムでは、スピーカーの良さを遺憾なく発揮している。ただ中低域は、ややハイ上がり(高域より)のバランスになって、やや音痩せするように感じられるのは、小型スピーカーの限界なのかも知れません。

 ではその真空管はどこに良さがあるのだろうか。
半導体では出せない温かみのある音、豊かで潤いのあるサウンドが、真空管サウンドの特徴といわれている。真空管という素子自体は、トランジスターやMOS-FETといった半導体素子と構造こそ違えど、動作目的の部分として “信号を増幅する” という役割は同じだ。
        
 真空管をアンプに用いる場合、半導体アンプとは違って200V~500Vという高電圧をかける回路となるが、三極管あるいは五極管であろうと基本回路構成がシンプルなため、圧倒的に部品点数は少なくなり、その部品一つひとつが “温かみのある音、豊かで潤いのあるサウンド” の重要なファクターになる。また基本回路構成がシンプルである故に、クリアで鮮度の良いサウンドを楽しめるのも、真空管方式ならではのこと。
 高電圧をかける真空管アンプは扱いが難しいと思われがちである。しかしメーカーから販売されている製品であればプロテクト回路も搭載されており、熱に対する配慮と頻繁に電源を入/切しないよう気をつけていれば、通常のオーディオ機器と何ら変わらない使い勝手で楽しめるはずだ。適正な設計がなされているアンプであれば、真空管の寿命も5~10年は平気で使える。もし心配であれば、スペアの真空管も含め、まとめてアンプ購入時に確保しておくと良いでしょう。

 あえてケチをつけるとするなら、ロックやフリージャズがやや不得手かも知れません。例えばジャズ/フュージョン/AOR/ロック/R&Bなど様々な音楽要素が入り混じった Steely Danの「Gaucho」を聞かせてもらったところ、ドラムの音で立ち上がり曲は始まるが、この立ち上がりはややスローに感じてしまうのは気のせいでしょうか?
 とはいえ、システムトータルで聴いた際のボーカルの美しさは、なかなか秀逸。このデザインとサイズで、ここまで楽しめるシステムはそうは見つからない。

 コアなオーディオマニアの方から見ると、
「EL84ごときで何言ってるの?俺のプリメインアンプMA6900GとJBLは4348にしてんだけど、ステレオ録音初期のモダンジャズの輪郭が上手く再現できなくってねぇ~」
と、仰る姿を黙ってうかがうしかない、プアな構成である。
 が、このシステムに出会ってからというもの、「愛用しているBOSEのサウンドシステムでいいや~」 とは割り切れない何かが浮かんでは消え、悶々とした日々を過ごしている。ロシア製のEL84をRCAやSYLVANIA製の6BQ5に変更したらどんな音になるんだろう・・・と考えるだけで、思いが膨らむ。

夏のボーナスをこのLUXMAN NEO CLASSICOシリーズ「真空管ミニコンポ」につぎ込もうかと思ってしまう、『悪魔の囁き』を振り払う毎日なのである。