墨汁日記

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平成マシンガンズを読んで 282 暴走する死神とその鎮圧

2007-03-11 10:47:41 | 

「『教育理念』が建前なら、今の教育の実態はなんだろうか。
 もちろん、競争だよな。
 そう。結局は、良い大学に入って一流企業に行くのが最終目標なんだよ。
 その為に学校に行っているにすぎないし、勉強なんてもんは、高い給料を貰えるようになる為の手段。しょせん金だよ。勉強なんてつまんない。
 他人より裕福になれ。
 少なくとも、負け組にだけはなるな。
 そんな風に大人からハッパかけられ勉強していて、ふと気づく。実は、まわりのクラス・メイトってお友達なんかじゃなくて自分の敵なんだと。
 本当に成功する者はごくわずか。他人を押しのけてでも這い上がらなきゃ成功者にはなれない。
 そうか、まわりはみんな敵なんだという認識。クラスメイトはみんな、自分と同じ狭い門を目指して走る敵である。こいつらは自分を蹴落とそうとしている加害者だ。
 そして、生まれる被害者妄想。
 なにしろ、みんなが加害者なら、自分は被害者だ。
 大人からの抑圧と、本来は敵である学友との建前のつきあい。
 精神は知らず知らずに屈折し鬱屈していく。
 こうして、子供達は被害者妄想にこりかたまった、他人を非難する事しかできない醜い大人に完成させられる。
 なんと愚かな教育!
 なんと哀れな子供達!
 子供達よ歌え復讐の歌を!
 討つのだ眼前の敵を!
 今こそ立ち上がれ子供達の復…」

 もう、死神には我慢出来ない!
 こんなに大勢の人が乗っている電車の中でワケのわからん演説をぶちやがって。偉そうに、お前は何様だ! お前の演説のせいで、一緒の私が死ぬほど恥ずかしい!

 我慢は臨界点を超え、私は叫んでいた!

「演説をやめなさい! 電車の中でしょ!」

 叫んだとたん冷静になった。
 血の気がすーっと引いていく。
 しまった。
 やらかしてしまった。

 夏もおわりかけているが、まだ残暑厳しいそんな平日のお昼。
 中央線の車内はいくらか空いているものの、シートは乗客でうまり立っている人もいる。その車内で演説する中年男と、それを叱りつける制服の中学生。あきらかに異様なシュチュエーションだ。

 私に叱られたのがショックだったのか、死神はしゅんとなって謝る。

「ごめんなさい」

 うわっ、こいつ最悪、空気読めてない。これで、うちらは確実に変な2人組に決定だよっ。他の乗客の視線が痛い。知らんぷりを装いながらも、あきらかに私達を観察している。
 怒りと恥ずかしさで熱くなっていた体が一気にクールダウンして、消え入りたい気持ちになる。


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