日曜日は仕事で人材派遣の日雇いで引っ越し屋の手伝い。そこで一緒にはたらいた一人の若い奴は働き者で仕切屋。烏合の衆になりがちな人材派遣の連中の先頭にたち良く働く。
引っ越しの積み込みが昼には終わり、トラックとワゴンに分乗して引っ越し先の現場へ、そこで昼休み。彼は話し好きなのか、弁当を食う人材派遣の連中の中で中心になり話していた。俺は弁当を食い終わり、彼の話を輪の外からぼんやり聞いていた。本を読むには風が強いし、昼寝するほどは暖かくない。半端な休憩時間なんとなく暇なのだ。
彼の本職は放送関係。ラジオのDJとか、イベントの司会。もともと、お笑いを目指していたらしい。どうりでしゃべりがうまいと思った。
話の内容はタレントの誰々と知り合いとか、大阪のお笑いプロダクションにコネがあるとか、素人にゃ興味深いうらやましい話。けして、放送関係の人にありがちな嫌みな自慢話にならないところが、パーソナリティとして喋りを売りにしている人だけの事はあると感心する。
そのうち彼は「最近、政治の勉強をしていて。」と切り出す。若者や女性が、ネットでの詐欺やストーカーなどの犯罪に巻き込まれるケースや、カードローンなどで自己破産するケースを例に挙げて、未成年者や若者が自己破産や犯罪に巻き込まれる前に気軽に法律相談できる公的な場所を造るよう国に呼びかけてると言う。
24時間、気軽に法律の相談ができる場所。そんな場所をまずは都内に何カ所か造りたいそうだ。
ふーん。ま、いいんでない。そんなもんつくるのにいくら税金がかかると思ってんだと言う程、俺は税金を多くは払ってない。どうせ、九割以上他人の税金だ。好きに使えばいい。なにより、新しい事を始めりゃ雇用と仕事が増える。そして将来の税金を納める若者を保護するのはお国の義務だ。気軽で手頃な法律相談事務所をつくる事に反対はしない。
その為の署名を集めているという。俺は金は出さんが、名前はいくらでも無利子で貸してやる。太っ腹なのだ。というか、自分の名前がどう利用されようが俺の生活に迷惑さえかからなきゃどうでもいい。
何人かの人材派遣の若者が署名する。本職が日野の工場員、車の修理工などが署名。俺にも紙がまわってくる。内容にひととおり目をとおしてみる。そして、最後にこの意見の元締めの名前を確認。「公明党 青年部」
そうか公明党か。
俺は、彼に紙をつっかえす。
「悪いけど、公明党さんには協力できないんだ。」
俺は政教分離。憲法に従う。お国の規則に従う。名前も憲久だしな。彼に断る理由を聞かれた。彼は悪い奴ではない。ハッキリ公明党が嫌だと言うのも可愛そうだ。俺は公明党以外のなんらかの支持者だという事にしとこう。
「共産党なんですか?」
出た。共産党。そんなにアカっぽく見えるのか俺は?これからは毎日風呂に入ろう。てか、失礼だっての。俺みたいのが共産党なんていったら共産党の方に。
それとも。なんでも、反対するのが共産党て刷り込まれてんのかな?発想が貧困だ。貧困なる精神だ。宗教がらみで公明党に賛同できないこともあるし、こう見えても、親が市議会議員とかいろいろあるだろ。
「共産党じゃないけど、立川にさ、あるんすよ。そういうのが。」
それで、会話終了。だから、俺は変な人扱いされる。こうみえても気をつかってんだけどな。