そんなで、職場を変わった俺なんであるが、現在の職場の店長は、根っからのパン職人だ。実家がパン屋で、小学生の頃からパン作りを手伝わされて育った。
職人の世界は厳しい。銀紙、アルミのペラペラのギザギザの良くケーキとかの下にのってるアレ。アレを店長はものすごい早さで、鉄板の上に並べてしまう。まさに一瞬だ。銀紙並べは、やったことがある人ならわかると思うが、以外に取りにくくて大変だ。それを店長は一瞬で並べる。何が起こったのかと思うほどの早さだ。銀紙並べだけなら、確実に班長より早い。そんで、もたもた銀紙をはいで並べている俺を見て店長は言う。「なんだ、成形はぜんぜんできないんだな。」
今度の店では、仕込みの卵は、生卵を使う。これまた店長は一瞬で何十個もの卵を割り、黄身だけを取り出す。これも、俺はできない。もたもた両手で卵を割り、なおかつ黄身を壊してでろでろにしてしまう。それを見て店長は言う。「なんだ仕込みもできないんじゃないか。」
俺は、オーブンはまったくできない。仕込みも駄目。分割も丸めが逆。成形はお話にならない。「ようするに、なんにもできないんじゃないか。」
「はい。そのとうりです。俺はなんにもできません。」