野次馬アラカルト
ロシアの冬はハンパじゃねーデス。
野グソをたれると、ケツが凍傷になりまっせ。
クソも命がけでさァ。
独ソ戦
パウル・カレルの、もう1冊
私が、パウル・カレルの著作を知ったのは、高校生のときでした。
学校帰りの際、ある書店に立ち寄ったときに、「バルバロッサ作戦」という分厚い本を見つけました。パラパラと立ち読みをしてみたところ、ガーン!ドイツ側から書かれたものではないですか。手持ちのお金をすべてはたいて、即購入。それから勉強そっちのけで、むさぼるように読みまくったものです。当時の日本では、敗戦国のドイツ側から描かれた独ソ戦の戦記ものは非常に珍しく、貴重品でした。
しかも厳寒の雪原で繰り広げられる凄惨な戦闘の様子が、彼独特のテンポで展開されていくところに、思わず引き込まれてしまったものです。
パウル・カレルの本は、当時フジ出版社が発売しており、他にロンメル将軍とアフリカ軍団の活躍を描いた「砂漠のキツネ」、守るドイツ側から見たノルマンディ上陸作戦「彼らは来た」、そしてクルスク戦以降ロシアで敗北するドイツ軍を描いた「焦土作戦」があり、これらも即購入して読みまくりました。
長らく絶版でしたが、近年学研よりハードカバー版、さらに大西画伯の迫力あるカバーイラストで、M文庫から再登場。
そして、日本では刊行されていないパウル・カレルのもう一冊
「UNTERNEHMEN BARBAROSSA IM BILD」
Ullstein Buchverlage GmbH 1967
東部戦線従軍兵士が撮影した写真の集大成。
「前進!」
号令とともに歩き出す兵士ら。
傍らには負傷兵が横たわり、戦友が心配そうに付き添う(右中段)。
広大な平原に、行く者と残る者のドラマが展開される。
なんだか、沢田教一の戦場写真をイメージさせるシーンです。
右の写真は、降伏したロシア兵(パウル・カレルが「バルバロッサ作戦」のなかで書いている、モスクワ猟犬中隊所属の兵士か)と「地雷犬」。
地雷犬の装備がよくわかる、貴重なショット。
犬が背負っているベストの側面に、棒状のものが水平になっているのが見えますが、これが起爆装置です。
敵戦車を攻撃するときは、この棒を垂直に立てて犬を放ちます。
普段の訓練では、犬は動いているトラクターの車体下部に潜り込まないとエサがもらえないので、エサがあると思われる敵戦車にも同様の行動をとろうとします(当然、攻撃前は犬を飢えさせておくのが前提です)。
うまく潜り込んで、例の棒が車体に触れて動こうものなら、その瞬間ドカン!です。
『「犬だ!」。ドーベルマンが一頭、大股で跳んでくる。背に奇妙な鞍をつけて。オスタレクが機関銃をめぐらす前に、三〇メートル先のぺシュケ大尉がカービン銃を構えていた。犬はもう一度ジャンプしてそのまま倒れた。
ミュラー伍長がどなった。「気をつけろ、もう一頭!」。今度はみごとなシェパード。注意しながら走ってくる。オスタレクが撃った。高すぎた。犬は尾を巻き引き返そうとしたが、ロシア語の叫びを聞きつけると、まっすぐローゼの車へ走った。全員が発砲したが命中したのはザイディンガーがソ連兵から分捕ったガス利用の自動銃だけだった。
「ミュラー、無線で警報を出せ」。ローゼが命じ、やがて全部隊がそれを聞いた。「ドーラ101より全部隊へー地雷犬に注意せよ‥‥‥」。
地雷犬。この時できた言葉は大いに問題とされた。ソ連軍の新兵器として歴史に残るようになった。犬が革製のかばん二つに爆薬もしくは対戦車地雷を背負う。高さ一〇センチの木の棒が信管。犬は戦車の下にもぐりこむように訓練され、棒が曲がったり折れたりしたら爆薬が炸裂する。
第三装甲師団は《モスクワ猟犬中隊》の生きた地雷相手の戦闘をうまく切りぬけた。第七装甲師団も同様だった。だが五日後、ネーリング将軍の第一八装甲師団は少々運がなかった。(中略)
「右に寄って停止。エンジン停めよ」の命令が出たばかりである。ハッチをあけた瞬間、二頭のシェパードが畑から飛び出してきた。大きくジャンプしつつ接近する。背中の平べったいザックがはっきり見えた。「何だ?」。通信手は驚いた。「伝令か衛生隊の犬だろ」。照準手が言った。
一頭が先頭戦車のキャタピラの下に躍りこんだ。閃光と爆発音。黒煙が立ちのぼる。最初に気がついたのはフォーゲル軍曹だった。「犬だ!」。彼は叫んだ。「犬だ」。照準手はP08拳銃を構え、二頭目を狙った。撃つ。はずれた。もう一度。またはずれた。と、914号戦車から機関拳銃が鳴り、犬は前足を折って倒れた。近よってみるとまだ生きていた。拳銃で引導を渡した。
ソ連の文献は地雷犬という悪魔的な兵器に触れていない。だがそれが投入されたことは疑いがない。第一、第七装甲師団の日誌にも出てくるからだ。第三装甲師団が尋問した兵の証言によると、《モスクワ猟犬中隊》には一〇八頭の犬がいたという。訓練にはトラクターを使い、犬が餌をもらえるのはエンジンのかかったトラクターの下だけである。そこから持ってこなくては飢えるほかない。戦線投入のときも犬は飢えていた。飢えていれば戦車の下にもぐりこむ。だがそこには餌の代わりに死が待っていた。《モスクワ猟犬中隊》は大した成果を得られなかった。エンジン音をも気にせず戦車にもぐりこめるように訓練できる犬はほんのわずかで、そのうち地雷犬はたまに、それもただパルチザン隊でしか投入されなくなったのも明らかにこの理由による。バルバロッサ作戦 上 238頁-241頁』
「地雷犬」に関連して、ある文献に気になる記述がありましたので、ご紹介します。ドイツ兵が、いかに心理的ダメージを受けていたのかが、よくわかります。
「スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943」
アントニー・ビーヴァー著 朝日文庫
『おそらく兵士が集まって作ったのだろうが、「休暇を取る兵士のための覚え書き」という勝手な説明書がある。滑稽を狙ったところが、かえって東部戦線の冷酷無惨をあらわにしている。
諸君は国家社会主義の国(ブログ管理者注、ドイツのこと)に赴こうとしている。それを忘れてはならない。その生活環境はこれまで諸君が慣れ親しんだそれとは大いに異なる。住民の習慣に合わせて如才なくつきあい、いまや慣れ親しんだ習慣を棄てなければならない。
食物ージャガイモは別の場所に保存されているので、寄せ木の床などを引き剥がしてはならない(ブログ管理者注、飢えたドイツ兵はロシア人の家屋を見つけると、床まで引き剥がして食物をあさった)。
夜間外出禁止令ー鍵を忘れたなら、丸い形の物でドアを開けてみる。緊急時でないかぎり手榴弾を使ってはならない。
対パルチザン防衛ー民間人に合い言葉を使う必要はなく、また間違った返答があっても銃撃しなくてよい。
動物対策ー身体に爆発物をつけている犬はソ連独特の武器である。ドイツ犬は最悪の場合噛みつくが爆発しない。当地では目についた犬はすべて射殺するよう奨励されているが、ドイツではそんな振る舞いは悪い印象を与える。
一般市民との関係ードイツでは、婦人服を着ているからといって必ずしもパルチザンではない。しかし休暇で前線を離れる者にとって彼女たちは危険である。
その他一般ー休暇で祖国に帰ったら、ソ連に存在している楽園の話をしないよう気をつける。誰もがここにやってきて我々の牧歌的楽しみを壊しかねないからである。 72頁-73頁』
左下の写真は、有名な「モロトフのカクテル」。
「ガソリンと燐の混合物で、戦前に赤軍が食糧庫や重要施設を迅速に焼き払う実験に用いていたものである。(中略)しかし効果はすごかった。液体は空気に触れるとすぐ炎上する。それにガソリン瓶を添えると燃焼力を増す。ガソリン瓶しかない場合には、応急の導火線をつけ、投げる前に点火する。瓶が戦車の屋根か側面で破裂すると、燃える液体が内部かエンジン内に流れこみ、すぐそこを炎上させる。戦車という鉄の箱は大抵オイル、ガソリン、グリスの層をかぶっているので、驚くほどはやく炎上するのだった。バルバロッサ作戦 上 147頁」
右の写真は、ソ連軍の武装モーター橇。
橇にエンジンとプロペラを取り付けたもので、雪原を軽快に走り回る珍兵器に、ドイツ兵は手こずった。
モロに悪役。不敵な面構えのドイツ兵の集団。
こんな連中に捕まったら、こりゃ恐怖じゃ!
兵士A 「おい、
例の野次馬考古学は、
ここしばらく、ナチ野郎の特集をするんだとよ。
くだらん。」
兵士B 「迷えるアメリカ兵よ。
お前の認識は誤っている。
総統は非常にお喜びだぞ。
われわれの優秀性が、全世界に誇示されるのだ。」
兵士C 「そうだ。
ヒムラー長官も同意見だ。
野次馬考古学を、わがSSの公式指定文献にするよう
指示があったゾ。」
兵士D 「ハイル・ヒトラー! 」
兵士A 「き、貴様ら、スコルツェニーの特殊部
隊か! 」
‥‥その後の展開は、恐ろしくて書けません。
次回のチラリズム
一般のレコード店で、かつてこのようなLPを売っていました。
日本フォノグラム「歌・行進曲・演説でつづる第三帝国の記録 アドルフ・
ヒトラー(SFX-5156-57)」
第三帝国時代の行進曲、軍歌、当時のVIPの演説、ドイツ国防軍のラジオ発表などを集めた、貴重な「音」で聴く歴史史料の紹介です。
プラモデル野次馬考古学
日本初公開もあるんじゃないでしょうか。
イヤーやってみるもんですね、こうゆうのが見られるとは、貴重な写真ありがとうごさいました。