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印刷図書館倶楽部ひろば

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パンケーキレンズのルーツ、ミノルタER1眼レフ

2015-05-20 16:16:34 | 印刷人のフイルム・フイルムカメラ史探訪
パンケーキレンズのルーツ、ミノルタER1眼レフ          
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-9

印刷コンサルタント 尾崎 章

パンケーキレンズと称される薄型標準レンズの人気が高まっている。1960年以降にメカニカルシャッター仕様のMF・マニアルフォーカス1眼レフ用の標準・準広角の補助的レンズとして各社が製品化を行い、2000年以降の製品としては㈱ニコンがメカニカルシャッター・MF1眼レフの最終形として2001年に発売したニコンFM-3の標準レンズとして薄型Aiニッコール45mm F2.8を搭載して話題を集めた事が記憶に新しい。

パンケーキレンズの呼称が広く定着した契機は、パナソニック及びオリンパスによって市場創生が行われたミラーレス1眼レフのコマーシャルである。カメラ好き女優の宮崎あおいさんのCM効果もあり、ミラーレス1眼レフと携行性に優れた薄型レンズの組合せが若い女性に支持され、「パンケーキレンズ」の可愛らしいネーミングも加わり認知度が一挙に高まっている。


ロッコールTD45mmf2.8 最初のパンケーキレンズ 



ニコンの名品 Aiニッコール45mmf2.8 


パンケーキレンズのルーツは、レンズシャッター1眼レフ・ミノルタER

カメラ愛好家にも認知度の低いミノルタERは、ミノルタカメラ(現・コニカミノルタ)が1963年に輸出専用機として製品化したレンズシャッター1眼レフである。
レンズシャッター1眼レフは、1952年にドイツのツアイス・イコン社が普及型1眼レフとしてレンズシャッター1眼レフ・コンタフレックスを発売、欧州カメラ各社が追随したことより欧州を中心としたレンズシャッター1眼レフ市場が創生される展開となった。
国内カメラ各社も海外市場動向に対応すべくレンズシャッター1眼レフの製品対応を開始、1959年に東京光学(現・トプコン)が国内初のレンズシャッター1眼レフ・トプコンPR(16.000円)の発売を行っている。


国内初のレンズシャッター1眼レフ・トプコンPR


東京光学は、1960年にレンズシャッター1眼レフとして世界初のクイックリターンミラー機構搭載のトプコン・ウインクミラーを発売、1961年には追針式露出計内臓のトブコン・ウインクミラーE、1964年は当該機種初のTTL測光方式のトプコン・ユニと矢継ぎ早の製品展開を行い、国内レンズシャッター1眼レフ市場をリードする展開を行っている。


世界初クイックリターンミラー搭載・トプコン ウィンクミラー


東京光学に続けと日本光学、キャノン、富士写真フィルム、リコー、ミノルタ、マミヤ光機、興和精機等が当該市場参入を図ったが、カメラ構造上のトラブルが多くキャノン、富士写真フィルム、リコー、ミノルタカメラ等は1機種のみで市場撤退を行っている。


キャノンのレンズシャッター1眼レフ・キャノネックス 


最後まで健闘した東京光学も1969年発売のトプコン・ユニレックスの生産を1973年に終了、市場撤退を実施した。東京光学・トプコンPRから始まった国内レンズシャッター1眼レフ市場は15年の短命製品市場となった。
ミノルタカメラのミノルタERは、レンズ固定式で有ったが搭載したテッサータイプのレンズ・ロッコールTD45mm f2.8が優秀であった事より、同社は主力フォーカルプレーン1眼レフ・ミノルタSRシリーズ向けの単体レンズとして製品化を行い1964年に9700円の低価格普及型レンズとして販売を開始している。



ミノルタERとロッコールTD45mmパンケーキレンズ 


このロッコールTD45mmF2.8が国内初のパンケーキレンズで、当時はパンケーキレンズの呼称も無く携行性に優れた薄型標準レンズとしてミノルタSR交換レンズ群に追加されている。このロッコールTD45mmf2.8のレンズ鏡同厚は、何と18mmでレンズ交換時に不自由する程の厚みである。パンケーキレンズの呼称定着は、各社の薄型標準レンズが出揃った1990年以降からである。


各社の1眼レフ用パンケーキレンズ

マニュアル&オートフォーカス・フィルム1眼レフ及びデジタル1眼レフ向けにカメラ・レンズ各社が製品化したパンケーキレンズは下記の通りで、最後発のキャノンは2013年に35mmフルサイズ・デジタル1眼レフ用、2014年にAPS-Cサイズ・デジタル一眼レフ向けの製品を発売、当該市場参入を行っている。


各社パンケーキレンズ 


①ロッコールTD45mmf2.8 (ミノルタカメラ) 1964年 ☆
②GNニッコール45mmf2.8 (日本光学)    1969年 ☆
③SMCペンタックスM45mmf2.8(旭光学)   1976年
④ヘキサノンAR40mmf1.8(小西六写真)    1979年 
⑤テッサー45mmf2.8 (京セラ)     1983年 ☆
⑥XRリケノン45mmf2.8 (リコー)     1993年 ☆ 
⑦Aiニッコール45mmf2.8P (ニコン) 2001年 ☆
⑧ペンタックスDA21mmf3.2 (ペンタックス) 2006年 APS-Cサイズ用
⑨フォクトレンダーULTRON 40mm f2(コシナ) 2013年
⑩キャノンEF40mmf2.8STM(キャノン)    2013年
⑪キャノンEF-S21mmf2.8STM(キャノン)  2014年 APS-Cサイズ用
* 社名は発売当時の社名を表記 **☆印はテッサータイプのレンズ構成

    
パンケーキレンズの魅力を高めるテッサータイプレンズ

パンケーキレンズは光学系にテッサータイプ構成を採用するケースが多く、前述11本のパンケーキレンズの内5製品がテッサータイプ、45mmf2.8の同一スペックである。

テッサータイプの光学系は1902年にカールツァイス社が発表したレンズ構成で、凸・凹・凹・凸のレンズを組合せた3群4枚構成のシンプルな光学系で有る。
凸・凹・凸構成のトリプレットレンズ構成に凹レンズ一枚を追加する事によりレンズ諸収差を大幅に削減する事が出来、構成レンズ枚数の少なさに起因する「ヌケの良さ」「クリァー性」も高く、世界から評価・注目された代表的光学系の一例である。カールツァイス社の発表以降は、二眼レフから35mmレンジファインダーカメラ、コンパクトカメラまでの各社製品に幅広く採用された経緯を有している。


テッサー45mmf2.8 パンケーキレンズ


テッサーの名称は、ギリシャ語の「4」を語源とし、カールツァイス社以外の各社は「テッサータイプ」のネーミング・表記を行っている。
テッサータイプはシンプルな光学系の為にレンズ設計者の技量が現れやすく、テッサー及びテッサータイプの各社パンケーキレンズで描写性能比較を楽しむ事も出来る。



筆者は、APS-Cサイズ用以外のパンケーキレンズ全製品を保有しており、カメラ雑誌・日本カメラ(2007年6月号)に「テッサーパンケーキレンズ」特集を掲載する程、パンレーキレンズ愛好家を自負している。
最初に購入したパンケーキレンズは1966年の学生当時にアルバイト代で購入したロッコールTD45mmf2.8で、当時ミノルタカメラがミノルタSRシリーズ1眼レフ用普及型レンズとして製品化していた広角レンズWロッコールQE35mmf4(1965年発売 9700円)と中焦点レンズ・ロッコールTC135mmf4(1960年発売 11800円)も同時期に購入している。両レンズ共に手動で設定絞り値に絞り込むプリセット絞りでロッコールTC135mmは
3群3枚構成のトリプレットレンズで有った。


ミノルタ普及価格レンズ ロッコールTC135mmf4とワイドロッコールQE35mmf4 


「プリセット絞り」「トリプレットレンズ」は高性能化が著しい現在では想像も出来ない非能率・ローテク製品であるが、いずれも現在でも通用する画質を楽しむ事が出来る「懐かしの製品」である。




 
 

   
 

  
           

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