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印刷図書館倶楽部ひろば

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グッドデザイン大賞カメラ オリンパスXA2とキャノンT50

2015-03-13 14:01:09 | 印刷人のフイルム・フイルムカメラ史探訪
グッドデザイン大賞カメラ オリンパスXA2とキャノンT50

≪印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-7≫

印刷コンサルタント 尾崎 章


グッドデザイン賞は、1957年に当時の通商産業省(現:経済産業省)によって創設された優秀デザイン商品選定制度で現在は公益法人・日本デザイン振興会によって制度運営が行われている。
グッドデザイン賞の対象は、商品デザインの全領域で毎年約1000件の商品が受賞しており、制度創設以来の受賞件数は4万件を超える状況にある。当時の通産省がグッドデザイン商品選定制度を開始した背景には、日本独自のデザイン奨励があり海外商品のデザイン模倣防止も目的に含まれていた。1984年からは全工業製品が対象となり、また1964年から公募方式へと制度変更が行われている。
グッドデザイン大賞は審査員投票数の最多製品に与えられ、2007年より内閣総理大臣賞に位置付けられている。ちなみに同賞のシンボル「Gマーク」は亀倉雄策氏によるデザインである。


グッドデザイン大賞受賞カメラは、オリンパスXA2とキャノンT50の2機種のみ

グッドデザイン賞受賞カメラは数多いが、グッドデザイン大賞受賞カメラは、オリンパスXA2(1980年受賞)とキャノンT50(1983年受賞)の2機種のみである事を知る人は少ない。


グッドデザイン大賞受賞カメラ、オリンパスXA2(左)とキャノンT50(右)


オリンパスXA2

1979年にオリンパス光学(当時)が発売した35mmコンパクトカメラ:オリンパスXAは従来のコンパクトカメライメージを完全に覆した黒色ポリカーボネート樹脂のボディを採用、特に中央部が半球型に盛り上がったスライド式バリアでレンズとファインダーをカバーするカプセル型のユニークデザインで注目を集めた。外観デザインのみならず搭載レンズ・ズイコー35mm f2.8レンズ(5群6枚構成)も優秀でボディ構造の制約を受けながらもコンパクトカメラの水準を大きく上回っていた。


オリンパスXA2

グッドデザイン大賞を受賞したXA2型(34.800円)は、1980年に発売された改良型で焦点調節に3点ゾーンフォーカスを採用して利便性を高めると共にグレー、ブルー、レッド等のボディカラーバリエーションも設定、同色の専用ストロボと共にデザインの魅力を大きく拡大している。

オリンパスXA2のデザインは、日本カメラ史に名を残す同社・開発担当者である米谷美久氏(1933~2009)が担当している。同氏が担当したカメラは、ハーフサイズカメラ市場を創生したオリンパス・ペン、独創技術とデザインで世界が注目したハーフサイズ一眼レフ・オリンパス・ペンF,小型軽量一眼レフ・オリンパスOM1等々、多岐に及んでいる。
晩年の作品には、カメラ好き女優・宮崎あおいさんのCMで女性向けミラーレス一眼市場を短期間に創生したオリンパスEP1が有る。


米谷デザインの傑作 オリンパス ペン

オリンパスXA2のズイコー35mm f2.8レンズは、一眼レフ用の35mm広角レンズと遜色ない描写性能を有し、露光コントロール精度も高くカラーリバーサルフィルム撮影にも問題無く対応した為にサブカメラとして高い支持を得た経緯もある。作例写真は、ドイツ・ミュンヘンとオーストリア・インスブルックを結ぶ鉄道の国境駅:ミッテンバルドのバイオリン博物館前広場を撮影したものでコンパクトカメラとは思えない描写力である。
ミッテンバルドは、バイオリン造りとカラフルなフレスコ画の家並みが魅力の小さな町である。


ミッテンバルド・バイオリン博物館



未来派一眼レフ・キャノンT50

キャノンが1983年3月に発売したフィルム一眼レフ・T50は「新指向・未来派デザインのフィルム一眼レフ」をコンセプトに商品化され、ユーザーの撮影意思に応える自動化機能を優先した単純明快なプログラムAE専用機である。


キャノンT50

当時のフィルム一眼レフはハイアマチュア、カメラマニアの要望に応える為に、絞り優先AE,シャッター速度優先AE,マニアル等、露光制御機能を多様化する傾向にあった。キャノンは、新ジャンル開拓を図るべく「あえてプログラムAE専用機」としており、ストロボ発光制御等の自動化機能を多く搭載した事より「オートマン」の愛称がつけられ注目を集めた。
直線を主体としたシンプルデザインはキャノン社内デザインによるもので、オリンパスXA2に続いて1983年のグッドデザイン大賞を受賞している。
キャノンはT50の上位機種として3年後の1986年に著名工業デザイナー:ルイジ・コラーニ(ドイツ)によるフィルム一眼レフ・T90を発売、樹脂外装の特性を活用した曲線デザインのキャノンT90は1986年のグッドデザイン賞を受賞しているがT50の評価には及ばなかった。

海外の著名デザイナーによるカメラにはジョルジェット・ジュージアーロ(イタリア)による一眼レフ:ニコンF3,F6,D3,ポルシェデザイン事務所(ドイツ)によるコンタックスRTS一眼レフと高級コンパクトカメラ:コンタックスT、マリオ・ベリーニ(イタリア)によるコンパクトカメラ:フジカDL100、アンドレ・クレージュ(フランス)によるコンパクトカメラ:ミノルタAF-Eクレージュ 等々数多くの製品がグッドデザイン賞創設以降に発売されているがグッドデザイン大賞受賞には至って無い。


フジカDL100(マリオ・ベリーニ)


ミノルタAF-Eクオーツデート(アンドレ・クレージュ)



グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を最初に受賞したオリンパス・トリップ35

1984年にオリンパス・トリップ35がグッドデザイン・ロングライフデザイン賞をカメラ製品で初受賞している。1968年発売のオリンパス・トリップ35はハーフサイズ判のベストセラー機・オリンパス ペンEESをベースに画面サイズを35mmフルサイズに拡大した小型EEカメラで、当時の国鉄キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」によって創生された旅行ブームにターゲットを当て旅行用カメラ「トリップ」とネーミングしている。


オリンパス トリップ35

同カメラは、「低価格(13.500円)」「簡単な取扱」「ハーフ判と比較にならない描写性能」そして「小型軽量」が女性需要層に評価されて販売期間20年、シリーズ生産台数1000万台を超えるベストセラー機となっている。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞は、発売より16年目で同賞が正に最適のカメラと云う事が出来る。

グッドデザイン・ロングライフデザイン賞・受賞カメラには、同じオリンパスの一眼レフ:OM-1N(1989年)、中判サイズのフジGX680Ⅱ(2009年)、ペンタックス645(1996年)、コンパクトカメラのキャノンIXYシリーズ(2009年)、そして本編vol-5で紹介のニコンFM10(2012年)がある。当然のことながらグッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞カメラは製品ライフの長いフィルムカメラの独壇場で、製品ライフ2~4年のデジタルカメラには該当製品が無い。


グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した日めくりカレンダー

グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した印刷製品がある。
2012年に新日本カレンダー㈱(大阪)が制作した「日めくりカレンダー」12種がその年のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞している。


新日本カレンダー・日めくりカレンダー

グッドデザイン・ロングライフデザイン賞は、①人々に長く愛され ②日本の生活文化に貢献したデザイン製品に贈られる特別賞で、新日本カレンダー㈱の「日めくりカレンダー」は創業以来90年間に及ぶ製品ライフと2012年に「復刻版・日めくりカレンダー」を加えて日めくりカレンダー文化を継承し続けている事が評価対象になっている。

「毎日めくる事で、一日一日を新しい気持ちでスタート出来る」カレンダーが創生する日めくりカレンダー文化は拡大基調にあると同社はコメントしている。また、担当デザイナー・杉本正人氏によるデザインも秀逸である。
印刷製品がグッドデザイン賞の対象になる事が稀な為に、新日本カレンダー㈱のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞は快挙という事が出来る。

(終)









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