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印刷図書館倶楽部ひろば

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蔵書紹介『高岡重蔵 活版習作集』

2013-06-21 13:53:33 | 蔵書より
タイトル:『高岡重蔵 活版習作集』
著者:高岡重蔵
発行:株式会社 烏有書林
体裁:B5判/166ページ





 著者が相談役を務める㈲嘉瑞工房は、欧米から輸入した金属活字(今ではほとんど入手困難な300書体以上、1,500サイズ以上)を用いて組版をおこなう欧文活版専門の印刷会社として、異彩を放っている。同社がめざしてきた仕事のレベルは、あくまで欧文組版の本場である海外。そんな意気込み、つまり海外で認めてもらうために、1970年代を中心に制作してきた作品群を一冊にまとめたのが本書である。


 著者本人の言葉を借りるなら「一介の欧文組版工の腕試し」ではありながら、本書に収録されている活版印刷による習作は、150余点すべてが圧倒的な力量をもって迫ってくる。「構成力とか書体の使い方とか、パーフェクトに近い。私が保証する」は、一流のタイポデザイナー、ヘルマン・ツァップ氏から贈られた評価だそうだ。  


 それは同時に、著者が師匠と仰ぐ井上嘉瑞氏(アマチュアプリンタ)からいわれた「文字は読むため、記録するためにある。形だけで遊んでは駄目。平凡でも内容にふさわしい組版をしなければいけない」という教えを実践し、実際に表現してみた著者渾身の『タイポグラフィーの原則』でもあるのだ。
 本書に収録されている習作は、著者がさまざまな活字を駆使しながら思いを込めてつくった連作集をはじめ、カレンダー、小品、小冊子類と幅広い分野にわたり、それぞれの作品解説と使用活字書体の紹介も付け加えられている。


後半期の連作のなかには、われわれもよく知っているグーテンベルクによる「カトリコン」(1460年)やカクストンが印刷した「免罪符」(1476年)などが、題材に選ばれていて親しみが湧く。「カトリコン」はラテン語の文法書・辞典だが、英訳された奥付の文章をAmerican Uncialという書体で組版し、力強く活版印刷してみせた……。



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