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フジフィルム、コニカ、アグファ  フィルム3社のフィルム一眼レフ・ビジネス展開

2016-07-20 16:08:13 | 印刷人のフイルム・フイルムカメラ史探訪
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-22
印刷コンサルタント 尾崎 章


フィルムカメラが全盛期を迎える1950年から1985年にかけてコダック、アグファ、富士フィルム、コニカの写真フィルム4社は、写真フィルム市場拡大もターゲットとしたカメラビジネスを積極に展開、コダックを除く3社はフォーカルプレーンシャッター一眼レフ市場に自社ブランド製品の投入を行っている。
しかしながら、各種交換レンズはもとより、種々のアクセサリーを揃えたシステム構築が要求される一眼レフ市場はカメラ各社との競合が激しく製品群維持の採算性問題も加わりフィルム各社の一眼レフ・ビジネスは低迷を余儀なくされた。この問題に終止符を打った画期的新製品が1985年に発売されたオートフォーカス一眼レフ「ミノルタα7000」で、競合各社に与えた影響は「αショック」と称されて今日まで語り継がれている。


 
「αショック」で業界に激震を与えた「ミノルタα7000」



カメラ各社の一眼レフは迅速なオートフォーカス対応を余儀なくされたが、市場シェアの低いフィルム各社の一眼レフはオートフォーカス対応を見送り、前後して当該市場からの撤退を行っている。



コニカの一眼レフ最終製品は、「プラスチック最中構造」の安価製品

1985年4月にコニカ㈱(当時)はフィルム一眼レフ最終製品となる「TC-X」を発売した。機械式シャッター(1/8~1/1000秒)前後2枚のプラスチック成型板を張り合わせた「最中(もなか)構造ボディ」の普及型カメラで、AF・オートフォーカス一眼レフ市場参入予定無を意思表示する製品であった。



「コニカ最終製品「TCX」

 

カメラ本体価格30.000円の「TC-X」は、1989年7月に最終製品を出荷、1960年の「コニカF」以来30年に及ぶフィルム一眼レフ・ビジネスに幕を下ろしている。
「コニカF」は、プリズムファインター交換式、セレン露出計内臓、1/2000秒の最速シャッター搭載 等々、当時の一眼レフ・標準スペックを大きく凌駕する性能で注目を集め、世界初・自動露出制御一眼レフ「コニカオートレックス」(1963年)、世界初のフィルムワインダー搭載一眼レフ「コニカFS-1」(1978年)「コニカFT-1」(1983年)等々、市場をリードする製品を発売した経緯がある。しかしながら、ニコン、キャノン、旭光学ミノルタカメラのカメラ4社との競合は厳しく好調なコンパクトカメラへの軸足シフトを余儀なくされている。



ワインダー搭載・コニカ「FT-1」



コニカの最終製品「TC-X」は、マニアルフォーカス、手動フィルム巻き上げ、機械式シャッター等々 時代を逆戻りしたスペックの製品で、新規機能としてコニカ一眼レフ初の「フィルムDXコード」に対応した製品で有る事が特記される状況であった。
コニカ「TC-X」は、TTL露出計以外に電池を使用しない為に電池供給不安問題のある後進国向けの輸出用としての需要が有った事が記されている。


フジフィルムの国内向けフィルム一眼レフ・最終製品は1980年発売の「フジカAX-3」

1970年7月に富士写真フィルム㈱(当時)は、TTL測光のコンパクト一眼レフ「フジカST701」を発売してフィルム一眼レフ市場参入を開始している。
「1970年発売」「一眼レフ1号機」から「ST701」とネーミングされた同機は、カメラ愛好家をターゲットに商品化され、カメラ本体のダウンサイズ化により当時「世界最小・35mmフィルム一眼レフ」であった。



「フジカST701」



「ST701」のカメラ横幅は133mmで1972年にオリンパス光学が発売した小型一眼レフ「オリンパスOM-1」の横幅136mmを下回っていた。「ST701」はダウンサイズ志向が見られない当時の一眼レフ市場に大きなインパクトを与える事に成功している。
また「フジカST701」は、低照度感度・対応力が低いcds(硫化カドミウム)に替えてシリコン・フォトダイオードをTTL露出計受光素子に業界初採用する等、スペック面でも注目を集めている。
富士写真フィルムは、「ST701」以降、「レンズマウントの変更」「絞り優先AE対応」「絞り/シャッター速度・両優先AE対応」等、改良製品の市場投入を実施したが、カメラ専業各社による市場シェア拡大に劣勢を余儀なくされている。
同社は、1980年3月に国内向けの最終製品「フジカAX-3」を発売、輸出仕様の「フジカSTX-2」は1985年11月まで販売を行っているが、オートフォーカス一眼レフ・ミノルタα7000による「αショック」に前後してフィルム一眼レフ・ビジネスの幕を閉じている。




フジフイルム最終製品「FUJI STX-2]



フォトキナ展に突然登場したアグファのフィルム一眼レフ


1980年秋に開催された世界最大の写真機材展「フォトキナ」(開催:ドイツ・ケルン市)にアグファが予告無で「アグファ初の近代型35mmフィルム一眼レフ」を出展して来場者及び業界関係者を驚かせた。
アグファは、1960年代に当時ヨーロッパで流行していたレンズシャッター一眼レフ製品を数機種発売しているがフォーカルプレーンシャッター搭載の一眼レフ市場には未参入で有った事より「予告無の突然発表」のインパクトは大であった。
アグファ製一眼レフの商品名は、「セレクトロニック・SELECTRONIC」で下記3機種のバリエーションが有った。

①SERECTRONIC 1  TTLマニアル測光
②SERECTRONIC 2  絞り優先AE専用 
③SERECTRONIC 3  マニアル・絞り優先AE兼用


    
オレンジシャッターが印象的なアグファ「SERECTRONIC 1」 



3機種はいずれも㈱チノンによるOEM製品であったが、アグファのヒットカメラである1977年発売の「オプチマ1035」と同様にアグファのトレンドになっていた「オレンジカラーのセンサーシャッター」と「艶消しブラックボディ」を採用、1980年代の国産一眼レフとは異なる魅力的な「ヨーロピアン・デザインカメラ」に仕上がっていた。
しかしながら、後続機種が無く前述の「ミノルタα7000」を契機とするオートフォーカス一眼レフ時代の到来前に市場から姿を消し「最初で最後のアグファ一眼レフ製品」となっている。
筆者は、海外製カメラを得意とする銀座の中古カメラ店でTTLマニアル測光仕様の「SERECTRONIC 1」を偶然見つけてその場で購入、製造元㈱チノン製のパンケーキレンズ・AUTO CHINON45mm f2.8を付けて楽しんでいる。






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