goo blog サービス終了のお知らせ 

印刷図書館倶楽部ひろば

“印刷”に対する深い見識と愛着をお持ちの方々による広場です。語らいの輪に、ぜひご参加くださいませ。

図書 『妝匣(そうこう)の本質』のご紹介

2012-12-12 16:27:37 | 蔵書より

『妝匣(そうこう)の本質』 ―ひたむきに生きる、刷匠たちの念い―



聴き書き  井上英子
発行    笹氣出版/2012年5月31日
体裁    A5判 311頁

≪内 容≫
 本書は、東北大震災が発生した年に創立90周年を迎えた、地元・仙台市の印刷会社、笹氣出版印刷㈱が編纂した記念誌。会社の歴史を辿るべく、以前から収集してきた資料や聞き取り調査の内容を、物語感覚の社史として1冊に綴ったものである。地域に根差した印刷事業を営んでいる同社が「東北の職人の技が刻んだ念い(思い)に光を当て、後世に残す」ために刊行している『文化伝承叢書』の特別編としてまとめられた。

 本書によれば、「ありがとう文化創造企業」をめざしてきた同社の歩みは「いつも新しい活字で、美しい文字で、本を届けたい」との一心で、愚直なまでに一途に信念を貫き通した刷匠(すりたくみ)たちの歴史そのものだったという。そんな同社の姿が一読で理解できる書物となっている。

 タイトルの「妝匣」(そうこう)とは「化粧箱」の意味。人間は皆、裸で生まれるのに、長じて人目を気にしながら心身に何かを装うとする。しかし、問われるのは“飾り気のない生き様”だ。本書はそんな観点から、刷匠(活版印刷工)たちが人生をかけて積み重ねてきた「妝匣」の本道を見極めようとしたのである。

 発行人でもある同社の笹氣幸緒社長は、本書のなかで「笹氣出版印刷のコア(核)は本の印刷。言葉は心であり、真理は不変。人の幸せは人と人とのつながりにあることを、『本の力』で伝え続けたい」と語りかけている。美しい文字で(印刷した)紙の肌触りを感じてもらいながら、先人の心を伝えることにこだわってきた“活字命”の書物であるといってよい。

 巻頭には、社内に開設している『笹っぱ活字館』の紹介も兼ねた「活字と笹っぱのはなし」と題する口絵ページが挿入されていて、印刷人として大変懐かしい。