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印刷図書館倶楽部ひろば

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図書『学術出版の技術変遷論考』のご紹介

2012-12-10 15:52:08 | 蔵書より

タイトル 『学術出版の技術変遷論考』-活版からDTPまで

著者 中西秀彦
発行 印刷学会出版部/2011年12月28日
体裁 21×16㎝ 450頁



≪内 容≫

 グーテンベルクの『42行聖書』を持ち出すまでもなく、印刷術が果たしてきた情報の伝搬拡散の力は、社会そのものを変えてしまったほど大きかった。とくに、人間が得てきた知見を記録し積み重ねていく必要がある学術の分野で、その重要性を再認識できるだろう。印刷術がなければ、近世以降の学術の爆発的発展はなかったに違いない。

 学術出版の印刷術は、グーテンベルク以来ずっと活版組版が主流であったが、1980年代に発達したコンピュータ技術によって俄かに様相を一変させ、今ではパソコンやDTPが活字に取って代わっている。しかし、文字組版に適していない初期のコンピュータシステムを使いこなさなければならなかった印刷関係者の努力は、半端なものではなかったのである。その事実は、歴史上あまり評価されていない。

 本書は、80年代から90年代にかけて体験した学術印刷の電子化の過程と、そこにおける実際の様相をつぶさに記録、考察した、文字通りの“学術”書である。たんに技術の歴史を解説するに止めず、技術変化とそれによって生じた会社組織の変容、さらに学術出版史上の意義について、より深く掘り下げて考察した労作といえる。

 本書で触れられているのは、学術印刷に関する変遷の概要とその特殊性、過去からの印刷術の発展と活版の電子化、電子組版の勃興と発展、DTPの登場、総括と未来への展望についてである。実際に印刷会社の経営者としての立場から、現場で起こった具体的な事例を余すことなく織り込んだ“生きた証言”ともなっている。

活版印刷のコンピュータ化に始まりDTPに至る印刷電子化の、もっとも深い技術史や文化史の流れを見出して、印刷業と学術出版の将来のあり方を問うている。それは、紙媒体を超えた情報の電子的流通、コンテンツ提供のための構造化組版にあるという。