満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

映画 わたしを離さないで

2012-10-25 | 映画・ドラマ紹介
カズオ・イシグロ 日本生まれのイギリス人作家の作品。
んっ? っと思って調べてみると、5歳で渡英し、その後イギリスに帰化したそうだ。
その彼が書いた小説「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」を元に映画化した。

監督はマーク・ロマネク監督 製作は2010年。

出演は
17歳の肖像の「キャリー・マリガン」(キャシー役)
ソーシャル・ネットワークの「アンドリュー・ガーフィルド」
パイレーツ・オブ・カリビアンの「キーラ・ナイトレイ」

※注)軽いネタバレあり

1952年。なんとも凄い革新的な技術の進歩で、人類は不治の病を克服した。
ゆえに、この世界の人の平均寿命は100歳を超えていた。
映画を見ている者は、それは「どうしてだろう?」っと疑問を持ちつつも
キャリー・マリガンが演じるキャシーという介護人が思いかえす回想録へといざなわれてゆく

そこはイギリス風寄宿学校の規律厳しい世界。
大勢の子どもたちが勉強に勤しんでいる。
キャシー、ルース、トミー、三人の子供の淡い三角関係。とても微笑ましいシーンが続く…
が…でも、どこか、なにかが狂っている。

寄宿学校「ヘールシャム」

先生の事を保護官と呼ぶ子供達。

子供は背の低い柵の外へは一歩も出られない。乗り越えれば外へ出られるのに本気で怖いと言う。
寄宿学校の外へ出ると、死んでしまうと本気で信じている。

外の世界の真似ごとの授業がある。何時か外へ出る時のための練習をしていると言う。

親からの手紙、プレゼントは一切届かない。
そのかわり、使い古された様々な品が届き、それらを宝物のように子供たちは受け取る。

彼らは孤児か?



この命は、誰かのために。
この心は、わたしのために。


このキャッチフレーズが全てを物語っておった。

作者のカズオ・イシグロがインタビューで  

「状況を受け入れる、というのが重要なテーマ」
「避けがたい過酷な境遇を受け入れながら、人生に意味を見いだし、ベストを尽くそうとする。
人生は短い。その中で自分にできることは何か?読者一人一人に考えてほしかった」っと語っておった。

知り合いに、夫のある身で若い男性との不倫に走ってしまった女性がいる。
結局、若い男性にもふられ、夫とも離婚する羽目になってしまい
連日のように「死ぬ!死んでやる!」っと若い男性にメールを送り続けておるそうな。

原因を作ったのは、彼女自信の行動が生んだ結果。
他人ではなく、自信が招いた結果なのだ。
その事実を受け入れがたく、他人のせいにしたい時も…確かにある。
でも、それでは前には進めない。進まなければ解決出来ない。
乗り越えなければ見えない世界もあるのだ。

はたして、本当に人生を終わらせる事で全てが終わり、解決するのだろうか?


最近「イジメ」問題がクローズアップされている。
人は自分が快適に過ごすため、自分と少し違った人を知らずに嫌う傾向がある。
これは本能だと思う。誰だってそんな思いをした事はあるだろう。
逆に自分と少し違った人を好きになる場合もある。
自分に無いDNAを受け入れたいと思うのも本能なのだ。

どんな時に嫌われるか、好きになってもらえるかなんぞは解らない。
多分人類創世記から、そういう出来ごとは繰り返されて来ていた。
殺し合う状況にまで発展した事だってあったと思う。
人は2人集まれば、自分にとって相手が好きか嫌いかに自然と分類してしまう。
それは決して悪いことだと私は思わない。

が、だからと言って、排除しようとまでするのは行き過ぎだ。

邪魔であれば、死ねばいい。
思い通りにならないのなら、死んでやる。
追い詰められれば、死ぬしかない。

はたして、本当に死ねば全てが解決するのだろうか?

この映画の主人公達は、誰かを救うために生まれた。
それが彼らの使命であり、宿命でもある。
ただ、こんなに簡単に彼らが自身の運命を受け入れたのには、少し納得がいかない。
そう育てられたとしても、人には「生きたい」という本能があるからだ。

作者が言っている「状況を受け入れる」というテーマ。

先に述べた若い男性と不倫に走った女性には当てはまる。
状況を受け入れて「死」という言葉で彼を翻弄する事を辞め
新たな一歩を踏み出すためには、状況を受け入れる必要がある。

また、目の前に大っ嫌いな人が居て、その人物を排除したいっと思っている場合
やはり状況を受け入れ自分なりに相手と距離を取る必要があるだろう。
嫌いなくせに、その人物の事で終始頭が一杯と言う状況が
いかにアホくさいかということに気づくべきだと思う。

だが、イジメられて暴力による排除行為を受けている人は
その状況を受け入れてはいけない。っと思う。
戦えなのなら、逃げてもいいと思う。誰も頼る人が居ないのなら、逃げるしかない。

この映画の主人公達は、小さな希望を抱くが打ち砕かれる。
そうして自分の状況を受け入れていく。
あまりにも悲しい。
自分の中に埋め込まれたチップが逃げる事を許さないのを知っているからだろうか?

この映画の主人公たちと比べたら、逃げられる人はまだ幸せだと感じてしまう。


暗~い映画であった(アハハハハハ)
だもんで、心にズシンとくるし、考えると夜も眠れなくなりそうじゃ。
いやはや…こんな暗い映画を作るとは。。。
心が健全で、病気でもなく、元気に生きている人以外には薦められん。
特に病気を持っている人は、見ない方が良いだろう。

っということで、「受け入れる」か「受け入れない」かは…
アナタしだい。

ちなみに、私にも大っ嫌いな人は居る。
私の眼の前から消えて!っと思ったことも数知れず~(ハハハハハ)
また逆にイジメられた事もある。
満天さんが!? っと思うかもしれんが、あることはある。
状況なんてその場、その時でどんどん変わる。
学生の頃は真っ向勝負をし、戦った事もあるが…
会社の場合、相手が権力を持っている時なんぞ太刀打ち出来ない。
だから私も「受け入れたり」「受け入れなかったり」「逃げたり」してきた。

それでも、「幸せ」は何処かに必ずある。
命がある限り…。

そんなこんな、色々な事を考えさせられる映画である。

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
生きてる間に (長友)
2012-10-26 15:23:52
色んなことがありますね。良い事も
嫌なことも・・・。
生きているから味わう楽しさと苦しさ。
それでも生きているからこそと思う
自分を好きになれる時が必ず来ます。
満天さんも色んなことを乗り越えて
ここに居るんだなと思いました。
あの日、自殺未遂で助かった日を私は
忘れてはいけないことだと反省しています。
今は自信を持って幸せと言えます。
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いきる。 (kayobo)
2012-10-27 14:24:32
先日友人に勧められて「サラの鍵」というのを借りてみたんですが、結構暗かった・・・
でも、ふと我に返ってみた時。
こうして生きてる自分と対峙してみる、貴重な瞬間であったと思います。
小さな波風はあっても、大きくずれることなく人生を送ることが出来る自分は、きっと幸せなんでしょう。
あるがまま受け入れることは必要なことでもあるのですね。
返信する
生きる… (ちか)
2012-10-27 17:37:03
何も考えずに、何も悩まずに、誰をも憎まず、全てに満ち足りていたら…幸せの意味も知らずに一生を終えるかもしれない。

まあ、そんな人は居ないだろうが…

たまに…本当にたまに…日常生活で何のトラブルもストレスも無い日が続く事がある。

実に爽快で、楽しい。

しかし、人間小さい悩み事や事件があった方が脳も身体も活性化するのではないかと思ったりもする。

50有余年生きてきて「あれがあったから一皮向けた」「これを乗り越えたから成長した」と言う事は幾つもある。

私の近くでも、男女間のトラブルはある。

他人が見れば「止めた方が良いのに…」とわかるのに、渦中の人間には見えないらしい…

私くらいの年齢の女性に見られる傾向として「鏡の中の真実には目をそむける」がある。

引っ張って持ち上げて塗り固めても隠し切れない女の歴史…笑

それすら愛してくれるのは…やはり長年連れ添ったさえない中年男…なのかも?

ましてや、今から始めて倦怠期に掛かる頃には…もはや引っ張ったって伸びきらないし、塗ったって山は山、谷は谷…笑

…と言う友達が居るだよ。

すでに3回苗字が変っていて、その度に相手の年齢が若くなり、そして彼女のお金は段々と少なくなっているらしい…

でもこういう事ってむやみに立ち入れないし、友達甲斐が無いと言われそうだが立ち入る気にもなれないので…

生きるのと言うのは…そう簡単には行かないのかもしれないけど、自分から難しくしなければ何とかなるものなのかも…
返信する
受け入れる (hirorin)
2012-10-28 21:43:34
受け入れるってなかなか難しい。
頭では理屈では良く分かっていても、何かすっきりしない・もやもやする~
「よーく分かってるんですけどねえ。でもねえ」ってなってしまう。
先日カウンセリングを受けた時私が「でも」を連発してたらしい。
先生に言われて「ああ、そう言えば」って思った。
何で「でも」って言うかは、頭では良く分かっていても感情が納得していないからだって。
確かに!
そうなんだわあ。私も「受け入れがたい案件」を2点くらい持ってます。
とか言いながら日々は流れていくので、それと共存しながら、そんな納得しない感情をもある意味受け入れながらやっていくんでしょう。

受け入れると似てるのかもしれないけど「無常」がある。私はいつも自分に言い聞かせてる。「時、常ならず」って。
物事は変わって当たり前、この状態が永遠に続くと思うほど愚かなことはないらしい。

でも「ああ、あの時」「この時」とかって思ってしまう。
もうそれは既に5年も前のことなのにね。

と色々書きましたが、最近の「受け入れがたい無常な案件」は、仲の良かった新入社員女子が下期より期中異動になったこと。
代替社員は来ず、忙しいのなんのって。おまけに寂しいし。いつも「〇〇さんと楽しかった」ってグチグチグチ。
息子には「会社は楽しいところちゃうで、利益を上げるところやで」って言われるし。負うた子に教えられる・・・
無常でしょうか?
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追伸 (ちか)
2012-10-29 11:58:59
気になったのでこの作品の事、調べてみました。

近未来の話なのでしょうが「ありうるかも…」と思ってしまいました。

アメリカで似たような実話がありました。

もちろん悲劇的な結末にはならなかったのですが、かなり論争を引き起こしたと記憶しています。

科学はどんどん発達し、何十年、何百年後には治療できない病気なんか無くなるかもしれません。

でも、科学の発達と共に人間の心も成長しないといけないのに…多分、追いついていないのが現状だと…

未来の人たちが幸福になるには、今の私たちに掛かっているわけです。

頑張れ、満天!

…って、どうして満天ちゃんなのかは不明…笑

返信する
ご返事どす (長友どんへ)
2012-10-29 13:54:09

長友どん。あの日、あの時、失敗してくれて
ありがとう。今、心からそう思うよん。

でなきゃ、一緒に遊んだり、こうしてブログでお話したり出来なかったと思うもん(笑)
そして、今、幸せ!っと心から言ってくれる長友どんが好きだ(笑)

色々と難しい事が最近、目白押しさ(ハハハハ)
自分自身の事ならどうにでもなるんだけど、他人の問題が絡んでいるとね~
この年齢になると、色々と考える事が面倒になっての~
どうせ何時か誰しも死ぬんだし、何も今死ぬ事を考えなくてもエエのにとか思ってしまう。
こういう考えも年齢のなせる技かもね。だって来年無事に生きているかも解らんし…と思ってしまうから。
それでも精いっぱい今を生きる。
それしか無いんじゃないかと思っておるさ(笑)
老い先を考えて、少しワガママになりつつあるオババな満天どす~(笑)
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Unknown (サミュエル)
2012-10-29 18:16:21
映画も本も私の心の娯楽なのであまり重いものヒューマンなものは見ないのですが、たまにこういう気になるものがありますね。これ、原作がたいへん良いらしいのですがやはり重い、重いけど良い。フクザツ。本だったら読了無理でも映像ならガマン(?)できるかなんて妙なこと考えてしまいます(^^;) 歳によって考え方って変わってきますね。すべてが完璧で満足な生活なんて無いわ。いろいろひっくるめていまが一番幸せな(かなり)わがままなサミュエルどす。
返信する
怖そう~ (ごはん)
2012-10-30 08:57:08
お久~。
満天ちゃん コレめちゃ怖そうだね。

「原因を作ったのは、彼女自信の行動が生んだ結果」

そうだね。
全ては自分自身の行動で良くも悪くもなるよね。悪いことが起こるとどうしても、人のせいにしてしまうけど・・・すべて本人の行動で人生歩いてるんだもんね。

話変わるけど、ブログお引越ししました。
http://surf0730.blog.fc2.com/
良かったらまた遊びに来てね。
返信する
ご返事どす~ (kayoboどんへ)
2012-11-01 14:38:34

「サラの鍵」…思わずネタバレサイトを見に行ってしまいました~(笑)
ほんと、怖そうな映画だの。
ネタバレサイトっと言っても、全てが解った訳じゃないけれど
でも、でも、なんとな~く想像が付いて怖い(笑)

私もこの映画を見て、ちょっとだけ自分を見つける時間を持ちました。
働いていると日々が飛ぶように流れて行き、気が付けば年末年始ってな状況だからか
私にとっては貴重な時間だったと思いますだ。
kayoboどんは自分は幸せだと感じた?
私は自分のこの環境を受け入れて幸せだと感じた方が良いに決まっているのだけれど
それでも心の何処かに満たされていない部分を発見したよん。
それは何だろう?っと考えながら日々は流れて行ってます。
最後の最後に「ああ、幸せな人生だった。思い残すことは何も無し!」で死にたいと思っているせいかな(笑)
意外にも自分は人生に貪欲なんだなっと気が付いた一時でした~。
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ご返事どす~ (ちかどんへ)
2012-11-01 14:53:17

実はさ…私の場合、この会社に入社していらい
「日常生活で何のトラブルもストレスも無い日」ってのが無いだよ(ハハハハハ)
必ずっと言って良いほど、何かある(笑)
大勢の人が勤めている会社だからね。それもさもありなんだろうと思うんだけど
時々、こういうストレスが自分の命を縮めているような感じを強く受けての~
ストレスを感じないのは唯一、土曜日と長期の休みの前半くらいかな?
日曜や長期の休みの後半になると、会社がドドーンと頭上にのしかかって来ての
いやはや、ここまで会社人間になる気はサラサラなかったんだども(不思議なもんだの~ハハハハ)

そ。マジでちかちゃんの言う、自分から生きることを難しくしているのかもしれん。
最近「和風総本家」という番組を見て、自分はサラリーマンより職人の方が向いていたなっと思うだ。
黙々と一人でモノに向き合っている方がエエな~っと(笑)
今から会社辞めて職人になったら…90歳くらいで人間国宝とかになれるじゃろうかね?
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