満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

百億の昼と千億の夜

2009-05-12 | 漫画紹介


「光瀬 龍」が1965年に「SFマガジン」で連載した作品を
1977年に「萩尾望都」が「週間少年チャンピオン」に連載した漫画である

同じく「光瀬龍氏」の本を漫画化したものに
アンドロメダ・ストーリーズ(作画:竹宮恵子)
墓碑銘2007年 (作画:水樹和佳子)などがある
アンドロメダ・ストーリーズについては、このブログでもレビューしているので
コチラをどうぞ~

さて、この「百億の昼と千億の夜」。タイトル的には惹かれやすいが…
百億と千億では千億の方が多いから…夜の方が長いのだろうか?(笑)
多分…作者は永遠とも言える空間と時間を、タイトルで現そうとしたと思うが…

この話の根本に東洋仏教的な考えが多く網羅されているので一応書くが
仏教の中での永遠とも言える空間を表す言葉に「三千大千世界」という言葉がある
須弥山を中心に周囲四大洲と上は遥か梵世、下は可なり下の風輪まで
この世界を1と数え、それが1,000個集まって小・中・大世界と3乗したものを
「三千大千世界」という。(1世界が10億集まった空間)
この周囲・上下の空間を一人の仏が教化出来るという(笑)
つまり、宇宙まるごと一個を、一人の仏が救えるんだよっと言っている

つぎに、この「百億の昼と千億の夜」に一環して登場する人物が3人いる
阿修羅王・シッタータ(釈迦)・オリオナエ(プラトン)である
馴染み深い名前の3人であるが…
釈迦とプラトンはどちらも人間の本質を探究していて
それを教材に学生達に教えようとしていたプラトンと
それを宗教の経典とし、考え方を人々に広めた釈迦と
この二人の行動と、もう一人の主人公である阿修羅王とでは行いに隔たりがある

阿修羅王は…元は天上世界に住み、「正義」を司っていた
愛娘をいずれ天上世界を治めている「帝釈天」へ妻として贈ろうと考えていた矢先
女好きの「帝釈天」に娘を強姦されてしまう
怒った阿修羅王は、あらん限りの軍勢を集めエンドレスとも言える戦いを
帝釈天に挑み続けるのである
が、親の心子知らず。強姦されて嘆いていた娘は、帝釈天とねんごろとなり
立場を失った阿修羅王は天上世界から追い出され「鬼神」となってしまう
その後、現れた仏の慈悲により救われ、仏教加護に尽力を尽くすのである
っというのが通説として残っている
一応仏典では阿修羅王は「男」であるが、光瀬龍氏の書いた本も
萩尾望都氏の描いた漫画も、阿修羅王は「女」として描かれている

さて、前フリが長々と続いたが、簡単なストーリを書いておこう
多少のネタバレがある(多少過ぎて感じないかもしれん…笑)

覇権を誇りつつも突然消えたアトランティスに興味があり、
著作も手がけたプラトンは、新たなアトランティスの古文書を探し旅へと出かけた
エルカシアという町で、今尚動いているアトランティスの高度な技術に触れ
興味をつのらせたプラトンは、エルカシアの宗主と会う機会を得る
光るパネルの向こうから声だけ発する宗主に、アトランティス滅亡の謎を問うが
自身の目で見つけることになるであろうと言われ、気を失う

目が覚めるとプラトンは、なんとアトランティスの司政官となっており
神である巨人「ポセイドン」より、アトランティス移動を強要され苦悩していた
「ポセイドン神」は、惑星開発委員会なるものがあり、そこからの要請だと言う
これだけ栄えている王国を捨てよという神の意思が解らず
困惑する民衆の暴動により、アトランティスの移動は失敗。
一夜にして王国は消える。
ここから、プラトンの時空を超えた長い・長い旅が始まる

また釈迦は、釈迦国皇太子の座を捨て出家し梵天王と出会う
そこで阿修羅王と帝釈天の4億年もの長きに渡る戦いを聞き
「死」から逃れる術を持たない人の世の苦しみを
遥かに超えたところに存在しているハズの神々が、
何故に長きに渡り戦いをしているのか?と疑問を感じ、阿修羅王と会うことにする

三葉虫が這いずり回っていたアノ頃より、我々の住むこの時間と空間の世界が
着々と滅亡へと進むのを、ヒシヒシと肌で感じる

これが…地球だけ、人間だけの話ではなかったとしたら?
一人の仏が救えると言われている広大な三千大千世界。
もし、その一人の仏が救うのを諦め、匙を投げ
この世界を終わらせようとしていたら…

帝釈天は早々に諦め、あらがうのを辞めた
阿修羅は帝釈天の諦めに怒りを感じ、戦いを挑んでいる
イエスは巧く取り入り、次世界の三千大千世界へと逃亡しようと試みる
プラトンと釈迦は、阿修羅王と共に見えない敵に戦いを挑んで行くが…
蟻が地球を動かしている動力に、戦いを挑むようで
相手が膨大過ぎて姿すら見えない。

ただし、唯一の希望がある。プラトン・釈迦・阿修羅王に長き命を与え
進む滅亡に楔を打つ使命を与えた存在が…。

ってな壮大かつ、想像すら出来ない世界を描いた作品である(笑)

先にも述べたが「百億の昼と千億の夜」の世界感は
仏教でいう「三千大千世界」にあたると思う
つまり時間も空間も上(天上界)下(地表の遥か下)まで一つの世界であり
一人の人間が把握出来ない広さではあるが
たった一人の「仏(何者か)」が救うことが出来る広さでもある
救うという行為を諦めたとしたら、たった一人の「仏(何者か)」の意志で
滅亡させることも出来るであろうっと、作者は考えたのだと思う

それを考えると…そら恐ろしい世界を描いたとも言える

ただし、そうとばかりは言えないという事も一応記述しておく

仏教世界で解かれている「三千大千世界」ではあるが
経典の中に、その広大な世界は「外」にあるとばかりは言えないっと書かれている
人の「内」に、世界があり、人の気持ちでどうとでもなる世界だとも言う
どんな生命もその心の内に「三千大千世界」を持ち
それを滅亡させるも、救済するも、その人の心持ち一つで決まるのである

人の心の中に、広大な宇宙が広がり
それを生かすも殺すも救うも破滅させるのも、たった一人の人の心が決める
っと説いているのだ
「仏を外に求めるな、自身の心の内にこそ仏は居る」である

また、そう考えると…我等の住んでいるこの三千大千世界も
誰か人の心の中にあるのかもしれん。
どこか違う世界のしがない中年サラリーマンの心の中に住んでいたとしたら…
叫んでも聞こえんかもしれんが、大声で「ガンバレ~」っとエールを贈りたい
(アハハハハハハハ)

また、「死」はあらがえないものではあるが…生命は永遠に続くとも言われておる
「死」は長き生命に耐えられない器の死とも言える
たとえ、誰かとこの世で死を堺に別れたとしても、忘れないで欲しい
生命は永遠で「縁」は生命と共に続く
この世で出会った人と、また違った形で会う可能性がある
別れは辛く悲しいが、永久の別れではないことを心に刻み、
悲しみに負けないで欲しい

そう信じるということが大事だと思う。なにせ誰も生きて見てない世界だから
解らんがの~(笑)

ただ、この漫画でも釈迦とプラトンが最後に、未来を信じて阿修羅に全てを託す
何かや、誰かを信じることは、人の心にとって大切な栄養素かもしれん
人の心のよりどころである「永遠の生命論」を見事に打ち砕いた本書の内容も
最後の最後に「希望」というよりどころを作り、完結している
それが無ければ、空虚さだけが残る話であった
というか…ココにしか逃げ込めない所へ落ち着いたと言えようか(笑)

今、病気の人も、病気の家族を抱えている人も…
生命が永遠であることと、人の心の信念には三千大千世界をも動かす力がある事を
信じて欲しい。
帝釈天のように諦め享受するより、私は何か出来ると信じて戦う阿修羅が好きだ

な、色々と考えることの出来る大変、面白い漫画だろう(笑)

始めて読んだのは、10代後半。阿修羅の美しさに魅了された
20代半ばで一度読みかえし、仏教理念と照らし自説を得る
30代でも読んでいる。生命の危うさを感じ眩暈がした(笑)
今回、トミーさんよりお借りし、また読む機会を得た
40代も終わりに読むと、初めて落ち着いて受け入れながら読めた(ハハハハ)

ありがたいことに、簡単に手に入る漫画なので
一度読んでみることを、おすすめする(頭が痛くなったらゴメン…笑)

好きな漫画なんで…可なりシツコク長く書いてしもうた
長いのでパスしてくれてもOKじゃ~って…こういう事は先に書かねば意味ないか
(アハハハハハハハ)

ブログランキング・にほんブログ村へ  
ポチっとで、作者のヤル気でるかもです(笑)


最新の画像もっと見る

18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
このマンガ大好き~ (まる)
2009-05-12 14:10:35
私はマンガしか読んだことがありませんが、初めて読んだのは高校生の時だったかなぁ。。。
このマンガ、好きで好き好きで何回ともなく読みました。
が満天さんとは感想がカナリちがいます~(^^)
私はオトコノコ的な発想で『この宇宙の存在意義』に思いをはせたし、宇宙の外についてこれまで考えた事もながったので、かなりのショーゲキでした。
この世界の百億・千億の時間も外の世界では、ほんのわずかな時間。
そして望まれた存在ではないこの世界。。。
満天さんはラストに『希望』を感じましたか、
私は『絶望』しました。。。
あらがう事は不可能のないのではないか?なんてね。
いつもこのマンガを読んだ後、どよ~んとしてしまいます。。。(^^;)
とは言え、もう10年以上も読んでいないので、今読むと感想が変わるかなぁ。。。
読んでみよ♪

返信する
ご返事どす~ (丸本どんへ)
2009-05-12 15:29:05

ビックリ~~~(笑)
丸本どんが…コレを読んでおって
しかも…好き…だって~????(笑)
しかも、丸本どんは帝釈天だったんだの~(ハハハハ)

あまりにも膨大無限な話なもんで…
フっと自分を振り返ると、小さく無力で何をどうしたって勝てっこない
っと思ってしまう漫画だと、私も思うだ~
ソコに阿修羅を登場させ、釈迦とプラトンが無駄かもしれない戦いを続ける
しかも…阿修羅を女にしてな~
阿修羅がこの本や漫画で「女である」って事にも意味があるのでは?っと感じ
この事だけで本を書いた人も居るのだよ

私も阿修羅が女である事、女だからこそ抗う力を持っている事を感じるだ
男はハッキリとした大義名分が無ければ動かないが…女は直感だけでも戦える(笑)
しかも、シツコクな(アハハハハハ)

私の言っている三千大千世界ってのは仏教用語だが、
言いかえれば宇宙の事でもあるのだ~
その外にも宇宙(三千大千世界)は、ある。
ラストで「空虚」さと「絶望」を感じた人も多いと思い、私の勝手な解釈も書いただ

前回30代までは、私も読んでいて辛いと思ったんだが…今回読んでみて驚いた
だんだん、歳を重ねるごとに受け入れ態勢が整って来たみたい(笑)
丸本どんも、もう一度チャレンジしてみないかね?そして、感想を聞かせて欲しいだ
返信する
Unknown (作太郎)
2009-05-12 19:00:04
三千大千世界
満天どんの読書の幅は広いでんな。
しかも
>生命が永遠であることと、人の心の信念には三千大千世界をも動かす力がある事を
信じて欲しい。
面白いだけでなくいいことをいっている(笑)

先日、50代の女性、作家の方から
「作太郎さんは、作家向きですね。なんといってもあなたはマニアックだわ」
というありがたいような、ありがたくないようなお言葉を頂きました。
類は友を呼ぶ・・
作家向きという言葉でいえば、満天さんの方がずっと向いていると思いました(*^_^*)
返信する
Unknown (独裸絵悶)
2009-05-13 06:43:32
「光瀬 龍」
「萩尾望都」

懐かしい名前を
光瀬龍先生 亡くなって10年
竹宮恵子&萩尾望都。。この二人が801の元凶でんな。
竹宮恵子先生は今は
京都精華大学マンガ学部の学部長
返信する
ご返事どす~ (作太郎どんへ)
2009-05-13 09:19:00

宗教という形になると…あまり好きではないのだが…
日本人は形式だけは神事や仏事を重んじて
根本的な精神性は無視する(笑)
だから、実際に辛いことや苦しいことにぶつかると…ヘコむ
神事や仏事の七面倒な作法はこなすのに、信じてはいない
確かにハッキリとした実証はされていない事柄なので信ずるのは難しいが
ただ、信じる行為がその人を楽にする場合がある。
「また、いつか会える」そう思うだけで気持ちが楽になる
「必ず、叶う」そう思ったら力が湧く
そんな感覚的な精神論も人間にとっては大事だと思うんだ~(笑)

長い文章書いたから、読むの疲れたっしょ(ハハハハ)
どうしても、伝えたいと思って書いてしまった
読んでくれてありがとう
返信する
ご返事どす~ (独裸絵悶どんへ)
2009-05-13 09:26:06

>この二人が801の元凶でんな
ブワハハハハハハハハ

古い言葉で…最初ナンだか解らんかっただ
最近は「BL」って言うだよ
「ボーイズラブ」の略だそうな

確かに男性は男性同士の漫画は嫌いだろうな~
私も女性同士の話には嫌悪感するもん(笑)
私が最初に見たのは、確かに竹宮恵子の「風と木の詩」だった。
ショック過ぎてア然としたけど嫌いじゃない(ハハハハハ)
この程度なら…可愛いもんだ
今は…もっと過激でついて行けないけどの~

あれ?光瀬龍先生の本。好きですか~?
意外な接点にビックリっす(笑)
返信する
よ~くわかった気がする。 (トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人))
2009-05-13 12:24:57
 実は・・・持っていて、何度か読み返した本だけど、こんなに深い話だとは思わず読んでた。はっきり言えばなにを言ってるんだか、よく分からなかった。西洋・東洋の宗教・哲学上の人物 (神?) を登場させてSFやってる~、なんぞしか思わなかった。

 満天さんの解説でよ~くと分かった。私は何を読んでいたのか…萩尾 望都先生の華麗な筆をなぞっていただけか…。

 帰ってきたらもう一度読み直します。萩尾氏が原作をぜひとも描きたかっただろう深い意味を今度こそ少しでも分からなくちゃ。
返信する
ご返事どす~ (トミーどんへ)
2009-05-13 14:42:13

この話からすれば…小さい地球の話で悪いのだが…
地球上発見されている文明に必ずと言ってよいほど共通している話がある
それは「滅びと復活」の説
どんな命も「死」から逃れるすべを持たないので「滅び」の感覚が生まれ
また、どんな生命も命の連鎖が繰り返されるのをみて「復活」の感覚が生まれた
もし「死」が「シ」というプロジェクトなら「復活」は永遠に来ない

だけど阿修羅は思う。
「なら、なぜ我等は生まれる?死ぬために生まれるのは変だ!」っと…
この感覚的なモノ言いと、生まれ来る者への慈愛ある母性的な感情は
本来男性である阿修羅を女性にしたことで見事に表現されていると思うだ

な~んて、全て私の勝手な解釈から来ています
この本を読み、これを描いた時の萩尾氏の年齢は28歳くらい
この本が萩尾氏に、どれだけ多くの事を考えさせたのかと思うと
コレ以降描いた様々な漫画が頭に浮かびますだ
あと、箱に半分あるだ~待っててネ(笑)

返信する
SF好きなんで(萩尾望都)「百億の昼と千億の夜」は好きです。 (tooru_itou)
2009-05-13 21:07:23
>アンドロメダ・ストーリーズについては、このブログでもレビューしているので
コチラをどうぞ~
~コチラのURLが・・違ってるよ。
(↓)正しくはこれ
http://blog.goo.ne.jp/pote741/e/405c550ee3c8426626aeb51c0ddc08a2

 須弥山を中心に周囲四大洲と上と下の世界観が面白かったの覚えてる、
「三千大千世界」って言うんですか!(満天)さんの記事は為になるデス♪。

 (光瀬龍)の小説は数冊読んで「墓碑銘2007年」だけは面白かったという
記憶だけあります。内容は忘れました(笑)。
(光瀬龍)氏の作品は、大きな題材をいくつか選んで力技で纏めてしまう
印象があります。強引、豪腕の作家さん。
 (萩尾望都)さんの「百億の昼と千億の夜」は阿修羅の魅力が
なんといっても一番♪(^o^)。
>西洋・東洋の宗教・哲学上の人物(神?)を登場させてSFやってる~、
~ハイ、まさしくその通り。(光瀬龍)氏の強引、豪腕なんです(^o^)。
私は阿修羅主人公のSFストーリーと考えていいと思います。
(萩尾望都)作品は、難しく考えずに、感じるのデス~♪。
返信する
ご無沙汰してます (くま)
2009-05-14 10:20:22
ここのところ超絶パートの仕事が忙しくて(朝から夜までの過重労働ッス(^_^;)ずっとパソコンから遠ざかってたんですが、久々に満天さんのところにお邪魔したら、なんと!アッシも大好きな「百億の昼と千億の夜」の素晴らしいレヴューが…!!

アッシもこのマンガ大好きなんですが、満天さんのレヴューを読むと、自分でも感じていて、だけど言葉で表現できなかったことが分かりやすく明確に表現されていたり、また自分では気付けなかった、ホントにそうだな~って感動できる目から鱗な言葉も書かれていて、とても面白く拝見しました。
いつもありがとうデス!!(*^_^*)

アッシもこの本を初めて読んだ思春期の頃は、ただ「死」というものが恐ろしく感じられて、「こんな大きな宇宙だっていつかは消えてなくなってしまうんだ…」って、変化していくことに対して、ただ怖いと感じていましたが、時間が経って何度か読み返すうちに、「自分の外に宇宙があるように、自分の中にも宇宙があって、変化していく(死があるから)からこそ新しいものも生まれる(生もある)のかな」って思えてきて、「こんな不思議で美しいシステムの中に生まれてきて、楽しまなきゃ損だよな~」なんて思えて…何だかハイテンションに感動した覚えがあります。

今朝は満天さんのレヴューを読んで、またあの時の「やたら前向きになってしまう興奮」がやってきたようで(笑)、今日は仕事も休みですし、普段なら怠けてダラダラしてしまいがちなところですが、お家のことや色んなこと、今からバリバリ頑張れそうです(*^_^*)♪
返信する

コメントを投稿