満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

福井晴敏作品

2010-03-09 | 本の紹介
福井晴敏って知っておるかい?
1968年生まれの41歳の作家さんである。41歳か…若いの~~~
(40代を指して若いと感じる自分が怖いがの…ガハハハハハハ)

彼の名前は知らなくても
「亡国のイージス」とか「終戦のローレライ」などの名前は聞いた事があるだろう
これらの作品を書いた作家さんが、彼なのだ

ウィキ情報なんで正確かどうかは解らんのだが、彼は自衛隊出身では無いのな。
リアルな戦争描写が多いもんで、てっきり自衛隊出身かと思っておった(笑)
商科大を中退し、警備員をやっていたそうな。
テーマが重い割りには、ゲーム感覚的な描写は、そういう所から来ておるのかの?

今回、何時もブログで遊んでもらっておる「サミュエルどん」から
福井作品を多数お借りした。嬉しかっただ~ありがとう!

私が最初に手にした福井作品は、彼の2作目となる
「Twelve Y.O.」(トゥエルブ ワイ オー)
 1998年作 講談社(全1巻)

サイバーテロを目論む「トゥエルブ」の標的は、アメリカ国防総省であった
「トゥエルブ」はPCウイルスと謎の兵器「ウルマ」を使いアメリカを脅す
謎の兵器「ウルマ」には、アメリカを黙らせる程の力があるらしい
日本はもとより、全世界の組織が「トゥエルブ」の持つ「ウルマ」に注目する。
いったい「トゥエルブ゛」とは誰なのか? 謎の兵器「ウルマ」とは…?


ん~~。面白いっと思う箇所と、そうでもない所がハッキリ分かれておったの~
だから、読み終わっても消化不良気味かの(笑)

「ウルマ」という謎の武器の正体と「トゥエルブ」の目的が…少々子供っぽい。
大人になりきれない日本の外交をテーマにしておるので、これでも有りかな?
得てして、戦争ってもんは…
大人になりきれない子供っぽい思考が起こすもんかもしれんしの(笑)

第44回江戸川乱歩賞を受賞したそうな・・・
エッ?乱歩賞って探偵小説じゃなかったっけ? 推理作家の登竜門だと思ったが?

確かに最後に大ドンデン返しもあったが、そんなに驚く程でもなかった。想定内だったが…
どちらかと言えば乱歩賞を取ったってな事実のほうが…想定外で驚いた(笑)

「亡国のイージス」
1999年作 講談社(上・下巻)

これは映画にもなったので、内容を知っておる人も多いと思う
ただし、私は映画を見ておらんので、本との違いは解らんがの~

自衛隊のミサイル搭載護衛艦「いそかぜ」を、艦長以下数十名が
新型兵器「GUSOH」を持ち込み占拠。ターゲットは首都「東京」であった
そのバックには「北の脅威」も見え隠れしている
果たして首都「東京」を、平和ボケした日本のトップ達は救えるのだろうか?


これは面白かった(笑)可なり丁寧にそれぞれの人物像を描いており没頭できる。
ただ…やはり過程は楽しめたが、この手の小説は結果が見えてしまうので
ページが進むごとに原因の浅さが、弱いジャブのように効いてくる
よって追い詰められた時の抗い方に「何故そこまで」という気持ちが離れない

艦長も「北の脅威」も、どちらも「私怨」に端を発しているのが「トゥエルブ」に似ている
「私怨」から生まれた戦争に、何故加担する男達が現れるのかが…どうしても理解しがたい
やはり、私が女だからか?
「私怨」が増幅し、国を相手どり罪のない人々を巻き込もうとする行動が
たとえその根本に、どんな「正論」があったとしても、
そんな脅威に大勢の人々をさらす様な人物には、魅力は感じられない
なのに…そんな男に惹かれる男が結構な数…居るのだの。

ただ、そんな気分を吹き飛ばすだけの「浪花節」がアチコチに点在しているので
最後までハラハラして読めた(笑)如月君の事が心配での~(ハハハハハ)
「エエ~っ!?」てな出来事も最後にあったし、
普通は濁すそれぞれのその後も、ちゃんと書いてあったしな

何時も映画やテレビで、一発の銃弾で簡単に死ぬシーンを良く見るが
実際、人はそう簡単には死なないと聞いたことがある。
この本にも、なかなか死なない男が居る(笑)
死んでもイイっと思ったら、簡単に死ぬ。生きる為に戦い、生き残るために力を尽くす
そんな男をカッコイイっと思った。

「終戦のローレライ」
2002年作 講談社(1~4巻)

1945年8月、日本国民にとって忘れられない暑い夏
敗戦を帰したドイツから大型潜水艦が広島県呉市に隠れるように入港する

船籍を「伊507」と変更したこの潜水艦には…ナチス・ドイツの秘密兵器である
「ローレライシステム」が搭載されている
元華族出身の朝倉大佐は、各所より精鋭を集め「伊507」を、独自に出航させた
ただ、集められたメンバーは日本海軍精鋭ではあるが…どこかアウトローな人員であった

「伊507」が広島を出航してほどなく、B29爆撃機より広島に「原子爆弾」が投下される
はたして「ローレライシステム」とは何か?「伊507」に課せられた使命とは何か?
朝倉大佐の思惑とは?


「あとがき」を読むと、この本は映画化を前提に作られたそうな
「ガメラ 大怪獣空中決戦」の特技監督「樋口真嗣氏」が
「第2次世界大戦・美少女・潜水艦」と、3つのキーワードを入れた小説を依頼したそうで
それを踏まえて読むと…「な~るほど」っと思う(笑)

ほぼ土台は「亡国のイージス」と同じで、そこに上記3つのキーワードを当てはめた感じ
だが…正直「亡国のイージス」より、はるかにオモロイ(ハハハハハ)

キーワードの「第2次世界大戦」と「潜水艦」の2点は、小説にするには難しいと思う
「第2次世界大戦」は結果を誰もが知っているし…
「潜水艦」は音だけが頼りのシロモノで、派手に書くには不向きな存在である
どうやら映画監督が低予算で映画作りをしたいがために、こんな設定を提示したらしいが…

また映画にした時に万人ウケするために、この「男の世界」の最たる部分に
美少女を加えてくれろと映画監督はのたまう(アハハハハハ)
とっても難しいお題なのにコレを福井氏は見事にクリアしておる(笑)
御歳41歳という若さが生んだ斬新な作品に仕上がっておる

私はまったく映画を見ていないので、ハッキリした事は言えないのだが
樋口氏に「映画にしたいから、この3点を入れて本を書いて~」とか言われ
「エエよ~」と出来上がったこの作品。
多分…軍配は福井氏の頭上にあがったのではないかの~~
っというのも、これをこのまま映像として見事に仕上げるには、
少ない資金と枠の決まった放映時間を持つ映画では、無理だろうな~っと思うからである

本が出来上がり「ラッキー」っと思って読んだ監督の…
顔面が蒼白になる姿が見えるようで笑える(アハハハハハ)

コノ作品は、単に戦争好きなオタッキーが書いたお話しではない

「戦争を知らない子供達」といえば団塊の世代を指して言う言葉だが
それ以降に日本で生まれた全ての子供達は、全員、戦争を知らないのである

当時の若い前途ある青年が、「死ぬのは怖くない」っと言い切るには
日本という国に残っている父母や弟妹、家族を守りたいという強い気持ちの表れである
だからこそ、意味のない死は嫌なのである。
戦争に勝つとか負けるとか、そんな事は上の人間が机上で考えることであり
実際に敵を目の前にし戦った多くの人達は、家族が幸せな生活を送られればそれでいいのだ

そんな沢山の若者達の想いの上に、今の日本はある。

本書では元華族「朝倉」の思惑に翻弄され、死に行く者の大儀が崩れ去る
日本の魂は崩れ去った、
なら…一度完膚なきまでに消し去って、ユダヤの民のように国を持たず放浪しながら
新たな日本を作り上げたほうが、理想の国家を作れる。そう断言する朝倉の言葉に
若い兵士「折笠」が牙を剥く。

若く濁りのない瞳で前を見据える折笠の中に、日本の未来に希望の光を見つけた艦長は

「これより伊507は一個人の怨念が歪めた歴史を・・・
 日本国の未来を修正にするために行動を起こします」

「ローレライはあなたが望む終戦のためには歌わない」そう言い切って潜水艦を発進させる

確かにまだ40代の作家が書く小説っぽく、宇宙戦艦ヤマトか?エヴァンか?と
思われるような箇所もままあるが…何度か感動し胸が熱くなるシーンもあった

今後、戦争を起さない、参加しない、絶対に核は持たない。
そんな気持ちの土壌は、戦争を知らない我々でも持っている
だが、その先の日本人として我々はこの国をどうしていくべきなのかの部分は不明瞭である

正直、戦後はどさくさに紛れ、なんとな~くココまで発展してきてしまったってのが
大方の感想だろうと思う。
それでもココまで復興してきた事を、誇りに思うべきなのに
戦争でアメリカに負けた傷が深すぎるのか、たえず心の片隅には
「アメリカには敵わない」ってな思いがはびこっておった

そこから脱却し、新しい文化を他の国へ発信しているのは
まったく戦争の話をバー様やジー様に聞いたことのない若者達なのである
たとえソレが…ロリータファッションやらアニメであってもである(笑)

自分を信じて突き進む、そんな力が日本人にはあるのだ
島国だから仲間を信じて一緒に行動する、狭いんだもの…当たり前じゃ
綺麗好きなのは、ジメジメした梅雨で暮らした祖先のDNAぞ
海外旅行でも、二度と来れないかもしれんと思えばカメラだって首からぶら下げる
異国の人はそんな日本人をバカにするけれど、
これぞ、長い歴史で培った日本人の本質なのだ~~(笑)

阪神淡路の震災の時、暴動も起きず、皆一丸となって立ち向かい
各地から大勢の人が馳せ参じた。素敵だよな、日本人って(笑)

この本は若い人に読んで欲しい本だな~。何度か泣きそうになりながら読み終え
オバサンはそう思っただ~(アハハハハハハ)

福井氏の本を一気に沢山読んだが、この「終戦のローレライ」が一番好きだ
それ以前に書き連ねた本の集大成ってな感じがしただ
文庫で4冊は長いが、機会があれば一度読んでみて欲しい
注)1~2巻はシンドさを感じるかもだが…3巻あたりから怒涛の波に飲み込まれるだ~

同じ作家さんの本を沢山貸してくれたサミュエルどんに感謝である~ありがとう


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