ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

滝平二郎の仕事展 ~麗しき幻の風景~

2016-07-29 12:48:07 | 旅・おでかけ

7月は何やらいろいろと課題を抱え、「優先順位はそこじゃないだろ!」と思いつつ
なんとしても行きたい所があった。
7月14日(木)から25日(月)まで柏市で開催されている「滝平二郎(たきだいら・じろう)の仕事展2」である。



滝平二郎は、1921(大正10)年に茨城県で生まれ、霞ケ浦の湖畔で少年時代を過ごした。
自然に恵まれた環境で過ごすなかで、本や雑誌の挿絵に親しみ
高校時代には漫画、卒業後は木版画を独学で制作し、画家を志すがほどなく徴兵され
沖縄で終戦を迎えたという。
戦後、木版画によって再出発を果たし、1950年代からは挿絵や装丁の仕事に積極的に取り組んだ。
児童文学作家・斎藤隆介(1917~1985)との出会いによって生まれた
『八郎』(1967)、『花さき山』(1969)、『モチモチの木』(1971)などは
現在でも多くの子供たちに読まれ、ぴすけもこれらの本に大いに親しんだ。
ただ、本の挿絵の滝平二郎の作品は、子供心にちょっと怖く、異世界の雰囲気を具えていた。
それにひきかえ、朝日新聞日曜版に連載されていた「きりえ」はまさにぴすけの子供時代とともにあって
既にその時はほぼ失われていたであろう日本の風景、ぴすけの実生活にはない光景が
大胆な構図と鮮やかな色彩で描かれていたのだった。
滝平二郎の作品は、ぴすけの子供時代とは、切っても切り離せないものだったのだ。


柏市在住のぽぴさんに滝平二郎展のことを話すと、24日(日)の午後なら時間があるという。
ラッキーなことに、ぽぴさんの夫のセニョール氏がチケットを持っているというので
久しぶりにセニョール氏も御一緒に、3人での観覧となった。
柏駅南口で待ち合わせをし、ぽぴさん夫妻の案内でアーケード街のような所をくねくねと歩くと
パレット柏があるDay Oneタワーにほどなく到着。
3階にあるパレット柏は、まだできて日が浅いらしく、とてもきれいな施設である。

会場は柏市民ギャラリーで、この展覧会は市民ギャラリーの新装開館記念として催されたようだ。
会場に入ると、もうそこは滝平二郎の世界である。
フラッシュを使用しなければ写真撮影は自由であったが、ガラス面への映り込みがあって
思うような写真はなかなか撮れなかった。

今の時期にぴったりな、懐かしい風景。
しかし、ぴすけは着物を着て過ごしたことなどほとんどないし(夏は湯上りに浴衣を着ていた時期がある)
行水用の大盥は家になかった(ビニールプールで水遊びはしていた)。
ホタルが光るのを見たのは、なんと一昨年三重県で、46歳にして初めての体験だった。
さすがに夕立に遭って、雷鳴の中を逃げ帰ったことくらいはあるが
滝平二郎のきりえの世界は、ぴすけの実生活とは縁のない世界だった。
にもかかわらず、この懐かしさ、この麗しさはなんなのだろう。
こんなにも日本の風景は麗しかったのか、と心揺さぶられる時間であった。
しかし、実際の日本の風景は、これほど麗しいものではなかったはずだ。
子供たちの着物はこれほどパリッとしていて色彩豊かではなかったろうし、家の中は薄暗かっただろう。
背景にある山や川、丘や木々・草花も、滝平二郎の目を通して描かれた、幻の風景なのだ。
その幻の風景の、なんと美しいことよ。
優先順位を違えても、この展覧会に来て本当に良かった。
休憩用の長椅子には斎藤隆介作・滝平二郎絵の本が置いてあり、何十年ぶりに読み直した。
幼稚園の教室で、図書室で、病気で寝ている時に、雨の降る日に…。
子供のころにその本を読んでいた時の様子までもがよみがえった。

帰りに売店で図録を購入。
図録購入者にはもれなくきりえのプリントがプレゼントだとか。
5、6枚あった作品の中から、ぴすけが選んだのはこれ。

左奥に見える双耳峰の山は、おそらく滝平二郎の故郷の山・筑波山だろう。 



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2 コメント

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お誘いありがとうでした。 (ぽぴ)
2016-08-14 17:24:31
至近に住んでおりながら、この催しのことまるで気づいておりませんでした。私にも小さい頃から思い出に残る切り絵たちです。
絵本とセットになって、記憶に刻まれています。行けて良かった、ありがとうございました。
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図録は母に (ぴすけ)
2016-08-15 20:22:17
ぽぴさん、柏で展覧会、ぽぴさんとも会えるなんて、本当にラッキーでした。
セニョール氏がチケットを下さったのも、さらにラッキー。
ありがとうございました。

今は実家で母が図録を眺めています。
やはり、私が小さい時に読んでいた本のことを思い出すらしく、先日その話で盛り上がりました。
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