ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

両神山

2006-05-18 15:51:45 | 登山(奥秩父)

【第1日・5月16日(火)】
日向大谷→会所→清滝小屋→両神神社→剣ヶ峰(両神山山頂)→両神神社→清滝小屋
【第2日・5月17日(水)】
清滝小屋→会所→日向大谷



夏の八ヶ岳に向けて、着々と登山のレベルアップ計画は進み、
今回は山中の小屋に1泊の予定で、西奥秩父の両神山に出かけた。
両神山は卒業論文の題材にした山で、
登るのはなんと十ン年ぶり(ン十年ではない)である。
群馬県との県境に近いこの山は、標高700メートルの集落から
一気に山頂の剣ヶ峰まで1000メートルを登る。
ここは気温が低いため、まだ新緑も目に鮮やかだ。


前夜の睡眠不足と冬に溜め込んだ脂肪が祟ってか、
500メートルの標高差を1時間30分で登るコースに入ったとたん
早くもバテ気味。
あれぇ~?
登りでつらいと思ったことはほとんどないのに、
今回はつらいし、足が重い。
まずいな~。来週は、タダで山に行けるモニター募集の抽選に当たって、蓼科山で団体登山だというのに、これじゃあまずいな~。一週間でなんとかなるじゃろうか?
なんて、もう来週の心配をしている。
そこへ、ポツリポツリと恵みの雨。

大地に恵みを~♪木々に恵みを~♪
もう歩きたくないぴすけに恵みを~♪
雨雨降れ降れドンドコドン♪

雨に濡れながら、やっと昼過ぎに小屋に着く。
予定より15分オーバー。やはり増えた脂肪のせいだ。

教訓:寒いからといって脂肪を溜め込むのはほどほどに!

もう頂上なんてどうでも良いよ!
小屋で休みたいよ!
なんていえないので、
雨降ってるよ!
ほら、さっきより本降りになってきたよ!
滑って危険だよ!
行かない勇気も必要だ!
明日雨がやんだら、朝早く出れば良いじゃない!
と、相方を説得にかかる。
でも、相方は初めての両神山だからどうしても登りたいらしく、
小屋に戻るタイムリミットの13時30分まで待ってから決断するといって、
さっさとレインスーツを着て待機している。
そりゃ論理的にいったらそうだわな。

でーもー!もう足が重いんです!

13時30分になるまで、頭の中は雨乞い一色。
ドンドコドンドコ、竜神様よ目覚めよ~、ドンドコドン♪
ところが・・・日頃の行いがあまりにも悪かったためか、
小降りになってきちゃったんです~(涙)!

しかたなくレインスーツに身を固め、
小屋にいらない荷物を預けて頂上アタック。
ところが、おにぎりを食べて元気が出たのか、
さらなる急斜面の登りでクライマーズ=ハイになったのか、
相方を後方に残しハイペースで楽勝!
九十九折の急登が終わると、鎖場が次々と登場。



そこで怖い目に遭った。
ある鎖場に到着したとき、そこには既に鎖場を下りる男女の姿が。
男性が先に下りたが、続く女性が鎖に宙ぶらりんで叫んでいる。
「こわゃ~よ~!どうしたらいいだぎゃ~!(愛知県方面の方、ごめんなさい)」
下にいる男性ももっと優しく声をかければいいのに、
「な~にいってるんだぎゃ~!まっと足を伸ばせばでゃ~じょ~ぶだぎゃ~!だからよ~、そこだってばよ、そこ!(すみません、そう聞こえたんです)」
そこじゃわかんないってば・・・。
しかも女性はストックを片手に持ったまま鎖につかまろうとしている。
無理だよな~。
余計なおせっかいかとは思ったが、ちょっと声をかけた。
こちらも小屋に16時には戻らなければいけない。
「あの~、ストックを持っているからつかまれないんですよ。ストックを・・・」
といったとたん、何を勘違いしたのか、上からストックを下にいる私と男性めがけて投げつけた。
ヒー!怖いよう!ストックが刺さるよう!
両手が空いた女性は、なんとか鎖をつかみ下りてきた。
「ストックをだんなさんに渡してください。」というつもりだったのに、
「ストックを」といったとたん投げるとは。
そこまで切羽詰っていたのか?
ああ、怖かった。

教訓:人の話は最後まできちんと聞きましょう!

ハイペースでガンガン登り、頂上に着いたときは雨もやみ、
遠く八ヶ岳や荒船山まで見えたばかりか、
ほかの登山者はだれもいず、山頂を独り占め。

何度か登った両神山だが、山頂に誰もいなかったのは初めてだ。
とても贅沢な気分。

山頂からの下りも難なくこなし、宿泊予定の小屋に予定どおり到着。
しかしそこには・・・
目が痛くなるほどキョーレツな臭いのトイレが待っていた!
山小屋なので仕方がないが、あれでは環境にも良くない。
翌朝、水洗トイレにするための募金箱に、
自分としてはかなり意気込んで募金をし、小屋を後にした。

今回の登山の目的は、夏の八ヶ岳に向けてのトレーニングもあるが、
卒業論文のときにお世話になった民宿の人に、
あいさつに行くということも兼ねていた。
そのため、家から地元のお菓子を背負って来たのである。
上りがきつかったのは、体についた脂肪のせいではなく、
お菓子のせいだったんだ!

教訓:勝手な自己診断はやめましょう!

登山口の民宿を訪ねると、
下の道路で御主人が車に荷物を積んで出かけようとしていた。
相方に、「声を掛けた方が良いんじゃない?」といわれ、
大声で名前を呼んだら、
「名前で呼ばれたことなんてないから、びっくりしたベー。」
といわれてしまった。
奥さんは民宿にいるというので、そのまま道路を登って民宿を訪ねた。
「十ン年前に、卒業論文を書くのにおじいさんにお世話になった者です」というと大歓迎してくれて、
バス待ちの間おじいさんの話で盛り上がった。
残念ながらおじいさんは、昨年の4月に亡くなられ、
一周忌を過ぎたばかりだという。
背負ってきたお菓子は、仏壇に供えてもらった。

バスの時間が近づいたので、お礼をいって民宿を後にし、
両神神社の里宮を見学後バス停でバスを待った。
ここ日向大谷からは、両神山の全容は見えない。
現在はほとんど使われていないが、以前は修験者の登攀ルートとして使われた
辺見岳を経て山頂に至る稜線が見えるのみである。

懐かしい風景だな、と思って眺めていると
目の前を民宿の奥さんが車で通り抜けていった。
忙しい民宿の仕事の合間に、邪魔しちゃったのかな。
申し訳なかったねと相方と話しながらバスに乗り込んだ。
渓流沿いに進むバス。
ふと見ると民宿の車が止めてある。
「奥さん、ここで何しているんだろう?」
「渓流釣りだよ。ここで岩魚を釣って、今夜のお客さんに出すんじゃない?」
「釣れなかったら、釣れませんでしたので今夜のおかずはありませんっていうのかな?」
「釣れないことがないくらい、ここはバンバン釣れるんだよ、きっと」
などと他愛もない話を相棒としながら、
何気なく渓流で釣りをしている奥さんがいないものかと川に目をやる。
すると、視界にチラチラ動くものが・・・。
ふと川の一段高くなっているところを見ると、
民宿の奥さんがバスに向かってうれしそうに手を大きく振っている。
片手には蕗の束が握られている。
そうか、蕗を採っていたんだ。
「ああ、あそこ、あそこ!見て、見て!」
相方も気が付き、二人でバスの窓から手を振って応える。
するとバスは速度を上げ、景色と一緒に奥さんの姿も見えなくなった。

なんだかとてもうれしい。
民宿の仕事は大変なんだろうな。
今度手伝わせてもらおうかな。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。