ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

1000年忌特別展『源信』 ~地獄・極楽への扉~

2017-08-02 14:41:03 | 旅・おでかけ

7月23日(日)、とある目的のために再び奈良にやって来たぴすけ
とある目的とは

・重源さんに会うこと
・重源さんの作った風呂を見ること
・伝香寺のお地蔵様の着せ替え法要に参列すること
・東大寺知足院の文使い地蔵と呼ばれるお地蔵様に会うこと
・薬師寺の食堂を見ること

で、いちばんの目的は重源さんの作った風呂を見ることであった
「風呂を見に奈良まで行くなんて、なんてマニアック
と、友人にからかわれたが、友人のみならず家族も呆れ顔



興福寺の境内に着いたのは10時半前。
これから奈良国立博物館に見に行く特別展『源信』
地獄と極楽の有様について具体的なイメージを作った恵心僧都源信についての展覧会。
だが、ぴすけはあの世のことを知らないので、この世にも地獄と極楽があると思っている。
「苦の報い」は、あの世で地獄に落ちることとは限らない。

うひゃ~
埼玉も連日暑くてどんどろりんだったが、奈良も負けてはいない暑さ。
ただ、木蔭が多いのと、所々に風の通り道があって、そこにいれば少しは凌げる。
いつも思うことだが、奈良のお寺は心が広い。
興福寺といい、東大寺といい、法隆寺といい、ほかのお寺でも
歴史的建造物を眺めながら境内を歩けて、それだけなら拝観料がいらないというのは
とんでもなく贅沢なことだし、この恩恵を享受する身としては
仏像拝観などの面できちんと支えなくては、と思うのだ。

そして、やって来ました奈良国立博物館。
博物館や美術館に入るのも、暑さから逃れる方法の一つ。
今回の特別展は、ぴすけにとってまさに暑さ凌ぎ(ゴメンネ、ゴメンネ~)。
先ほども書いたように、死んだことがないので地獄・極楽の存在は確かめようがないし
恐怖心を植え付けて何か(源信の場合は念仏)をさせようとするのもいただけない。
そして、展示が全体的に文書と絵画が主で、彫刻がそれほどないのも興味がわかない理由の一つ。


今回の旅の目的は風呂を見に行くことだと話して
「なんてマニアック
と、ぴすけをからかった友人は、舞台芸術を鑑賞することを趣味としていて
何人かのご贔屓俳優もおり、そうした俳優の美しさに恍惚となる気持ちについて
以前にこんな会話をしたことがあった。

「ご贔屓さんを近くで直視なんてできないわ。
  席が舞台に近かったりするともう大変。
  生歌、生ダンス、キラキラオーラに圧倒されて、具合が悪くなりそう」

「あー、さすがに仏像を観て具合が悪くなったことはないけれど
  何かの力のようなものに圧倒されるのって、わかるな。
  私は仏様にすがって何かをしてもらうつもりはまったくないけどね
  大好きな仏様の足元でお顔を見上げると、仏様のまなざしに包まれる感覚とか
  なんだかキラキラしたものが降り注ぐ感覚はあるよね。」

「でしょ、でしょ
  でもさ、仏像は動かないけど、ご贔屓さんは動くんだよ。
  ダンスもするし、歌うんだよ。
  動かない仏像に恍惚感を感じるって、それ、すごくない?」
 

「チッチッチ
  君はまだ甘いな
  仏様は動かないなんて、それはまだ仏を知らぬ者の言う言葉
  仏様はだな、御来迎(ごらいごう)と言って
  自ら紫雲に乗り、菩薩や天女を引き連れてお迎えに来てくださるのだよ
  アーッハーッハーッハーッ

「……

そう、まさしくこの時話題になった御来迎の様子を描いた物が来迎図。

こちらは阿弥陀聖衆来迎図(和歌山 有志八幡講十八箇院)の部分抜粋。
ほらね、阿弥陀様が菩薩や天女を引き連れて、お出ましになっているではないか。
しかも、天女は笙や笛・鉦などの楽器を演奏し、天から舞ってやって来るのだ。
宝塚のトップスターが羽根をつけて、歌いながら団員を引き連れて
大階段を降りて来る光景となんら遜色がないではないか
舞台にお出ましになる華麗なるスターのお姿に、ファンがクラクラしている心境と
信者が臨終の際に御来迎を待ち望んでクラクラしている心境は
意外と共通するのではなかろうか。


この展示では、地獄絵や来迎図が充実しているので
そちらにご興味のある方は面白いかもしれない。
なんだかんだ言いながら、一通り見学したら12時を過ぎていた。
「珠玉の仏たち」を観るためになら仏像館に移動すると
12時30分からボランティアガイドがあるのでぜひ参加を、と、スタッフに声を掛けられた。
これまで訪れた時間帯が悪かったのか、ボランティアガイドに参加したことがなかったので
早速指定された場所で開始時刻まで待つ。
ボランティアガイドは、奈良国立博物館の成り立ちから始まり
4つの展示室において仏像の様式と形態に関する初歩的な説明があるが
代表的な出陳品に関することについてもお話があり、それなりに楽しめた。
ぴすけがこの日の展示で狂気したのは
兵庫県浄土寺の阿弥陀如来立像(1201年、快慶)が、快慶展の後でも残っていたことと
板光背のある奈良県新薬師寺の十一面観音菩薩立像(11世紀)だった。

もわ~
博物館を出ると、猛烈な蒸し暑さだった。
東大寺門前夢風ひろばでお昼を食べて、向かった場所は猿沢の池。

あった
何度もここを通ったことがあるのに、これまできちんと見たことがなかった。

これぞ奈良奉行・川路聖謨(かわじとしあきら)が揮毫した「植桜楓之碑」である。
川路聖謨については、4月18日の記事「佐保川のサクラ ~川路聖謨の思いを継いで~」
現在の奈良公園や佐保川沿いに、サクラやカエデの木を植えて
奈良の美しい景観を整備した人物として紹介した。
碑文はかなり風化して読みにくいが、すぐ隣に全文が記載された説明板があるので
それと見比べながら読むのも面白い。


この時既に14時45分。
16時から伝香寺で行われる地蔵会に参列したいので、このまま伝香寺に向かうか
いったんホテルに行って、身軽になって出直すかで迷ったが
ザックを背負ったシャツの背中はびしょびしょ
あまりに見苦しいので、ホテルでチェックインしてから出直すことにした。
これが間違いだったと気づくのは、伝香寺に着いてからだった
                            (つづく)


来迎図(部分)は、奈良国立博物館パンフレットから転載しました



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