道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

2007-04-17 12:36:30 | 精神文化
「桜は日本人の心」という言葉がある。
バラや牡丹のような派手さはなく、
控えめな薄ピンクの、素朴で上品な色。
また、小さな花が非常にたくさん咲くのだが、
散る時はぱっと潔く散り、晩節を汚さない。
その素朴さ、清潔さは、
日本人の単純さ・純粋さの美学に相応しいものと言える。
国学者本居宣長の詠んだ句も、まさにこの意であろう;
"敷島の大和心を人とはば 朝日に匂ふ山桜花"

樹上に咲いて良し、空中に散って更に良し、
そんな桜だが、もう一つ楽しみ方がある。
すなわち、地上に落ちてなお良し、である。

もはや桜も散り尽くした時分、
ふとしたことで駒場野公園に行ったのだが、
行ってみて驚いたのは、地上一面が真っ白なのである。
見る場所によっては、光ってさえいる。
宙に舞う花びらを雪に喩えることはよくあるが、
地に積もってもまた雪の如し。
散った後の桜を鑑賞するとは未練がましく、
潔さを旨とする日本の美学には適わないが、
美しいのだから仕様がない。

あるいは、
定番のみにとらわれず、意外なところにも美を見出すという点では、
これもまた日本の美学に適うものなのかもしれない。
兼好法師もこのように言う;
"花は盛りを、月は隅なきをのみ見るものかは"

散り尽くして後もなお美しい、
これは粋の極みであろう。