適用1年余 派遣労働者の加入4件
◆ 受給1人だけ 日雇い雇用保険
日雇い労働で生計を立てている人が、仕事のない日に支給される「日雇い雇用保険」。昨年九月の運用変更で、派遣労働者にも対象が広がったが、一年以上たった今でも加入者は全国でわずか四人、うち受給できた人は一人しかいない。周知不足で手続きが煩雑なだけでなく、手続き可能な派遣会社の支店・営業所が全国に八カ所しかないことも大きな原因だ。労働者側は「制度の不備が受給を妨げている」と訴える。(橋本誠)
◆ 窓口、全国8ヵ所 手続きも煩雑
日雇い雇用保険はもともと、東京・山谷地区などで働く日雇い労働者を対象に制度化された。労働者はハローワークで日雇い労働被保険者手帳(白手帳)の交付を受け、一日働くごとに雇用主に雇用保険印紙を張ってもらう。二カ月で二十六日以上働くと、翌月は仕事がない日にハローワークで申請が認められれば、日額最低四千百円の保険料の現金給付を受けられる。
制度は日雇い派遣労働者への適用を想定していなかったが、昨年九月、労働組合「派遣ユニオン」が厚生労働省と交渉した結果、勤務可能な仕事がなかったことを証明する「派遣契約不成立証明書」を、派遣会社に記入してもらうことを条件に適用されることになった。
これまでに全国で四人しか保険加入していないことについて、派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「最大の理由は労働者が制度を知らないこと。厚労省が周知をしていない」と指摘。さらに「仕事先が遠くて時間までに到着できないような場合でも、派遣会社から不成立証明書を出してもらえない」と話す。
労働者が日雇い雇用保険を利用するには、登録先の派遣会社の事業所が、ハローワークから印紙を管理するための通帳の交付を受けなければならない。ところが、通帳を備えることは義務付けられていないため、雇用保険が利用できる*派遣会社の事業所は全国に八カ所しかない。厚労省は利用可能な事業所名を公表しておらず、労働者が利用したくもほとんどの事業所不可能だ。
◆ 「ハードル高すぎる」 使えぬ制度、弱る加入者
「手当をもらうまでのハードルが高すぎて使えませんでした」日雇い派遣大手フルキャスト渋谷支店に登録する男性(四四)は昨年十二月、日雇い雇用保険に加入しようとハローワーク新宿を訪れた。
職員から「今すぐ常用就職(同じ仕事に就くこと)する意思があるか」と聞かれたが、所持金が一万円足らずで、当座の現金が必要だったため「常用就職はできない」と答えると、加入できなかった。その後、派遣ユニオンが「すぐには無理でも常用就職の意思はある」と交渉。印紙を張るための白手帳をやっと交付された。
三月と四月で受給に必要な計二十六日以上働いた。五月中旬、保険の受給に必要な「労働者派遣契約不成立証明書」を記入してもらおうと支店に頼んだが、断られた。
紹介されたのは「事務所移転の仕事だったが、時間までに到着できるか、ぎりぎりだったので断った。『"あぶれ"(派遣契約不成立)では』と聞くと『仕事の紹介はしているから、あぶれにはならない』と言われた」と振り返る。
フルキャストは「不成立の基準がないので判断しづらい。東京労働局にその都度相談しているが、仕事があるのに断った場合は不成立にならないと聞いている」と話す。
男性は全国で四人しかいない保険加入者の一人。「保険料を払っているのに、セーフティーネットになっていない。使える制度にしてほしい」
※日雇い雇用保険
保険料は賃金に応じて96-176円と3段階に分かれ、保険料納付の代わりに、雇用主と労働者の折半で雇用保険印紙を購入する。常に前月と前々月の勤務日数が26日以上でないと、3ヵ月目の受給資格を失う。給付額は前2ヵ月の獲得賃金に応じて日額4100-7500円と3段階に分かれる。
『東京新聞』(2008/12/10【雇用破壊】)
◆ 受給1人だけ 日雇い雇用保険
日雇い労働で生計を立てている人が、仕事のない日に支給される「日雇い雇用保険」。昨年九月の運用変更で、派遣労働者にも対象が広がったが、一年以上たった今でも加入者は全国でわずか四人、うち受給できた人は一人しかいない。周知不足で手続きが煩雑なだけでなく、手続き可能な派遣会社の支店・営業所が全国に八カ所しかないことも大きな原因だ。労働者側は「制度の不備が受給を妨げている」と訴える。(橋本誠)
◆ 窓口、全国8ヵ所 手続きも煩雑
日雇い雇用保険はもともと、東京・山谷地区などで働く日雇い労働者を対象に制度化された。労働者はハローワークで日雇い労働被保険者手帳(白手帳)の交付を受け、一日働くごとに雇用主に雇用保険印紙を張ってもらう。二カ月で二十六日以上働くと、翌月は仕事がない日にハローワークで申請が認められれば、日額最低四千百円の保険料の現金給付を受けられる。
制度は日雇い派遣労働者への適用を想定していなかったが、昨年九月、労働組合「派遣ユニオン」が厚生労働省と交渉した結果、勤務可能な仕事がなかったことを証明する「派遣契約不成立証明書」を、派遣会社に記入してもらうことを条件に適用されることになった。
これまでに全国で四人しか保険加入していないことについて、派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「最大の理由は労働者が制度を知らないこと。厚労省が周知をしていない」と指摘。さらに「仕事先が遠くて時間までに到着できないような場合でも、派遣会社から不成立証明書を出してもらえない」と話す。
労働者が日雇い雇用保険を利用するには、登録先の派遣会社の事業所が、ハローワークから印紙を管理するための通帳の交付を受けなければならない。ところが、通帳を備えることは義務付けられていないため、雇用保険が利用できる*派遣会社の事業所は全国に八カ所しかない。厚労省は利用可能な事業所名を公表しておらず、労働者が利用したくもほとんどの事業所不可能だ。
◆ 「ハードル高すぎる」 使えぬ制度、弱る加入者
「手当をもらうまでのハードルが高すぎて使えませんでした」日雇い派遣大手フルキャスト渋谷支店に登録する男性(四四)は昨年十二月、日雇い雇用保険に加入しようとハローワーク新宿を訪れた。
職員から「今すぐ常用就職(同じ仕事に就くこと)する意思があるか」と聞かれたが、所持金が一万円足らずで、当座の現金が必要だったため「常用就職はできない」と答えると、加入できなかった。その後、派遣ユニオンが「すぐには無理でも常用就職の意思はある」と交渉。印紙を張るための白手帳をやっと交付された。
三月と四月で受給に必要な計二十六日以上働いた。五月中旬、保険の受給に必要な「労働者派遣契約不成立証明書」を記入してもらおうと支店に頼んだが、断られた。
紹介されたのは「事務所移転の仕事だったが、時間までに到着できるか、ぎりぎりだったので断った。『"あぶれ"(派遣契約不成立)では』と聞くと『仕事の紹介はしているから、あぶれにはならない』と言われた」と振り返る。
フルキャストは「不成立の基準がないので判断しづらい。東京労働局にその都度相談しているが、仕事があるのに断った場合は不成立にならないと聞いている」と話す。
男性は全国で四人しかいない保険加入者の一人。「保険料を払っているのに、セーフティーネットになっていない。使える制度にしてほしい」
※日雇い雇用保険
保険料は賃金に応じて96-176円と3段階に分かれ、保険料納付の代わりに、雇用主と労働者の折半で雇用保険印紙を購入する。常に前月と前々月の勤務日数が26日以上でないと、3ヵ月目の受給資格を失う。給付額は前2ヵ月の獲得賃金に応じて日額4100-7500円と3段階に分かれる。
『東京新聞』(2008/12/10【雇用破壊】)
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