○ 格差社会 データにくっきり
日本国内の経済的格差は拡大しているのか――。国会論戦などで、「格差社会」が焦点になっている。さまざまな統計や調査をみると、格差の広がりを示すデータが目につく。5年近くに及ぶ小泉政権の構造改革路線の真価が問われるだけに、今秋の自民党総裁選に向け、議論はさらに盛り上がりそうだ。(小林弘平、宮崎誠)
ジニ係数 0.4983 所得ばらつき最大
福島社民党党首「あらゆる分野で格差が拡大している。競争社会が競争すらできない人々を増やしているなら問題だ。『勝ち組政治』の自民党政治では人々は幸せになれない」
高木剛連合会長「小泉さんの答弁を聞いていると、格差社会の認識は我々とギャップが大きすぎる。オペラに行かれるのも結構だが、オペラの前に見てほしいものがある」
東京・永田町の社民党本部で11日に開かれた同党大会では、格差問題に絡めての首相批判が相次いだ。

◆「社会実像データ図録」から挿入
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/4660.html
99年までのグラフだが、これに2002年の0.4983(社会保障も含めると0.38?)の数字を重ね合わせてみよう。わずか3年間でどれだけ「格差」拡大が急速であったか一目瞭然となる。
所得格差などに関する議論は以前からあったが、最近とくに注目を集めているのは、景気回復の実感にばらつきが見られるからだ。
民主党の前原代表が1月の衆院代表質問で「小泉首相の在任中に、所得の不平等指数であるジニ係数は0・50に拡大した」と強調したように、最近は経済用語の「ジニ係数」がひんぱんに登場している。所得のばらつき具合を示すジニ係数は、格差拡大を見るのにうってつけだ。
税金などを差し引かれる前の当初所得でみると――。厚生労働省が2004年6月に発表した所得再分配調査では、最新(02年)のジニ係数は、0・4983と過去最大になった。
所得格差を埋める仕組みが、高所得者ほど税率が高い累進課税や、社会保障だ。こうした税や社会保障も含めると、ジニ係数は0・38にとどまる。だが、90年代半ばと比べると、上昇しているのは事実だ。
1988年の国会では、低所得者の重税感を指摘する野党側に対し、宮沢喜一蔵相(当時)らがジニ係数を引用して日本の所得格差の小ささを訴えた。時代は様変わりしている。
実際の格差はもっと大きいとの見方もある。「フリーターやパートの増加など、若い世代の就業構造を反映していない」(東狐(とうこ)貴一・社会経済生産性本部主任研究員)とされるためだ。
この10年間、正規雇用者は約407万人減る一方、フリーターやパートなど非正規雇用者数が約650万人増えた。リクルートワークス研究所の04年の調査によると、正社員の平均年収は531万円だが、派遣社員は226万円、フリーターは167万円。親との同居が多いフリーターらを独立世帯とみなせば、ジニ係数はもっと上がる可能性が高い。
国民の実感でも格差は広がっている。読売新聞社が1月下旬に実施した緊急全国世論調査でも、「日本が格差社会になりつつある」との指摘について、「そう思う」とした人は74%だった。
<メモ>
ジニ係数
イタリアの統計学者コラッド・ジニが考案した指数。国民間の所得格差の程度を示すのに使われる。1に近いほど格差は大きい。全国民が同じ所得であれば、ジニ係数は0となる。「所得上位25%の層が、全所得の75%を占めている」場合、ジニ係数は0.5となる。
(2006年2月13日 読売新聞)
○ 1万1000の生活保護所帯を抱える東京・足立区
『文藝春秋』2006年4月号で、ノンフィクション作家、佐野眞一氏の「ルポ 下層社会」を読んだ。副題には「改革に棄てられた家族を見よ」とあり、東京都足立区を舞台に、格差社会の現実が、浮き彫りにされている。
ここで言う「改革」とはもちろん、小泉純一郎首相が進めてきた構造改革のことだ。佐野氏はそれについて次のように書いている。
「戦後日本は富の分配、再分配に関して、総じて公平な社会がつづいてきた。そうしたケインズ型社会が、01年の小泉政権の誕生と構造改革路線以降、アメリカ流新自由主義を理想に掲げたハイエク社会に変わった。その小泉改革のしわ寄せを一身に受けているのが、格差社会が著しく進行し、その最底辺に叩き落とされつつある足立区だといえる」
足立区がなぜ、格差社会の下層に叩き落とされつつあると言えるのか。佐野氏はルポの中で、2006年1月3日の朝日新聞朝刊1面に掲載された記事を紹介する。
――公立の小中学校で文房具代や給食費、修学旅行費などの援助を受ける児童・生徒の数が04年度までの4年間に4割近くも増え、受給率が4割を超える自治体もあることが朝日新聞の調べで分かった――
受給率が42%にも上る自治体の一つが、足立区だったのだ。
佐野氏によれば、同区の生活保護所帯は1万1000所帯。これは、東京23区の生活保護所帯の1割以上、日本全体の約1%だという。家庭の生活苦は最終的に、子どもたちの学力低下に結びつく。東京都教育委員会が2005年1月に実施した学力テストで、「足立区の小中学校に通う児童生徒の成績は、いずれの教科でも東京都全体の平均点を下回り、都内23区中最低ラインだった」という。
「人と組織の論壇時評~貧富の差はどこまで広がった?「格差社会」を読み解く」から
http://jinjibu.jp/GuestSurveyArticle.php?act=dtl&id=84
○ 中学校の運動部 少子化で先細り
北海道内の中学校で、運動部が減っている。ここ四年で8・5%減少。少子化の影響で学級数が減り、教諭の新規採用が抑えられているのに加え、休日や放課後の練習は指導教諭の負担が大きく、顧問のなり手がいないためだ。(略)
自らも女子バスケットボール部の顧問をしている同校の門前智教頭は、七月の中体連前の約一カ月間、休みが一日もなかったという。「生徒には試合に勝たせてあげたいし、練習にも熱が入る。先生の負担は重く、気軽にお願いできない」と顧問のやりくりの難しさを打ち明ける。(略)
中体連によると、少子化による教員採用数の減少に伴い、指導教諭の平均年齢が上がり、体力的に指導が難しくなっているのが背景の一つ。また、部活動は「課外活動」の扱いで、教諭にとってはボランティアの要素が強く、顧問のなり手が少ないという。
部活動の指導に対して支払われる特殊業務手当は、夏休み中も含めて平日は支給されず、休日の練習時は四時間以上八時間未満で千二百円、大会への引率は一日千七百円とわずかだ。
札幌市内の四十代の教諭は「部活動に付きっきりなので、土日もなく、家族にも負担をかけている」と話す。生徒の部活動参加率は〇五年度で57%と、ここ数年横ばいが続いている。(略)
北海道教委は一九九八年から、地域のスポーツ指導者らに「外部指導者」として活動してもらう制度を導入しているが、技術面を補う効果はあるものの、練習や大会には必ず教諭が付かなければならず、指導者不足の根本的な解決策にはなっていないという。白井修・北海道中体連会長(札幌市伏見中校長)は「先生がいなかったら、とにかく部活動は始まらない。廃部となっても生徒や父母には謝るしかないのが現状」と話している。
(『東京新聞』2006/8/9「話題の発掘」から)
ここにもわが国の先行きが垣間見える・・・
日本国内の経済的格差は拡大しているのか――。国会論戦などで、「格差社会」が焦点になっている。さまざまな統計や調査をみると、格差の広がりを示すデータが目につく。5年近くに及ぶ小泉政権の構造改革路線の真価が問われるだけに、今秋の自民党総裁選に向け、議論はさらに盛り上がりそうだ。(小林弘平、宮崎誠)
ジニ係数 0.4983 所得ばらつき最大
福島社民党党首「あらゆる分野で格差が拡大している。競争社会が競争すらできない人々を増やしているなら問題だ。『勝ち組政治』の自民党政治では人々は幸せになれない」
高木剛連合会長「小泉さんの答弁を聞いていると、格差社会の認識は我々とギャップが大きすぎる。オペラに行かれるのも結構だが、オペラの前に見てほしいものがある」
東京・永田町の社民党本部で11日に開かれた同党大会では、格差問題に絡めての首相批判が相次いだ。

◆「社会実像データ図録」から挿入
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/4660.html
99年までのグラフだが、これに2002年の0.4983(社会保障も含めると0.38?)の数字を重ね合わせてみよう。わずか3年間でどれだけ「格差」拡大が急速であったか一目瞭然となる。
所得格差などに関する議論は以前からあったが、最近とくに注目を集めているのは、景気回復の実感にばらつきが見られるからだ。
民主党の前原代表が1月の衆院代表質問で「小泉首相の在任中に、所得の不平等指数であるジニ係数は0・50に拡大した」と強調したように、最近は経済用語の「ジニ係数」がひんぱんに登場している。所得のばらつき具合を示すジニ係数は、格差拡大を見るのにうってつけだ。
税金などを差し引かれる前の当初所得でみると――。厚生労働省が2004年6月に発表した所得再分配調査では、最新(02年)のジニ係数は、0・4983と過去最大になった。
所得格差を埋める仕組みが、高所得者ほど税率が高い累進課税や、社会保障だ。こうした税や社会保障も含めると、ジニ係数は0・38にとどまる。だが、90年代半ばと比べると、上昇しているのは事実だ。
1988年の国会では、低所得者の重税感を指摘する野党側に対し、宮沢喜一蔵相(当時)らがジニ係数を引用して日本の所得格差の小ささを訴えた。時代は様変わりしている。
実際の格差はもっと大きいとの見方もある。「フリーターやパートの増加など、若い世代の就業構造を反映していない」(東狐(とうこ)貴一・社会経済生産性本部主任研究員)とされるためだ。
この10年間、正規雇用者は約407万人減る一方、フリーターやパートなど非正規雇用者数が約650万人増えた。リクルートワークス研究所の04年の調査によると、正社員の平均年収は531万円だが、派遣社員は226万円、フリーターは167万円。親との同居が多いフリーターらを独立世帯とみなせば、ジニ係数はもっと上がる可能性が高い。
国民の実感でも格差は広がっている。読売新聞社が1月下旬に実施した緊急全国世論調査でも、「日本が格差社会になりつつある」との指摘について、「そう思う」とした人は74%だった。
<メモ>
ジニ係数
イタリアの統計学者コラッド・ジニが考案した指数。国民間の所得格差の程度を示すのに使われる。1に近いほど格差は大きい。全国民が同じ所得であれば、ジニ係数は0となる。「所得上位25%の層が、全所得の75%を占めている」場合、ジニ係数は0.5となる。
(2006年2月13日 読売新聞)
○ 1万1000の生活保護所帯を抱える東京・足立区
『文藝春秋』2006年4月号で、ノンフィクション作家、佐野眞一氏の「ルポ 下層社会」を読んだ。副題には「改革に棄てられた家族を見よ」とあり、東京都足立区を舞台に、格差社会の現実が、浮き彫りにされている。
ここで言う「改革」とはもちろん、小泉純一郎首相が進めてきた構造改革のことだ。佐野氏はそれについて次のように書いている。
「戦後日本は富の分配、再分配に関して、総じて公平な社会がつづいてきた。そうしたケインズ型社会が、01年の小泉政権の誕生と構造改革路線以降、アメリカ流新自由主義を理想に掲げたハイエク社会に変わった。その小泉改革のしわ寄せを一身に受けているのが、格差社会が著しく進行し、その最底辺に叩き落とされつつある足立区だといえる」
足立区がなぜ、格差社会の下層に叩き落とされつつあると言えるのか。佐野氏はルポの中で、2006年1月3日の朝日新聞朝刊1面に掲載された記事を紹介する。
――公立の小中学校で文房具代や給食費、修学旅行費などの援助を受ける児童・生徒の数が04年度までの4年間に4割近くも増え、受給率が4割を超える自治体もあることが朝日新聞の調べで分かった――
受給率が42%にも上る自治体の一つが、足立区だったのだ。
佐野氏によれば、同区の生活保護所帯は1万1000所帯。これは、東京23区の生活保護所帯の1割以上、日本全体の約1%だという。家庭の生活苦は最終的に、子どもたちの学力低下に結びつく。東京都教育委員会が2005年1月に実施した学力テストで、「足立区の小中学校に通う児童生徒の成績は、いずれの教科でも東京都全体の平均点を下回り、都内23区中最低ラインだった」という。
「人と組織の論壇時評~貧富の差はどこまで広がった?「格差社会」を読み解く」から
http://jinjibu.jp/GuestSurveyArticle.php?act=dtl&id=84
○ 中学校の運動部 少子化で先細り
北海道内の中学校で、運動部が減っている。ここ四年で8・5%減少。少子化の影響で学級数が減り、教諭の新規採用が抑えられているのに加え、休日や放課後の練習は指導教諭の負担が大きく、顧問のなり手がいないためだ。(略)
自らも女子バスケットボール部の顧問をしている同校の門前智教頭は、七月の中体連前の約一カ月間、休みが一日もなかったという。「生徒には試合に勝たせてあげたいし、練習にも熱が入る。先生の負担は重く、気軽にお願いできない」と顧問のやりくりの難しさを打ち明ける。(略)
中体連によると、少子化による教員採用数の減少に伴い、指導教諭の平均年齢が上がり、体力的に指導が難しくなっているのが背景の一つ。また、部活動は「課外活動」の扱いで、教諭にとってはボランティアの要素が強く、顧問のなり手が少ないという。
部活動の指導に対して支払われる特殊業務手当は、夏休み中も含めて平日は支給されず、休日の練習時は四時間以上八時間未満で千二百円、大会への引率は一日千七百円とわずかだ。
札幌市内の四十代の教諭は「部活動に付きっきりなので、土日もなく、家族にも負担をかけている」と話す。生徒の部活動参加率は〇五年度で57%と、ここ数年横ばいが続いている。(略)
北海道教委は一九九八年から、地域のスポーツ指導者らに「外部指導者」として活動してもらう制度を導入しているが、技術面を補う効果はあるものの、練習や大会には必ず教諭が付かなければならず、指導者不足の根本的な解決策にはなっていないという。白井修・北海道中体連会長(札幌市伏見中校長)は「先生がいなかったら、とにかく部活動は始まらない。廃部となっても生徒や父母には謝るしかないのが現状」と話している。
(『東京新聞』2006/8/9「話題の発掘」から)
ここにもわが国の先行きが垣間見える・・・
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