懐かしのレコードをCD化…年配層向け音響機器好調 パソコンが苦手でも
最近のオーディオ機器はデジタル技術がふんだんに投入され、進化を続けている。だが、最先端技術が満載の商品が不得手な年配層も多い。そんな年配層を主なターゲットに、デジタル技術を補助的に用いたレコードプレーヤーやラジオが好評だ。昔ながらの音源を好む人々が多いことに加え、ボタン操作を簡単にするなどの配慮が、利用者の心をつかんでいるようだ。
音響機器メーカーのティアックが2006年秋から投入したのは、レコードの音を直接CDに録音できるプレーヤー。用いられたデジタル技術はあくまで、パソコンの不得手な人たちを手助けする脇役だ。シニア世代からの人気が徐々に高まり、最近は毎月100台以上が売れているという。
「レコード特有のノイズ音まで、そのまま残せる。パソコンを使いこなせないので、ありがたい」。埼玉県入間市の会社員、小林孝さん(57)は数カ月前から同社のプレーヤーを使い、若いころに購入したレコードのCD保存を始めた。小林さんはレコードが傷まないよう、針を落とすのもためらっていたが、今はCD化したレコードの音をドライブ中に楽しんでいる。
ティアックでは「大きな売り上げにつながらなくても、年配者の声を大切にした商品作りを続けたい」と語る。機械操作の苦手な利用者の要望をふまえ、カセットテープも録音できるようにした新製品「LP-R500」も昨年12月に発売した。市場想定価格は約7万円。百貨店などで販売するが、家電量販店からの引き合いが相次いでいる。
ソニーは、USB端子を搭載してパソコンと接続しやすくしたレコードプレーヤー「PS-LX300USB」を昨年4月から展開。希望小売価格は2万8350円。同社は「当初は注文が予想を上回り、生産が追いつかなかった。今も期待通りの売れ行きが続いている」と話す。
オリンパスは今春、ハードディスク駆動装置(HDD)を内蔵した、重さ約640グラムの据え置き型ラジオの新製品「VJ-10-JA」を発売。NHK英会話講座をあらかじめ収録した。サン電子は、番組を自動録音できる携帯ラジオ「トークマスター」シリーズをこれまでに15万台販売した。どちらも大規模書店を中心に販売され、実勢価格は4万円前後だ。
三省堂書店神保町本店では外国語学習を始める団塊世代の購入、紀伊国屋書店新宿本店では機械を苦手とする若い女性の購入も目立つという。
オリンパスは「年配層に配慮した簡便な音響機器の市場は、今後さらに大きくなるはず」と期待している。
2. 外国人ミュージシャン次々と作品 尾崎豊や広瀬香美などをカバー
尾崎豊の「15の夜」、広瀬香美の「ロマンスの神様」、久保田利伸の「Missing」…。こうしたJ-POPと呼ばれるおなじみの邦楽を外国人ミュージシャンがカバーした作品が、今年前半に相次いでリリースされた。彼らは口をそろえて言う。「J-POPは名曲ぞろい」だと。(竹中文)
米国人ミュージシャンのスコット・マーフィーは6月下旬、尾崎豊の「15の夜」、大塚愛の「プラネタリウム」などを収録したCD「BattleGround」をリリースした。所属していたバンド「アリスター」のツアーで来日したときなどにJ-POPに触れ、とりこになった。「メロディーや声の強さ、響きにひかれた。J-POPのメロディーは米国の音楽と違って新鮮だし、世界に通じる名曲だと思った」
日本語も独学で勉強、完璧(かんぺき)な発音でカバーしているが、「発音は理解しやすかったが、敬語や漢字など難解な部分もある」と言う。数年前に「15の夜」を初めて聞いたときは、すべての歌詞は理解できなかった。そんなスコットの強い味方になったのがインターネットだ。「歌詞を調べてみて、外国人でも共感できる内容だと思った」
♪ ♪ ♪
ネットの普及は、確実に外国人のミュージシャンとJ-POPを結びつける一助となっている。
2月に久保田利伸の「Missing」のカバーを音楽配信したマレーシア出身の女性ミュージシャン、シェネルも「歌詞の翻訳をネットなどを通して見つけて理解した」と話す。
米の人気ヘビーメタルバンド「メガデス」のギタリストだったマーティ・フリードマンは、J-POPに魅せられて平成15年から日本に住んでいるが、「ネットの普及のおかげで世界中で音楽情報が見つけやすくなり、世界が狭くなった。僕の日本での活動もネットによって海外に知られるようになり、なぜ僕が日本にいるかが米国人にもわかってきたみたい」と笑う。
5月には広瀬香美の「ロマンスの神様」などを収録したアルバム「TOKYO JUKEBOX」を発売した。マーティは「日本ではJ-POPがスーパーなどでも流れている。好き嫌いは関係なく、日本人は皆J-POPを聞きながら育ってきた民族で、気が付かないうちにJ-POPがすりこまれている」と指摘した上で、「J-POPはもはや日本だけの音楽ではない。グローバル(世界的な)のG-POPにすべきだ」と提案する。
♪ ♪ ♪
外国人ミュージシャンがJ-POPのカバー曲を相次いで発表する背景には、洋楽の売り上げが厳しいという側面もある。日本レコード協会によると、洋楽の平成20年の国内レコード(CD、カセット含む)生産実績は過去5年間で最少の約5587万枚で、邦楽の1億9188万枚を大きく下回った。
音楽評論家の富澤一誠さんは「最近、徳永英明らが名曲をカバーして売れたので、洋楽に同じ動きが出るのは必然だと思う。ただ、すべてのカバーがはやるわけではない。誰もが知っている名曲であること、原曲に忠実であること、などの条件が必要でしょう」と話している。
最近のオーディオ機器はデジタル技術がふんだんに投入され、進化を続けている。だが、最先端技術が満載の商品が不得手な年配層も多い。そんな年配層を主なターゲットに、デジタル技術を補助的に用いたレコードプレーヤーやラジオが好評だ。昔ながらの音源を好む人々が多いことに加え、ボタン操作を簡単にするなどの配慮が、利用者の心をつかんでいるようだ。
音響機器メーカーのティアックが2006年秋から投入したのは、レコードの音を直接CDに録音できるプレーヤー。用いられたデジタル技術はあくまで、パソコンの不得手な人たちを手助けする脇役だ。シニア世代からの人気が徐々に高まり、最近は毎月100台以上が売れているという。
「レコード特有のノイズ音まで、そのまま残せる。パソコンを使いこなせないので、ありがたい」。埼玉県入間市の会社員、小林孝さん(57)は数カ月前から同社のプレーヤーを使い、若いころに購入したレコードのCD保存を始めた。小林さんはレコードが傷まないよう、針を落とすのもためらっていたが、今はCD化したレコードの音をドライブ中に楽しんでいる。
ティアックでは「大きな売り上げにつながらなくても、年配者の声を大切にした商品作りを続けたい」と語る。機械操作の苦手な利用者の要望をふまえ、カセットテープも録音できるようにした新製品「LP-R500」も昨年12月に発売した。市場想定価格は約7万円。百貨店などで販売するが、家電量販店からの引き合いが相次いでいる。
ソニーは、USB端子を搭載してパソコンと接続しやすくしたレコードプレーヤー「PS-LX300USB」を昨年4月から展開。希望小売価格は2万8350円。同社は「当初は注文が予想を上回り、生産が追いつかなかった。今も期待通りの売れ行きが続いている」と話す。
オリンパスは今春、ハードディスク駆動装置(HDD)を内蔵した、重さ約640グラムの据え置き型ラジオの新製品「VJ-10-JA」を発売。NHK英会話講座をあらかじめ収録した。サン電子は、番組を自動録音できる携帯ラジオ「トークマスター」シリーズをこれまでに15万台販売した。どちらも大規模書店を中心に販売され、実勢価格は4万円前後だ。
三省堂書店神保町本店では外国語学習を始める団塊世代の購入、紀伊国屋書店新宿本店では機械を苦手とする若い女性の購入も目立つという。
オリンパスは「年配層に配慮した簡便な音響機器の市場は、今後さらに大きくなるはず」と期待している。
2. 外国人ミュージシャン次々と作品 尾崎豊や広瀬香美などをカバー
尾崎豊の「15の夜」、広瀬香美の「ロマンスの神様」、久保田利伸の「Missing」…。こうしたJ-POPと呼ばれるおなじみの邦楽を外国人ミュージシャンがカバーした作品が、今年前半に相次いでリリースされた。彼らは口をそろえて言う。「J-POPは名曲ぞろい」だと。(竹中文)
米国人ミュージシャンのスコット・マーフィーは6月下旬、尾崎豊の「15の夜」、大塚愛の「プラネタリウム」などを収録したCD「BattleGround」をリリースした。所属していたバンド「アリスター」のツアーで来日したときなどにJ-POPに触れ、とりこになった。「メロディーや声の強さ、響きにひかれた。J-POPのメロディーは米国の音楽と違って新鮮だし、世界に通じる名曲だと思った」
日本語も独学で勉強、完璧(かんぺき)な発音でカバーしているが、「発音は理解しやすかったが、敬語や漢字など難解な部分もある」と言う。数年前に「15の夜」を初めて聞いたときは、すべての歌詞は理解できなかった。そんなスコットの強い味方になったのがインターネットだ。「歌詞を調べてみて、外国人でも共感できる内容だと思った」
♪ ♪ ♪
ネットの普及は、確実に外国人のミュージシャンとJ-POPを結びつける一助となっている。
2月に久保田利伸の「Missing」のカバーを音楽配信したマレーシア出身の女性ミュージシャン、シェネルも「歌詞の翻訳をネットなどを通して見つけて理解した」と話す。
米の人気ヘビーメタルバンド「メガデス」のギタリストだったマーティ・フリードマンは、J-POPに魅せられて平成15年から日本に住んでいるが、「ネットの普及のおかげで世界中で音楽情報が見つけやすくなり、世界が狭くなった。僕の日本での活動もネットによって海外に知られるようになり、なぜ僕が日本にいるかが米国人にもわかってきたみたい」と笑う。
5月には広瀬香美の「ロマンスの神様」などを収録したアルバム「TOKYO JUKEBOX」を発売した。マーティは「日本ではJ-POPがスーパーなどでも流れている。好き嫌いは関係なく、日本人は皆J-POPを聞きながら育ってきた民族で、気が付かないうちにJ-POPがすりこまれている」と指摘した上で、「J-POPはもはや日本だけの音楽ではない。グローバル(世界的な)のG-POPにすべきだ」と提案する。
♪ ♪ ♪
外国人ミュージシャンがJ-POPのカバー曲を相次いで発表する背景には、洋楽の売り上げが厳しいという側面もある。日本レコード協会によると、洋楽の平成20年の国内レコード(CD、カセット含む)生産実績は過去5年間で最少の約5587万枚で、邦楽の1億9188万枚を大きく下回った。
音楽評論家の富澤一誠さんは「最近、徳永英明らが名曲をカバーして売れたので、洋楽に同じ動きが出るのは必然だと思う。ただ、すべてのカバーがはやるわけではない。誰もが知っている名曲であること、原曲に忠実であること、などの条件が必要でしょう」と話している。