松戸駅から10分ほどプラプラ歩き緩いカーブの坂道をのぼって行くと水戸藩第11代藩主であった徳川昭武が,江戸川に臨む高台・戸定が丘に建てた戸定邸の庭園に着きます。国指定名勝のひとつです。隣には千葉大学園芸学部もあり、肌寒い日でしたが、たまにはゆっくり春の樹木でも愛でながら歩いてみようと立ち寄ってみました。
深山含笑の花が咲く千葉大学の松戸キャンパス
千葉大学園芸学部の松戸キャンパス内にある樹高8mほどの見事な深山含笑(ミヤマガンシュウ)。なんて素敵な名前の樹なのでしょう。桜のように一気に咲いてサッと散るのではなく、樹の上の方から次から次へと交代で咲き続け、七分咲きのような状態がずっと続くそうです。ワタクシが観たのは地表に近い枝に咲いた花ですからそろそろ終わりの季節なのかもしれません。一つの花の寿命はあまり長くありませんが、次々に咲いていくので、これだけ大きな木になると、2ヶ月以上は花を楽しめるとか。花には芳香があって、近づくとほのかに甘い香りがします。
ユズリハが生い茂る学内散策路
古くは万葉集にも登場するユズリハ。ユズリハの名前の由来にはいろいろあるらしいのですがポピュラーなのは新しい葉が全て成長した状態になってから古い葉が落ちることから「譲る葉」と呼ばれ、「譲葉(ユズリハ)」になったというもの。この頃、電車のなんとかシートに座ることが多くなったワタクシたち、少し反省しなければと顔を見合わせて苦笑い。
先日の雪や強風で倒木し通れないところも
すでに桜が咲いている庭もありました
寒い時期に緋色(鮮やかな赤)の花が咲くことからカンヒザクラ(寒緋桜)と名付けられている桜が戸定邸の前に満開で迎えてくれました。
カンヒザクラが満開の戸定邸の庭園
ワタクシたちが散策を楽しめるのもきれいにしてくださる方々がいらっしゃるおかげ。感謝です。
お庭で写生をされるお姿も・・・絵心がある人が羨ましい
千葉大学園芸学部の庭園や戸定邸の庭を歩いていると情熱の歌人・与謝野晶子の歌碑に何度も出逢いました。与謝野晶子は大正13年6月に千葉県立高等園芸学校(現千葉大園芸学部)を訪れ、「松戸の丘」「或る日」と題して短歌60首を詠んだそうです。この事実は、千葉大や松戸市の年表、晶子自身の年表などにも記録がなかったのですが、元市職員で松戸の文学資料を収集・編集されていらした宮田正宏さんが発見。宮田さんは在職中、市立図書館などに勤務され、同館が発行した『松戸の文学散歩』の編集に関わられたそうです。図書館に働く者のひとりとして見習いたいものだと反省したワタクシでした。
千葉大学内に建つ歌碑
ハランの緑葉が両側を囲む散策路
松戸駅に帰る途中の緩やかな坂道の両側にはハラン(葉蘭)が群生して艶のある大きな緑色の葉を立てています。最近の研究までは花粉の媒介者が不明で不思議な植物という扱いだったそうです。
小さくてよくわかりませんね
花は紫色で3~4月ごろ地下茎から出て地面すれすれに咲くと聞きました。ちょうど花が地面にめり込んだような格好で、花被片は8つに分かれるそうですが、ワタクシが観たのは写真のようにまだ地面にめり込んだ芽のようなものだけでした(残念!)。もう少し暖かくなったらまた訪れようと負け惜しみを言うワタクシでした。
戸定邸内から観たお庭も素敵です
今回は、樹木にばかり眼がいってしまい、戸定邸にはあまり触れていませんが、手づくりガラスを通して観たお庭もよいものです。もう少し暖かくなったらのんびり(今回もかなりのんびりでしたが…)散策してみたいと思いました。