(01)
(ⅰ)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
3 (3) 象a A
13 (4) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 23MPP
13 (5) ∃y(鼻ya&長y) 4&E
1 (6) 象a→∃y(鼻ya&長y) 35CP
1 (7)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} 6UI
13 (8) ∀z(~鼻za→~長z) 4&E
13 (9) ~鼻ba→~長b 8UE
1 (ア) 象a→~鼻ba→~長b 39CP
イ(イ) 象a&~鼻ba A
イ(ウ) 象a イ&E
1 イ(エ) ~鼻ba→~長b アウMPP
イ(オ) ~鼻ba イ&E
1 イ(カ) ~長b エオMPP
1 (キ) 象a&~鼻ba→~長b イカCP
1 (ク) ∀z(象a&~鼻za→~長z) キUI
1 (ケ) ∀x∀z(象x&~鼻zx→~長z) クUI
1 (コ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x∀z(象x&~鼻zx→~長z) 7ク&I
(ⅱ)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x∀z(象x&~鼻zx→~長z) A
1 (2)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)} 1&E
1 (3) 象a→∃y(鼻ya&長y) 1UE
4 (4) 象a A
14 (5) ∃y(鼻ya&長y) 34MPP
1 (6) ∀x∀z(象x&~鼻zx→~長z) 1&E
1 (7) ∀z(象a&~鼻za→~長z) 6UE
1 (8) 象a&~鼻ba→~長b 7UE
9(9) ~鼻ba A
49(ア) 象a&~鼻ba 49&I
14 (イ) ~長b 8アMPP
14 (ウ) ~鼻ba→~長b 9イCP
14 (エ) ∀z(~鼻za→~長z) ウUI
14 (オ) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 5エ&I
1 (カ) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 4オCP
1 (キ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} カUI
従って、
(01)により、
(02)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&∀x∀z(象x&~鼻zx→~長z)
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長い。すべてのxとzについて、xが象であって、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(02)
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長い。すべてのxとzについて、xが象であって、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふことは、
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 象は、鼻は長い。象は、鼻以外は長くない。
といふ、ことである。
然るに、
(03)
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 象は、鼻は長い。象は、鼻以外は長くない。
といふことは、
① 象は、鼻が長い。
といふ、ことである。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① 象は、鼻が長い。
② 象は、鼻は長い。象は、鼻以外は長くない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
一、總主トハ如何ナル者ゾ
動詞、形容詞ニ對シテ其主語アルト同ジク、主語ト説語(動詞或ハ形容詞)トヨリ成レル一ノ説話(即チ文)ニ對シテモ更ニソノ主語アルコト國語ニハ屡々アリ。例ヘバ「象は體大なり」ノ「象」、「熊は力強し」ノ「熊」、「鳥獸蟲魚皆性あり」ノ「鳥獸蟲魚」、「仁者は命長し」ノ「仁者」、「賣藥は效能薄し」ノ「賣藥」、「慾は限無し」ノ「慾」、「酒は養生に害あり」ノ「酒」、「支那は人口多し」ノ「支那」ノ如キハ、皆、「體大なり」「力強し」等ノ一説話ニ對シテ更ニソノ主語タル性格ヲ有ス(草野淸民、國語の特有セル語法 ― 總主、『帝國文學』五卷五號、明治三十二年:大修館書店、日本の言語学 第3巻 文法Ⅰ、1978年、533頁)。
(06)
一、総主とはどのようなものか。
動詞、形容詞に対してその主語があるように、主語と説語(動詞、形容詞)からなる一つの説話(すなわち文)に対しても、更に、その主語がある、ということが、しばしばある。例えば「象は体大なり」の「象」、「熊は力強し」の「熊」、「鳥獣虫魚みな性あり」の「鳥獣虫魚」、「仁者は命長し」の「仁者」、「売薬は效能薄し」の「売薬」、「欲は限無し」の「欲」、「酒は養生に害あり」の「酒」、「支那は人口多し」の「支那」は、「体大なり」「力強し」等は、一つの説話に対して、更にその主語である、という性格がある。
従って、
(05)(06)により、
(07)
② 象は、鼻は長い。象は、鼻以外は長くない。
に於いて、
②「鼻は長い。」 の「主語」は「象」であって、
②「鼻以外は長くない。」の「主語」は「象」である。
従って、
(04)(07)により、
(08)
① 象は、鼻が長い。
に於いて、「象は」は、
① 象は、鼻が長い。
といふ「文全体の、主語」である。
然るに、
(09)
① 鼻が長い。
に於いて、「鼻が」は、
① 鼻が長い。
といふ「文全体の、主語」である。
然るに、
(10)
① 象は、鼻が長い。
に於いて、
①「象は」に「注目」するならば、
①「象は」は、
① 象は、鼻が長い。
といふ「文全体の、主語(総主)」であり、
①「鼻が」に「注目」するならば、
①「鼻が」は、
① 鼻が長い。
といふ「文全体の、主語」である。